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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第2章 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成

第2節 観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成



  1 文化財に関する観光資源の保護、育成及び開発


  (1) 文化財の保護

1)文化財の保護
文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことができないものであり、また、将来の文化の向上・発展の基礎となるものであることから、その適切な保存・活用を図ることが極めて重要である。国は、貴重な国民の財産である文化財を保護するため、「文化財保護法」に基づき、建造物、絵画、彫刻等の有形文化財を国宝・重要文化財や登録有形文化財に、演劇、音楽、工芸技術等の無形文化財を重要無形文化財に、農具や漁猟用具、祭りや民俗芸能、民俗技術等の民俗文化財を重要有形・無形民俗文化財に、遺跡、名勝地、動植物等を史跡・名勝・天然記念物に指定・登録するほか、人と自然のかかわりの中で作り出された棚田や里山等の文化的景観を重要文化的景観に、歴史的な建造物群を重要伝統的建造物群保存地区として選定するなどして、その適切な保存・活用を図っている。重要無形文化財の指定に当たっては、併せて保持者、保持団体を認定している。
そのほか、国立博物館等における国宝・重要文化財の公開に加え、公私立の歴史的民俗資料館等において地域の民俗文化財等の保存・活用を図っているほか、史跡や歴史的建造物等の整備・活用を推進している。
2)文化財保護強調週間と文化財防火デーの実施
1)文化財保護強調週間
「文化の日」を中心に実施する教育・文化週間(昭和34年9月4日閣議了解)の一環として、毎年11月1日から7日を「文化財保護強調週間」とし、各都道府県の教育委員会と連携しながら、国民一人一人が文化財を共有の財産として愛護するよう、積極的に広報活動を行うとともに、その気運の醸成を図っている。平成18年度は、文化財所有者、関係機関・団体等の協力の下、文化財愛護思想の高揚のための展覧会や芸能発表会、史跡めぐり等の各種行事及び広報活動が行われた。
2)文化財防火デー
1月26日を「文化財防火デー」とし、この日を中心として文化財を火災・震災等の災害から守るため、各市町村消防本部、各都道府県・市町村の教育委員会、文化財所有者等と連携し、全国的に文化財防火運動を展開した。平成18年度は、興福寺(奈良県奈良市)において大規模な防火訓練を実施したのをはじめ、全国各地の文化財所在地において防火訓練や防災対策等の各種行事が行われた。

  (2) 史跡等の整備・活用による観光の振興

国民共有の財産であり、地域の歴史的・文化的シンボルである史跡等については、城の石垣や古墳石室の修理といった保存のための整備、建物復元・遺構の露出展示やガイダンス施設の設置といった整備を行い、その魅力を高めることで、地域の観光資源として活用されている。
また、我が国の歴史を理解する上で極めて重要な街道、水路等のうち往時のたたずまいを残しているものを「歴史の道」として選び、それに沿う地域を一体のものとして保存・整備し、活用を図っている。

  (3) 文化施設等の整備等

1)国立博物館
東京国立博物館は日本を中心として広く東洋諸地域にわたる文化財を、京都国立博物館は京都文化を中心とした文化財を、奈良国立博物館は仏教美術を中心とした文化財を、九州国立博物館は日本とアジア諸国との文化交流を中心とした文化財を、収集・保管・陳列するとともに、調査研究等を行っている(入館者数は表II-2-2-1)。

表II-2-2-1 国立博物館及び国立美術館の概況


なお、外国人の来館者に対する取組として、多言語による館紹介パンフレットの作成、展示作品のキャプションの英語併記及び国立博物館所蔵の国宝をホームページ(http://www.emuseum.jp)にて5か国語・画像付きでの紹介・解説を行っている。また、平成15年度から、「留学生の日」を新設し、留学生は平常展の入館料を無料としている。
2)国立美術館
東京国立近代美術館・京都国立近代美術館では近代美術に関する作品等を、国立西洋美術館(東京)ではフランス政府から寄贈返還された松方コレクション及びその他の西洋美術に関する作品を、国立国際美術館(大阪)では1945年以降の日本及び欧米の現代美術に関する作品等を収集・保管し、鑑賞機会を提供するとともに、これらに関する調査研究等を行っている。平成19年1月に開館した国立新美術館では、国内外の美術館の協力を得て開館記念展等を開催するとともに、美術に関する情報・資料の収集、提供等を行っている(入館者数は表II-2-2-1)。
なお、外国人の来館者に対する取組として、多言語による館紹介パンフレットの作成や、展示作品の英語併記を行っている。
3)国立科学博物館
我が国唯一の国立の総合科学博物館として、自然科学分野の資料の収集・保管・展示を行うとともに、調査研究や学習支援活動を実施し、その成果を一般に公開している。地球館(新館)では、大きなゆとりある展示空間の中で、「地球生命史と人類-自然との共存をめざして-」をテーマに、実物標本資料を中心にした展示を実現し、ITを効果的に活用することにより、多言語(英語、中国語、韓国語)による文字・音声情報による展示解説を行うなど、外国人旅行者や身体に障害を持つ人にも自然科学の面白さを理解してもらえる展示を行っている。また、平成18年12月には、映像が360°全方位に映し出される全球型映像施設「シアター360」を公開するなど、積極的な取組を通じ来館者増加に取り組んでいる。平成18年度の入館者数は176万1,257人。
4)博物館
増加する外国人旅行者をはじめ、年齢や障害の有無に関わらず、博物館が全ての人々にとって利用しやすい施設となるための展示、教育普及事業や施設の在り方についての調査研究やシンポジウムを行い、その成果の普及を図っている。
5)国立劇場等
国立劇場では外国人向けに、歌舞伎・文楽公演時にイヤホンガイド英語版を提供しプログラムに英文を掲載した。国立能楽堂では各座席ごとに操作可能な英語の字幕装置を平成18年11月から導入した。
また、アジア・太平洋地域の交流の拠点となる国立劇場おきなわでは、国の重要無形文化財「組踊」をはじめとする沖縄伝統芸能の保存振興と伝統文化を通じた沖縄伝統芸能の公開及び組踊の伝承者の養成を実施した。
新国立劇場においても鑑賞の一助として公演プログラムに公演内容等を英文で紹介するほか、英文による公演カレンダーの作成、英語表記のホームページでの発信等を行った。

  (4) ナショナル・トラスト活動への支援

ナショナル・トラスト活動は、募金活動や寄附を通じて民間の自主的参加を得て、歴史的価値を有する文化遺産や良好な自然環境を有する土地等を取得するなどし、それらの適正な管理、保全及び活用を図っていこうとする運動であり、観光資源の保護や自然環境の保全の観点から平成18年度においては次のような施策を講じた。
1)観光資源の保護と活用
(財)日本ナショナルトラストにおいては、市民からの募金等により、国民的財産として後世に継承するべき観光資源を適切に保護・管理しつつ、広く一般に公開し、活用する事業を行っている。
平成18年度は、歴史を生かしたまちづくりの拠点として、全国で9番目となるヘリテイジセンター「四国鉄道文化館」を愛媛県西条市に建設し、平成19年秋頃の開館に向けた準備を進めている。国としては同財団を特定公益増進法人に認定するなどの支援を行っている。
2)自然環境の保全
ナショナル・トラスト活動は国民自らの手による自然環境保全活動としても極めて有意義であり、更なる普及、定着が望まれる。第24回ナショナル・トラスト全国大会には全国各地の関係者が参加し、シンポジウム等を通じて自然環境、文化遺産保全活動の一層の推進を図った。ナショナル・トラスト活動による企業遊休地等を活用した環境保全及び環境教育活動推進に向けた調査の実施等、普及啓発のための施策を講じた。また、ナショナル・トラスト活動を行う法人のうち、特定公益増進法人の認定を受けた法人に対する寄附について税制優遇措置を講じている。

