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平成18年度観光の状況

第I部 観光立国の新たな展開

第2章 観光による経済効果

第2節 地域にもたらす経済効果


観光により地域の活性化を図るためには、当該地域における観光消費の増大を通じて経済効果を高めることも重要である。このような観点から、1)東京圏、名古屋圏及び大阪圏という大都市圏に含まれない県であって、2)これら大都市圏からの時間距離が比較的近い又は遠い県であり、3)人口及び県内総生産が全国の中位程度の規模の県として、青森県、群馬県、岡山県、大分県を取り上げて事例分析を行った。

  1 各県の経済状況


  (1) 青森県

青森県は、144万人の人口を有し、近年は減少傾向(対平成12年比2.6%減)にあり、高齢化率は22.7%で全国平均(20.1%)を上回っている※1。
また、県内総生産額は4兆30百億円であるが、大幅に減少(対平成11年度比5.5%減)しており、特に、公共事業の減少に伴う建設業の生産額の減少が影響している。一方で、第1次産業は盛んであり(経済活動別県内総生産比率は4.8%、全国平均は1.6%)、にんにく、りんご、ながいも、ごぼうの生産量が全国一を誇るなど全国有数の農業県であるとともに、三方を海に囲まれた豊かな漁場を有する水産業の盛んな県でもある。
また、第1次産業の産品の小売業や卸売業を中心に第3次産業の比重は高い状況(経済活動別県内総生産比率は77.1%、全国平均は71.8%)にある※2。
なお、県内失業率※3は6.0%、有効求人倍率※4は0.42倍であり、いずれも全国でも最も厳しい水準となっている。

  (2) 群馬県

群馬県は、202万人の人口を有し、近年はほぼ横ばい(対平成12年比0.04%減)で推移しており、高齢化率は20.6%で全国平均(20.1%)を上回っている。
また、県内総生産額は7兆53百億円である。平成12年度から平成13年度にかけて大幅に減少(5.0%減)したが、平成13年度以降はほぼ横ばいで推移している。同県は、輸送機械
製品等の工場立地が進んでいるため、第2次産業の比重が高い(経済活動別県内総生産比率は36.9%、全国平均は26.5%)。
なお、県内失業率は3.4%であり、全国平均(4.1%)を下回っており、有効求人倍率も全国で2番目に高い1.46倍となっているなど雇用情勢は比較的好調である。

  (3) 岡山県

岡山県は、196万人の人口を有し、近年は微増傾向(対平成12年比0.3%増)であり、高齢化率は22.4%で全国平均(20.1%)を上回っている。
また、県内総生産額は7兆09百億円であるが、大幅に減少(対平成11年度比5.0%減)しており、特に、製造業、建設業、小売業の生産額の減少が影響している。一方、石油製品や化学工業等の工場立地が進んでおり、群馬県と同様に第2次産業の比率が高い(経済活動別県内総生産比率は33.5%、全国平均は26.5%)。
なお、県内失業率は3.4%であり、全国平均(4.1%)を下回っている。

  (4) 大分県

大分県は、121万人の人口を有し、近年は微減傾向(対平成12年比0.9%減)にあり、高齢化率も24.2%で全国平均(20.1%)を上回っている。
また、県内総生産額は4兆55百億円であり、製造業の生産出荷額が順調に推移していること、不動産業やサービス業も堅調に推移していること等により、県内総生産額は全国第7位の増加率(対平成11年度比2.0%増)となっている。同県は、電子工業製品等の工場立地が進んでおり、第2次産業の比重が高く(経済活動別県内総生産比率は32.5%、全国平均は26.5%)、第1次産業についても椎茸やかぼすの生産量が全国一を誇るなどその比重は全国平均よりも高い(経済活動別県内総生産比率は2.4%、全国平均は1.6%)。
なお、県内失業率は3.9%であり、全国平均(4.1%)を若干下回る水準となっている。
以上の各県の経済状況を総括すると、
・人口については、岡山県以外は、どの県も微減傾向にあるが、高齢化率については、群馬県以外の3県では、全国平均に比べて高齢化が進んでいる。
・県内総生産額の動向をみると、大分県が増大傾向にあるものの、他の3県は、減少又は横ばいで、低迷傾向にある。
・産業構造をみると、青森県は、第1次産業の比重の比較的高い県であり、群馬県及び岡山県は、第2次産業の比重の高い県である。大分県も、電子工業品等の第2次産業の比重が高い県であるが、第1次産業の比重も全国平均より高い。
・雇用状況については、群馬県、岡山県、大分県は、全国平均を下回る失業率であり、特に、岡山県、群馬県は、有効求人倍率も高い。一方、青森県は、全国平均を大きく上回る失業率であり、雇用環境は厳しい(表I-2-2-1、図I-2-2-2)。

