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平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第1章 「外国人旅行者倍増」に向け飛躍の年

第1節 これまでの外国人旅行者倍増への取組

4 外国人旅行者倍増に向けての具体的取組



  (1) ビジット・ジャパン・キャンペーンの積極的展開

1)平成16年度における取組
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は、外国人旅行者の訪日を飛躍的に拡大することを目的として国、地方公共団体及び民間が共同して取り組む戦略的キャンペーンとして、平成15年4月より展開されている。ビジット・ジャパン・キャンペーンにおいては、官民一体となって海外の旅行会社に対する魅力的な訪日観光の商品造成支援や、国内外の旅行関係者の商談会の設置、海外メディアを活用したCM戦略等の広告宣伝活動を中心に実施してきている。
特に、平成16年度においては、ビザ規制の緩和や平成17年の日韓共同訪問の年に向けて訪日客の増加が特に見込まれる中国と韓国を重点対象地域として、旧正月の大型休暇と中部国際空港の開港の機会を捉えて、平成17年2月5日から20日までを「YOKOSO! JAPAN WEEKS」として、集中的なキャンペーン期間とした。
この「YOKOSO! JAPAN WEEKS」のスタート前日には、オープニングイベントを六本木ヒルズで開催し、約30名の日本各地の観光広報大使より地域の魅力が紹介された。
「YOKOSO! JAPAN WEEKS」の主な事業を紹介すると、ITを活用した外国人観光客の行動支援(例:自動翻訳及び観光情報提供機能を有する携帯端末(PDA)の成田国際空港における貸出し、全国均一料金による電話通訳案内サービスの提供等)や、富士急ハイランドにおいて中国人観光客2,000人が中国・旧暦大晦日の一日を楽しむ「春節祭in富士急楽園」の実施等を行った。
また、これらのイベントの紹介や外国人観光客の旅行費用の負担軽減のための割引、外国人観光客の利便向上のための取組を網羅した小冊子「ようこそWEEKSハンドブック」を作成し、外国人観光客に配布した。

YOKOSO! JAPAN WEEKSのロゴマーク



  COLUMN 1 ビジット・ジャパン・キャンペーン・ソング  

訪日外国人旅行客を歓迎する“おもてなしの心"を一層広げるため、タレントのつんくさんからの提案で「ビジット・ジャパン・キャンペーン・ソング」が誕生し、平成17年2月の「YOKOSO! JAPAN WEEKS」オープニングイベントで発表された。
つんくさんが作詞・作曲を手がけ、歌手の美勇伝の皆さん(石川梨華さん、三好絵梨香さん及び岡田唯さん)が歌うビジット・ジャパン・キャンペーン・ソング「カッチョイイゼJAPAN」は、『日本は実は素晴らしい国ではないか。みんな自信をもって、外国の人にも日本の見所、魅力を紹介しよう。そして日本を訪れてくれた人を“ようこそ!"と歓迎しよう』という気持ちと、海外から訪れてくれた人にも「カッチョイイゼ!」と一緒に歌ってもらえればという気持ちが込められている。

写真:YOKOSO! JAPAN WEEKSオープニングイベントで「カッチョイイゼ JAPAN」を歌う美勇伝の皆さん



2)成果と評価
平成15年度終了後、ビジット・ジャパン・キャンペーン各事業について客観的な評価を実施した。その結果、(1)東北地方の自治体が連携して「祭り」にテーマを絞って海外からの観光関係者を招請し、旅行相談や視察等を組み合わせて実施した事業が、東北へのツアー商品増加につながり、結果として8,000名以上の訪日客をもたらした、(2)中国の高所得者層をターゲットに、スキーのブランド化を狙ってテレビ、新聞、ホームページなどで集中キャンペーンを実施した結果、北海道の観光地としての認知度が大きく上昇したなど戦略や事業方針を明確に絞った事業が特に高い業績を挙げていたことが明らかとなった。