  2 歴史的風土に関する観光資源の保護、育成及び開発


  (1) 歴史的風土の保存

1)歴史的風土特別保存地区
京都市、奈良市、鎌倉市等の古都における歴史的風土を保存するため、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」に基づき、歴史的風土保存区域(平成19年3月末現在32地区20,083ha)が指定されており、特に枢要な部分については、歴史的風土特別保存地区として都市計画に定められている(平成19年3月末現在60地区6,428.4ha)。
2)飛鳥地方における歴史的風土の保存
1)明日香村特別措置法に基づく施策
奈良県高市郡明日香村においては、「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に基づき、明日香村の全域が第1種歴史的風土保存地区(125.6ha)及び第2種歴史的風土保存地区(2,278.4ha)として都市計画に定められている。
これらの地域においては、宅地の造成等の行為を規制するとともに、古都保存統合補助事業の実施により、地方公共団体による土地の買入れや歴史的風土保存のための施設整備を支援した。
また、財政上の特別助成措置を講ずるとともに、「明日香村における生活環境及び産業基盤の整備等に関する計画」(計画期間は平成12年度~平成21年度)に基づき、引き続き道路、河川、下水道等の整備事業を推進した。
2)国営飛鳥歴史公園の整備・管理
飛鳥地方の歴史的風土と一体となった景観保全に努めつつ、広く国民が利用できる場としての活用を図るため、高松塚周辺地区等において、整備及び維持管理を推進した。

  (2) 文化遺産の観光への活用

岩見銀山街道等、特に重要な歴史的・文化的価値を有する道路について、「歴史国道」の整備活用を図った。

  3 自然の風景地に関する観光資源の保護、育成及び開発


  (1) 自然・野生生物の保護と観光への活用

1)自然保護思想の普及
1)自然に親しむ運動の実施
自然公園等の優れた自然に親しみ、その適正な利用と自然保護思想の普及等を図るため、毎年7月21日から8月20日までを「自然に親しむ運動」期間としている。平成18年においても、自然観察会等の自然との触れ合いを推進するための行事を全国の自然公園等で実施し、3,400件の行事に60万人が参加した。
2)全国・自然歩道を歩こう月間行事の実施
自然と触れ合いながら歩くことを推奨するため、毎年10月の1ヵ月間を「全国・自然歩道を歩こう月間」として全国の自然歩道等において各種行事を実施し、400件の行事に6万人が参加した。
3)自然公園指導員による利用指導の推進
自然公園の保護と適正な利用のため、自然公園指導員約3,000名を委嘱し、自然公園を訪れる人々に自然保護思想や利用マナーの普及啓発、安全利用等に関する指導等の推進を図った。
4)パークボランティア活動の推進
国立公園区域内の保護管理、利用者指導等を行うボランティアの活動を支援し、国立公園を訪れる観光客等の適正な利用を通して自然との触れ合いを推進した。
2)自然公園の保護管理
自然公園は、我が国の優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることを目的として「自然公園法」に基づき指定される公園で、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園の3種類がある。これらの公園は我が国の主要な観光地としても重要な役割を果たしている(図II-2-2-2、図II-2-2-3)。
1)公園計画の見直し等
自然公園の保護及び適正な利用を図るため、公園の区域や計画を定めており、概ね5年を目途に見直し作業を実施している。平成18年度は、国立公園では上信越高原国立公園、伊勢志摩国立公園等の合計6公園について見直しを行い、国定公園ではニセコ積丹小樽海岸国定公園、飛騨木曽川国定公園等の合計6公園について見直しを行った。
2)保護と管理
国立・国定公園の優れた自然の風景地の保護を図るため、特別地域を指定している。特別地域内において行う、風致又は景観を損なうおそれのある一定の行為は、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないとしている。都道府県立自然公園については、国立・国定公園に準じて条例により特別地域が定められている(表II-2-2-4)。
国立・国定公園の特別地域の中でも、公園の核心的な景観地については、特別保護地区として指定し、最も厳しい保護規制を行っている。その面積は、全国立公園面積の13.3%、全国定公園面積の4.9%である。また、我が国の周辺海域には、熱帯魚、サンゴ、海草等の海中生物を主体とする優れた海中景観が存在する。このため、海中公園地区制度が設けられ、その保護と適正な利用が図られている(表II-2-2-5)。
国立・国定公園内で自然の風景地の保護と適正な利用を図ることを目的として、公益法人や特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という)を、その申請により公園管理団体として指定し、自然の風景地の管理、公園利用施設の維持管理、公園内の自然情報の収集・提供等に係る市民等の自発的な活動を推進している。平成18年度までに、国立公園(阿蘇くじゅう国立公園等)で2団体を指定している。
国立公園等の貴重な自然環境を有する地域において、自然や社会状況を熟知した地元住民等を雇用し、外来生物によって在来生物への影響がある地区における駆除の実施、重要湿地への植生復元作業、里地里山の保全事業、山岳地における登山道の簡易な補修、海中公園地区におけるサンゴ礁景観の保護を目的としたオニヒトデの駆除等の「国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー)事業」を行っている。

図II-2-2-2 日本全国の国立・国定公園の配置図




図II-2-2-3 自然公園利用者数の推移




図II-2-2-4 自然公園の地域別面積




図II-2-2-5 国立・国定公園の海中公園地区



国立公園の利用拠点である集団施設地区とその周辺の美化清掃事業を関係都道府県等の協力の下に実施するとともに、その他の主要な地域においても、美化清掃団体を現地に組織し、平成18年度も引き続き実施した。また、8月の第1日曜日を「自然公園クリーンデー」とし、関係都道府県の協力の下に全国の自然公園で一斉に美化清掃活動を行った。
さらに、(財)自然公園財団をはじめとする関係機関により、自然公園内での歩道、便所、休憩所等の公共的施設の清掃、補修のほか、利用最盛期に集中する自動車の整理、美化清掃活動、公園施設等の維持管理、利用者に対する自然保護思想の普及啓発等の事業が行われている。
国においては、国立公園の特別保護地区等にある民有地のうち、特に買い上げて保護することが必要なものを対象として、買上げにより公有地化を図る事業を行っている。

▲グリーンワーカー事業によるオニヒトデの駆除 (西表国立公園)




▲自然公園クリーンデー(富士箱根伊豆国立公園)



3)乗入れ規制地区の指定等
ア)乗入れ規制地区
「自然公園法」により、国立公園又は国定公園の特別地域のうち環境大臣が指定する区域においては、野生動植物の生息・生育環境への被害を防止するため、スノーモービル、オフロード車あるいはモーターボート等の乗入れが規制されている。平成18年度末までに伊勢志摩国立公園をはじめとする28の国立・国定公園の52地域、計25万7,695haを乗入れ規制地区に指定している。
イ)利用調整地区
吉野熊野国立公園の西大台地区において、原生的な自然を有する地域を一定のルールとコントロールの下で持続的に利用するため、立入り人数等を調整する利用調整地区を指定した。平成14年の制度創設以来初の指定で、平成19年度中に運用を開始する予定である。
ウ)マイカー規制等
国立公園内においては、「国立公園内における自動車利用適正化要綱」に基づき、地方環境事務所、都道府県警察本部、地方運輸局運輸支局等で構成する連絡協議会において、道路交通環境に応じた規制方法を検討し、一般車両通行止め等の交通規制を行って、観光地の交通安全の確保、環境保全に努めている。
  コラム 外国人が発見した美しい日本の風景 ~瀬戸内海国立公園~  

