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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第5章 観光旅行の促進のための環境の整備

第4節 観光旅行の安全の確保



  1 国内外の観光地における事故、災害等の発生の状況に関する情報の提供


  (1) 気象情報の提供充実

1)防災気象情報の高度化
12時間刻みで行っている台風の進路予報を24時間先まで3時間刻みで行うとともに、台風の強さの指標として最大瞬間風速に関する情報提供を新たに行うなど、台風に関する情報の高度化を実施した。
2)防災情報提供センターの情報の充実
防災情報提供センターのホームページ(http://www.bosaijoho.go.jp)では、雨量等の情報を集約して提供するとともに、地理情報システム(GIS)を活用し、様々な防災情報を1枚の地図に重ね合わせて利用できるようにしている。
3)気象庁ホームページの充実
気象庁ホームページ(http://www.jma.go.jp)では、台風情報等の改善を図るとともに、英文ページの気象レーダーや空港の気象データ等の情報を新たに掲載し、外国人観光客への情報提供の充実を図った。

  (2) 観光地における安全対策

1)林野火災防止対策
全国山火事予防運動(平成19年統一標語「伝えたい 森のやさしさ 火のこわさ」)を3月1日から7日まで実施し、ポスター、テレビ、新聞等を用いた広報活動や林野火災防ぎょ訓練等を通じて、火の不用意な取扱いの注意を喚起し林野火災の防止を訴えるとともに、林野火災用消防施設である防火水槽等の整備に努めた。
また、平成18年度には、林野火災の低減を図るため、林野火災発生時における関係機関間の情報共有・伝達及び連携の在り方や住民に対する広報、情報共有の在り方について検討を行うとともに、林野火災発生時には近隣都道府県等や自衛隊のヘリコプターによる消火活動を積極的に実施するなど迅速かつ広域的な対応力の強化を推進した。
2)集中豪雨、地震、火山噴火等の自然災害対策
観光地の周辺の森林において、山崩れ、雪崩等の災害を防止するため、周辺の景観に配慮しつつ、治山事業等を実施し、安全の向上と併せて観光資源の質的向上に寄与した。
インターネットや携帯端末等を利用し、リアルタイムの観測情報を国民に提供するとともに、河川の流況等のライブ映像等を災害対策基本法上の指定公共機関であるNHKに提供することにより、TV報道を通じて、各家庭に情報が提供されるよう努めた。
豪雨や、地震・火山噴火等に起因する土砂災害のおそれがある観光地について、土砂災害を防止するため、砂防設備等の整備、道路の斜面対策等のハード対策や、ITを活用した情報基盤の整備、火山ハザードマップの作成・公表の支援、火山噴火時の災害をできる限り軽減するための火山噴火緊急減災対策の検討、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定等のソフト対策を推進した。
火山の多くは観光資源である一方、災害をもたらすおそれがあることから、観光客の安全確保等を図るため、観光と関わりの深い火山の活動の監視及び火山情報の提供等を実施した。

  (3) 遭難の防止対策

1)山岳遭難の防止対策
1)概況
平成18年中の全国における山岳遭難は、発生件数1,448件(前年比85件増)、全遭難者数1,853人(前年比169人増)であった。
特徴としては、道迷い等が挙げられる。
2)防止対策
インターネット等を通じた登山情報の提供(http://www.npa.go.jp/safetylife/index.htm)や、山岳パトロール等の活動を通じた安全指導を行うことにより、登山者の安全意識の向上を図るとともに、山岳警備隊による救助訓練等を行うことにより、迅速かつ的確な救助活動の実施を図った。
2)水難の防止対策
1)概況
平成18年中の水難事故は、発生件数1,447件(前年比84件増)、水死者数(死者、行方不明者をいう。以下同じ。)823人(前年比2人減)であった。
水死者のうち、中学生以下の子どもは77人で、前年に比べ8人減で、全水死者数の9.4%を占めている。
2)夏期(6~8月)
平成18年夏期の水難は、発生件数761件(前年同期比31件増)、水死者数391人(前年同期比12人減)で、年間水死者数の47.5%にあたる。
3)防止対策
海浜におけるパトロールや、船舶・航空機による監視活動等を行うことにより、遭難者の早期の発見、救出・救護に努めるとともに、関係機関・団体と協力した救助訓練や水難防止の呼び掛け等を行うことにより、国民の安全に関する意識及び知識の向上を図った。
近年、河川での活動が多様化していることから、河川管理者や地元自治体、水面利用者が一体となって、河川の安全利用を進めるための安全講習等の支援、インターネットや携帯電話による河川情報の提供等(http://i.river.go.jp)を推進した。
3)避難体制の確立
観光旅行者は、一般に地理等に不案内であるため、これらの人々に対し災害危険箇所及び避難場所・避難路等について周知徹底を図る必要がある。
そこで、地方公共団体に対し、事前に避難路や避難計画を定めるとともに、避難場所等の安全性についての点検、観光旅行者等への迅速かつ確実な情報伝達及び十分余裕をもった避難の勧告・指示等避難誘導体制全般の整備を図り、統一的な図記号等を利用した分かりやすい案内板等の設置を進めるよう要請した。また、防災関係機関との連携の下に、実践的な防災訓練を実施するよう要請した。