表I-2-2-1 各県の経済指標一覧




図I-2-2-2 各県の平成11年度から平成16年度の県内総生産変化率に対する産業別寄与度




  2 各県の観光動向

観光に関する基礎的データである観光客数や観光消費額について、これらのデータの平成11年の数値を100とする指数を用いて、各県の観光動向を比較※した。

  (1) 各県の観光客数の動向の比較

総観光客数は、青森県及び大分県は増加、群馬県及び岡山県は平成11年から平成16年にかけて減少している(図I-2-2-3)。

図I-2-2-3 各県の総観光客数の推移



このうち、県外客数については、青森県で大幅な増加、岡山県及び大分県で増加、群馬県で減少となっており、県内客数については、大分県で大幅な増加、青森県で増加、群馬県で横ばい、岡山県で減少している(図I-2-2-4、図I-2-2-5)。

図I-2-2-4 各県の県外客数の推移




図I-2-2-5 各県の県内客数の推移



また、宿泊客数は、各県とも減少傾向にあるが、特に群馬県の減少度が他県に比べ大きい。日帰り客数は、青森県及び大分県は増加、群馬県及び岡山県はほぼ横ばいである(図I-2-2-6、図I-2-2-7)。

図I-2-2-6 各県の宿泊客数の推移




図I-2-2-7 各県の日帰り客数の推移




  (2) 各県の観光消費額の動向の比較

観光消費額は、青森県及び大分県で増加、群馬県で減少、岡山県で大幅に減少している(図I-2-2-8)。

図I-2-2-8 各県の観光消費額の推移



平成11年から平成16年の間の各県の観光動向を総括すると、青森県及び大分県は、総観光客数、観光消費額ともに順調に増加しているが、群馬県及び岡山県は、総じて減少傾向にある。また、宿泊客数については、各県とも減少又は横ばい傾向で推移していることが大きな特徴として現れている(表I-2-2-9)。

表I-2-2-9 各県の観光動向(増減)




  3 各県ごとの分析


  (1) 青森県

1)観光資源等
青森県には、十和田湖や奥入瀬渓流、八甲田連峰や白神山地といった知名度の高い自然資源、浅虫や八甲田山麓の温泉群等の恵まれた温泉資源、三内丸山遺跡に代表される歴史文化遺産やねぶた祭りのような地域独自の大型イベントに代表される個性豊かな生活文化資源、加えて大間のマグロや八戸のイカ等恵まれた水産資源が数多く存在する。
2)これまでの動向と課題
青森県は、人口は減少傾向にあり経済も全般的に厳しい状況にあるが、観光を取り巻く状況としては、平成14年12月の東北新幹線八戸駅の開業の「はやて効果」により、総観光客数は大幅な増加に転じ、平成11年から平成16年の推移を見ても4,199万人から4,724万人と12.5%増加しているなど好調な状況にあると言える(図I-2-2-10、図I-2-2-11)。

