平成20年度観光の状況
第II部 平成20年度の観光の状況及び施策
第4章 国際観光の振興
第1節 外国人観光旅客の来訪の促進
1)ビジット・ジャパン・キャンペーンの概要
我が国の観光魅力は、外国人の共感を呼び起こす「ソフトパワー」であり、グローバリゼーションの下、一人一人の交流を通じ相互理解の促進を図ることは、国家間の外交を補完し、安全保障に大きく貢献するものである。また、我が国の少子高齢化に伴う人口減少や周辺諸国の経済発展に対応して、観光交流を促進し、地域活性化に貢献するとともに、外国人観光旅客の受入れに伴う国内ビジネスを後押ししていく必要がある。
これを踏まえ、平成15年より、「YOKOSO!JAPAN」のロゴ・キャッチフレーズの下、日本の観光魅力を発信するとともに、魅力的な訪日旅行商品の造成支援等を行うビジット・ジャパン・キャンペーンの取組を官民一体で推進してきており、平成15年に521万人であった訪日外国人旅行者数は、平成20年には835.1万人となった。
「YOKOSO!JAPAN」ロゴ
2)ビジット・ジャパン・キャンペーンの実施体制
ビジット・ジャパン・キャンペーンは国土交通大臣・観光立国担当大臣を本部長とし、旅行業者、運送事業者、マスコミ等を始めとする民間企業・団体のほか、国・地方自治体からなるビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部を設置し、その下に執行委員会及び事務局をおいて、取り組んできた。平成20年4月より(独)国際観光振興機構(通称:日本政府観光局)が事務局を担当している。
また、海外においては、在外公館の長(大使や総領事)を会長とし、現地における関係団体・企業等の代表で構成されるビジット・ジャパン・キャンペーン現地推進会を設置している。
3)ビジット・ジャパン・キャンペーン事業
ビジット・ジャパン・キャンペーンは、日本を訪れる外国人旅行者の多い12か国・地域(韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア)を重点市場として定めるとともに、各市場の特性を踏まえ、重点市場を対象として外国人旅行者の訪日促進のための事業を実施している。
また、平成19年度より、重点市場に次ぐ3か国(インド、ロシア、マレーシア)を有望新興市場として定め、効果的なプロモーションに取り組むことが出来るよう戦略的な市場調査を実施している。
外国人旅行者の訪日促進のための事業内容としては、主に海外メディアの日本への招請・取材支援、海外のテレビCM等による広告宣伝、ウェブサイトによる情報発信、海外の旅行博覧会等への出展等を行い、観光目的地として日本への関心を高め、訪日旅行の需要の喚起を図るとともに、海外旅行会社の日本への招請や商談会の実施による魅力的な訪日旅行商品の造成・販売支援や、青少年交流の拡大に向けた訪日教育旅行の誘致等を行っている。
シンガポールにおける旅行フェア(NATAS)日本パビリオン
4)ビジット・ジャパン・キャンペーンにおける具体的な取組の例
1)YOKOSO!JAPAN トラベルマート
訪日旅行商品の造成を支援するため、海外の旅行会社、メディアを日本に招請し、国内の観光地を視察させるとともに、日本の旅行会社、宿泊業者等との情報交換やビジネス交渉等を行う大商談会「YOKOSO!JAPAN トラベルマート」を実施している。
平成20年6月の「YOKOSO!JAPAN トラベルマート2008春」では、11の国・地域より海外の旅行会社105名が日本を訪れ、日本の254の観光関係団体・企業との商談会を実施した。また、平成20年10月の「YOKOSO!JAPAN トラベルマート2008秋」では、35の国・地域より海外の旅行会社、メディア287名が日本を訪れ、日本の393の観光関係団体・企業との商談会を実施した。
YOKOSO!JAPAN トラベルマート2008秋における商談会の様子
2)YOKOSO!JAPAN WEEKS
東アジアの旧正月前後の期間を対象に、訪日旅行促進の集中的キャンペーンを実施するとともに、国内において外国人観光客を受け入れ、おもてなしの心を醸成するため、「YOKOSO!JAPAN WEEKS」として、国内外における集中的キャンペーンを実施している。