国立公園は日本を代表する「優れた自然の風景地」であるとともに「風光明媚な観光地」でもある。
瀬戸内海国立公園は、昭和9年に国立公園法(当時)に基づいて指定された日本で最初の国立公園の一つであり、穏やかな海面に大小様々な島々が浮かぶ内海多島海の景観、複雑に入り組んだ海岸線や白砂青松の海岸景観と段々畑や漁村といった人々の暮らしの営みが調和した美しい風景が魅力となっている。
日本人にとってなじみ深いこの風景が評価されたのは近世であり、しかもその美しさの価値を発見したのは旅行等で日本を訪れた際、瀬戸内の航路を利用した外国人たちであった。彼らが瀬戸内海の風景に魅了された様子は日記等に数多く記されており、内海の優美さは世界無比であると絶賛しているものもある。
このように、瀬戸内海の風景は外国人から見ても世界に誇れる美しいものであったが、このような風景地を管理する制度は当時の日本にはなかった。このため、近代化政策等による開発等で、我が国の特色とされた美しい自然景観や学術上貴重な地形や動植物が次々と失われていくという状況が出てきたことや、市民の憩いの場所が失われはじめたことへの反省、さらに外貨獲得産業としての観光への期待が高まり、昭和6年に自然の風景地の保護と利用を図るため国立公園法が制定されたのである。
昭和9年の指定から現在に至るまでの間に全国28箇所に国立公園が指定され、自然の風景地の保護を図るとともにレクリエーション等の場として利用されている。指定されている地域も様々で、瀬戸内海のような人手の入った自然風景から知床のような原生的な大自然の風景まで多様な風景地が国立公園となっている。
日本の美しい自然の風景地を管理してきた国立公園法は、昭和32年に全面的に改正され自然公園法となり、平成19年は同法制定から50年目の年となる。これを契機に、地域の人々との協働により訪れる人々にとって魅力的な国立公園づくりを目指しているところである。
ある外国人の日記の一文に、「将来にわたって瀬戸内海の風景が残されていくことを願っている。」と記されている。いつの時代にあっても、誰もが感動し魅了される日本の美しい風景を将来にわたって継承していきたいものである。

鷲羽山(岡山県)からの眺め




紫雲出山(香川県)からの眺め



3)野生生物の保護管理
ラムサール条約湿地に関する普及啓発を図るなど、湿地の保全と賢明な利用を推進するとともに、多様な野生鳥獣が生息し、バードウォッチング等自然観察の場として親しまれている国指定鳥獣保護区において、野生鳥獣の生態等に関する普及啓発等を行った。
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき、希少野生動植物種の捕獲及び譲渡等の規制を行うとともに、京都府京丹後市において新たにアベサンショウウオの生息地等保護区を指定し(合計9箇所:面積885ha)、生息地等の保護等の施策を推進した。また、アカガシラカラスバト及びアホウドリの保護増殖事業計画(合計:38種)を策定し、トキ、ツシマヤマネコ、シマフクロウ等については、引き続き生息環境の維持・改善、巣箱の設置及びモニタリング等の保護増殖事業を実施した。野生生物保護センターにおいては、絶滅のおそれのある野生生物に関する保護増殖事業に係る業務、調査研究、普及啓発等を行った。
さらに、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき、希少な野生生物を捕食するなど、日本の生態系等に被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがある外来生物を特定外来生物に指定し、輸入、飼養等の規制や防除を行うとともに、外来生物の輸入規制等に関する普及啓発を実施した。
4)自然・野生生物の観光への活用
1)子どもパークレンジャー事業の実施
日本の優れた自然の風景地である国立公園等において、小中学生に自然保護官の仕事等を体験してもらうことにより自然保護や環境保全の大切さを学ぶ機会を提供した。

▲子どもパークレンジャー



2)国立公園における利用のための施設の整備
自然環境の保全に配慮しつつ、自然との触れ合いを求める国民のニーズにこたえ、安全で快適な利用を推進するため、平成18年度には、全国28の国立公園において事業を実施し、山岳地域の安全かつ適正な利用のための登山道整備、失われた自然の再生・修復を行うための自然再生事業、国立公園の利用拠点における良好な景観形成、その他国立公園の利用の基幹となる施設の整備を進めた。
3)国定公園における利用のための施設の整備
平成17年度から地方の創意工夫を生かした自然と共生する地域づくりを推進するための自然環境整備交付金を創設し、国と地方の協力の下、自然との触れ合いの場の整備や自然環境の保全・再生を進めるため、平成18年度には、39都道府県において策定された自然環境整備計画に位置付けられた国定公園の整備、国指定鳥獣保護区における自然再生事業及び長距離自然歩道の整備について同交付金を交付した。
4)長距離自然歩道の整備
自然公園や文化財を有機的に結ぶ長距離自然歩道について、平成18年度においても引き続き、北海道、東北、首都圏、東海、中部北陸、近畿、中国、四国、九州の各長距離自然歩道において四季を通じて安全で快適に利用できるよう配慮しつつ整備を進めた。長距離自然歩道の計画総延長は約26,000kmに及んでおり、平成17年には、59万人が長距離自然歩道を利用した。
5)ウォーキング・トレイルの整備
豊かな景観・自然、歴史的事物、文化的施設等を連絡する歩行者専用道路や幅の広い歩道等を整備する「ウォーキング・トレイル事業」を全国12箇所で推進した。
6)大規模自転車道の整備
交通の安全を確保して、併せて心身の健全な発達に資する大規模自転車道の整備を推進した。
7)野生鳥獣との共生環境整備
国指定鳥獣保護区であり、ラムサール条約湿地にも登録されている宮島沼(北海道)において、水鳥や湿地に関する調査研究及び普及啓発等を行う環境学習・保全調査拠点施設である「宮島沼水鳥・湿地センター」を平成19年3月に開設した。

  (2) 歴史的な建造物群の観光への活用

「伝統的集落における歴史的環境整備を中心とした地域活性化方策の調査・検討報告書」では、約1,000地区が保存の望まれる地区としてリストアップされた。この調査によって歴史的な価値が明らかにされた地区については、文化財保護法に基づき、市町村が行う伝統的建造物群保存地区の決定やその保存等に関し指導・助言を行うとともに、その中から重要伝統的建造物群保存地区の選定を積極的に進めており(平成18年末では79地区、図II-2-2-6)、市町村が行う事業に対して助成措置が講じられ、地区内の整備が進められている。
重要伝統的建造物群保存地区では、公開活用施設の見学等を通した学習と交流が図られ、また、地元住民による個性的なまちづくりが進められるなど、歴史的な建造物群の保存が地域づくりに生かされている。
さらに、文化財建造物や歴史的な建造物群を保存・活用しつつ、より成熟した観光を促進するための方策検討の基礎的調査として「国際観光に資する地域資源活性化方策調査」に基づき、文化財建造物等の保存・活用施策の展開を目指し、歴史的な建造物群の保存事業と観光とのより成熟した連携を推進するための検討を行った。

図II-2-2-6 重要伝統的建造物群保存地区一覧




  (3) 廃棄物対策と自然保護

我が国の美しい自然等の魅力を維持するためには、不法投棄対策が重要であり、不法投棄の未然防止・早期発見のための監視体制の強化策として、都道府県等と合同で不法投棄監視パトロール、立入検査を行うなど地方との連携を強化した。

  4 温泉その他文化、産業等に関する観光資源の保護、育成及び開発


  (1) 「地域いきいき観光まちづくり-100-」の作成

観光立国の実現に向けて、日本各地で創意・工夫を生かした魅力的な観光地づくりのための取組が熱心に展開されている。このような地域の取組の一部を紹介し、観光地づくりに取り組む方々へ広く参考となるよう、地域に根付いた生活・文化・産業等を活用した取組や、観光地の再生への取組を中心に、100の地域を紹介した事例集を「地域いきいき観光まちづくり-100-」として取りまとめた。こうした魅力ある観光地づくりの取組を海外にも情報発信するため、ホームページにより外国語(英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語)でも紹介している。

▲茅葺き屋根が並ぶ大内宿(福島県下郷町)



  コラム 「地域いきいき観光まちづくり~100~」の地域事例  

山梨県富士河口湖町では、「湖面に富士を映す美しい四つの湖」という恵まれた資源に甘んじることなく、「五感に訴える町おこし政策」をテーマに、観光立町としての基盤整備やイベント展開、全国初の遊漁税の導入、温泉掘削、エコツーリズムの推進等様々なハード・ソフト施策による観光地づくりを推進している。「香りのある里づくり」のシンボル事業として開催している河口湖ハーブフェスティバルでは、地域の民間組織が主体となった観光地づくりの取組を支援する観光ルネサンス補助制度を活用し、ハーブ公園の植栽リニューアル整備や外国語によるアナウンスの実施等、外国人観光客の対応にも力を入れている。これらの取組の結果、外国人宿泊客が平成15年の約10万人から平成18年には約17万人に増加しており、外国人観光客も意識した観光地づくりの効果が着実に現れている。
また、長野県飯田市では、従来型の観光資源が乏しいという認識から、体験型プログラムの提供による観光振興を目指し、平成8年から農業生活体験等のプログラムを備えた体験教育旅行の誘致を開始した。平成13年には、地域の生業を体験資源として掘り起こし自然体験等の質の高いプログラムを提供するため、飯田市が中心となって5市村と民間の出資により、日本初の地域受入れ型の専門旅行会社である(株)南信州観光公社を設立した。このような取組の結果、平成17年には「第一回エコツーリズム大賞」優秀賞を受賞し、平成8年には皆無だった体験型教育旅行者数が平成17年には4万6千人にまで増加するなど、体験型観光の先進地として成功している。

