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平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第3章 訪日促進を中心とする国際観光交流促進施策

第1節 ビジット・ジャパン・キャンペーンを中心とした日本の魅力の戦略的なPR活動

2 国際観光振興機構による広報・宣伝活動


独立行政法人国際観光振興機構(JNTO)は、世界の主要13都市に海外観光宣伝事務所を設け、在外公館、地方公共団体、関係団体と協力、連携しながら、積極的に日本の観光魅力の広報、宣伝を行っている(表3-1-2)。平成16年度は、急成長する中国海外旅行市場に対応するため、既存の北京海外宣伝事務所及び中国・広東省を担当する香港海外観光宣伝事務所に加え、平成16年8月、上海観光宣伝事務所を開設した。中国人訪日団体観光旅行の対象地域は、従来、2直轄市1省(北京市、上海市及び広東省)に限られていたが、開設直後の同年9月より上海に隣接している江蘇省、浙江省など1直轄市及び4省が追加指定されたことから、上海事務所は、上記2省に向けた宣伝活動の強化を図った。

表3-1-2 国際観光振興機構海外観光宣伝事務所(13箇所)の配置状況




  (1) 訪日旅行促進キャンペーン

ビジット・ジャパン・キャンペーン事業との相乗効果を狙い、各市場で種々の観光プロモーション事業を実施した。
香港については、平成16年4月1日からの査証免除適用前後に集中的にノービザ記念訪日旅行キャンペーンを展開した。また、同年4月上旬に成田国際空港に新規乗入れした香港の航空会社や地方へのチャーター便乗り入れ都市等の関係者の協力を得て、新規のツアー開発支援活動を行った。
訪日修学旅行に参加する学生は、韓国では平成16年3月から、中国では同年9月から査証が免除になったことから、青少年の国際交流が活発化しており、JNTOは、地方公共団体とともに、これら対象国の学生旅行の決定に関係する校長等教育関係者の招請等に取り組んだ。
また、韓国では所得の上昇とともに、週休2日制が次第に普及してきており、隣国の日本へ気軽に足を伸ばし、ゴルフやスキー等の趣味を楽しむといった新しい動きも見られるようになった。また、海外への新婚旅行も人気を呼んでおり、ゴルフやスキーツアー造成の支援を行うとともに、こうした新婚旅行ブームを踏まえ、マリンリゾート沖縄キャンペーンを実施した。
さらに、平成17年3月には、愛・地球博(愛知万博)に伴い、韓国及び台湾からの観光客には短期滞在査証が免除されることとなり、現地旅行会社の訪日ツアー造成意欲が高まっていることから、積極的な販売促進支援活動を行った。
米国やカナダ市場向けには、京都をはじめとする伝統的な町並みを評価する声が消費者に高いことから、平成17年3月に開幕した愛知万博への誘致と絡め、金沢や高山など中部地方への旅行会社招請事業を強化した。平成16年1月には、ハーバード大学の学生8人が日本での体験取材に基づいて著した「レッツゴー・トラベルガイド・ジャパン」が出版されており、青少年を中心に個人旅行者の地方への旅行促進と言語障害の軽減に役立っている。また、自由旅行を求める個人旅行者のよき伴侶となるガイドブック出版を支援するため、米国のハンターパブリシング社が企画する新作の「アドベンチャー・ガイド」日本編の取材に協力した。この企画に参加した記者は平成16年5月から8月まで日本全国を精力的に取材した。
フランスでは、数年前からル・モンド紙やテレビ局等の報道機関や地元和歌山県の協力を得て、精神的な充足を求める高野山ツアーの定着化に成功した。平成16年7月には、同地域が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録され、世界的に知名度が上がっていることから、英国、ドイツでも広報・宣伝活動を強化した。従来、欧州では訪日ツアーを取り扱う旅行会社は訪日専門業者に限られていたが、海外事務所の積極的な取組により、大手の中国旅行ツアー販売業者やトーマス・クック社等総合旅行会社による訪日ツアーの造成・販売が開始され、販路拡大に結びついている。
季節が日本と反対のオーストラリアでは、従来から訪日スキーツアー造成への支援活動を行っていたが、平成16年11月、オーストラリア航空による新千歳-ケアンズ線の開設を機に、日本、オーストラリアの関係者の協力を得て、報道機関の招請を行った。オーストラリアのスキーヤーの間では、ニセコの雪質は良いとの評価が高く、個人の口コミとマスコミ報道が相まって、オーストラリアでは世界有数のスキー・リゾートとして北海道の知名度が急上昇している。