「YOKOSO!JAPAN WEEKS 2009」は平成21年1月20日から同年2月28日の期間で行われ、「ショッピング三昧」をテーマとして、外国人旅行者向けの割引やプレゼント等約120件の特典や、「日本の文化・芸術を体験する旅」をテーマとして、約50件の外国人向けの体験活動メニューを用意した。
「YOKOSO!JAPAN WEEKS」ポスター
3)観光広報大使等の任命、活用
「観光広報大使」として女優の木村佳乃さんを任命し、様々な機会を通じて日本の観光魅力のPRを実施している。
また、平成20年5月には新たに、ハローキティ (Hello Kitty)を「ビジット・ジャパン・キャンペーン中国・香港観光親善大使」に任命し、中国・香港における新聞等の広告宣伝や、国際旅行博覧会・展示会等の出展等の機会において、日本の観光魅力のPRを行った。
「ビジット・ジャパン・キャンペーン中国・香港観光親善大使」にハローキティを任命
4)YOKOSO!JAPAN大使
外国人旅行者の受入れ体制に関する仕組みの構築や外国人に対する日本の魅力の発信といった努力に公的評価を付与することにより、訪日促進の諸活動の裾野をさらに広げ、一層の外国人旅行者の訪日を推進するため、他の関係者の手本となる優れた取組を行い、「YOKOSO!JAPAN大使」選定委員会において選定された者を「YOKOSO!JAPAN大使」として任命することとし、第1弾17名に加え、平成20年6月に第2弾として10名、平成21年2月に12名を決定した(図II-4-1-1)。
図II-4-1-1 「YOKOSO!JAPAN大使」(平成20年度選定)の一覧
知的財産戦略本部においては、「知的財産推進計画2008」(平成20年6月18日、知的財産戦略本部決定)に基づき、コンテンツ、食、ファッション、デザイン等の日本のソフトパワーを生み出す産業を「ソフトパワー産業」として位置づけ、これら産業の振興や海外展開を総合的に推進するため、平成21年3月に「日本ブランド戦略」を策定した。この中において、ビジット・ジャパン・キャンペーンとの連携を強化していくこととしている。
(3) 北海道洞爺湖サミットを契機とした観光振興の取組 |
平成20年7月7日~9日に「北海道洞爺湖サミット」が開催されたが、これを契機に、国内外に北海道及び日本の魅力を情報発信するため、平成19年11月に開催された「観光立国推進戦略会議」において取りまとめられた「北海道洞爺湖サミットを契機とした北海道・日本の魅力の世界への発信及び観光振興に関する提言」に基づき、花を中心とする豊かな自然や海山の食等、北海道の地域特性を生かした北海道ブランドの確立、「おもてなしの心」による接遇の向上、的確な情報発信等の取組を推進し、観光振興を図った。
(4) (独)国際観光振興機構(JNTO)による情報発信等 |
(独)国際観光振興機構(JNTO)(通称:日本政府観光局)においては、訪日外国人旅行者の多い国・地域に13の海外事務所を設置しており、在外公館を始め、現地の旅行業界、メディア、政府とのネットワークを駆使して、旅行市場情報の収集、我が国の観光魅力の広報・宣伝、現地旅行会社に対する訪日旅行商品の造成・販売支援、海外セールスを実施する日本の地方自治体・民間企業に対するコンサルティング等、ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部事務局として活発な活動を展開し、訪日外国人旅行者の増大を図った(図II-4-1-2)。
また、旅行目的地としての日本の認知度向上を図ると共に、訪日旅行者による旅行計画検討や各種予約等をサポートするため、9言語(英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語)による訪日旅行情報のポータルサイト(http://www.jnto.go.jp)の運営を行っている。
図II-4-1-2 日本政府観光局(JNTO)の海外事務所(13箇所)
各地方運輸局等においては、地方自治体を始めとする地域が行う外国人旅行者の訪日促進のための取組と連携して、地域の観光魅力を海外に発信するとともに、地域への魅力的な訪日旅行商品の造成等を支援するビジット・ジャパン・キャンペーン地方連携事業を実施している。
(6) 大使・総領事公邸等を活用した観光プロモーション等の実施 |