図I-2-2-10 青森県の総観光客数等の推移




図I-2-2-11 青森県の宿泊客率と県外客率の推移



しかしながら、総観光客数の増加は県外客率の増加にも現れているように県外からの日帰り客数の増加によるところが大きく、宿泊客数は逆に498万人から481万人に減少している状況である。そのため、観光消費額は1,623億円から1,749億円に増加しているものの、その増加率は7.8%であり、総観光客数の増加率ほど高くはない(図I-2-2-12)。

図I-2-2-12 青森県の観光消費額の推移


宿泊客数の伸び悩みは、新幹線の開業によるアクセス利便性の向上により東京圏が日帰り圏内に入ったこと、その一方で、航空による訪問者数が激減したこと、また、この交通機関間の旅客のシフトの影響を受け、県外からの宿泊客が減少していることが大きな要因と考えられる。
以上から、宿泊客の増加等観光消費の拡大が課題であると考えられる。
3)今後の取組
現在、青森県では、多彩な地域資源や豊かに流れる時間を訪問者に全身で満喫してもらう新しい形の観光「あおもりツーリズム」の実現を目指している。また、八戸屋台村「みろく横丁」のオープンや五所川原での冬季誘客地吹雪体験ツアー等滞在メニュー・体験メニューの増加等の動きがある。
観光による地域経済の活性化の観点からは、農業県・漁業県としての強みである豊かな旬の食材や農山漁村の魅力を生かすこと、宿泊を伴う滞在型・体験型観光を一層推進すること等が肝要である。特に、平成22年度に予定されている東北新幹線新青森駅の開業をどう生かすかが問われる。
4)シミュレーション
宿泊魅力の増大に向けた努力を通じて、宿泊客数が仮に10%増加した場合、129億円の観光消費額の増加が生じ、その直接効果を含む生産波及効果は約7.4%、158億円増加すると推計される。また、雇用は、県内の有力な鉄工業の主要工場の従業員数の5倍の約1,650人を創出すると推計される。




  (2) 群馬県

1)観光資源等
群馬県には、草津や伊香保等全国有数の温泉地に加え、県境には尾瀬や浅間山の鬼押出し等の自然資源、谷川岳や万座のスキー場、明治政府の殖産興業の象徴であった産業遺産の旧富岡製糸場等が存在する。
また、東京圏に隣接し、東北自動車道や関越自動車道、上越新幹線や北陸新幹線という高速交通網によって東京圏と直結している状況にある。
2)これまでの動向と課題
群馬県は、製造業の不振の影響もあり、経済もほぼ横ばいの状況が続いている。観光に関しては、平成11年度から平成16年度の間に、総観光客数は6,203万人から6,077万人へ、観光消費額は1,503億円から1,458億円へ減少しており、特に、宿泊客数の減少が顕著である(図I-2-2-13、図I-2-2-14)。

図I-2-2-13 群馬県の総観光客数等の推移




図I-2-2-14 群馬県の観光消費額の推移



また、群馬県は高速道路網の発達により物流ルートが東京圏や新潟等と直結していることも一因となって、県外からの移輸入の比率(移輸入率)が、この事例分析対象の他の3県や同じ内陸県である長野県よりも高く、観光の波及効果、特に観光による波及効果が高いとされている農林水産業や食料品製造業への波及効果が小さくなっている。これには、旅館等で、地場の食材を十分に活用せず、新潟等県外から移入された海産物等を利用していることにも原因があると推察される。
  ■各県の経済取引構造の差異による経済波及効果の比較  

各県の経済取引構造における移輸入率の差異は観光消費のもたらす経済効果にも大きな影響を与える。群馬県は他の3県や同じ内陸県の長野県と比較して移輸入率が43.8%と高くなっている。

▼各県の移輸入率の比較



仮に、各県に1,000億円という同額の観光消費が発生した場合、各県の産業連関表を用いて推計した付加価値誘発額は群馬県が683億円と他の県よりも小さい。特に観光による波及効果の高いとされている農林水産業や食料品製造業においては、その差が顕著となっている。

