平成20年度観光の状況
第II部 平成20年度の観光の状況及び施策
第2章 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成
第1節 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成
1 地方公共団体と観光事業者その他の関係者との連携による観光地の特性を生かした良質なサービスの提供の確保 |
地域の幅広い関係者が連携して、2泊3日以上の滞在型観光ができるような観光エリアの整備を促進するため、平成20年5月16日に成立した「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律」に基づき、平成20年度は16地域の観光圏整備実施計画の認定を行い、併せて民間組織の取組を一体的かつ総合的に支援するため「観光圏整備事業補助制度」を創設し14地域を対象地域として選定した(図II-2-1-1)。また、観光圏の形成を図ろうとする地域の立ち上げ段階や「観光圏整備事業」の円滑な実施促進に係る社会資本整備を支援する観光地域づくり実践プランでは、立ち上げ段階を支援するものとして新たに2地域を選定した。
なお、地域の観光まちづくりに関する優れた事例を選定し「地域いきいき観光まちづくり」として掲載した事例集を取りまとめ、内外に情報発信するとともに、地域の人々が誰でも気軽に相談できる場として、観光庁内及び地方運輸局等に「観光地域づくり相談窓口」を設置するなど、地域の観光地づくりの取組をサポートしている。
地域一体となった観光振興を図るためには、地域の牽引役となるプロデューサー的人材が不可欠である。そのため、観光地域づくりの取組を企画・演出するとともに、必要な調整や合意形成を図り、具体的に集客効果を地域に還元することができる人材を育成・選定し、地域への橋渡しを行う「観光地域プロデューサー」モデル事業を実施し、魅力ある観光地づくりと地域の経済・雇用の活性化を推進している。
平成20年度においては、新たに茨城県石岡市、新潟県佐渡市、千葉県鴨川市の3地域のモデル地域を選定し、3名の「観光地域プロデューサー」を決定したことから、昨年度選定とあわせて8地域8名となった。また、「観光地域プロデューサー」希望者とプロデューサーを必要とする地域の情報を一元管理する「観光地域プロデューサー・データベース」の試行的運用を開始した。
台東区観光地域プロデューサー:鈴木英雄氏の講演風景
旅行者ニーズの多様化を踏まえ、地域固有の資源を活用した魅力ある旅行商品の創出・流通により、新たな旅行需要の創出と地域の活性化を図る観点から、地域の観光魅力を熟知した地元の観光関係者と旅行会社の連携・協働を促進するため、「観光まちづくりコンサルティング事業」を実施した。
具体的には、地方ブロックごとに観光カリスマや学識経験者、旅行会社等からなる「観光まちづくりアドバイザリー会議」において、地域の要請に応じて観光まちづくりに関するアドバイスを行った。
図II-2-1-1 観光圏整備による観光旅客の滞在の長期化
(4) 観光・集客サービス、地域資源の活用への支援 |
地域の特色ある産業等を観光・集客資源として活用した地域ぐるみの取組を支援するため、平成19年度に引き続き「広域・総合観光集客サービス支援事業」を実施することにより、観光・集客サービスの競争力の強化を図っている。平成20年度は、5件の取組を選定した。
構造改革特区では、これまでに1,077件の特区計画を認定し、観光振興に資する様々な計画が実施されているところである。
また、第11次提案において、第3種旅行業者が募集型企画旅行を実施できる区域について、一定の要件の下、実質的に隣接市町村と同視し得る本土間の地域を追加することができるよう提案があり、検討の結果、平成21年3月31日に全国で措置されることとなった。これにより、第3種旅行業者における地域に密着した多様な募集型企画旅行の実施がより一層促進され、観光産業の振興が図られることが期待される。
地域再生においても、これまでに1,109件(市町村合併等により現在1,098件)の地域再生計画を認定している。また、地域再生基本方針に基づき「地域の交流・連携推進プログラム」を反映した「ビジット・ジャパン・キャンペーン」や「観光圏整備事業」等の地域の特性に応じた観光振興に資する様々な取組を支援している。
2 宿泊施設、食事施設、案内施設その他の旅行に関連する施設及び公共施設の整備 |
旅館業を営む者は、「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」に基づき、都道府県ごとに生活衛生同業組合を組織し、衛生施設の改善や経営健全化のための自主的活動を行っており、国においても全国及び都道府県の生活衛生営業指導センターの行う経営指導事業等について助成を行っている。
また、ホテル・旅館に対しては、(株)日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫において、それぞれ一定の条件を満たすものに対して長期かつ低利の融資を引き続き行っている。
さらに、訪日外国人に対する接遇の向上の観点から、ホテル・旅館のうち、外国人の宿泊に適するものとして一定の基準を満たしたものについては、「国際観光ホテル整備法」に基づき登録を行い、登録を受けたホテル・旅館に対しては、地方税の不均一課税(平成20年3月末現在で登録ホテル・旅館が存在する521市町村中274市町村が軽減規定を設けている)が適用されるほか、一定条件を満たしたものに対しては、外国語放送設備、高速通信設備の導入に係る課税の特例措置が適用される。