  (4) 海外において日本人が関係した事件・事故の状況

平成18年中に海外で日本人が巻き込まれた主な事件・事故は(表II-5-4-1)のとおりである。

表II-5-4-1 日本人が被害者となった主な事件・事故一覧




  (5) 海外における事件・事故への対応と安全対策

1)安全対策に関する積極的な広報啓発活動と迅速かつ適切な援護
日本人が海外において事件・事故又はテロや誘拐、災害等の様々な危険に巻き込まれないよう、各種の安全対策に関する広報啓発活動を展開するとともに、海外において事件・事故等に巻き込まれた日本人に対しては、在外公館を通じて、迅速かつ適切な支援を行った。
事前の安全対策では、渡航先における治安等の情報(渡航情報)を、その地域性、緊急性、事案の種類別に、「危険情報」、「スポット情報」、「広域情報」として、また、各国の一般的な犯罪状況や出入国に関する注意事項等を取りまとめた情報を「安全対策基礎データ」として、更に各国のテロに関する情報を「テロ概要」として提供するとともに、海外安全広報啓発活動として、海外旅行中のトラブル回避のポイントを取りまとめた各種パンフレットの作成・配布、さらに、7月1日から1ヵ月間、夏期休暇に先立ち集中的啓発活動として「海外安全キャンペーン」を開催した(図II-5-4-2)。また、旅行業者を通じた海外危険情報の旅行者への周知徹底や、旅行業者の緊急連絡体制の整備を図っている。

図II-5-4-2 外務省渡航情報の概要



また、海外で事件・事故等何らかのトラブルに巻き込まれた日本人に対しては、在外公館を通じて、そのトラブルの種類や状況に応じて必要かつ可能な支援を行った。
また、テロ事件、自然災害等発生時において、旅行者に必要な安全情報を適時に伝達するとともに、安否確認を迅速に行うことを目的として、日本人旅行者が海外旅行中に使用する携帯電話の番号等を事前に旅行業者に登録させる取組を進めた。
2)旅券に関する広報啓発
近年、旅券(パスポート)の紛失・盗難が多発しており、それを悪用したパスポートの偽変造や別人による不正使用が後を絶たない現状を踏まえ、パスポートの紛失・盗難の抑制を図るべく、2月20日の「旅券の日」を中心に、全国旅券事務所及び関係省庁の協力を得て、パスポートとその管理の重要性を国民に対して広報・啓発する「旅券の日」キャンペーンを行った。
今年度は、タレントの星野真里さんをイメージキャラクターに起用したキャンペーン用ポスターを作成し、国内においては、全国の都道府県旅券事務所、関係省庁、警察署のほか、交通機関や旅行業界団体等に配布し、また、国外においては在外公館に配布し、国民の目に触れる場所に掲示するなど広く国民に注意を呼びかけた。

