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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第5章 観光旅行の促進のための環境の整備

第3節 観光旅行者の利便の増進



  1 高齢者、障害者、外国人その他特に配慮を要する観光旅行者が円滑に利用できる旅行関連施設及び公共施設の整備及びこれらの利便性の向上


  (1) ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光促進

ユニバーサルデザインに配慮した旅行商品・旅行システムの開発及び観光地のユニバーサルデザイン化を促進するため、平成18年11月に有識者、旅行業者等からなる「ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光促進事業検討委員会」を立ち上げ、モデルツアーを実施するなどして、旅行商品及び観光地のユニバーサルデザイン化のためのガイドライン策定に向けた課題の整理及び検討を行った。

  (2) 外国人による「ひとり歩き点検隊」の実施

平成18年2月及び3月の2回にわたり「外国人から見た観光まちづくり懇談会」を開催し、日本の各地域で観光振興やまちづくりに取り組んでいる外国人から、日本人が気付かない日本の魅力や大切にすべき景観・伝統・文化、魅力向上のために改善すべき点等について意見やアドバイスを受けた。
同懇談会での意見等を踏まえ、同年3月に成田国際空港とその周辺において、外国人有識者や留学生等の協力を得て、外国人による「ひとり歩き点検隊」を実施した。点検に際しては、日本の玄関口である国際空港において外国人旅行者がひとり歩きできるような外国語等での表示がなされているかといった視点から、個々の案内標識についての問題点等を抽出し、改善策を検討した。さらに、平成18年度には、関西国際空港、新千歳空港、広島空港及び福岡空港とその周辺において外国人による「ひとり歩き点検隊」を実施した。

  (3) 公共交通事業者等による情報提供措置の導入と支援

平成18年4月1日に、「外国人観光旅客の来訪地域の整備等の促進による国際観光の振興に関する法律(外客来訪促進法)」が施行され、外国語等による案内情報提供の促進が公共交通事業者等の努力義務とされるとともに、特に国際空港と主要な観光地を結ぶルート等多数の外国人観光客が利用する区間等については、公共交通事業者等が情報提供促進実施計画の作成及びその計画に基づく情報提供の実施を義務付けられる区間として指定し、平成18年度末までに同計画が提出された。また、同指定区間については、平成18年度に英語のホームページにより、外国人旅行者に対する情報提供を行った。