大使館、総領事館等在外公館においては、日本の魅力を発信する活動を実施し、観光客誘致のために積極的に取り組んだ。具体的には、在外公館長を会長とするビジット・ジャパン・キャンペーン現地推進委員会の開催、海外における観光展や見本市等への出展、観光をテーマとする講演会等を行った。また、様々な文化事業を実施するとともに、現地マスメディア、ホームページを通じ、我が国の伝統及び現代文化、先端技術や美しい自然、地方の魅力等を総合的に紹介した。さらに、大使・総領事公邸、広報文化センター等において、地方公共団体等と連携して観光広報関連事業等を開催し、平成20年度は、在マイアミ日本国総領事館における鹿児島市の観光セミナー等を14件実施した。
通常東京に在住している駐日各国大使等に地方を訪問する機会を提供することにより、我が国の多様な魅力を知ってもらい、その魅力を各国に発信してもらうことに努めた。
1)駐日各国大使の地方視察
年に一度、駐日各国大使を対象に、地方公共団体等地域の関係者と提携し、地方の視察プログラムを実施し、地方独自の文化、伝統、産業、自然環境等我が国の多様性に富む魅力を知ってもらうよう取り組んでいる。平成20年度は10月15日~17日(2泊3日)の日程で香川県において実施した。今後も引き続き実施することとしている。
2)駐日外交官家族の一般家庭ホームステイ受入れ
年に一度、駐日の外交官家族を対象に、一般家庭でのホームステイにより、我が国の日常の生活を体験するとともに、お互いの文化交流プログラムを実施している。
平成20年度は平成21年3月頃実施を予定している。
地域レベルの国際交流・国際協力を一層推進することを目的として、幅広く国際交流に携わる団体会議、自治体の国際交流支援のためのレセプション、国際会議や国際情勢等各種情報の提供を積極的に実施した。
さらに、我が国の大使・総領事等が、一時帰国等の機会を利用して、任国・地域とゆかりのある我が国地方公共団体等を訪問し、地方公共団体等との意見交換を行い連携を強化した。平成20年度は、35件実施(平成21年1月13日現在、予定を含む)。
芸術家、文化人等、文化に携わる者を、一定期間「文化交流使」に指名し、世界の人々の日本文化への理解の深化や、日本と外国の文化人のネットワークの形成・強化につながる活動を展開しており、平成20年度からは、芸術団体が海外公演する機会を活用して「文化交流使」としての活動をしていただく「短期指名型」を創設し、日本文化の海外発信を強化している。
日本の文化について把握し、国内外の芸術団体や芸術系大学等に情報提供する等、日本文化を総合的に発信するホームページの構築に向けて、発信情報の整備をしており、今後も引き続き実施することとしている。
また、在外公館や(独)国際交流基金による、公演、展示、映画祭といった文化交流事業を通じ、アニメや漫画といったポップカルチャーを含む日本の文化や社会、更には日本人の価値観に対する理解を深め、日本への信頼へとつなげていくための努力を行っている。特に、各国との外交上の節目の年には、規模の大きい総合的な周年事業を政府関係機関や民間団体・企業等と連携して行い、重点的な交流を行うことで、一層効果的な対日理解を目指している。2008年には、日インドネシア国交樹立50周年を記念した日インドネシア友好年、日本人ブラジル移住100周年を記念した日伯交流年が行われた。
在外公館等で開催するレセプション等において、現地の要人やオピニオンリーダー等を対象として、高品質な日本食・日本食材を提供し、その魅力を伝える「WASHOKU-Try Japan,s Good Food」事業や、海外に在住し日本食・日本食材等の海外での紹介・普及等に多大に貢献してきた功労者に対して表彰を行う日本食海外普及功労者事業、海外の高級スーパー等における常設店舗の設置や日本食材等・日本食文化PRイベントの開催、海外の食品見本市への出展を行い、あわせて日本食紹介パンフレットの配布等を行った。
また、海外日本食レストランの信頼度を高め、日本食の普及を通じて日本食材の輸出促進を図る取組を実施した。今年度はモスクワ、スイス、ニューヨーク、シンガポールに日本食レストラン関係者のネットワークを新たに作るとともに、昨年設立された地域を含め、それぞれの国・地域において、日本食・日本食材等に関する情報を発信する普及啓発活動や料理人の調理技術・衛生知識の向上等を目指す教育研修活動等を実施した。また、全米レストラン協会主催の全米レストラン協会展(NRAショー(シカゴ))に、日本食の特徴である「うま味」を紹介するブースを出展した。