▼観光消費による4県の付加価値誘発額




▼観光消費による農林水産業及び食料製造業の4県の付加価値誘発額



3)今後の取組
現在、群馬県では、「ぐんまにぎわいプラン-200万人県民が創造する群馬の観光-」に基づき、「群馬へいざなう」、「群馬で楽しむ」、「群馬の魅力づくりを支える」という観点から、行政と県民の協働による観光振興に取り組んでいる。また、草津温泉の「泉質主義」を掲げた温泉のブランド化の展開や平成17年度前期のNHK連続テレビ小説の舞台となった四万温泉の積極的な誘致活動等の動きがある。加えて、地産地消の取組として、農業生産者や加工業者、消費者、学識経験者等で構成される「ぐんま地産地消県民運動推進会議※」の活動がある。
観光による地域経済の活性化の観点からは、高速交通網によって東京圏と直結しているという有利な条件を最大限に生かし、宿泊客を含む幅広い客層を対象にきめ細かな観光マーケティングを行うこと、そのマーケティング結果を踏まえ、地場の食材を生かした高付加価値の食の魅力づくりや魅力ある土産品開発等に一層取り組むことが肝要である。
4)シミュレーション
仮に、「ぐんま新時代の県政方針」で設定されている総観光客数の目標値である6,640万人(平成22年度、対平成16年度比9.3%増)が達成された場合、135億円の観光消費額の増加が生じ、その直接効果を含む生産波及効果は約9.3%、164億円増加し、約1,750人の雇用を創出すると推計される。これに加え、移輸入率を農林水産品について現在の63%から同じ内陸県である長野県並みの43%に、食料品製造業について75%から67%に下げることができた場合は、さらに直接効果を含む生産波及効果は約12.5%、221億円に増加すると推計される。また、この場合、雇用は、県内の有力な自動車製造企業の主要工場の従業者数に匹敵する約2,500人を創出すると推計される。




  (3) 岡山県

1)観光資源等
岡山県には、倉敷等の風情あふれる街並みや、美作三湯等の良質な温泉地や瀬戸内の風光明媚な風景に加え、瀬戸内海に浮かぶ島々とその個性豊かな生活文化や古墳や遺跡の残る吉備路等の歴史資源、加えて、桃やマスカットといった全国有数の高付加価値の農産物や瀬戸内海の魚貝類等、恵まれた観光資源が数多く存在する。また、県内に縦横に延びる高速道路網や東西を貫く新幹線等、全国的に見ても交通基盤が充実していると言える。
2)これまでの動向と課題
岡山県は、製造業の不振により経済が低迷している。観光の状況についても、平成11年から平成16年の間に、総観光客数は、2,607万人から2,532万人へ減少し、観光消費額は1,754億円から1,405億円に大幅に減少している。これらの原因としては、倉敷チボリ公園の入場者が大幅に減少していること等が考えられる。
以上から、観光魅力の向上による東京圏等からの一層の観光客数増加に加え、観光消費の底上げが課題であると考えられる(図I-2-2-15、図I-2-2-16)。

図I-2-2-15 岡山県の総観光客数等の推移




図I-2-2-16 岡山県の観光消費額の推移



3)今後の取組
現在、岡山県では、平成19年度から始まる「新おかやま夢づくりプラン」に基づき、「吉備の国岡山」の歴史や文化をテーマとした観光資源の創造や「観光・岡山」ブランドの確立、団塊の世代等の誘客等に取り組むこととしている。また、倉敷の美観地区の夜間照明による滞在型観光の推進、津山や高梁の城下町としての歴史ある街並みを生かした観光まちづくり等の動きがある。
観光による地域経済の活性化の観点からは、平成19年4月から6月まで開催されるJRグループ6社の「岡山デスティネーションキャンペーン」等を通じて、東京圏等からの観光客の誘致を積極的に推進すること、交通利便性の高さを生かして、中四国圏域内における歴史や文化等の共通のもとに広域観光ルートを開発すること、地域の観光資源の魅力を発掘・向上させるために「食」や「特産品」の付加価値を高めることが肝要である。
4)シミュレーション
仮に、「新おかやま夢づくりプラン」で設定されている総観光客数の目標値である2,710万人(平成23年度、対平成16年比7.0%増)が達成され、かつ、観光消費額の目標値である1,530億円(平成23年度、対平成16年比8.9%増)が達成された場合、その直接効果を含む生産波及効果は約8.9%、167億円増加すると推計される。また、約1,550人の雇用を創出すると推計され、これは水島工場地帯に立地する国内有数の石油化学工場の従業員の8割の規模に匹敵する。