  (4) 施設の整備

1)公共交通機関等のバリアフリー化
「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法。平成18年12月からは「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法))に基づき、市町村による基本構想の作成を促進している。平成19年1月末までに216の市町村(基本構想数は260)から基本構想を受理したほか8の市町村が作成中であり、約170の市町村が作成を予定している。
また、バリアフリー化のモデル、望ましい内容を示すことで、交通事業者等がバリアフリー化を進める際の目安としてもらうため、平成13年以降、各種のガイドラインを策定し、その普及促進を図っている。
公共交通ターミナルにおけるバリアフリー施設の整備、バリアフリー車両の導入等に対して、補助や日本政策投資銀行による融資を、また、鉄道駅におけるバリアフリー施設の整備、バリアフリー車両の導入等に対して、税制上の特例措置を講じている。
2)道路・歩行空間等の整備・バリアフリー化
幅の広い歩道等の整備や歩道の段差解消・勾配の改善、無電柱化の推進、視覚障害者誘導用ブロックの整備、高齢者、身体障害者等の利便を考慮したバリアフリー対応型信号機、道路標識等の交通安全施設等の整備を進め、誰もが安心して歩ける歩行空間のバリアフリー化を推進した。
特に、主要な鉄道駅等を中心とする地区において、交通バリアフリー法に基づき、歩行空間のバリアフリー化を積極的に推進した。また、冬期特有の積雪や凍結等の交通障害に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等、特に安全で快適な歩行空間が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設の整備等の冬期バリアフリー対策を推進した。
さらに、見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の設置、ゆずりあい車線、一般道路の休憩施設(「道の駅」)等の整備を進めるとともに、交通情報提供装置、道路情報提供装置やそれを支える情報・通信基盤の整備促進等により、運転者が安心して安全に運転できる道路交通環境の整備を推進した。
高齢者、障害者、児童等すべての人に優しい移動空間の整備を図るために地方公共団体が単独事業で行う、歩道の段差切下げ、歩道の整備と一体的に行う電柱等の障害物の除去等に対して、「少子・高齢化対策事業」により、財政措置を講じた。
3)河川空間のバリアフリー化
河川の近隣に病院や老人ホーム、福祉施設等が立地している地域や、高齢者の割合が著しく高い地域を流れる河川において、水辺にアプローチしやすいスロープや手摺り、緩傾斜堤防の整備等のバリアフリー化を実施し、高齢者、障害者、子ども等を含むすべての人々が安心して河川を訪れ、憩い、親しめる河川空間を創出した。
4)都市公園のバリアフリー化
都市公園において、高齢者や障害者を含むすべての人々が快適に利用できるよう、主要な園路の段差・勾配の改善、車いす使用者も利用可能なトイレの設置等、公園施設のバリアフリー化を推進している。国営公園においては、身体障害者手帳、療育手帳又は精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている利用者に対する入園料等免除の措置を行った。
5)宿泊施設・文化施設等のバリアフリー化等
国立の文化施設(国立劇場等)においては、障害者用トイレ、スロープ、エレベータ等の設置や車椅子への配慮等の施設の整備、入場料金の軽減措置等を行っており、高齢者・身体障害者も安心して観覧できる環境をつくるよう配慮した。
宿泊施設・文化施設等の建築物のバリアフリー化を推進するため、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)では、一定規模以上の新築等の際にバリアフリー化の基礎的基準への適合を義務付けた。さらに、バリアフリー化の誘導的基準を満たす認定特定建築物について低利融資等の支援措置を講じ、一層の整備促進を図った。
宿泊施設やサービス・料理等の面で高齢者が利用しやすいホテル・旅館として一定の基準を満たしたホテル・旅館を全国旅館生活衛生同業組合連合会がシルバースター旅館として認定登録し、従業員等に対し高齢者の接遇等について教育研修を実施している。平成18年12月現在994軒のホテル・旅館が認定登録されている。

  (5) 運賃等の割引等

1)公共交通機関
鉄道等各公共交通機関では、身体障害者手帳の交付を受けた身体障害者及び療育手帳の交付を受けた知的障害者に対し運賃割引を実施している。
2)駐車禁止規制の適用除外
歩行困難な障害者等が自動車を利用しやすいように、障害者等の使用する車両に対し、駐車禁止除外指定車標章を交付しており、一つの都道府県公安委員会から標章の交付を受けた車両が他の都道府県でも駐車禁止規制の適用が除外されるよう措置している。

  2 情報通信技術を活用した観光に関する情報の提供


  (1) 地域の魅力のデータベース化

平成15年7月31日に観光立国関係閣僚会議で決定された「観光立国行動計画」の重要な柱の一つとして位置付けられている「一地域一観光」の主要施策として、一地域一観光魅力ネットサイト事業を実施している。
これは、全国の市区町村及び国民に地域の魅力の発見・投稿を呼びかけ、それらを集約してデータベース化し、「発見!観光宝探しデータベース」としてインターネット(http://www.kanko-otakara.jp/jp/index.html)で公開するもので、国民の間で未だ十分に活用されていない観光資源を再認識してもらい、日本の魅力の維持、向上、創造に向けて意識を高めるとともに、英語翻訳化することにより、外国人に対する日本の魅力の発信にも供している。
平成19年3月現在、合計で1,373件(全国1,188市区町村:国民から185件)の魅力ある観光資源が掲載されており、歴史・文化、自然、イベント等の全国的知名度の高い観光資源から身近な観光資源として地元で親しまれているものまで多岐にわたっている。

  (2) 観光情報提供の促進

観光活性化標識ガイドラインの公表(平成17年6月)に加えて、平成18年度より道路等を利用した観光客への情報提供の高度化を図り、もって先進事例として地域の観光振興を推進することを目的として、様々な観光情報提供手段の補完・連携等により観光客の移動を支援する実証実験(まちめぐりナビプロジェクト)を全国25地域で実施した。

  (3) コミュニティ放送

平成19年3月末現在、全国で202のコミュニティ放送局が開局し、FMラジオを通じて観光地、各種行事の案内等地域に密着した情報を提供している。
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