さらに、平成19年に選定した「農山漁村の郷土料理百選」を基に、全国各地の郷土料理を紹介した外国人向けの英語版パンフレットを作製した。今後、ビジット・ジャパン・キャンペーンとも連携しながら、海外へ日本食・日本食材等の情報発信を推進する。
ビジット・ジャパン・キャンペーンとも連携した外国人向けのパンフレット
ポップカルチャーへの関心を日本そのものに対する理解、関心へとつなげていくために、在外公館及び(独)国際交流基金を通じた文化交流を促進している。ポップカルチャーを通じた文化外交の一環として、平成20年3月に「アニメ文化大使」事業を創設し、ドラえもんが大使に就任した。同時に在外公館等で、日本をPRするビデオクリップ及びアニメ映画の上映等を行った。また、第2回国際漫画賞を実施し、46の国と地域から368作品の応募を得た。
また、我が国メディア芸術の次代を担う優れたクリエイターを発掘・育成し、国内各地のメディア芸術拠点の活動の支援・拠点連携を図るとともに、平成21年2月4日~15日に「メディア芸術祭」(来場者数55,234名)を開催し、優れたメディア芸術作品を国内外に積極的に発信した。
アニメ文化大使にドラえもんが就任
(13) 和のコンテンツの情報発信及びネットワーク化 |
我が国への外客誘致を行う上で、特に、外国人富裕層(ラグジュアリー層)をターゲットとして誘致するビジネスモデルを構築し、外需による我が国経済の活性化を図るため、地域ソフトパワーの国外等への強力な訴求を目的とした我が国における「ラグジュアリー・トラベル・マーケット」の整備推進に向けて、日本が世界に誇る高品質で「本物」のコンテンツのネットワーク等について検討を行うとともに、外需と当該コンテンツ等とのマッチングを図るため、富裕層を顧客に持つ海外バイヤー20名と日本の高品質な「和」のコンテンツを提供する国内出展企業24社との我が国で初めての商談会等「ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム(JLTF)」を開催した。
また、海外に対するプロモーション強化を目的として、フランス・カンヌで毎年開催される、高級・豪華旅行をテーマとした旅行博「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(ILTM)」に一昨年に引き続き出展し、日本の「和」のコンテンツの魅力を発信した。
平成21年2月に開始されたNHKの新たな外国人向けテレビ国際放送の実施のため、番組制作等を行う子会社の設立、すべての番組の英語化、視聴可能地域の大幅拡大等の取組を行った。
2 国内における交通、宿泊その他の観光旅行に要する費用に関する情報の提供 |
欧米を中心として、海外では日本は物価が高いというイメージがあり、訪日旅行を敬遠してしまう傾向もあることから、このイメージを払拭するため、諸外国と我が国の物価を比較し、飲食店や宿泊施設等の価格の実態に係る情報を紹介する「AFFORDABLE JAPAN」パンフレットを作成し、様々な機会を通じて海外において配布している。
「AFFORDABLE JAPAN」パンフレット
「外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の振興に関する法律(外客旅行容易化法)」によって、特に多数の外国人観光客が利用する区間等については、公共交通事業者等(平成20年4月現在249事業者)に対して「情報提供促進実施計画」の作成、実施が義務付けられており、現在、公共交通事業者等によって、同計画に基づいた外国語等による「情報提供促進措置事業」が実施されているところである。
また、平成20年度は、横浜駅等の大規模交通結節点である鉄道駅9箇所及びバスターミナル3箇所にて、外国人の視点から見た案内表示の使いやすさについて、留学生等の協力を得て、外国人による「ひとり歩き点検隊」を実施した(図II-4-1-3)。
鉄軌道事業者においては、駅等における外国人旅行者等に対する情報提供については、「公共交通機関における外国語等による情報提供促進措置ガイドライン」に則した整備を行っており、出入口、のりば、きっぷ売り場等の基本情報について、日本語に加え、英語、ピクトグラムによる案内表示を行った。また、首都圏等の特に外国人利用の多いエリアにおいては、これらに加え、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語の多言語化にも積極的に取り組んでおり、バスターミナルにおいては、外国人旅行者の利便を図るため外国語による案内表示等に関する計画策定を義務付け、それ以外の策定が義務付けられていないバスターミナルについても案内表示の対応を促進した。今後も引き続き、情報提供促進措置、案内表示対応を推進していく。