▲ハーブフェスティバル風景(富士河口湖)




▲よこね田んぼの田植え風景(長野県飯田市)




  (2) 産業観光の推進

産業観光については、観光立国推進戦略会議報告書(平成16年11月)において、「国・地域は、近代の街なみ、産業遺産、産業施設を観光資源として積極的に活用する」とされており、現在各地において産業観光への取組が行われはじめている。平成18年11月には、北九州市において、全国産業観光フォーラムin北九州2006実行委員会による「全国産業観光フォーラムin北九州2006」が開催された。
また、日本の産業技術についての外国人の関心は非常に高く、訪日促進を図る上でも産業観光への期待はますます高まっている。
こうした状況下において、今後、産業観光をさらに推進し、国内及び国外からの観光客の誘致を積極的に図るため、官民の産業関係者、観光関係者等からなる産業観光推進懇談会を開催し、産業観光推進に当たっての課題を整理するとともに、国内外の観光客への積極的な情報発信、産業観光施設間の連携の強化等産業観光の推進方策について検討を行い、報告書を取りまとめた。

  (3) 日本のアニメを活用した国際観光文化交流等の振興

近年、日本のアニメはそのキャラクターが世界的な人気を博するなど、日本ブランドとして世界で高い評価を受けており、外国人にとってなじみのある日本文化の一つである。
しかしながら、訪日する外国人が日本においてアニメに関するどのような活動を希望するかについて、必ずしも明らかになっていないことから、アニメ等に関わる主体や地域では、諸外国における日本のアニメブームの動きを地域活性化に十分生かしきれていない状況である。
このため、学識経験者、関係省庁、地方公共団体等からなる「日本のアニメを活用した国際観光交流等の拡大による地域活性化調査検討委員会」を発足させ、外国人とアニメに関する現状把握調査を行うとともに、検討委員会の下に東京、京都、地域連携の3つのワーキンググループを発足させ、モデル地域ごとの課題について検討を行い、報告書を取りまとめた。

  (4) ライブエンターテインメントを活用した観光の振興

我が国においては、外国からも高い評価を受けている伝統芸能をはじめとして、多種多様なライブエンターテインメント(演劇、演奏会等)が数多く行われている。これらのライブエンターテインメントについては、外国人観光客を意識した方策が徐々に取られつつあるものの、外国人観光客に対する情報の提供が本格的に行われているとは言い難い状況にある。
そこで、外国人観光客が多種多様なライブエンターテインメントに接する機会を増やすための施策として、歌舞伎、文楽、伝統音楽について英語で紹介するリーフレットを作成した。

  (5) 地域伝統芸能等を活用した観光の振興

地域伝統芸能等を活用し、地域の特色を生かした観光の振興を図るため、平成18年9月8日・9日の2日間、北海道札幌市において開催された「第14回地域伝統芸能全国フェスティバル」について後援を行った。

  (6) 文化観光の推進

外国人旅行者の日本への観光交流を単に一回限りの異文化との出会いにとどめることなく、より深い相互理解につなげていくためには、我々日本人の日本の歴史や文化への理解を深めるとともに、外国人の視点をも取り入れて文化観光資源を発掘し、それらを多くの旅行者の好みに応じて触れ・体験できるようにすることが重要であることから、こうした知的欲求を満たすことを目的とする観光を「文化観光」と位置付け、その意義や文化観光の普及方策等について検討を行うため「文化観光懇談会」(座長:赤坂憲雄氏-東北芸術工科大学教授-)を発足させ、平成17年7月より検討を進めているところである。
平成18年8月には、これまでの検討状況及び今後の文化観光の進め方等について、文化観光懇談会中間的報告を取りまとめ、公表した。この中で、文化観光を実践している人々からその知識・経験を聴取するとともに、そうした人材の育成・支援、文化観光を学ぶ場の開設等や日本文化の発信力強化のための方策を探っていくこととしている。
これを踏まえて、平成18年10月25日から26日にかけて、山形県の協力を得て、「ようこそ山形へ、もうひとつの日本」と題してモニターツアーを実施するとともに、関連したシンポジウムを開催した。
モニターツアーにおいては、外国人留学生9名及び県内観光ガイド10名の参加を得て、県内の寺社の見学及び意見交換会を実施し、外国人旅行者等から質問があった際に、世界的な視野に立った上で、日本の歴史・伝統・文化の特徴をその場で説明しうる体制の整備に努めた。
また、シンポジウムにおいては、県及び市町村観光担当課、観光協会の職員、観光ガイド等広く歴史や文化に携わる方々を対象にした、文化観光懇談会委員等によるパネルディスカッションを実施し、観光の深化、文化観光の振興を図った。

▲「ようこそ山形へ、もうひとつの日本」モニターツアー




  (7) 構造改革特区・地域再生・都市再生・中心市街地活性化の取組

構造改革特区では、これまでに943件の特区計画を認定し、観光振興に資する様々な計画が実施されているところである。
特に、濁酒(いわゆる「どぶろく」)の製造に関する免許要件の緩和の特例を活用した特区が74件誕生するなど、特区を活用した地域の取組が着実に進んでいる。
また、地域の中小旅行業者等による地域に密着した募集型企画旅行の実施を可能とするための「第3種旅行業者による地域振興のための募集型企画旅行の可能化」((社)21世紀ニュービジネス協議会等からの提案)については、平成18年2月15日、構造改革特別区域推進本部において、規制所管省庁が実施に向けて検討することが決定されていたものであるが、検討の結果、平成19年2月28日、全国で実施することが同本部で決定され、同年3月12日には、第3種旅行業者も一定の条件の下で募集型企画旅行を行えるようにするため、旅行業法施行規則の改正を行った。
なお、街のPRのための道路上へのサッカーボールのデザインの設置(静岡県藤枝市からの提案)については、道路標識等の効用を妨げるなど道路交通法の規定に反しない限り可能であることが明らかになったことから、各地域が、このように、それぞれの個性に応じて道路を装飾することで、おもてなし・ホスピタリティの側面から、観光振興の取組が推進されることが期待される。
地域再生においても、これまでに868件の地域再生計画を認定し、地域の特性に応じた多様な取組が行われている。
さらに、国の施策を地域にとって選択・利用しやすいメニューとして体系化するため平成19年2月28日、地域再生法に基づき、地域再生計画に連動して一体的な支援を行う施策等を取りまとめた、「地域再生総合プログラム」を地域再生本部において決定した。同プログラムには、「観光に関する人材の育成」や「外国人観光客の訪日促進と魅力ある観光地・観光産業の創出」等、観光振興に資する支援措置が盛り込まれたところである。
都市再生においては、特に身の回りの生活の質の向上と地域経済・社会の活性化を促進する「全国都市再生~稚内から石垣まで~」の取組において、観光振興を核とした取組が顕著である。例えば、都市観光の推進(稚内市、松山市、石垣市等)、歴史的たたずまいを継承した街並み・まちづくり(臼杵市、金沢市、香取市(旧佐原市)等)、環境共生まちづくり(飯田市、日南市等)等のテーマごとに共通の制度的課題を具体に解決するとともに、事業を集中的に実施している。また、平成15年度から18年度の4度にわたり、観光をテーマにしたもの等地域が自ら考え自ら行動する都市再生活動を「全国都市再生モデル調査」(平成18年度は541件の応募に対して、159件を選定)として推進・支援しており、そのうちの幾つかはまちづくり交付金等国の支援も受けて本格的な取組に発展している。
中心市街地活性化においては、観光交流促進等の観点から中心市街地を活性化する取組が進められている。例えば、青森市では「ねぶた祭」に多くの観光客が訪れているものの、夏期の祭期間のみに来客が集中することや、近年の観光ニーズの多様化等を背景に来客の減少傾向がみられるなど都市観光の課題を抱えており、このため、中心市街地で通年型の観光が出来るようねぶた祭や港町青森の歴史、文化が感じられる「ふるさとミュージアムゾーン」の形成に向けて、まちづくり交付金等の国の支援も受けて文化観光交流施設の整備や港湾文化交流施設の再整備、冬季に新たな観光イベントの開催等を進め、新たな交流の場の提供や魅力づくりに取り組んでいる。

