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平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第5章 観光交流空間の形成

第2節 自然環境の保全と観光への活用

4 海の環境保全と観光への活用



  (1) 海の環境保全

海域の全窒素及び全燐に係る環境基準については、国及び道府県においてその類型の指定及び見直しが進められている。また、国が類型指定を行う水域については、暫定目標の見直しを進めている。
東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海については、化学的酸素要求量(COD)、窒素及び燐に係る第5次水質総量規制を実施している。瀬戸内海においては、沿岸関係府県が自然海浜保全地区条例により、平成16年12月までに91地区の自然海浜保全地区を指定した。
海域における水質の保全を図るため、海域に関する流域別下水道整備総合計画の策定を進め、下水道の整備及び高度処理の推進を図るとともに、合流式下水道にあってはその改善を図った。
生態系や自然景観等周辺の自然環境に配慮した海岸整備を行うエコ・コースト事業を平成16年度までに全国48箇所において実施した。
漁場及び漁港の環境保全と快適な漁村環境の創造を図るため、漁港区域内の水域における汚泥・ヘドロの除去や藻場・干潟や水質浄化施設・清浄海水導入施設等の整備を行う漁港水域環境保全対策事業、漁業集落の生活排水等を処理する漁業集落排水施設の整備等を実施した。
環境と共生する港湾<エコポート>の形成を目標に水質・底質を改善する汚泥浚渫や覆砂、港湾の親水性を高め良好な環境を創造する干潟・藻場等の積極的な保全・再生・創出の他、海浜及び緑地の整備を推進し、平成16年度は尾道糸崎等において干潟等の整備、横浜港等において緑地の整備を実施した。
都市再生プロジェクト(第三次決定)「海の再生」を受け、「東京湾再生のための行動計画」及び「大阪湾再生行動計画」に基づき、汚染メカニズムの解明、発生源対策、環境改善対策を一体的に推進した。
海洋汚染が発生する可能性の高い海域において重点的な監視取締りを実施したほか、油等排出事故対策訓練等を実施した。さらに、海洋環境保全講習会等のあらゆる機会をとらえて、海洋環境の保全に関する指導・啓発を行った。
潜在化が懸念される悪質な廃棄物の不法投棄事犯について重点的に監視取締りを実施したほか、廃船の不法投棄事犯の発生の抑制及び廃船の適正処理の促進を図るとともに、また、船舶の処理体制の確立を関係団体に働きかけるなどして、港湾、漁港、海岸等の環境保全に努めた。

お台場人工海浜




  (2) 海の観光への活用

1)海辺の自然学校、海辺の達人養成講座
海や港の自然環境を生かし、国の港湾事務所が自治体や教育委員会、NPOなど地域の主体と連携を図りながら、児童や親子を対象に干潟の生き物観察、スノーケリングによる海中観察などの「海辺の自然学校」を平成16年度は千葉港、下田港等の全国38箇所で実施した。
また、海辺の自然学校における指導者を全国的に育成するため、18歳以上の男女を対象とする「海辺の達人養成講座(海辺の自然体験活動指導者セミナー)」を自治体や教育機関、NPOなどと連携しながら全国4箇所(下北半島、房総半島、知多半島、大隅半島)で開講した。

海辺での生物観察会(海辺の自然学校:広島県呉港)




水中でのグループコントロール実習(海辺の達人養成講座:鹿児島県大隅半島)



2)子どもたちの海・水産業とのふれあい推進プロジェクト
豊かな自然環境、伝統文化等の地域資源に恵まれた漁村において、子どもたちの体験学習活動等を促進するため、漁港管理者や教育委員会関係部局等から構成される協議会において体験学習活動に適した「子どもたちの海」を調査・選定するとともに学校関係者等に所在地等の情報を提供する「子どもたちの海・水産業とのふれあい推進プロジェクト」を推進した。
3)港湾景観の形成
港湾において人々が憩い集う、美しく快適な空間を形成するため、港湾が持つ景観資源を活用し、良好な景観形成を図ることを目的とした港湾景観形成モデル事業を平成16年度までに全国で13港承認し、佐世保港等で整備を実施した。
4)海洋性レクリエーションの促進施策
海洋性レクリエーションを健全に普及・振興していくため、プレジャーボート利用の活性化と適正化、安全性の確保、ウォーターフロント空間の魅力の増進、インフォメーション提供体制の強化、クルーズ需要への対応、小型船舶の登録制度等の施策を実施した。また、沖縄北部振興事業として、沖縄の海洋性気候や自然を生かし、ドルフィンセラピーやマリンスポーツ等を展開する、健康をテーマとした長期滞在型及び参加体験型の海洋性観光・リゾート拠点の形成を図る施策を実施した。
また、港湾におけるマリーナを拠点とした自然体験活動や環境教育活動の取組である「海辺の自然学校」を推進するなど、海辺の自然環境への理解向上や地域の活性化を図った。
海やみなとに関して地域からの様々な相談に応じる「海とみなとの相談窓口」については、フリーダイヤルやメールにより相談窓口を設置し、市民からの質問や相談に対応した。
5)ボートパーク等の整備
海洋性レクリエーションの振興と公共水域の適正な利用推進を図るため、プレジャーボートの活動の拠点となる小型船舶の簡易な係留・保管施設(ボートパーク)の整備を推進した。また、港湾において第三セクターや民間事業者が行うマリーナの整備に対して、日本政策投資銀行による長期・低金利の融資等の支援を行った。ボートパークやマリーナは、プレジャーボートの保管だけでなく、海洋性レクリエーション活動、自然体験活動等の拠点として市民に広く利用された。