  (4) 大分県

1)観光資源等
大分県は、いわゆる温泉地の数に比較して全国一の温泉ゆう出量や温泉源泉数を誇り、なかでも、県中央部に位置する別府及び湯布院は全国的に知名度が高く、この両温泉の観光客は年間800万人に達し、同県の観光を牽引する代表的な観光地となっている。加えて、日田地域、くじゅう地域、国東半島地域、日豊海岸地域等の豊富な自然や歴史文化、さらには、関サバ、関アジといった高級魚等、食に関わる観光資源や特産品を数多く有する。
また、福岡空港や大分空港からの高速バス・直行バスが別府、湯布院に運行されているほか、大分自動車道の利用により、福岡県から別府、湯布院、日田等の観光地への時間短縮が図られている。
2)これまでの動向と課題
大分県は、事例分析対象の他の3県と比較して、堅調な経済状況を保っている。観光に関する状況としても、平成11年に比較して平成16年は、総観光客数は5,013万人から5,459万人へ増加しており、特に、日帰り客数は4,223万人から4,679万人へ増加している。
一方で、県外客数の伸びは、5.2%にとどまっており、宿泊客数も790万人から780万人へ、観光客1人当たりの観光消費額も5,147円から4,828円へ、それぞれ減少している。
以上から、県外客等の宿泊客数の増加や観光消費額の増加が課題であると考えられる(図I-2-2-17、図I-2-2-18)。

図I-2-2-17 大分県の総観光客数の推移




図I-2-2-18 大分県の観光消費額の推移



3)今後の取組
現在、大分県では、「安心・活力・発展プラン2005-ともに築こう大分の未来-」に基づき、「交流で広がる活気あふれる地域づくり-地域と世界をつなぎふれあい楽しむツーリズムの推進-」の一環として、地域の観光資源の発掘・魅力の向上やグリーン・ツーリズムの推進等に取り組んでいる。また、別府での別府八湯温泉泊覧会(通称オンパク)の開催等滞在メニューの増加や豊後高田の商店街を昭和の町に再生して観光客の誘致を図るなどの動きがある。
観光による地域経済の活性化の観点からは、早朝ウォーキング等のプログラムの提供や安心院における農村民泊の活用等により、多様な滞在型・体験型の観光を推進すること、温泉や特産品等を生かした土産品の開発を推進すること等により、観光消費の拡大を図ることが肝要である。
4)シミュレーション
仮に、「安心・活力・発展プラン2005」で設定されている宿泊客数の目標値である4%の増加(平成27年、対平成16年比31万人増)※を日帰り客が宿泊客に転換することにより達成された場合、43億円の観光消費額の増加が生じ、その直接効果を含む生産波及効果は約1.6%、53億円増加し、約600人の雇用を創出すると推計される。これに加え、日帰り客1人当たりの観光消費額が10%増加(285円の増加)した場合、176億円の観光消費額の増加が生じ、その直接効果を含む生産波及効果は約6.7%、215億円に増加すると推計される。また、雇用は、県内の主要な半導体集積回路製造工場の従業員数に匹敵する約2,400人を創出すると推計される。




(参考) 各県の観光関連データ一覧



我が国の観光分野の基礎統計として、1)全国統一基準により、2)すべての都道府県を対象に、3)従業者数10人以上のホテル、旅館及び簡易宿所のすべての宿泊者数※1等を調査する「宿泊旅行統計調査(承認統計)※2」を平成19年から四半期ごとに実施したことから、都道府県別の宿泊者数等の比較が行えるようになった。
今回は、本調査の試行調査として平成18年6月から8月の3ヵ月間の宿泊者数等を調査した「宿泊旅行統計調査第二次予備調査(承認統計)」の調査結果※3を基に、各都道府県における宿泊旅行の現状を比較した。
  1宿泊施設の現状   