  (8) サイクルツアー推進事業

サイクリングを楽しみながら地域の魅力をゆっくりと堪能する新しいツーリズム(サイクルツアー)を普及し、地域の活性化を図ることを目的に、サイクリングロードと観光施設、川の親水施設、港湾緑地等との連携を強化する各種施策を総合的に推進しており、全国15モデル地区において、自転車を利用した観光促進策等を盛り込んだサイクルツアー推進計画に基づき事業を推進した。

  (9) 北海道の観光振興

1)北海道の観光の現状
北海道は、雄大な自然に恵まれ、四季の変化も鮮明であり、また、多彩な体験型観光やオートキャンプ等のアウトドア活動に係る施設の充実、イベントの開催等により、観光地として国民にくつろぎの場を提供している。
北海道を訪れる外国人旅行者については、ビジット・ジャパン・キャンペーンの展開や道内各地における官民による積極的なプロモーションの効果等もあり、東アジアを中心に増加している。また、近年ではオーストラリア等からのスキー客も大幅に増加している。
平成18年の来道者数は、新千歳・羽田間への航空会社の新規参入や平成17年7月に知床が世界自然遺産へ登録されたことによる効果等により、前年比で20万人増加し、1,300万人であった。
2)北海道における観光振興策の展開
第6期北海道総合開発計画において、観光関連産業は地域経済を支える重要な産業として位置付けられており、観光基盤の整備や農山漁村における自然体験型活動等への積極的な支援を行うことにより、北海道の特色を生かした観光振興策を展開している。
地域住民の活動を中心として沿道景観等の地域資源の保全と活用を図り、競争力のある美しく個性的な北海道づくりを目指す「シーニックバイウェイ北海道」を平成18年末現在、6つの本ルートと3つの候補ルートで展開している。また、来道外国人旅行者が安心して快適な観光ができるように、外国語対応のカーナビゲーション・車載端末等を通じた効果的な情報提供に関する実証実験を行った。

▲「来道外国人観光客のための自立移動支援システム構築調査」実証実験状況



  コラム 北海道における新たな国際観光の取組 ~外国人ドライブ観光の推進~  

北海道は、自然、文化、開拓の歴史など日本国内でも固有の資源を有することに加え、特にアジア圏の各国と比較すると地理的に高緯度に位置することから緑豊かな夏、紅葉の秋、積雪や流氷が訪れる冬と四季が明瞭であり、アジア圏の中でも他に類をみない観光資源を有する地域である。このような魅力を背景として、今後、更なる経済成長が見込まれるアジア各国から北海道を訪れる外国人観光客の一段の増加が期待されている。また、雪質の良さ、時差が少ないこと等からオーストラリア等からのスキー客も飛躍的に増加している。
来道外国人観光客の旅行形態は、従来、団体型が中心であったが、近年では、自由度の高い行動が可能となる個人型が増加している。日本人観光客は、既にレンタカーや自家用車による道内周遊が増えており、今後、外国人観光客の個人旅行が増加することに伴い、国際免許取得が可能な国を中心としてレンタカー需要が増大すると想定される。
一方で、外国人観光客は言語が分からないことにより、交通情報や地域情報等、旅行に必要な情報が適切なタイミングで得られないという課題が存在する。多言語による効果的な情報提供を行うことにより、北海道の魅力を一層引き出すとともに、自由度の高い移動を可能とし、来道外国人旅行者が安心して快適な観光ができるように以下の取組等を行った。




  (10) 沖縄の観光振興

1)沖縄の観光の現状
沖縄県は亜熱帯・海洋性気候風土の下、美しい自然景観、独特な伝統文化や歴史等の魅力的な観光資源を有しており、昭和47年の本土復帰以降、入域観光客数が1億人に達するなど、沖縄のリーディング産業として大きく成長してきた。
特に、近年、沖縄の自然・文化に対する全国的な関心が継続する中、美ら海水族館(平成14年11月)や国立劇場おきなわ(平成16年1月)、沖縄型特定免税店の空港外店舗(平成16年12月)等の観光関連施設の開業が相次いだこともあり、入域観光客数は平成14年以降、5年連続で過去最高を記録しており、平成18年は神戸空港及び新北九州空港の開設に伴う新規路線開設による輸送能力の増加、修学旅行の増加等から564万人となっている。
2)沖縄における観光振興策の展開
沖縄の観光振興を図るため、沖縄振興計画、第2次沖縄県観光振興計画等に基づき、多様なニーズに対応した通年・滞在型の質の高い観光・リゾート地の形成に向け、各種施策を推進した。
観光振興地域制度の活用による観光関連施設の集積の促進や世界遺産の周辺整備、離島地域における観光案内標識等の整備等、質の高い観光地としての基盤整備を図った。また、観光客の多様なニーズに対応するため、バリアフリーの推進、体験滞在交流の促進等の事業を引き続き推進した。
さらに、沖縄の自然環境を保全しつつ観光振興を図っていくため、観光客数の増加に伴う自然環境の荒廃等、観光による環境への負荷を軽減するための方策の検討や、離島観光地における自然環境に配慮した汚水処理施設を整備・運用する際の技術的条件等の調査検討等を新たに実施した。

▲沖縄美ら海水族館




  (11) 豪雪地帯における冬期の観光振興

豪雪地帯対策基本計画において、観光・レクリエーション産業を振興することとされており、その実現に向けて冬期間観光の推進に資するクロスカントリースキー場等の親雪施設を整備した。

  (12) 離島地域の観光振興

多くの離島地域においては、主要産業である一次産業の低迷が続いており、観光が離島地域経済の新たな柱として期待が高まっている。しかし、離島は本土に比べて個性的で魅力的な自然環境や地域文化がある一方、アクセスの煩雑さや情報提供不足等の問題を抱え、高いポテンシャルを持ちながらも観光資源を十分に生かし切れていない。
そこで、観光による離島地域経済の活性化を図ることを目的として、モニターツアーによる検証を行う「離島ツアー交流推進支援事業」を実施し、離島における魅力的な観光資源の再発見や観光ルートの開発を行った。また、モニターが離島に滞在することにより、島の生活に直接触れ、新たな離島サポーターとして育つことも期待している。平成18年度においては、特徴ある地域資源の再発掘を行い、離島観光の活性化を図ることを目的として、高知県宿毛市(沖の島)において事業を実施した。

  (13) 奄美群島・小笠原諸島の観光振興

奄美群島においては、地方公共団体が行う観光拠点としての園地等の整備、自然、伝統文化を体験するための施設の整備、群島内外との交流を促進するために地方公共団体が行う体験交流の推進及び奄美群島の歴史、自然、文化について観光客に案内できる人材の育成等の事業に対する支援を実施した。
小笠原諸島においては、父島の玄関口である西町、東町の無電柱化を含めた街並み景観の整備や、エコツーリズムの一層の推進を図るため、自然ガイドの活動拠点となるビジターセンターの増築等の事業に対し支援を実施した。

  (14) 半島地域の観光振興

半島地域の自立的発展を目指し、多様な自然・文化資源の活用による観光を通じた半島地域の活性化を図るため、NPO法人や地域住民等が主体となって行う交流・連携の促進方策等を検討した。平成18年度には、南房総地域・伊豆中南部地域、紀伊地域等において、海を通じた半島地域間の交流・連携の可能性に関する調査を実施した。

  (15) 総合保養地域のソフト面等の充実等

国民のニーズに対応し、地域振興に寄与する総合保養地域の整備を図るため、地域住民、NPO法人、民間事業者等の多様な主体が連携して行うソフト面の充実や地域間交流の取組等の活動を促進した。