  (2) 外国人旅行者受入体制づくりの充実

我が国における訪日外国人旅行者の受入体制については、外国人が関心を持つ関連情報の提供についても、またインフォメーションサービスについても不十分であり、外国人が一人歩きしにくい環境が訪日外国人の増加しない原因の一つでもあるとの指摘がなされていることから、そのような現状の改善に向け、観光施設、宿泊施設、公共交通機関、道路等における案内表示や情報提供の充実に関して以下のような取組がなされてきている。
(国の取組事例)
・全国の観光地でわかりやすい案内標識の整備を推進するため、外国語表記方法等のルール化が望ましい事項につきガイドラインの検討を進めている。
・平成16年度には、観光案内所において多言語での対応が可能となるような人材育成のための研修を各地で開催した。
(民間事業者・自治体等の取組事例)
・平成16年4月から東京メトロ及び都営地下鉄、7月から大阪市営地下鉄、10月から名古屋市営地下鉄及び神戸市営地下鉄、11月から京都市営地下鉄等で、路線名や駅名へのナンバリングが実施されている。
・平成16年11月、成田空港駅と空港第2ビル駅に、訪日外国人旅行センターがJR東日本により設置された。同センターでは、ホテル・旅館の手配、各種観光施設の入場券等の販売、外国人向け旅行商品の販売、地方自治体とタイアップした観光情報の提供、JRパス等の販売のサービスが提供されている。
・平成17年2月から、国際観光振興機構が運営する東京の総合観光案内所(TIC:ツーリスト・インフォメーション・センター)では、これまでの土曜日午後、日曜・祝日及び年末年始の休業を改善し、年中無休体制で業務を行っている。
・平成16年8月に行った総売上高上位55ホテルに対する調査によれば、大部分のホテルで英語TV放送が視聴でき、5ホテルで中国語、韓国語TV放送が視聴できることとなっている。また、一部のホテルにおいては、ドイツ語、イタリア語、フランス語等の言語放送にも対応している。
・平成15年度から、東京都の一部では、案内標識について多言語表記を取り入れ、視認性にも配慮した統一的な整備を行っている。

  COLUMN 2 東武鉄道や西日本鉄道の取組  

東武鉄道は、沿線の日光や鬼怒川温泉への外国人旅行者の誘致活動を本格化しており、平成16年10月1日から外国人旅行者向け割引乗車券を発売しているほか、浅草駅北口に「浅草駅外国人旅行センター」を開設し、観光案内を行っている。外国人旅行者向けの割引乗車券には、NIKKO・KINUGAWAパス、世界遺産めぐりパス、鬼怒川温泉テーマパークめぐりパスの3種類があり、関連するパンフレット類を多言語化するとともに、利用者を外国人に限定することで低廉な価格を設定し、外国人旅行者が利用しやすいものとしている。また、「浅草駅外国人旅行センター」では、外国人向けの割引乗車券を発売しているほか、英語による沿線の観光案内等を年中無休で行い、外国人旅行者の利便性を高めている。
福岡市の西日本鉄道は、急増する韓国人旅行者に対応するため、平成16年11月から、国土交通省の「観光推奨バス路線における実証実験」に参加し、路線バスに英語やハングル表記を導入するとともに、福岡市・天神や博多駅地区の主要バス停にバスの乗り方を英語とハングルで表記した説明板を設置した。具体的には、福岡市の中央ふ頭-天神、天神-JR博多駅、JR博多駅-天神について、行き先を車両の先頭に掲げた「方向幕」と呼ばれる掲示板や、区間内のバス停の時刻表や路線図に英語とハングルでの表記を加えている。このほか、車内アナウンスも英語とハングルで放送している。また、韓国の路線バスは、1)先頭のドアから乗車、2)料金先払い-が主流で、西日本鉄道の路線バスとは異なっており、韓国人観光客から「わかりづらい」との声が出ていたため、「乗車は中ドア」「料金後払い」といった乗り方に関する説明板を3箇所に設置した。

  (3) 外国人旅行者受入れに関する国民の意識

一方、外国人旅行者受入れに関する国民の意識も変わりつつある。
平成17年2月、国土交通省が国土交通行政インターネットモニター(777名)に対し、「観光立国」や「観光立国」を実現するための様々な施策等に対するアンケート調査を行った。この調査結果から、海外からの観光客が「増えて欲しい」と回答する者の割合が7割を超えていることがわかった。このことは、ビジット・ジャパン・キャンペーンの開始から2年が経過し、国民の間に、国内地域の活性化に資すること等外国人旅行者受入れの意義が浸透してきたことが背景にあるものと考えられる。(有効回答数:667名)
1)訪日外国人旅行者受入れに関する意識の動向
国民における訪日旅行者数の認知度、海外からの観光客が増えることに対する意識等は、次のとおり。
1)我が国を訪れる外国人旅行者数について、知っていたと回答した者は、平成15年8月に内閣府政府広報室が実施した「自由時間と観光に対する世論調査(以下「平成15年世論調査」という。)」では、6.9%に止まっていたが、今回の調査では、17.7%となった。知っていると回答した者についてみると、男性は、23.2%だったのに対し、女性では、10.5%であった(図1-1-5)