▲平成18年度「旅券の日」(旅券の紛失盗難防止)キャンペーン用ポスター




  2 観光旅行における事故の発生の防止等


  (1) 鉄道の安全対策

鉄道事故の防止を図るため、鉄道線路、保安設備等の整備・改良、乗務員等の教育訓練等を図るとともに、踏切事故の防止については、踏切道の立体交差化、構造改良、踏切保安設備の整備等を推進した。これらの安全対策を実施してきた結果、鉄道事故件数は長期的には減少している。
また、地下駅の利用者の安全を確保するため、地下鉄道の火災対策基準に適合していない地下鉄駅等について、火災対策施設の整備促進を図った(図II-5-4-3)。なお、テロ対策については、駅構内の防犯カメラの増設や巡回警備の強化等に加え、鉄道事業者や関係行政機関等で構成される「鉄道テロ対策連絡会議」での検討等により、「危機管理レベル」の設定・運用や、「見せる警備・利用者の参加」を軸としたテロ対策を推進するとともに、「鉄道テロ対策のベストプラクティス」を策定した。

図II-5-4-3 火災対策施設整備のイメージ




  (2) 道路交通の安全対策

シートベルト及びチャイルドシート着用の徹底に関する広報・啓発活動を推進するとともに、交通事故に直結する悪質・危険な交通違反の指導取締りを強化した。
また、例年、秋の行楽期である10月から年末までの間において、交通死亡事故の増加が顕著となることから、事故防止のための広報啓発活動を推進した。
高速道路では、サービスエリア、パーキングエリアを活用し、交通事故防止キャンペーン等を推進するとともに、著しい速度超過等の取締りを強化した。
観光地や、観光地に向かう途中の観光客の交通安全を確保するため、交通事故が多発している道路等について、交通安全施設等の整備を推進した。具体的には、都道府県公安委員会において交通管制センターや信号機の高度化を推進するとともに、交通渋滞情報、旅行時間情報等のリアルタイムな交通情報を迅速かつ的確に提供するための交通情報板、光ビーコン等の整備拡充を図った。また、道路管理者においては、歩道の整備、歩行空間のバリアフリー等を推進した
特に、社会資本整備重点計画に即し、以下の交通安全対策を重点的に実施した。
1)あんしん歩行エリアの整備、歩行空間のバリアフリー化の推進等、歩行者等の安全通行の確保
2)事故危険箇所対策の推進等の幹線道路等における交通の安全と円滑の確保
3)信号機の高度化、高度道路交通システム(ITS)の推進等、IT化の推進による安全で快適な道路交通環境の整備
また、行楽期には、行楽地に通じる幹線道路や行楽地周辺の道路に車両が過度に集中することから、事前広報及び臨時交通規制を実施するとともに、交通量の変動に対応した信号制御を行うほか、交通情報板や道路交通情報通信システム(VICS)等による交通渋滞情報等の提供により、う回を促すなどして、行楽車両の適切な配分誘導に努めるとともに、3メディア対応型VICS車載機の普及等を推進した。
一方、自動車運送事業者等に対し、春及び秋の全国交通安全運動、年末年始の輸送等に関する安全総点検等あらゆる機会をとらえ、輸送の安全確保に必要な運行管理及び車両管理、過労運転・飲酒運転の防止、安全運行の指導等について徹底を図り、事故防止対策を効果的に実施するよう指導するとともに、テロ対策における事業者の点検及び確認について周知を行った。
さらに、企業全体に安全意識を浸透させ、より高い水準での安全を確保するため、経営トップ主導により事業者全体として安全を確保する仕組み(運輸安全マネジメント)を導入するとともに、現行の運行管理制度の徹底を図り、輸送の安全を確保することとした。