  (16) 写真を撮るパーキング「とるぱ」の推進

安全な駐車場と、そこから歩いて行ける美しい風景の撮影スポットを、ホームページや携帯電話で情報提供(http://torupa.jp)するとともに、全国で募集している。

  (17) 森林等の保全管理と観光への活用

1)森林の保全管理
森林の有する公益的機能を特に発揮させる必要のある森林については、「森林法」に基づいて保安林に指定し、立木の伐採、土地の形質の変更等一定行為について制限を課すなどのほか、周辺の景観に配慮しつつ、荒廃地等の復旧整備、機能の低位な森林の整備を計画的に実施した。また、林木の枯損等による景観悪化の防止にも資する対策として、松くい虫をはじめとする森林病害虫等の被害に対する各種防除措置を実施した。
さらに、全国山火事予防運動等林野火災未然防止のための普及啓発活動の実施、林野火災等各種森林被害の未然防止・早期発見のためのパトロール体制の整備等を推進した。
1)国土緑化意識の醸成
多面的機能を有する森林の整備・保全を社会全体で支えるという国民意識の醸成・高揚を図るため、全国植樹祭、全国育樹祭等の開催、森林ボランティア等の広範な国民による自発的な森林づくり活動や巨樹・巨木や里山林等の適切な保全・管理のために必要な技術開発等を促進したほか、「みどりの週間(4月23日~29日)」を中心とした各種緑化キャンペーン等を全国的に展開した。
2)国有林野の保全管理
国有林野においては、自然環境が優れ保健・文化・教育的利用に供することが適当な地域を自然休養林、自然観察教育林等のレクリエーションの森として選定し、適切な管理を行った。
特に、優れた自然環境を有する森林については、保護林として設定あるいはその拡充を行い、適切な管理を行うとともに、入山者に対して保護林を紹介するパンフレットを配布するなど、自然環境保全に関する普及啓発を行った。
さらに、世界自然遺産に登録されている屋久島、白神山地及び知床の保全対策並びに世界文化遺産と一体となった景観を形成する森林の景観回復対策を講じた。
このほか、林野火災等の森林被害の防止のため、森林レクリエーション利用の多い地域を重点的に巡視し、入山者に対する指導及び林野火災予防のための広報活動を行った。
3)森林環境教育活動の推進
1)森林環境教育活動の推進
子どもたちの体験活動の場となる森林や施設、指導者の募集・登録と関連情報の一体的提供、学校林の整備・活用や都市部の子どもたちを対象とした山村滞在型の森林・林業体験交流活動等を推進するとともに、子どもたちの森林体験活動や林業体験学習の場等となる森林・施設の整備を18箇所実施した。
2)森林空間の整備
森林環境教育、健康づくり等の森林利用に対応した多様な森林の整備を推進するため、平成18年度においては、教育関連施設・健康増進施設等と連携を図った森林整備を行う森林空間総合整備事業を12地区で実施した。
3)保健保安林・風致保安林における整備
都市近郊等にあって特に風景等が優れ、自然探勝、ハイキング、キャンプ等の森林レクリエーション利用に供すること等を目的とする森林については保健保安林として、名勝、旧跡の風致の保存を目的とする森林については風致保安林として、平成18年3月末現在、合わせて72万haを指定している。平成18年度においては、森林の造成、改良等の整備を行う共生保安林整備統合補助事業を86地区で実施した。
4)レクリエーションの森等の整備
国有林野において、自然休養林等の「レクリエーションの森」を、人と森林との触れ合いの場として積極的に提供した。また、国民による自主的な森林づくりの活動の場を提供する「ふれあいの森」、学校等による体験活動・学習活動の場を提供する「遊々の森」の設定・活用を推進した。
このほか、次世代へ残すべき遺産として選定した国有林野内の代表的な巨樹・巨木(「森の巨人たち百選」)の保護を図るための地域の取組に対する支援を行った。

  (18) 河川・湖沼・山地流域の保全と観光への活用

1)河川・湖沼・山地流域の保全
河川や湖沼は、多くの貴重な生態系を維持し、観光、保養及びレクリエーション等の重要な資源となっており、「水質汚濁防止法」に基づく排水規制の実施や下水道、農業集落排水施設、浄化槽等の生活排水処理施設整備の推進等、水環境の保全のための対策に取り組んだ。
特に、湖沼については、富栄養化の防止のため、「水質汚濁防止法」に基づく窒素・燐の排水規制を実施するとともに、平成17年の湖沼水質保全特別措置法の改正を受けて、政省令の改正、湖沼水質保全基本方針の変更を行い、湖沼水質保全計画の策定の際における関係者との長期ビジョンの共有、負荷量規制の対象の拡大等を規定した(図II-2-2-7)。
さらに、自然材料活用による水路の修復等による水辺空間の再生、生活排水等による汚濁が著しい水路の水質改善、汚濁した底泥のしゅんせつや浄化用水の導入等による水循環再生のための良好な水辺空間の創出、公共用水域の水質改善のため下水道の普及、高度処理の推進、合流式下水道の改善を実施した。
また、緊急に水環境の改善を図る必要のある河川等においては、河川事業・下水道事業を連携して重点的に行う「清流ルネッサンスII」を実施した。
山地流域の個々の特色を生かしつつ、崩壊地に植生を回復させるため、NPO法人等と連携して山腹工、砂防樹林帯等の周辺環境に配慮した砂防事業を実施した。

図II-2-2-7 下水道整備と水質の関係



■富栄養化によるアオコの発生状況

▲緑のペンキを流した様と酷評された諏訪湖



■水質改善によるレクリエーション効果

▲水泳大会「およごう諏訪湖」平成17年7月



2)河川・湖沼・山地流域の観光への活用
1)良好な水辺空間の形成
地域の自主性を尊重し、個性的なまちづくりを推進する治水事業として、ふるさとの川整備事業や、桜づつみモデル事業を実施した。
また、各種河川事業において、治水上の安全性を確保しつつ、多様な河川の環境を保全・復元する多自然型川づくりや河川改修と市街地整備事業等を併せて行うマイタウン・マイリバー整備事業を実施するとともに、地域のシンボルとして地域にふさわしい河川整備を実施した。
さらに、スーパー堤防整備事業、河川環境整備事業、水と緑のネットワーク、水環境対策ダム事業、自然再生緑地整備事業、緑化重点地区総合整備事業、新世代下水道支援事業及び擬岩による護岸工事等、観光地の魅力を損なわないよう景観等に配慮した砂防事業を推進した。

▲浄化用水の導水、下水道事業等により水質改善が図られ、観光遊覧船が周航



2)親水空間等の整備
農業水利施設の有する水辺空間等を活用し、都市住民にも開かれた豊かで潤いのある快適な水辺景観の創出による農村の活性化を図るため、親水空間の整備等を行う地域用水環境整備事業を実施した。
3)リバーツーリズムの推進
近年、カヌーやラフティングをはじめとした水面利用や川での自然体験活動が活発化、多様化していることを踏まえ、全国の川で活動する市民団体等で構成されるNPO法人「川に学ぶ体験活動協議会(RAC)」と連携し、川で安全に活動するための指導者、リバーガイドの育成を推進した。
4)「子どもの水辺」再発見プロジェクトの推進
地域の身近な水辺における環境学習・自然体験活動を推進するため、市民団体や教育関係者、河川管理者等が一体となって取り組む体制の整備を進めるとともに、「子どもの水辺サポートセンター」を活用し、水辺での活動に必要な機材の貸出しや学習プログラムの紹介等を総合的に支援した。また、自然体験活動を安全かつ充実したものとするために必要な場合において、水辺に近づきやすくする河岸の整備等(「水辺の楽校」プロジェクト)を推進しており、これまでに261箇所が登録された(平成18年度は12箇所が登録)。
5)河川周辺レクリエーションの促進
河川の高水敷等を公園、緑地、運動場等に利用するための諸施設の整備等を総合水系環境整備事業等により行った。また、カヌーポート(カヌーの発着場)等の整備により、水辺での活動を促進し、親水レクリエーションの促進を図った。
6)ダム周辺レクリエーションの推進
ダムを生かした水源地域の自立的、継続的な活性化を図るための「ダム水源地域ビジョン」を、102ダムにおいて策定・推進しており、策定が完了した96ダムで同ビジョン推進が図られており、6ダムで策定作業に取り組んでいる。また、総合水系環境整備事業によりダム湖及びダム湖周辺の環境整備を実施した。