図1-1-5 訪日外国人旅行者数の認知度



2)日本に海外からの観光客が増えることについてどう思うか尋ねたところ、「大幅に増えてほしい」及び「多少増えて欲しい」と回答した者の合計は、回答者数の76.9%にのぼり、平成15年世論調査での「増えて欲しい」とする回答48.2%を大幅に上回った。ビジット・ジャパン・キャンペーン実施から2年が経過し、国民の間にも訪日外客誘致への期待が高まってきていることがうかがえる(図1-1-6)

図1-1-6 日本に海外からの観光客が増えることについて



3)外国人旅行者が増加することによる我が国へのメリットについては、「日本をよく理解してもらうことにつながる」を挙げた者が最も多く(76.6%)、以下「観光収入が増えることは、国内経済にとっても重要」(70.6%)、「国内観光の振興にもプラスになる」(53.4%)、「日本人の国際的な視野が広がる」(50.8%)と続く。平成15年世論調査では、「日本人の国際的な視野が広がる」が第2位であったことからすると、観光促進がもたらす経済効果についての理解が深まってきていることがうかがえる(図1-1-7)

図1-1-7 外国人旅行者が増加することによる我が国へのメリット



4)一方、外国人旅行者が増加することによる我が国へのデメリットとしては、「外国人観光客を装った犯罪者が入国し、犯罪の増加につながることが心配」を挙げた者が、89.4%となり、次いで、「外国人の言葉や独特の習慣がわからず、日本人との間でトラブルを起こすことが心配」(33.4%)となったが、平成15年世論調査結果でも第一位は、「外国人観光客を装った犯罪者が入国し、犯罪の増加につながることが心配」(90.2%)であった。
2)外国人旅行者にアピールできる日本の観光資源についての意識
外国人旅行者に対し、日本のどのような点をアピールすべきか尋ねたところ、「祭・古典芸能・寺社仏閣等日本の伝統・歴史・文化」を挙げたものが最も多く(83.2%)、以下、「和食等の食文化」(74.1%)、「風光明媚な自然景観」(58.3%)、「日本の清潔さ、安全性」(48.7%)と続く(図1-1-8)。「祭・古典芸能・寺社仏閣等日本の伝統・歴史・文化」は、男女別、年齢別にかかわらず、概ね1位を占めたが、20歳代女性では、「和食等の食文化」が1位となった。

図1-1-8 外国人旅行者に対する日本のアピールする点



3)観光立国等に対する意識
「観光立国」あるいは、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」等の言葉の認知度を尋ねたところ、「「観光立国」あるいは、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」どちらかを今までに聞いたことがあり、政府が取組を進めていることを知っている」(26.2%)と「どちらかを聞いたことはあるが詳しくはわからない」(44.4%)と回答した者の合計は、回答者のおよそ7割に達し、年齢が高くなるほど認知度が高まっていく傾向がある(図1-1-9)

図1-1-9 「観光立国」及び「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の認知度



4)ビジット・ジャパン・キャンペーンにおける訪日外国人誘致宣伝方策について
ビジット・ジャパン・キャンペーンとして訪日外国人の誘致宣伝活動を実施しているが、今後どのようなことに力を入れていくべきか尋ねたところ、「日本をよく理解してもらうため、外国語のパンフレット、インターネット等情報発信を充実させる」を挙げた者が最も多く(59.7%)、次いで、「日本の良き理解者を増やしていくため、修学旅行等相手国の若年層を誘致する」(57.6%)、「外国の旅行会社やマスコミ等を日本に招請して日本へのツアーを商品化してもらったり、テレビ・雑誌等で日本の宣伝をしてもらう」(53.5%)が続く(図1-1-10)

図1-1-10 ビジット・ジャパン・キャンペーンにおける訪日外国人誘致宣伝方策について



5)外国人旅行者のための旅行環境整備について
日本を訪れる外国人旅行者の旅行の利便性を高めていくために、どのようなことが必要か尋ねたところ、「空港・駅、観光地、レストラン等での外国語による案内板・メニュー等の外国語表示の充実」を挙げた者が最も多く(79.5%)、次いで、「観光案内所の設置・充実」(61.0%)、「外国人に使いやすいタクシー、バスなど交通機関の充実」(55.2%)、「外国人向け低廉宿泊施設の充実」(47.1%)と続き、案内表記の充実と交通・宿泊機関の利便性向上の必要性を感じていることがうかがえる(図1-1-11)

図1-1-11 外国人旅行者のための旅行環境整備について



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