平成18年8月末現在の従業者数10人以上の宿泊施設数は10,109施設である。
また、宿泊施設タイプ別にみると、ホテル4,159施設、旅館4,007施設、簡易宿所165施設、不詳1,778施設となった。

▼都道府県別宿泊施設数



■ 2宿泊者数の現状

■ (1)宿泊者数の概況

平成18年6月から8月の宿泊者数は、全体で7,760万人泊である。
このうち、県内からの日本人宿泊者数は1,361万人泊(17.5%)、県外からの日本人宿泊者数は4,236万人泊(54.6%)、外国人宿泊者数は502万人泊(6.5%)、不詳は1,662万人泊(21.4%)となった。

▼宿泊者数及び外国人宿泊者数



■ (2)都道府県別宿泊者数

都道府県別宿泊者数をみると、1位の東京都が868万人泊(11.2%)、2位の北海道が808万人泊(10.4%)、3位の千葉県が380万人泊(4.9%)で、上位3都道府県で全体の1/4以上を占めた。

▼都道府県別延べ宿泊者数(平成18年6月~8月)



特に、県外からの日本人宿泊者数の構成比※の割合が高いのは、1位の沖縄県が90%、2位の徳島県、香川県、高知県が87%であった。

▼県内・県外(除く外国人) ・外国人延べ宿泊者数構成比(平成18年6月~8月)



■ (3)外国人宿泊者数

都道府県別外国人宿泊者数をみると、1位の東京都が175万人泊(外国人宿泊者数全体に占める割合34.9%)、2位の北海道が56万人泊(同11.1%)、3位の大阪府が47万人泊(同9.3%)で、上位3都道府県で全体の1/2以上を占めた。

▼都道府県別外国人延べ宿泊者数(平成18年6月~8月)



また、国・地域別にみると、1位は台湾98万人泊(19.4%)、2位は韓国79万人泊(15.8%)、3位はアメリカ69万人泊(13.9%)、4位は香港41万人泊(8.2%)、5位は中国39万人泊(7.8%)で、全体の65.0%を占めた。なお、訪日外国人数が最も多い韓国が1位でない理由は、親族友人宅等に宿泊する者が多いためと考えられる。
外国人宿泊者数が最も多い東京都では、1位はアメリカ32万人泊(東京都における外国人宿泊者数全体に占める割合18.3%)、2位は台湾21万人泊(12.1%)、3位は韓国21万人泊(11.8%)、4位は香港19万人泊(10.7%)、5位は中国12万人泊(7.0%)であった。
■ 3宿泊施設の定員稼働率の現状

平成18年6月から8月の全宿泊施設の定員稼働率(宿泊者数/総収容人数)は、全国平均で46.1%であった。

▼定員稼働率



また、都道府県別にみると、1位の大阪府が62.1%、2位の東京都が62.0%、3位の沖縄県が58.9%であった。

▼都道府県別定員稼働率(平成18年6月~8月)



なお、施設規模別にみると、従業者数10人から29人の宿泊施設が40.0%、従業者数30人から99人の宿泊施設が45.4%、従業者数100人以上の宿泊施設が53.1%となった。

▼従業者数別定員稼動率



■ 4都道府県の基礎的指標からみた宿泊の状況

■ 都道府県別人口1人当たり宿泊者数・県外宿泊者数

人口1人当たり宿泊者数を都道府県別にみると、1位の沖縄県が1.62人泊、2位の北海道が1.44人泊、3位の山梨県が1.28人泊、4位の長野県が1.28人泊、5位の石川県が1.05人泊であった。また、人口1人当たり県外宿泊者数を都道府県別にみると、1位の沖縄県が1.19人泊、2位の山梨県が0.90人泊、3位の長野県が0.79人泊、4位の北海道が0.73人泊、5位の石川県が0.72人泊であった。