  (2) ウェブサイトによる観光情報発信システムの運営

国際観光振興機構(JNTO)は、インターネット上で日本の観光魅力と旅行情報を発信するため、JNTOウェブサイト(http://www.jnto.go.jp)を構築、運営している。
本ウェブサイトは、日本の観光を海外に向けてPRする総合観光ポータルサイトの役割を担っており、平成16年度の年間総アクセス件数は2,320万件(ページビュー換算)に達した。同サイトの主な特色は以下のとおりである。
1)総計4,000ページに及ぶ旅行関連情報を含む豊富なコンテンツ量を有し、旅行に必要な基本情報(気候・出入国手続・通貨等)から、交通、宿泊、飲食、文化、祭事、イベントや47都道府県の400観光地の情報、12の国際観光テーマ地区の情報等を網羅している。
2)訪日旅行市場の約9割を占める旅行者が使用するアジア、北米、欧州、豪州の主要6言語(英語、韓国語、中国語簡体字及び繁体字、ドイツ語、フランス語)で情報提供を行っている。
3)「楽天トラベル」等日本を代表する9つの英語宿泊予約サイト(一部、中国語を含む)とリンクし、外国人旅行者の宿泊予約ニーズに対応している。
4)スペシャルインタレストツアー(SIT)やコンベンション、インセンティブ旅行等幅広い専門分野に対応している。
5)北米、英国の各市場ではJNTOの現地事務所が運用している地域専用サイトともリンクしている。

  (3) 外国人の一般旅行者に対する宣伝活動

1)海外における観光展への参加・協力
中国国際旅遊交易会(CITM)、上海世界旅遊資源博(WTF)、台北国際旅行博(ITF)、ワールドトラベルマーケット(WTM)、ベルリン国際旅行見本市(ITBベルリン)等海外の有力な国際旅行見本市への出展等を通じて日本の観光魅力の紹介を行った。
2)各国の有力紙、テレビ等を通じた広報活動
各国の有力紙、テレビ等を通じた広報活動を行い、日本の地方の観光魅力の紹介、日本人及び日本文化とのふれあい等の紹介を行った。

  (4) 海外の旅行業者・報道関係者等に対する宣伝活動

1)海外の旅行業者に対する広報活動
世界の主要都市において、地方公共団体や旅行関連業界との共催・連携により、海外の旅行業者を対象とした訪日旅行促進セミナーの開催や、ニュースレターの発行により日本の観光魅力や最新の訪日旅行情報等の紹介及び提供を行った。また、訪日ツアー開発を目的に海外の有力旅行会社の商品企画担当者を招請したほか、香港については、カウンターセールススタッフの日本に関する知識向上と販売意欲の醸成を目的に、旅行会社スタッフを対象に訪日視察旅行を実施した。
国内においては平成16年4月15日及び16日に、台湾・韓国をはじめとする69の海外の旅行業者を招請して「旅フェア2004インバウンド商談会」を開催した。また、平成16年9月24日に、海外の旅行業者73社及びメディア8社を招請して、JATA-WTF2004インバウンド意見交換会を開催した。
2)海外報道関係者の招請、取材協力
海外での日本の観光魅力の紹介、対日理解の増進を図る上で極めて効果的である外国報道関係者等の招請、取材協力を多数行った。その結果、諸外国の新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等を通じて日本紹介の報道が行われた(表3-1-3)

表3-1-3 国際観光振興機構の招請及び取材協力による日本紹介報道の一例




  (5) 多様な媒体による宣伝活動

1)宣伝印刷物の作成、配布
日本の観光地、観光情報等を掲載した各種パンフレット、地図等を多言語で作成し、JNTOの海外観光宣伝事務所、総合観光案内所(TIC)等を通じて、広く配布した。
2)映像媒体を活用した宣伝
日本の観光魅力を紹介する映像媒体を海外各地で開催されるイベント、セミナー、博覧会等で上映したほか、航空会社、旅行業者、学校、一般団体等に貸し出し、テレビ放映等に幅広く利用された。
さらに、日本の観光地を撮影した画像を国内及び海外のマスメディア、旅行会社等に貸し出し、雑誌や旅行パンフレット等に幅広く掲載された。
  COLUMN 5 韓国・英国における外国人旅行者誘致の取組  