横浜駅の「ひとり歩き点検隊」の様子
図II-4-1-3 外国人による「ひとり歩き点検隊」実施箇所
3 国際会議その他の国際的な規模で開催される行事の誘致の促進 |
1)国際会議等の誘致・開催をめぐる動き
国際会議を我が国に誘致し、我が国において国際会議を開催することは、我が国の情報発信力の強化、地域活性化に加え、国際交流の拡大、観光立国の推進にも資する重要な取組である。
そのため、「観光立国推進基本計画」において、「今後5年以内に我が国における国際会議の開催件数を5割以上伸ばし、アジアにおける最大の開催国を目指す」との目標が掲げられた。
平成20年においても6月、12月に全府省庁がメンバーとなる国際会議開催・誘致拡大局長級会合を開催し、引き続き、「国際会議の開催・誘致推進による国際交流拡大プログラム」に沿って、国を挙げた誘致・開催推進体制の強化を図っている。
こうした取組の結果、我が国における平成19年の国際会議開催件数は、平成18年の166件から448件と大きく伸ばし、アジア2位(世界5位)となった。
なお、件数が大きく伸びた理由として、従来の国際会議の統計基準が緩和されたこと、また、国際会議開催・誘致拡大局長級会合の枠組みを活用して、初めて我が国の国際会議開催実績について、国際会議統計機関のスケジュールに合わせて各府省庁・都市・会議場・大学等に対して網羅的に調査・集約の上、国際会議統計機関に報告したことも一因である。
しかしながら、「観光立国推進基本計画」に定められた目標値における基準に照らすと、平成19年の国際会議開催件数は216件であると推計され、252件の目標値には達しておらず、引き続き、国際会議開催・誘致に向けた取組を積極的に推進していく必要がある。
2)国際会議等の誘致・開催推進の具体的な取組
国際会議の誘致・開催を推進するため、主に、以下の取組を実施した。
国際会議の誘致支援
観光庁のコンサルティング窓口を通じて、関係省庁とも連携し、所管大臣等による招請状の発出、在外公館による国際会議の開催国決定権者等に対する働きかけ等の支援を実施した。また、海外において行われる国際コンベンション見本市への出展や、国際会議の開催国決定権者等の我が国への招請を通じて、国際会議の開催適地としての日本の魅力をPRした。平成20年度から国際会議の開催地決定権者等に対する誘致働きかけ等を行うために実施される説明会、レセプション等について、観光庁が共催することで支援を行った(表II-4-1-4)。
国際会議の開催支援
平成20年度から各府省庁が開催する国際会議において、観光庁が共催することにより、観光交流事業等の実施を促進するとともに、特定公益増進法人である(独)国際観光振興機構において、寄附金・交付金制度を通じた国際会議の開催支援を行い、円滑な開催のためのノウハウの提供等の支援を実施した。
国際会議観光都市
「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関す る法律(コンベンション法)」に基づき、国際会議の誘致に熱心な市町村を国際会議観光都市として認定し(全国で51都市)、(独)国際観光振興機構(JNTO)等による支援を行っている。
国際ミーティング・エキスポ(IME)
平成20年12月、東京国際フォーラムにおいて、我が国で唯一の国際コンベンション見本市である「国際ミーティング・エキスポ(IME)2008」を開催した。同見本市においては、国内外の国際会議関係団体・企業、地方自治体、メディア等が一堂に会し、情報交換や商談会等が行われた。
表II-4-1-4 誘致に成功した国際会議の例
3)沖縄における国際会議等の誘致・開催推進の具体的な取組
沖縄での国際会議等の開催は、「国際会議等各種会議の沖縄開催の推進について」(平成12年6月20日閣議了解)を踏まえ、平成20年6月には、北海道洞爺湖サミットに先立ち、沖縄において地球規模の課題解決に向けた科学技術の強化等について議論するため、初の「G8科学技術大臣会合」が開催された。
4)国際会議等の北海道開催の推進について