  (19) 海の環境保全と観光への活用

1)海の環境保全
都市再生プロジェクト(第三次決定)「海の再生」の実現に向けて「東京湾再生のための行動計画」及び「大阪湾再生行動計画」に基づき、陸域からの汚濁負荷の削減、海域における環境改善、環境モニタリング等の各種施策を関係機関と連携して推進した。さらに「全国海の再生プロジェクト」として、伊勢湾及び広島湾において、再生行動計画の策定作業を進めた。
海洋汚染が発生する可能性の高い海域において監視取締りを強化した。
廃棄物の不法投棄事犯等について重点的に監視取締りを実施したほか、廃船の不法投棄事犯の発生の抑制及び廃船の適正処理の促進を図った。
東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海については、化学的酸素要求量(COD)、窒素及び燐に係る水質総量規制を実施している。瀬戸内海においては、沿岸関係府県が自然海浜保全地区条例により、91地区の自然海浜保全地区を指定している(平成18年12月現在)。
生態系や自然景観等周辺の自然環境に配慮した海岸整備を行うエコ・コースト事業を平成18年度までに全国49箇所において実施した。
自然環境に優しく美しいみなとへの変革を図るため、水質・底質を改善する汚泥しゅんせつや覆砂、港湾の親水性を高め良好な環境を創造する干潟・藻場等の積極的な保全・再生・創出のほか、海浜及び緑地の整備を推進した。平成18年度は、堺泉北港等において緑地の整備、宮津港等において干潟等の整備を実施した。
漁場及び漁港の環境保全と快適な漁村環境の創造を図るため、漁港区域内の水域における汚泥・ヘドロの除去、藻場・干潟や水質浄化施設・清浄海水導入施設等の整備を行う漁港水域環境保全対策事業、漁業集落の生活排水等を処理する漁業集落排水施設の整備等を実施した。
海域における水質の保全を図るため、海域に関する流域別下水道整備総合計画の策定を進め、下水道の整備、高度処理の推進、合流式下水道の改善を図った。

▲親子連れでにぎわう人工海浜(愛媛県新居浜港)



2)海の観光への活用
1)海辺の環境教育の推進
みなとの良好な自然環境の市民による利活用を促進し、自然環境の大切さを学ぶ機会の充実を図るため、自治体やNPO法人等が行う自然・社会教育活動等の場ともなる海浜等の整備を行うとともに、児童や親子を対象とした「海辺の自然学校」や、楽しく安全に活動するための知識と技術を習得する「海辺の達人養成講座」を推進した。
また、全国の海辺や海で活動するNPO法人等で構成される「海に学ぶ体験活動協議会(CNAC)」と連携し、海辺の自然体験・環境学習を推進した。

▲[海辺の自然学校]カヌーによる体験学習の様子




▲[海辺の達人養成講座]干潟での技術講習の様子



2)子どもたちの海・水産業とのふれあい推進プロジェクトの推進
豊かな自然環境、伝統文化等の地域資源に恵まれた漁村において、子どもたちの体験学習活動を促進するため、活動に適した「子どもたちの海」を調査・選定するとともに、学校関係者等に情報を提供する「子どもたちの海・水産業とのふれあい推進プロジェクト」を推進した。
3)港湾景観の形成
港湾において人々が憩い集う、美しく快適な空間を形成するため、港湾が持つ景観資源を活用し、良好な景観形成を図ることを目的とした港湾景観形成モデル事業を平成18年度までに全国で13港承認し、宇野港等で整備を実施した。
4)海洋性レクリエーションの促進
船上にてリアルタイムに気象、海象等の安全情報、目的地の観光情報等を受信できるプレジャーボート安全利用情報システムの普及促進に向けた環境の整備を行った。
また、既存のマリーナ等を活用したマリンレジャー振興拠点である「海の駅」の設置・推進を支援した。
さらに、海やみなとに関しての様々な相談に応じる「海とみなとの相談窓口」において、市民からの質問や問い合わせに対応した。
5)ボートパーク等の整備
海洋性レクリエーションの振興と公共水域の適正な利用促進を図るため、プレジャーボートの活動拠点となる小型船舶の簡易な係留・保管施設(ボートパーク)の整備を推進した。
また、第三セクターや民間事業者が行うマリーナ整備に対して、日本政策投資銀行等による長期・低金利の融資等の支援を行っている。
これらの支援により、ボートパークやマリーナは、プレジャーボートの係留・保管だけでなく、海洋性レクリエーション活動、自然体験活動の拠点として市民に広く利用されている。
6)旅客船ターミナル施設の整備
クルーズ旅行の需要の拡大、旅客船の高速化等へ対応するため、石垣港等16港で旅客船ターミナル施設の整備を行った。
7)親水性に富む港湾施設の整備
港湾を豊かな交流空間として利用したいという要請に対応して、親水護岸、海浜やイベント広場等の親水性に富む緑地の整備や、自然環境の保全・再生・創出に資する臨海部の森・大規模な緑地の整備を平成18年度に堺泉北港等88港で実施した。
8)みなとの博物館ネットワーク・フォーラムの展開
みなとの役割や歴史の紹介、情報発信や交流の場として重要な役割を果たしている「みなとの博物館」を活性化させるフォーラムの活動に協力した。
9)フィッシャリーナの整備
秩序ある漁港利用を図るため、新たに静穏水域を確保して漁船とプレジャーボート等の利用調整を行うフィッシャリーナの整備を推進している。現在供用中の漁村再生交付金等によるフィッシャリーナは27漁港であり、平成18年度は5箇所で整備を行った。
また、既存静穏水域の活用による放置艇対策を含め、漁村地域の活性化を推進するため強い水産業づくり交付金において交流基盤施設等の整備を実施した。
10)漁港環境の整備
快適で潤いのある漁港環境を形成するため、漁港内において、植栽、親水施設等の整備を行う漁港環境整備事業を実施した。
また、平成18年度には、都市住民との交流の円滑化等を図るため、広場、親水護岸等の施設の整備を行う漁港交流広場整備事業を17地区で実施した。
11)海岸環境の整備
砂浜の保全・復元等により、景観上も優れた人と海の自然のふれあいの場を整備した。平成18年度は、小田原漁港海岸、熱海港海岸等117箇所において整備を実施した。
12)ビーチ利用促進モデル事業の実施
マリーナ等の整備と連携しつつ、大規模なビーチ、遊歩道等の整備を重点的に促進する「ビーチ利用促進モデル事業」を平成18年度までに12箇所を選定している。
13)みなとまちづくりの推進
みなとの持つ美しい景観や自然、フェリーやクルーズ船の寄港、食、海洋性レクリエーション、空き倉庫や緑地等多くの既存ストック、歴史・文化遺産の集積等といった、みなとの資源を再認識するとともに、これらの資源を最大限に活用して、市民、企業、行政等の連携の下で、観光や地域交流の拠点となる活力のあるみなと空間を形成する「みなとまちづくり」を、「みなとオアシス」認定制度等を活用し、推進している。
  コラム 「みなとオアシス」の全国展開の推進  

海浜、旅客船ターミナル、広場等のみなとの施設や空間を活用した住民参加型の交流拠点を「みなとオアシス」として認定しており、平成19年3月現在、北海道、東北、北陸、中国、四国で27港を登録している。また、九州地方等においても、この制度の活用により、地域活性化の取組を支援していく。



14)みなと観光交流促進プロジェクトの推進
みなとの資源を活用し、周辺観光地とも連携しながら、市民、企業、行政等が一体となって、みなとの観光交流の促進を図る「みなと観光交流促進プロジェクト」を推進した(図II2-2-8)。