1 韓国
韓国においては、観光を所管する省庁は「韓国文化観光部」となるが、具体的な事業の展開については、韓国観光公社(KNTO)が主導で計画・実施を行っている。このKNTOの事業戦略は以下のとおりである。
(1)ターゲットの設定
重点ターゲットとして、中年女性層及び青少年層を掲げており、各市場における市場占有率の拡大を図っている。
(2)ターゲットへのアプローチ手法
ITを活用して、文化面・観光面のPRを実施。各市場において効果的な観光素材を選別し、他の観光地との差別化を図っている。なお日本市場に対しては「ドラマのロケ地やスターの故郷などを紹介している。
(3)基本戦略(分野別)
以下の分野別に基本戦略を設定している。
1) 広告分野
1)韓国ドラマ・映画の放映と連携した広告の実施
2)韓国との直行路線が就航している地域におけるテレビCMの露出の強化
※ただし、東京のように広告料が高額な地域においては広告は縮小傾向
2) 商品の差別化
1)文化、スポーツ交流をテーマとした相互交流型の商品開発
2)大規模キャンペーンの実施による他の観光地との差別化
※韓国との直行路線就航地を中心に展開
3)高速鉄道(KTX)を活用した地方商品の開発・造成
4)現地の事情に精通したKNTO支社による商品開発・造成
3) 旅行会社との関係強化
1)重点的に支援を実施する旅行会社の選別
2)旅行博覧会への積極的出展
3)新規企画商品、地方観光商品への積極的な支援
4)KNTO広告実施時における、各市場の旅行会社との共同広告の誘導
5)商品支援実施後の集客実績の徹底管理
4) 韓流関連事業の展開
1)韓国の人気タレントとのファンミーティング
2)韓国の人気タレントを起用したテレビCMの放映
※日本向け、中国向け、東南アジア向けに、各市場で人気のあるタレントをそれぞれ活用
3)二国間(例:韓日、韓独)コンサート

韓国PRビデオ(市場別)



2 英国
英国においては、「文化メディアスポーツ省」が観光を所管している。また、政府から約70億円、民間から約35億円の予算を確保して、英国政府観光庁(Visit Britain)が国際観光および国内観光の双方を振興している。このVisit Britainの事業戦略は以下のとおりである。
(1)英国のブランド展開
1)ブランドコンセプトの確立
新しい英国ブランドの柱として「Heart」「Depth」「Vitality」の3つを設定
2)自国民にも英国ブランドの浸透と向上の働きかけを実施
1)自国民に、自分たち一人一人が観光大使であることを啓蒙
2)タクシードライバーに対して、外国人観光客への接客に関する研修を開催(年に2回程度開催し、最新観光情報等を提供)
3)政治家に対しても定例会議(月に1回、約60名規模)を通じて観光の重要性を啓蒙
(2)観光業界(民間企業・団体)との連携強化
1)目標設定
以下の目標を設定し、効果的な事業を展開
1)インバウンド旅行の質的向上(単に数を求めるのでなく、本当の英国を観光してもらうこと)
2)地域及び季節ごとの目標を設定すること
3)投資額に対する収益は29倍以上(1ポンドの投資から29ポンドの利益)
2)3年サイクルの事業展開
観光業界で中心的な役割にある民間企業・団体(British Airways、 Hiltonホテルグルー
プ)等と連携し、3年を一つのサイクルの目処としてプロモーション事業を実施。
3)事業評価のポイントの設定
外国人観光客の増加への寄与を事業評価のポイントとして設定。
(3)英国観光地のPR
1)Visit Britainにおいて英国観光地をPR。5か国語(英語、日本語、中国語、韓国語、アラビア語)に対応。
2)費用対効果の高いメディア招請事業を重点的に開催し、毎年1,000名程度のジャーナリストを招請。
3)広報活動としてプレスリリース資料を2,000箇所に送付。
4)旅行会社の社員を毎年250名招請し、英国観光地の紹介を実施。

Visit Britain HP



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