また、平成20年度には、「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律」に基づく滞在促進地区内のホテル・旅館に対して、宿泊サービスの改善・向上のための施設整備への特別貸付制度や旅行業法の特例等の支援措置を創設した。
「地域自立・活性化総合支援制度」により、自立的な広域ブロックの形成に向け、民間と連携した地域発意の計画に基づく広域的な経済活動等を支える基盤整備と地域づくりに対するソフト面での支援等を一体的に促進している。
本制度は、都道府県が作成する広域的地域活性化基盤整備計画に基づき年度ごとに一括して交付金を交付する「地域自立・活性化交付金」等で構成され、平成20年度は、広域観光の活性化(46地域)等を事業目的とした、36都府県64地域に対して「地域自立・活性化交付金」を交付した(図II-2-1-2)。
図II-2-1-2 地域自立・活性化交付金による支援
地域の歴史・文化・自然環境等の特性を生かした個性あふれるまちづくりを実施し、全国の都市再生を推進する制度であるまちづくり交付金により、観光振興や観光交流促進等の地域のまちづくりの目標に沿ったハード事業からソフト事業まで幅広い事業を支援しており、以上のような取組を、今後も引き続き実施することとしている。
地域活性化の核の形成やまちなみを整備することにより地域の魅力の向上を図るため、本荘中央地区(秋田県由利本荘市)等において土地区画整理事業の施行者と住民等が協力したまちづくり委員会等の設置・運営、地域の特性に応じた公共施設のグレードアップ等に支援を行い、地域独自の個性ある観光都市の形成を促進しており、今後も引き続き実施していくこととしている。
街なみ環境整備事業により、住宅等の外観の修景、電線の地中化、道路・公園等の地区施設の整備、景観重要建造物の整備等を行っており、今後も引き続き実施することとしている。
街なみ環境整備事業による住宅等の外観の修景、電柱の地中化等の実施事例【今井町地区(奈良県橿原市)】
(6) 都市再生・地域再生に資する市街地再開発事業の推進 |
駅周辺を始めとした中心市街地等において、地域の観光の拠点となる商業施設等の建築物や、道路、広場等の公共施設の整備を行うことにより、観光地にふさわしい魅力ある都市空間の形成を促進しており、今後も引き続き実施していくこととしている。
住民と連携しつつ、周辺の環境と調和した防護柵の設置や道路緑化等の景観に配慮した道路整備を推進しており、引き続き景観に配慮した道路整備を実施することとしている。
多様な主体による協働の下、道を舞台に、地域資源を生かした美しい国土景観の形成を図り、観光の振興や地域の活性化に寄与することを目的とする「日本風景街道」を推進した。
平成21年1月末現在105ルートが風景街道として登録されており、これらのルートについて、道路を活用した美しい景観形成や地域の魅力向上に資する活動を支援しており、以上のような取組を、今後も引き続き実施することとしている。
観光地における交通渋滞や路上駐車の増加といった問題の解決に向け、観光地周辺で自動車から公共交通機関に転換させるパークアンドライド等の社会実験を行っており、今後も引き続き実施することとしている。
親水レクリエーションの促進を図るため、「総合水系環境整備事業」等により、河川の高水敷等を公園、緑地、運動場、カヌーポート等に利用するための諸施設の整備を実施した。
また、地域の民間提案等に基づき河川敷地をオープンカフェ等として利用する社会実験を実施するなど河川空間を活用した触れ合いの場やにぎわいの創出を図った。
さらに、ダムを生かした水源地域の自立的、継続的な活性化を図るため「ダムの水源地域ビジョン」の策定・推進を図っている。また、「総合水系環境整備事業」によりダム湖及びダム湖周辺の環境整備を実施しており、今後もこれらの取組を引き続き実施していくこととしている。
砂浜の保全・回復、海辺を利用しやすくする施設や環境の整備、海辺へのアクセスに配慮した施設の整備等、海岸利用の増進に資する取組を推進した。特に、海岸利用を活性化し、海岸の観光資源としての魅力を向上させるなど、地域特色を生かした自主的・戦略的取組を推進するため、海岸環境整備事業を拡充し、広域的な一連の海岸において多様なニーズを踏まえた海岸利用活性化計画の策定及び計画に基づく施設整備を支援した。また、関係機関と緊密な連携を図りつつ広範囲の漂着ゴミ等の対策を推進し、観光資源としての海岸の魅力向上を図った。
また、海岸の整備と併せ、背後地における公園、道路等の整備を計画的、一体的に行うことにより、地域住民が海と親しみ、集い、憩える場としてコースタル・コミュニティ・ゾーン(C.C.Z.)の整備を推進した。さらに、海水浴と森林浴を同時に楽しめるなど潤いある生活環境の整備として、「白砂青松」に代表される自然豊かな海についての森の整備対策事業を14箇所で実施した。
海岸保全施設や利便施設の整備事例
都市の中の水辺は観光資源としても大きな可能性を有しており、水辺の保全・再生に向け、全国7箇所のモデル地域(船橋市、横浜市、厚木市、大津市、堺市、神戸市、北九州市)の取組を基に、下水処理水、雨水、地下水等の活用による平常時の流量の回復、維持管理及び活用方策に関する計画策定、具体的な設計、施工等についてまとめた「都市の水辺整備ガイドブック」を作成したところであり、これらの取組を引き続き実施していくこととしている。
安全で快適な通行空間の確保、都市景観の向上、観光振興、地域活性化等を図るため、「無電柱化推進計画」(平成16~20年度)に基づき、幹線道路に加えて、主要な非幹線道路も含めた面的な無電柱化を推進し、電柱・電線の無い良好な街並み景観の形成を図った。
観光地における無電柱化の例(山形県銀山温泉)
|
|