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平成20年度観光の状況

第II部 平成20年度の観光の状況及び施策

第2章 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成

第3節 第3節 観光旅行者の来訪の促進に必要な交通施設の総合的な整備



  1 国際交通機関の整備


  (1) 国際拠点空港の整備等

成田国際空港の北伸による平行滑走路整備事業、羽田空港の再拡張事業等を着実に推進しており、今後も引き続き整備することとしている。中部国際空港については、旅客用エプロン(駐機場)拡充等により利用者利便の向上を推進している。

  (2) 旅客ターミナルの整備

関西国際空港については、国際線に引き続き、爆発物検出装置等の旅客用手荷物処理システムへの組み込み(インライン化)による国内線チェックインの円滑化を実施している。新千歳空港については、税関・出入国管理・検疫(CIQ)を含む国際線旅客ターミナルの機能向上のための施設整備等を早期供用に向けて実施している。
旅客船ターミナルについては、クルーズ船誘致による観光交流の促進を通じた地域振興を図るため、長崎港等において、旅客船ターミナル等の施設を充実させ、旅客の快適性に配慮しつつ、旅客船の安定的な寄港等を確保するための整備を行った。
今後も引き続き、計画的な整備を実施することとしている。

  (3) 航空保安システムの整備

航空交通の安全確保を最優先としつつ、航空交通容量の拡大を図り、より多くの観光旅行者の往来を可能とするため、2機の運輸多目的衛星(MTSAT)による航空管制業務を開始したことを踏まえ、洋上の管制間隔を50海里から30海里に短縮したほか、特に空域が混雑している首都圏においては、平成20年9月に横田空域の削減を実施し、運航の円滑化を図っており、加えて、広域航法(RNAV)の導入計画を1年前倒しするとともに、航空交通管理(ATM)センターの機能を充実・強化している。
また、空港の就航率向上を図るため、計器着陸装置(ILS)の高カテゴリー化・双方向化等を進めている。

  (4) 航路の整備

クルーズ船を受け入れる環境の整備のため、船舶がふくそうする海域において、航行船舶の安全を確保するため、関門航路等において開発及び保全の事業を行っており、今後も引き続き、計画的な事業を実施することとしている。

  2 国際交通機関に関連する施設の整備


  空港・港湾へのアクセス向上

成田国際空港へのアクセスについては、成田国際空港と都心部との間の所要時間を30分台に短縮するべく、成田高速鉄道アクセス線等の整備を推進するとともに、京成電鉄日暮里駅における乗換利便性向上を図るための改良事業、成田国際空港関連道路の整備を推進した。
また、東京国際空港(羽田)へのアクセス改善のための京急蒲田駅の改良事業、那覇空港へのアクセス改善のための那覇空港自動車道の整備等を推進した。
さらに、首都圏の国際競争力を維持・強化していく観点から、成田国際空港・東京国際空港(羽田)の一体的活用を推進するに当たり、都心と両空港及び両空港間の鉄道アクセスの更なる強化を図るため、首都圏空港として相応しいアクセス改善のための調査、検討を実施しており、今後も引き続き、空港へのアクセス改善のための整備等を推進することとしている。

  3 国内の幹線交通に係る施設の整備


  (1) 空港の整備

羽田空港の4本目の滑走路等を整備する再拡張事業を推進するとともに、一般空港については、滑走路の延長等継続事業及び既存空港の施設の機能保持を行っている。今後も引き続きこれらを推進し、国内航空ネットワークを拡充する。
また、航空輸送サービスの質の向上を図り、観光立国の実現等に資するため、空港アクセスの改善、空港を活用した観光交流の促進、空港施設のバリアフリー化等、既存ストックを活用した空港等の機能高質化を図っており、今後も引き続き、このような取組を推進する。

  (2) 幹線鉄道の整備

観光旅行者の広域的な移動の高速化・円滑化を図るため、高速鉄道ネットワークの拡充を進めている。
整備新幹線については、平成20年4月に九州新幹線(長崎ルート)武雄温泉~諫早間を着工したほか、北海道新幹線新青森~新函館間、東北新幹線八戸~新青森間、北陸新幹線長野~金沢間及び福井駅部、九州新幹線(鹿児島ルート)博多~新八代間において、平成16年12月の政府・与党申合せに基づき着実な整備を進めた。また、新たな区間の着工に向け、政府・与党において検討を行っているところである。
在来幹線鉄道については、線路の曲線改良、部分複線化等既存の鉄道施設を最大限に活用し、高速化を図っている。平成20年度には、宇野線、本四備讃線において駅周辺整備等沿線のまちづくり事業と連携した高速化事業が完了しており、今後も引き続き、幹線鉄道の整備を進めていくこととしている。

