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平成17年度観光の状況

第1章 進む、観光立国への動き

第2節 国際競争力のある観光地づくりへの主な取組

2 外国人受入体制の整備



  (1) 公共交通機関における外国語等による情報提供

「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」の一部が改正され、平成18年4月1日より、外国語等による案内情報の提供の促進が公共交通事業者等の努力義務とされるとともに、多数の外国人観光旅客が利用する区間又は外国人観光旅客の利用の増加が見込まれる区間として国土交通大臣が指定した区間において事業を経営している公共交通事業者等については、外国語等による案内情報の提供の計画的な実施が義務付けられることとなった。このため、公共交通事業者等が外国語等により適切に情報提供が行えるようガイドラインを策定し、公表するとともに、同年3月31日には国土交通大臣が指定する区間を定める告示を行った。
また、個別の案内表示等について、外国人有識者、外国人留学生等に点検してもらい、分かりにくい点、不足している点等を抽出し改善方策を検討するため、成田空港と駅等その周辺をモデルケースとした外国人による「ひとり歩き点検隊」を平成18年3月22日に実施した。
  COLUMN 1 外国人による「ひとり歩き点検隊」  

現在、海外からの観光客の誘致のため、ビジット・ジャパン・キャンペーン等を展開するとともに、来訪した外国人観光客が単独で公共交通機関を利用できるよう、公共交通事業者等による外国語表示等の促進を図っている。
しかしながら外国人観光客から、駅やターミナルの案内表示が分かりにくいなどの意見があり、依然として外国語表示等について改善すべき点が多いことが考えられる。
このため、個別の案内表示等について、分かりにくい点、不足している点等を抽出し、改善方策を検討するため、外国人有識者、外国人留学生等に点検してもらう、外国人による「ひとり歩き点検隊」を、成田空港と駅等その周辺をモデルケースとして平成18年3月22日に実施した。
当日は、活発な意見交換が行われ、参加者からは「外国人観光案内所の場所への表示を分かりやすくした方がよい」、「日本に来た実感を持ってもらうために、日本的な音楽の提供や写真の掲示をしてはどうか」等の意見があった。これらを踏まえ、今後の取組の参考としていく。

  (2) 案内標識の整備

観光地での分かりやすい案内標識の整備を進めるため、平成17年6月に「観光活性化標識ガイドライン」を取りまとめ、公表した。これに基づき、地域ごとに案内標識の設置関係者と観光客等のユーザーが参加した組織を作り、標識の表記の統一、設置場所の調整、維持・更新のための継続的な点検等を進めることとしている。

  (3) 観光統計の整備

観光統計は、国や地方公共団体における観光政策の立案や観光産業における戦略の策定等に不可欠なものであるが、我が国の観光統計について、その整備が不十分との指摘が各方面からなされている。平成16年11月に取りまとめられた観光立国推進戦略会議報告書においては、「国・地域、民間団体は、各産業、地域の効果的な観光戦略を策定することができるようにするため、観光統計の体系的な整備を促進する」との提言が盛り込まれたほか、平成17年6月に発表された内閣府経済社会統計整備推進委員会(座長:吉川洋東京大学教授)の報告書「政府統計の構造改革に向けて」においては、観光統計の整備は経済センサスの創設やGDP関連統計の改革と並ぶ我が国の経済社会統計における最重要課題の一つとして位置付けられた。さらに、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005(骨太の方針)」においても、観光統計の整備が必要であることが言及された。
これらを受け、平成17年5月以降、「観光統計の整備に関する検討懇談会」(座長:山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)が4回開催され、観光統計の体系的な整備の必要性が指摘されるとともに、その第一段階として宿泊旅行に関する統計を速やかに整備すべきことを求める報告書が取りまとめられた。
具体的には、我が国の観光統計は、統一的な手法に基づき全国規模で整備されていないことから地域間の比較が困難であること等の問題を有しており、特に、外国人旅行者の訪問先に関する統計が不十分であるとの指摘がなされた。このため、統一的な調査手法により観光に関わる基礎的な統計を作成することが重要な課題であり、宿泊施設を対象とした調査を統一的な手法に基づき全国規模で実施することにより、外国人旅行者の動態も含めて都道府県別の比較が可能な宿泊旅行に関する統計を作成することが必要であるとされた。
同報告書を受けて、平成18年度中における宿泊旅行統計調査(仮称)の実施に向けて、予備調査等を実施しているところである。

  (4) 通訳ガイド制度の改善

外国人観光客の受入体制の整備に当たっては、公共交通機関や観光地における外国語表示や情報提供の充実を図るとともに、外国人旅行者に対する対応能力と「おもてなしの心」を持った人材の育成を進めることが重要な課題となっている。中でも、通訳ガイドは、外国人旅行者に付き添い、我が国について案内し、我が国の魅力について理解を深めてもらうために非常に重要な役割を果たしており、「民間外交官」としてその活躍が期待されている。
政府では、昭和24年に「通訳案内業法」を制定し、国の実施する全国統一の通訳案内業試験に合格し、都道府県知事の免許を受けた者に限って通訳案内業務を行うことができるとする業務独占制度を設け、通訳ガイドサービスの質の確保を図ってきた。しかしながら、法制定から50年以上が経ち、海外からの旅行者、特にアジア諸国からの旅行者の急増、旅行者の訪問地の地方への拡大等、通訳ガイドをめぐる環境は大きく変化し、中国・韓国語のガイドや地方のガイドが不足するなどの問題が顕在化してきている。
これらの状況の変化及び新たなニーズに対応するため、「通訳案内業」の免許制から「通訳案内士」の登録制への変更、都道府県の区域に限って報酬を得て通訳案内を業として行う「地域限定通訳案内士」制度の創設を主な内容とする「通訳案内業法」及び「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」(外客来訪促進法)の改正を行い、平成18年4月1日より施行することとなった。
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