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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第5章 観光旅行の促進のための環境の整備

第2節 観光旅行者に対する接遇の向上



  1 旅行関連施設の整備


  (1) ホテル・旅館の整備

業として営まれる宿泊施設には、いわゆるホテル、旅館から民宿、山小屋に至るまで様々な形態があるが、これらはすべて公衆衛生及び国民生活の向上の見地から「旅館業法」の適用対象とされており、その経営には都道府県知事等の許可が必要とされている。
旅館業を営む者は、「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」に基づき、都道府県ごとに生活衛生同業組合を組織し、衛生施設の改善や経営健全化のための自主的活動を行っており、国においても全国及び都道府県の(財)生活衛生営業指導センターの行う経営指導事業等について助成を行っている。
また、一定規模のホテル・旅館に対しては、衛生水準を高めその近代化を促進するため、国民生活金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫において、長期かつ低利の融資を行っている。また、中小企業者であるホテル・旅館であって、一定条件を満たすものに対しては、中小企業金融公庫において、長期かつ低利の融資を行っている。
さらに、訪日外国人に対する接遇の向上の観点から、ホテル・旅館のうち、外国人旅行者の宿泊に適するものとして一定の基準を満たしたものについては、「国際観光ホテル整備法」に基づき登録を行い、登録を受けたホテル・旅館に対しては、地方税の不均一課税(平成18年3月末現在で登録ホテル・旅館が存在する589市町村中273市町村が軽減規定を設けている)が適用されるほか、一定条件を満たしたものに対しては、厨房設備の取得に係る課税の特例措置が適用される。また、日本政策投資銀行において、長期かつ低利の融資を行っている。
なお、旅館業においては、旅行者ニーズに対応した施設の整備等のための資金調達が困難になっていることを踏まえ、旅館業に係る金融の現状分析と今後の在り方についての方向性を検討するため、平成19年2月に「旅館業に係る金融に関する研究会」を立ち上げた。
  コラム ニセコへのオーストラリア資本による観光関連投資と相乗効果の現状  

北海道ニセコ地域では、オーストラリア人スキー客の急増及びこれに伴う関連ビジネスへの投資による地域活性化が進んでいる。
オーストラリア資本による投資については、近年では不動産事業、旅行事業等が主な投資分野となっている。特に不動産投資については、外資によるコンドミニアムの建設・販売・賃貸が増加し、平成18年9月に発表された都道府県地価調査の結果において、倶知安町の住宅地における地価上昇率が日本で最も高騰した地域となった。
ニセコにおいて特に投資が集中したのは、「ひらふスキー場」の山田地区のみであったが、近年では、周辺への波及をもたらそうとする動きも見られ、「ニセコひらふ花園スキー場」では、オーストラリア系企業が、日系企業からスキー場を買収し、スキー場周辺にカナダのWhistlerをモデルとした通年型の大規模リゾートタウンを建設する予定である。
このように、オーストラリアのスキー関連投資がニセコへ集中している理由としては、雪質・自然環境の良さ、本国からの地理的近接地(時差が少なく、アメリカやヨーロッパより近い)、投資条件の良さ(外国人投資に制約がなく、不動産価格はカナダやヨーロッパの3分の1程度)、日本文化への憧れ等が挙げられている。
ニセコにオーストラリア人客が来訪するようになったのは、先駆的に訪れた個人客の口コミによるとされ、その後、オーストラリアの旅行会社によるスキーツアーにつながり、さらに、多くのオーストラリア人が居住するに至った。本国からの「人の流れ」の増加に伴い、自国民のニーズを熟知しているオーストラリア資本のビジネス機会が広がっている。
以上のように、ニセコにおいても、オーストラリア人スキー客の増大が、本国からの資本流入を誘引し、それらの投資が国外で最も近い世界水準のスキーリゾート地としての利便性や評価を高め、より一層のオーストラリア人スキー客や居住者を増やすという循環を生み出している。
こうした事例を含めた国内のホテル・旅館、スキー場・ゴルフ場等における投資事例や海外における観光分野の投資事例、世界観光機関(UNWTO)等の投資に関する議論の状況等の調査・分析を行い、今後の観光交流拡大に効果ある観光投資促進の在り方等について検討を行うため、平成19年3月に「観光投資研究会」を立ち上げた。

ニセコを楽しむオーストラリア人




  (2) 外国人旅行者向けの観光案内所の整備

1)外国人総合案内所
外国人向け総合観光案内所(TIC:ツーリスト・インフォメーション・センター)を東京で運営し、訪日旅行に関する観光、交通、宿泊情報等をはじめ、日本人の生活様式や伝統文化を体験したいなどの外国人旅行者の個別化・多様化したニーズに対応して、我が国の文化、生活、産業等あらゆる情報を外国人旅行者に提供している。
2)「i」案内所
地方公共団体や観光関連施設が運営する外国人旅行者への対応が可能な観光案内所をネットワーク化し、外国人向け総合観光案内所(TIC)と連携しながら外国人旅行者のニーズに応じた案内や情報の提供を行っている。ネットワーク参加案内所は全国47都道府県、99都市・155箇所(平成19年3月現在)にのぼる(図II-5-2-1)。

  (3) 快適観光空間等の整備

訪日外国人旅行者をはじめ、高齢者等の旅行者にとっても快適な旅行を楽しむことができるよう観光地の受入環境の整備を図るため、地域の特性を生かしたテーマの下、地域の歴史・文化・自然等の案内・体験施設をはじめとした国際観光・国際交流の基盤施設の整備や観光施設等のバリアフリー化を推進しており、平成18年度は、広島県廿日市市、福岡県久留米市に対して、観光案内所のバリアフリー化や多言語(英語、韓国語、中国語(簡体字))の観光案内板等の整備への支援を行った。

▲鎌倉市観光案内所




▲東京TIC




図II-5-2-1 TIC(ツーリスト・インフォメーション・センター)及び全国「i」案内所配置状況




  2 我が国又は地域の特色を生かした魅力ある商品の開発


  (1) 魅力ある日本のおみやげコンテストの開催

訪日外国人旅行者から見て、品質やデザイン等の観点から特に魅力的なおみやげを選定することにより、魅力ある日本のおみやげを育成・発掘し、地域ブランドの振興を図るとともに、おみやげを通して日本の魅力を海外に伝え、日本への来訪を促進するため平成19年3月に「VJC魅力ある日本のおみやげコンテスト2007」を開催した。

▲VJC魅力ある日本のおみやげコンテスト2007会場風景



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