北海道での国際会議等の開催についても、「国際会議等の北海道開催の推進について」(平成20年7月4日閣議了解)を踏まえ、北海道洞爺湖サミットの開催を契機に、従来から進めてきた国際会議等の誘致の取組を強化することとしており、政府としても、新たな北海道総合開発計画を着実に推進する観点から、各省庁連絡会議を設けるとともに、基本方針を申し合わせ、今後必要な支援を行っていくこととなった。
内外の芸術家、文化人等を招へいし、座談会・講演・鼎談等の形式により世界の文化芸術の最新の諸相や動向について語り合うことを目的として国際的な文化フォーラムを平成15年から開催している。
平成20年度は10月11日から「文化の多様性」を共通テーマに東京・京都・奈良で3つのセッションを行い、世界に向け文化芸術のメッセージを強く発信しており、今後も引き続き実施することとしている。
4 外国人観光旅客の出入国に関する措置の改善、通訳案内サービスの向上その他の外国人観光旅客の受入れの体制の確保等 |
観光立国や規制改革の動きを踏まえ、申請から5労働日以内の発給、代理(旅行業者)による申請受理等、外国人に対する訪日査証発給の便宜を図っている。また、特定の国・地域においては観光のための査証を免除しており、現在、その対象となるのは62か国・地域に及び、訪日外国人数で上位を占める韓国、台湾、香港も含まれる。
中国においては、ここ数年訪日旅行者が急増しているが、平成12年9月から団体観光客に対して査証を発給しており、平成20年の団体観光査証発給数は約35万1千件に達し、前年に比して約34%増加した。また、少人数で自由な観光との要望にこたえ、平成20年3月から一定の経済力のある家族に対しても査証を発給することとした。
今後とも、より一層の査証発給の便宜を図っていく一方、不法滞在犯罪、テロ等を防ぐため査証官の増強や査証審査システムの更新に努めていく。
地方空港への国際定期便の就航、チャーター便の誘致等が活発化しているため、職員が常駐していない地方空海港への出入国審査を行う職員の派遣や、多くの地方空港への乗り入れ便の出発地点である特定の外国の空港(韓国・台湾)での「事前確認(プレクリアランス)」、上陸審査の際、入国目的等に疑義が持たれる旅客を別室で審査し、他の旅客の審査を滞らせないようにする「セカンダリ審査(二次審査)」、「事前旅客情報システム(APIS)」等の効果的な活用を図ることにより、到着時の審査時間の短縮に取り組むとともに、おおむね2,000人以上が乗船する外航大型客船について、入港前に船上で審査を行うことにより、到着港における上陸審査待ち時間を解消する取組等を実施し、出入国手続の迅速化・円滑化を図った。また、成田国際空港に自動化ゲートを設置し、事前に利用のための登録を行った日本人及び一定の要件に該当する外国人は、同ゲートを通過して出入国手続を行うことを可能とした。
さらに、検疫所では、検疫感染症のうち鳥インフルエンザ(H5N1)患者発生国からの入国者に対し、体温計測の実施等の検疫強化を行っているところであるが、サーモグラフィー等を活用することにより、手続の迅速化を図っている。
(独)国際観光振興機構(JNTO)(通称:日本政府観光局)は、外国人向け総合案内所(TIC:ツーリスト・インフォメーション・センター)で観光情報を提供すると同時に、地方公共団体や観光関連施設が運営する外国人旅行者への対応が可能な観光案内所(V案内所:ビジット・ジャパン案内所)をネットワーク化し、TICと連携しながらニーズに応じた案内や情報の提供を行っている。ネットワーク参加案内所は、平成20年度より17箇所増加して、全国47都道府県、129都市・232箇所(平成21年3月末現在)に上る(図II-4-1-5)。
JNTOツーリスト・インフォメーション・センター
山梨県立富士ビジターセンター
図II-4-1-5 全国「ビジット・ジャパン案内所」所在分布図
訪日外国人旅行者の受入れに熱心な全国10箇所において、観光関係従事者を対象とした研修を実施し、訪日外国人旅行者対応レベルの向上を図るとともに、英語、中国語、韓国語で標準的な対応が可能となるよう、訪日外国人旅行者の接遇事例等を取り入れたマニュアルを作成した。
「観光立国推進基本計画」における、平成23年度までに「通訳案内士」の登録者数を15,000人(「地域限定通訳案内士」を含む)とする目標に対し、「通訳案内士」の登録者数は前年よりも約1,200人増加し、12,190人になった(表II-4-1-6)。
表II-4-1-6 通訳案内士制度の充実
