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平成17年度観光の状況

第6章 観光産業の育成・高度化

第1節 旅行業

2 流通構造の変革と消費者保護


旅行業者の従来からの代表的な流通形態は、営業所のカウンターでの販売である。平成15年度の国土交通省の調査では、第1種旅行業者562社で、営業所は自社で5,385箇所、その代理業者が1,050箇所、合計で6,435箇所あり、1社平均11.5箇所に上る。1,001人以上の大規模会社に限れば、1社当たり230箇所で営業している。また、旅行部門の従業員数は63,114人に上り、1,001人以上の大規模会社については、1社当たり2,556人となっている。
このような流通形態に最初に変革をもたらしたのは、昭和60年頃に登場した専門雑誌を使った販売ルートの急拡大であった。従来から存在した新聞を媒介とした販売方法に、旅行専門情報誌、旅行会社の発行する自社旅行商品の通販専門誌によるルートが急拡大しつつ加わったのである。
このような形態には、店舗維持の人件費等の固定費を削減するという大きな経営上のメリットがあることに加え、個別のツアー毎のパンフレットの制作コストを省くこともできることから、一般的に店頭販売の商品よりも割安となる。また、旅行専門雑誌では、旅行業各社のパンフレットの内容を同一形式に整理し、まとめることによって、その内容・価格の比較を容易化し、特にブランドにこだわらず旅行内容の自由な選択を指向する若い世代の旅行者から広く受け入れられることとなった。このような無店舗販売の利用は、旅行者のリピーター率と相関関係を持つことが観察されている。旅行の申込方法として、通販・電話と答えた人の割合は全体で20.4%と既にかなりの率になっているが、海外旅行経験10回以上の人による利用率は、22.4%となっている。
さらに、昨今急速に発展しているのが、コンビニエンスストアに設置した端末機を経由した販売方式と、インターネット取引を活用した直接販売方式である。
コンビニの最大の利点は、旅行会社の店舗に比べて各段に店舗数が多く、しかも住宅街にも位置しており、ほぼ24時間営業であるということにある。平成9年に行われた規制緩和を受け、旅行会社がコンビニへの端末の設置を進め、大きく売上高を伸ばしている。
また、平成16年の旅行取引における電子商取引化率は、4.70%にとどまっているが、インターネット利用者の増加、ブロードバンドの普及、サイトの利便性向上、携帯電話を活用したモバイル取引の拡大等に伴い、今後、急速に普及が進むと見込む向きが多い。その普及には、関係旅行業者の信用を基礎とした取引の安全確保が重要な役割を果たすことになると思われる(表6‐1‐7)。

表6-1-7 旅行に関わる電子商取引市場規模



(財)日本交通公社の調査によれば、旅行の申込方法として「インターネット」を挙げている人の割合は24.0%と、「旅行会社店舗」の36.2%に続くシェアとなっている。
インターネット販売の最大の特徴は、商品情報の提供に加えて、予約や販売を可能とする双方向性、リアルタイム性、安価な流通コストにある。これらの特徴により、低価格での旅行商品の提供が可能となるとともに、旅行者にとっては、自宅で空席の確認、予約、購入を瞬時に行うことができるようになり、さらには、その双方向性を生かして、旅行業者に対して様々な質問を投げかけることも可能となっている。
インターネット販売は、新規参入会社を含め、旅行業界にとって革新的な流通手段として大いに期待される一方、運輸業者や宿泊施設による消費者への直接販売を可能とすることから、いわゆる「旅行会社バイパス現象」を助長する可能性も高く、業界内競争に加え、運輸・宿泊業界との競争激化を招いたとの一面も有している。旅行先や目的が絞られている場合には、旅行業者の仲介機能はインターネット取引で十分代替可能と考えられる。これに対し、様々な観光活動を包含した魅力的かつ包括的な総合旅行商品の多様な品揃え等、今後、旅行業者がいかに顧客に対して別の付加価値を提供することができるかが重要なポイントとなると考えられる。
他方、電子商取引の拡大により、電子商取引によるトラブルも市場規模に応じ増加する傾向にあり、旅行会社側については、旅行条件や旅行代金等の記載ミスやインターネット掲載後の事情変更による記載内容を書き換えるなどのケースが報告されている。また、旅行者側については、旅行条件の説明書面を読まないなど契約内容に関する理解が不十分であったり、本人の認識がないままに契約を締結してしまうなどのケースが見受けられる。
これに対し、旅行者に旅行契約における取引条件や契約内容について十分説明を尽くすよう旅行業者を指導、監督するとともに、トラブルが発生した場合には旅行業者に個別に指導を行ってきた。さらに、平成17年4月からの個人情報保護法の完全施行を踏まえ、インターネットにおける個人情報の取扱いについて、法令遵守の徹底等を通じ、安全な取引環境の整備を促進してきている。
また、旅行業協会では、上記のような電子商取引の拡大を踏まえ、その適正化を図るため、平成14年に「インターネットを利用した旅行取引に関するガイドライン」を策定し、旅行業者が遵守すべき基本方針について定めている。同協会では、当ガイドラインを遵守しているホームページに対して適正マーク(e-TBTマーク)を交付(平成18年2月現在97社に対して交付)すること等を通じ、当ガイドラインの普及促進による電子商取引の普及と旅行者の信頼確保に努めている。
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