横浜港大さん橋



6)旅客船ターミナル施設の整備
クルージング需要の増大、旅客交通の高速化等へ対応するため、別府港等14港で旅客船ターミナル施設の整備を行った。
7)親水性に富む港湾施設の整備
港湾を豊かな交流空間として利用したいという要請に対応して、親水護岸、海浜やイベント広場等の親水性に富む緑地の整備や自然環境の保全・再生・創出に資する臨海部の森・大規模な緑地の整備を平成16年度に尼崎西宮芦屋港等117港で実施した。
8)みなとの博物館ネットワークの構築
海や港に関わる様々な文献等を所蔵・展示する「博物館」や「展示場」をネットワーク化し、利用者の利便性や博物館の魅力の向上を図った。
9)フィッシャリーナの整備
秩序ある漁港利用を図るため、新たに静穏水域を確保して漁船とプレジャーボート等の利用調整を行うフィッシャリーナの整備を推進している。現在供用中の漁港利用調整事業によるフィッシャリーナは25漁港であり、平成16年度は10箇所で整備を行った。
また、既存静穏水域の活用による放置艇対策を含め、漁港漁村の活性化を推進する漁港漁村活性化対策を実施した。
10)漁港環境の整備
快適で潤いある漁港環境を形成するため、漁港内において植栽、親水施設等の整備を行う漁港環境整備事業を実施した。
また、平成16年度には都市住民との交流の円滑化等を図るため、広場、親水護岸等の施設の整備を行う漁港交流広場整備事業を21地区で実施した。
11)海岸環境の整備
砂浜の保全・復元等により、景観上も優れた人と海の自然のふれあいの場を整備した。平成16年度は、小田原漁港海岸、熱海港海岸等175箇所において整備を実施した。
12)ビーチ利用促進モデル事業の実施
マリーナ等の整備と連携しつつ、大規模なビーチ、遊歩道等の整備を重点的に促進する「ビーチ利用促進モデル事業」を平成16年度までに12箇所を選定している。
13)コースタル・コミュニティ・ゾーンの整備
海岸の整備と併せ、背後地における公園、道路等の整備を計画的、一体的に行うことにより、地域住民が海と親しみ、集い、憩える場としてコースタル・コミュニティ・ゾーンの整備を推進した。
14)海と緑の健康地域づくり-健康海岸-の実施
健康増進のために利用しやすい海岸の形成を図るため、健康海岸として平成16年度までに17地域を指定した。
15)いきいき・海の子・浜づくりの実施
教育関係者、海岸管理者等の連携により、世代間の交流の場、自然・体験活動の場、マリンスポーツの場として青少年が利用しやすい海岸づくりを図るため、「いきいき・海の子・浜づくり」の実施地域として平成16年度までに31箇所を選定した。
16)「日本の水浴場88選」の普及・啓発
水質が良好で快適な水浴場を広く普及するために選定した「日本の水浴場88選」について、ホームページ、ポスター・パンフレット等により普及・啓発に努めた。
17)自然豊かな海と森の整備-白砂青松の創出-
海水浴と森林浴を同時に楽しめるなど潤いのある生活環境の整備として、「白砂青松」で代表される自然豊かな海と森の整備対策事業の実施地区として平成16年度までに25箇所を選定した。
18)岬のオアシス構想の推進
近年、地元自治体において岬の灯台を地域のシンボルとして位置付ける地域振興策が企画されており、地元自治体が実施する公園化事業と連携する「岬のオアシス構想」を推進している。平成16年度は三重県の安乗埼灯台において実施された。
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