  (3) 航空の安全対策

1)航空保安対策の推進
アメリカ同時多発テロ事件以降、航空保安を巡る情勢は依然として厳しく推移しており、ICAO(国際民間航空機関)が定める国際標準への適合やG8の要請等から、我が国における航空保安対策についても、更なる充実・強化が必要となっている。このような状況を踏まえ、具体的に以下の措置を講じている。
・平成18年1月より、空港内の特に重要な区域である空港ターミナルビル内の搭乗口や待合いスペースに立ち入る空港従業員等に対する保安検査を義務付けた。
・平成18年4月より、身元の知れない荷主等の航空貨物について、X線検査装置等による爆発物検査を義務付けた。
また、平成18年8月に明らかになった「英国での航空機爆破テロ未遂事件」を受け、ICAOより国際線で適用すべき暫定的な保安措置として、液体物の機内持込制限に関するガイドラインが各締約国に通知され、我が国においても、国際的な協調の観点から平成19年3月より国際線の航空機客室内への液体物持込制限を導入した。
2)次世代航空保安システムの構築
航空交通の安全確保を最優先としつつ、諸外国との交流拡大等に伴う航空交通量の増大に対応するため、MTSAT(運輸多目的衛星)の運用開始に合わせ、平成18年7月から、太平洋上を航行する航空機の管制間隔を短縮した。
3)施設整備の推進
航空機の悪天候時における就航率の改善を図るため、青森空港や与那国空港における航空保安施設等の整備や性能向上を推進した。

  (4) 海上交通の安全対策

海上交通の安全を確保するため、船舶への立入検査を行ったほか、あらゆる機会を通じて指導取締りを実施した。
また、ライフジャケットの着用率を向上させるための方策について検討を行うとともに、ライフジャケットの常時着用、適切な連絡手段の確保(防水パックに入れた携帯電話等の携行)、緊急通報用電話番号「118番」の有効活用を三つの基本とする「自己救命策確保キャンペーン」を推進した。
さらに、民間による救助体制や洋上救急体制に対して積極的に支援・指導を行うなど、救難体制を確保するための様々な施策を講じた。
酒酔い操縦や危険操縦の禁止、ライフジャケットの着用等の小型船舶に係る遵守事項について、関係機関と共に周知・啓発活動及びパトロール活動を行い、小型船舶の航行の安全向上を図った。
このほか、放置艇の解消をひとつの目的として、プレジャーボートの係留・保管場所の情報を利用者に広く提供するための情報サイトである「海覧版~プレジャーボート保管場所情報~」(http://www.kairanban21.jp)を公開し、安全、快適かつ適正なプレジャーボートの利用環境の整備を行った。

  (5) 宿泊施設の防火安全対策

平成15年10月から導入された防火対象物定期点検報告制度、自主点検報告表示制度及びこれらの制度の点検基準に適合している場合にそれぞれ表示できる防火セイフティマーク(防火基準点検済証、防火優良認定証)、防火自主点検済証について、積極的に広報・周知を図るとともに、消防法令違反があるため当該制度の適合マークが表示できないものに対しては、違反是正を徹底するよう消防機関に要請した。
なお、防火優良認定証については、平成18年10月1日から消防の安心・安全マークとして広く国民に認知されている消防章を基調としたデザインに見直しを行い、関係者に広報・周知を図った。
また、火災時の初動対応能力の向上、防火管理体制が手薄となる夜間の体制整備、高齢者等の災害時要援護者に対する防火安全対策等の推進を図り、旅館・ホテル等の実質的な防火安全体制の維持及び充実を促進した。
旅館、ホテル等については、特に既存不適格建築物について、建築物防災週間等の機会をとらえて防災査察を実施し、改善指導に努めるとともに、一定規模以上の旅館、ホテル等に対しては「建築基準法」に基づき定期的に維持・保全の状況について調査報告を求め、必要な改善指導を行い、防火・避難上の安全の確保を図った。

▲防火基準点検済証・防火優良認定証(防火セイフティマーク)



防火対象物定期点検報告制度の点検基準に適合している施設

▲防火自主点検済証



自主点検報告表示制度の点検基準に適合している施設

  (6) 医学的見地から見た安心・安全な旅行に関する取組

旅行先での健康と安全の確保は重要な課題である。このため、医学的な見地からの安心・安全な旅行のための知識の普及等に取り組んでいる医学の専門家や旅行業界、関連業界の各関係者の取組に関する情報を交換・共有化し、関係者間の連携・協働を促進するため、「旅行と医学に関する協議会」を立ち上げた。
平成18年12月に開催された第1回協議会では、各関係者のこれまでの取組と今後実施を検討している事業等や、海外旅行における狂犬病等の予防対策について、発表及び意見交換を行った。
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