▼都道府県別人口1人当たり延べ宿泊者数と県外からの延べ宿泊者数



■ (2)都道府県別県内総生産1,000万円当たり宿泊者数

都道府県別にみると、1位の沖縄県が6.2人泊、2位の北海道が4.1人泊、3位の山梨県が3.6人泊、4位の長野県が3.5人泊、5位の石川県が2.7人泊であった。

▼都道府県別県内総生産1,000万円当たり延べ宿泊者数



■ (3)都道府県別宿泊施設従業者数の第三次産業就業者数に占める割合

都道府県別にみると、1位の長野県が2.54%、2位の沖縄県が2.44%、3位の北海道が2.09%、4位の石川県が2.06%、5位の山梨県が2.00%であった。

▼都道府県別宿泊施設従業者数の第三次産業就業者数に占める割合



■ (4)都道府県の基礎的指標から見た宿泊の状況

宿泊者数の総数については、東京都、大阪府、千葉県等の大都市近郊の都道府県が上位を占めていたが、都道府県の基礎的指標である人口、総生産、就業者数との関連をみると、どの指標においても北海道・石川県・山梨県・長野県・沖縄県の5都道府県が上位5位までを独占した。
これらの都道府県での宿泊産業の比重は高く、地域の経済に与える影響も大きいものと推察される。

▼基礎的指標との関連性からみた宿泊者数等の順位



■ 5地域ブロック間の観光交流の現状

従業者数100人以上の宿泊施設について、居住地別宿泊者数に基づき地域ブロック※内及び地域ブロック間の流動をみると、北陸信越、四国、沖縄以外では、域内での流動が3割以上を占めた。
また、送出数では関東が圧倒的に多く、次に近畿、中部の順になっている。一方、北海道と沖縄は他ブロックからの受入数が大幅に多い。

▼各地域ブロック間における宿泊者の受入数と送出数




▼各地域ブロックへの宿泊旅行の流動状況




▼各地域ブロックへの宿泊旅行の流動状況




▼各地域ブロックへの宿泊旅行の流動状況




※1 
1人が3泊した場合には3人とカウントするなどの統一基準による。
※2 
統計報告調整法第4条に基づき総務大臣の承認を受けたもの。
※3 
回収率は67.8%(6,851/10,109施設)であり、宿泊者数等のデータはこれを基に全数を推定した。
※ 構成比の算出に当たって、日本人宿泊者数のうち、県内・県外別の不詳分は、県内・県外(除く外国人)別の比率で案分し、各々に割り振った。
※ 地域ブロックは地方運輸局(沖縄は、沖縄総合事務局)の管轄区域に準じており、長野県は北陸信越、福井県は中部に含まれる。


※1 
人口、高齢化率は総務省「平成17年国勢調査」の数値を採用。増減率は対平成12年比。以下他の県において同じ。
※2 
県内総生産額は内閣府「県民経済計算」平成16年度の数値を採用。以下他の県において同じ。
※3 
県内失業率は総務省「労働力調査 参考資料・都道府県別完全失業率(モデル推計値)」平成18年平均の数値を採用。以下他の県において同じ。
※4 
有効求人倍率は「職業安定業務統計」厚生労働省長期時系列表の平成17年度平均値(パートを含む)を採用。以下他の県において同じ。
※ 群馬県においては、平成11年度の数値を100とする「年度」での指数比較となっている。
※ 平成16年7月14日に生産者、加工業者、消費者、学識経験者等を構成メンバーとして設置。
※ 大分県においては、平成18年より新たな手法で観光統計調査を行い、これにより得られる平成18年の数値を基準に、平成27年の目標値を4%増としているが、現時点では平成18年の数値が公表されていないことから、ここでは平成16年の数値を基準としてシミュレーションを行うこととした。

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