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平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第1章 「外国人旅行者倍増」に向け飛躍の年

第1節 これまでの外国人旅行者倍増への取組

2 国際観光を巡る近年の世界の動向


近年の世界の国際観光動向は、平成13年9月の米国同時多発テロ、平成14年10月のインドネシア・バリ島での爆弾テロ、平成15年上半期はSARSとマイナス要因が重なり、各国の観光産業は、一時大打撃を受けた。しかし、SARS終焉後の平成15年下半期からは状況が好転し、特に経済成長期の中国をはじめ、東アジア諸国では海外旅行は極めて好調に推移した。
例えば、中国については、未だ海外旅行は揺籃期にあるが、経済の急速な発展を背景に、平成12年に1,000万人を突破した海外旅行者数が、平成16年には2,850万人に達し急速に増加しており、平成32(2020)年には海外旅行者数が1億人に達すると予測されている巨大マーケットである。
また、韓国では、平成16年7月より週休2日制が導入されたこともあり、週末を利用した日本、中国等への近距離海外旅行ニーズが高まっているほか、特に日本との間では、平成10年以来の日本の大衆文化の開放、平成14年のサッカー・ワールド・カップの共催、韓流ブーム等をきっかけに日韓間の交流が拡大している。平成16年12月の日韓首脳会談においては、平成16年に約400万人であった両国間の交流を、平成17年には500万人に拡大することを目標とすることとされ、平成17年は日韓友情年・日韓共同訪問の年として交流拡大のための各種行事が行われてきている。
平成16年に訪日旅行者数が100万人を達成した台湾では、人口の約30%にあたる600~700万人が毎年海外に出かけており、外国旅行は余暇活動の一部として完全に定着し安定成長の時代に入っているといえる。
さらに香港では、毎年人口の約65%にあたる約450万人が海外旅行をしており、景気低迷の中でもタイや韓国への安・近・短ツアーが増加しているほか、平成16年4月からの訪日観光ビザの免除により訪日ツアー利用者が増加傾向にある。
世界観光機関(WTO)では、日本を含む東アジア・太平洋地域の国際観光客到着数は、平成12(2000)年から平成22(2010)年の間に年平均7.7%という大きな伸びを示し、約2億人に達すると推計しているが、この7.7%という伸び率は世界全体の国際観光客到着数の伸び率と比較しても大きなものであり、東アジア・太平洋地域において国際観光の重要性が更に増してくることが予想される(図1-1-3)

図1-1-3 拡大する東アジア・太平洋地域の国際観光市場



このように、近年は、アジア諸国においても観光が拡大してきており、世界各国においてアジア諸国からの観光客誘致の競争が活発になっている。
特に中国においては空前の海外旅行ブームが巻き起こっており、各国において中国人をターゲットとした熾烈なインバウンド競争が展開されている。
EU諸国では平成16年9月の中国人団体観光旅行解禁後の需要増大を踏まえ、積極的なプロモーション活動を開始しており、ツアー価格も日本の商品と同等またはそれ以下のものが出されている。1か国のビザ取得で数か国の訪問が可能なEU諸国は、1回の旅行でできるだけ多くの国・地域を訪れることを希望することの多い中国人のニーズとも合致しており、今後、強力な競合デスティネーションになることが考えられる。欧州の航空会社は、北京をはじめ上海や平成16年8月に開港した広州の新白雲空港からの欧州路線を大幅に拡充しており、中国欧州間の座席供給数も拡大傾向にある。
こうした中、日本への外国人旅行者数については平成15年時点のデータでみると、アジア諸国の中で「7位」と、域内での相対的な順位は平成2年の「5位」から低下しており、更なる外国人観光客訪日促進のための取組を行うことが必要である(図1-1-4)

図1-1-4 外国人旅行者受入数アジアランキング(平成15年)



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