  (3) 高速道路等の整備等

地域の活性化、都市部の深刻な渋滞の解消等の政策課題に対応するための料金社会実験を平成19年度より引き続き実施した。また、地域の観光振興等を図るため、「安心実現のための緊急総合対策」(平成20年8月29日決定)として、地方部に休日昼間5割引を導入したことに加え、「生活対策」(平成20年10月30日決定)では、地方部の休日で、終日5割引(上限料金1,000円)とするなどの割引拡大を行った。
また、スマートインターチェンジ(ETC専用インターチェンジ)の社会実験を全国25箇所で実施し、追加インターチェンジ整備の促進を図った(図II-2-3-1)。
高規格幹線道路の供用延長については、平成20年度に東海北陸自動車道(飛騨清見~白川郷)等、新たに136kmを供用し、9,468km(平成21年3月末現在)となった。

図II-2-3-1 新鶴スマートインターチェンジの整備効果



  4 国内の地域交通に係る施設の整備


  (1) 地域公共交通の活性化・再生

観光振興を図る観点からも地域公共交通の活性化・再生を推進することが重要となっているが、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づき、平成20年度においては、同法を活用し、鉄道、コミュニティバス・乗合タクシー、旅客船等の多様な事業に創意工夫をもって取り組む協議会に対し、パッケージで一括支援する新たな支援制度「地域公共交通活性化・再生総合事業」が創設された。
20年度は、調査事業(連携計画策定のための調査等)168件、計画事業(連携計画に位置づけられた事業を実施する事業)81件、合計249件の認定を行った。

  (2) 鉄道の整備等

都市鉄道については、平成20年6月に東京メトロ副都心線(池袋~渋谷)、同年10月に京阪電鉄中之島線(中之島~天満橋)、平成21年3月に阪神電鉄阪神なんば線(西九条~大阪難波)が開業し、都市鉄道ネットワークの拡充が図られた。
また、既存ストックを有効活用しつつ利用者利便の増進を図る都市鉄道等利便増進法に基づき、速達性向上事業(相鉄・JR直通線(西谷~横浜羽沢付近)、相鉄・東急直通線(横浜羽沢付近~日吉))及び駅施設利用円滑化事業(阪神三宮駅の改良)を推進した。
また、速達性に優れ、バリアフリーや環境にも優しいLRTシステム(次世代型路面電車システム)を整備することにより、観光旅行者が円滑に移動できる公共交通の整備・充実を図ることとしており、平成20年度にはLRTシステム整備費補助金により、豊橋鉄道等で新型のLRV(低床式車両)が導入された。

  (3) ICカード・乗車船券の導入・共通化支援

ICカード乗車券については、平成20年5月に西日本鉄道が「nimoca」を、10月にはJR北海道が「Kitaca」をそれぞれ導入した。なお、「Kitaca」とJR東日本の「Suica」との相互利用が平成21年3月から開始されている。
今後も平成21年春にJR九州、福岡市交通局がICカード乗車券の導入を予定しており、平成22年度からは「nimoca」を含めた3事業者相互間並びに「Suica」との相互利用も予定されている。
このように、各地においてICカードの導入が進み、また、首都圏のICカードとの相互利用も進められており、利用者利便の更なる向上が期待される。
なお、バスICカードについては平成20年3月末現在、導入事業者数106、バス車両数19,506と増加している(図II-2-3-2)。

図II-2-3-2 ICカード導入におけるバス事業者数及びバス車両数



  (4) 旅客ターミナルの整備

石垣港等において、旅客船ターミナル等の施設を充実させ、旅客の快適性及び旅客船の安定的な寄港等を確保するため整備を行っており、今後も引き続き、計画的な整備を実施することとしている。

  (5) 地域内の道路の整備等

市町村道から国土構造の骨格を形成する高速道路等に至る道路ネットワークの整備を推進した。また、一般道路において「休憩機能」、「情報発信機能」、「地域の連携機能」の三つを併せ持つとともに、それ自体が観光資源にもなる「道の駅」の整備を推進しており、今後も引き続き実施していく。
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