図II2-2-8 みなと観光交流促進プロジェクトの概要



15)コースタル・コミュニティ・ゾーンの整備
海岸の整備と併せ、背後地における公園、道路等の整備を計画的、一体的に行うことにより、地域住民が海と親しみ、集い、憩える場としてコースタル・コミュニティ・ゾーンの整備を推進した。
16)海と緑の健康地域づくり-健康海岸-の実施
健康増進のために利用しやすい海岸の形成を図るため、健康海岸として平成18年度までに17地域を指定した。
17)いきいき・海の子・浜づくりの実施
教育関係者、海岸管理者等の連携により、世代間の交流の場、自然体験活動の場、マリンスポーツの場として青少年が利用しやすい海岸づくりを図るため、「いきいき・海の子・浜づくり」の実施地域として平成18年度までに32箇所を選定した。
18)快水浴場百選の選定
人々が水に直接触れることができる個性ある水辺を積極的に評価し、これらの快適な水浴場を広く普及することを目的として、「美しい」、「清らか」、「安らげる」、「優しい」、「豊か」という水辺に係る新たな評価軸に基づき、全国100箇所の水浴場を、平成18年5月、「快水浴場百選」として選定した。
19)自然豊かな海と森の整備-白砂青松の創出-
海水浴と森林浴を同時に楽しめるなど潤いのある生活環境の整備として、「白砂青松」で代表される自然豊かな海と森の整備対策事業の実施地区として平成18年度までに25箇所を選定した。
20)岬のオアシス構想の推進
近年、地元自治体において岬の灯台を地域のシンボルとして位置付ける地域振興策が企画されており、地元自治体が実施する公園化事業と連携する「岬のオアシス構想」を推進した。
21)未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選の普及
都市と漁村の交流を促進するため、漁村に残る歴史的、文化的な施設を地域資源として活用する「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」について、シンポジウム等により普及を図った。

  (20) 都市の緑地保全と観光への活用

1)都市の緑地保全
1)大都市近郊緑地の保全
首都圏及び近畿圏においては、関係省庁及び関係都府県が連携して、「都市環境インフラのグランドデザイン」を策定し(首都圏:平成16年3月、近畿圏:平成18年8月)、自然と触れ合う場の提供や観光地等の環境を構成する自然環境の保全・再生・創出に関する取組を行っている。
首都圏においては、同グランドデザインに基づき、平成18年12月に、鎌倉の観光地や周辺の居住地に対して広域的な自然景観を提供している鎌倉市と横浜市にまたがる地区(約98ha)を、円海山・北鎌倉近郊緑地保全区域に拡大指定をした。
近畿圏においては、グランドデザインに基づき設置した行政や市民団体からなるワーキンググループの1つにおいて、歴史上の要所として名高い「天王山」周辺で森林の手入れ不足等の地域課題を抽出し、歴史・文化価値を有する地域環境の保全に資する取組の検討を行った。
2)都市緑地の保全・創出
良好な都市環境の形成を図るため、都市緑地法に基づき、都市計画に特別緑地保全地区を定めている(平成18年3月末現在366地区約5,500ha(近郊緑地特別保全地区を含む))。これらの地区において、宅地の造成等の行為を規制することで自然的環境の保全を図るとともに、緑地保全等統合補助事業等により、地方公共団体による土地の買入れや保全利用のための施設整備の機動的な実施を支援した。
3)都市緑化の普及啓発
春季における「都市緑化推進運動」(4月~6月)や「都市緑化月間」(10月1日~31日)において、全国「みどりの愛護」のつどい、全国都市緑化フェア等を開催するとともに、「みどりの愛護」功労者表彰、都市緑化及び都市公園等の整備・保全・美化運動における都市緑化功労者表彰等を行い、広く都市緑化意識の高揚、緑豊かな魅力ある環境づくりを推進するための普及啓発を図った。
4)都市公園美化・環境衛生対策
都市公園については、地方公共団体が地域住民等の協力を得つつ、清掃、補修等のきめ細かい管理を行った。また、国営公園については、快適な利用が可能となるよう国が清掃等維持管理を行った。
2)都市の緑地の観光への活用
1)都市公園におけるオートキャンプ場の整備
広域化、多様化するレクリエーション需要に対応するため、国営公園や大規模公園等において、野外活動の拠点となる質の高いオートキャンプ場や滞在型の体験学習施設等の整備を推進した。
2)都市公園の整備
都市公園は、潤いのある良好な都市景観の形成、動植物の生息・生育地の確保等に資するとともに、災害時には防災拠点、避難地・避難路として機能するほか、スポーツ、文化活動、レクリエーションの場を提供するなど多様な機能を果たすオープンスペースである。また、樹林の保護や遺跡、文化財等の歴史的遺産の保存、都市における観光レクリエーション等に寄与する貴重な資源となっている。
平成18年度は、魅力ある都市づくり、個性と工夫に満ちた地域社会の形成、公平で安心な少子・高齢社会への対応、循環型経済社会の構築や地球環境問題への対応に重点をおいて、都市公園等の整備の推進を図った。
3)国営公園の整備・管理
国営沖縄記念公園をはじめとする国営公園は、国家的記念事業や我が国固有の優れた文化的資産の保存・活用及び一の都府県を超える見地から、国が設置する都市公園である。平成18年度は全国17箇所を整備、うち16箇所が開園しており、全国で約2,992万人が利用した。
4)大規模公園の整備
大規模公園は、地方公共団体が設置する広域の利用に供することを目的とした都市公園であり、広域公園とレクリエーション都市公園とがある。
広域公園は、地方生活圏等一つの市町村を超える区域を対象とするものであり、その規模は約50ha以上で、選択性・多様性に富んだ屋外レクリエーション拠点として整備している。
また、レクリエーション都市公園は、大都市圏その他の都市圏域の広域レクリエーション需要を充足することを目的に、自然環境の良好な地域において、大規模な公園を核とした各種レクリエーション施設、宿泊・休養施設や道路等の基盤施設を一体的に整備している。
5)国民公園の管理
旧皇室苑地である皇居外苑、新宿御苑及び京都御苑については、国民公園として快適な利用に資するため、園内清掃、樹木管理、老朽化した施設の改修等を行った。

  (21) 温泉保護と観光への活用

1)温泉の保護
平成18年3月末現在における全国の温泉ゆう出源泉数は、2万7,866箇所(うち自噴するもの5,149箇所、動力によるもの1万3,975箇所、未利用のもの8,742箇所)、ゆう出量は1日換算約398万トンに及んでいる。
また、温泉地は全国に3,162箇所あり、温泉を利用する宿泊施設数は1万5,024軒である。温泉の利用等に当たっては、「温泉法」に基づき温泉の枯渇を防止し、将来にわたって有効に利用し得るよう温泉の掘削、増掘又は動力装置の設置等の行為について規制を加え、その保護がなされている。
2)温泉の観光への活用
温泉利用の効果が十分期待され、健全な保養地として大いに活用される温泉地を「温泉法」に基づき、国民保養温泉地として環境大臣が指定しており、平成19年3月末現在、91箇所を指定している。

  (22) 「わたしの旅~日本の歴史と文化をたずねて~2005」の取組

平成17年度において、「旅」を通じて日本の歴史と文化をたずねる「わたしの旅」プランを広く募集し、786プランの応募の中から、提案者の思いが詰まった魅力的な105プランを100選として選定し、さらにその中から、「大賞」を1プラン、「特別賞」を9プラン選定した。
今回選定された105プランが広く活用されるよう、報告書の作成やホームページ(http://www.bunka.go.jp/1tabi/tabi.html)による情報提供、都道府県等に対する周知等の広報活動を積極的に行った。

  (23) 国立競技場の管理・運営

我が国唯一のナショナルスタジアムとして国際的な競技大会等に利用されている国立競技場(霞ヶ丘陸上競技場、代々木第一・第二体育館等)について、施設の整備等を行った。

  (24) 地域間交流施設整備事業

過疎地域の有する自然・文化・歴史・景観等の優れた地域資源を生かした、人・文化・情報等の交流を図るための遊休施設等の整備を促進し、もって国民のゆとりある生活への欲求、自然環境への関心等を満たし、都市等との地域間交流の促進を図っている。
平成18年度は北海道下川町等9地域で整備を進めた。
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