また、一つの都道府県の範囲に限って通訳案内業務を行うことができる「地域限定通訳案内士」制度については、平成19年度より実施している岩手県、静岡県、長崎県、沖縄県の4県に加えて、北海道、栃木県の合計6道県が平成20年度に「地域限定通訳案内士試験」を実施した。
さらに、「通訳ガイド検索システム」の機能強化によりガイドサービスの需給のミスマッチの解消を図るほか、平成21年2月2日から27日にかけて通訳ガイド制度周知強化週間を設定し、国内外においてリーフレットの配布等による通訳ガイド制度の周知を集中的に実施するなど、通訳ガイドの活用の促進を図った。
増加する訪日外国人旅行者に対応した通訳案内士のあり方を検討するため、通訳案内士の現状や課題の把握を目的とし、通訳ガイド団体、旅行業者、宿泊業者等幅広い関係者をメンバーとする「通訳案内士のあり方に関する懇談会」を平成20年11月から3回にわたり開催した。
(独)国際観光振興機構(JNTO)では、街頭・車内等で困っている訪日外国人旅行者に通訳を行う「善意通訳(グッドウィルガイド)」について、年間を通じて募集を行っており、善意通訳登録者数は54,378人、同行ガイドや国際イベントの通訳補助等の活動を行うため、その有志が結成している「善意通訳組織(SGG)」は全国で84団体となっている(平成21年3月現在)。
北海道において、レンタカーを活用して広域に分散する観光地を外国人旅行者が個別のニーズに応じて周遊できるよう、平成20年度に、外国人ドライブ観光の受入れに向けた環境整備に関する調査を行った。また、北海道における外国人ドライブ観光の魅力を発信したほか、関係行政機関、事業者団体等からなる「北海道外国人観光客ドライブ観光促進連絡協議会」を開催し、北海道のドライブ観光の一層の促進等に向け、官民一体となった取組を実施した。
(8) 首都圏空港(成田・羽田)における国際航空機能の拡充 |
「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日)に盛り込まれた「首都圏空港の国際航空機能拡充プラン」に基づき、成田と羽田の一体的活用により、国際航空機能の最大化を実現するため、平成22年に首都圏空港の国際線発着回数を現在の約18万回から約26万回に44%増加させることとしている。
このうち、羽田空港の昼間は、羽田空港にふさわしい近距離アジア・ビジネス路線として、ソウル、上海等の都市、更に、北京、台北、香港まで就航していくこととしている。また、羽田空港の深夜早朝は、欧米を始めとした世界の主要都市への就航を実現することとしている。これにより、成田空港からの全世界ネットワークに加え、羽田空港からも深夜早朝は欧米や東南アジア等の主要都市へ行けるようになり、首都圏からの需要の多い世界の主要都市へ成田空港と羽田空港からのダブル・ネットワークが形成されるとともに、成田空港・羽田空港の一体的運用により、首都圏空港の24時間化が実現されることとなる。
アジア・ゲートウェイ構想に基づき、韓国、タイ、マカオ、香港に続き、ベトナム、マレーシア、シンガポール及びカナダとの間で、空港容量に制約のある首都圏空港関連路線を除き、相互に、乗り入れ地点及び便数の制限を廃止し、航空自由化を実現することで合意した。
今後とも、自由化に向けてアジア各国と着実に交渉を進めることとしている。欧米との間でも、様々な課題はあるが、欧米の動向を見極めつつ、自由化に向けて交渉を行うこととしている。
(10) 博物館・美術館等における外国人への対応の促進 |
国、独立行政法人、都道府県立等の博物館・美術館における外国人対応については、これまでに外国人見学者の受入れ体制についての調査や、多言語化の向上のための施策を進めるとともに、「公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準」を定め、外国語表示等、必要な施設及び設備を備えるよう促している。
我が国の代表的な博物館である、国立の博物館の取組状況は以下の通りである。
1)国立文化財機構
東京、京都、奈良、九州の各国立博物館を設置する(独)国立文化財機構では、施設やサービスについて周知を図るため、案内板の表示や展覧会における展示品の説明文等について英語併記としているほか、所蔵している国宝、重要文化財をインターネットで閲覧できるデジタル高精細画像システムを多言語(英語、中国語、韓国語、フランス語)で発信し、外国人への対応の促進を図っている。
2)国立美術館
国立美術館では、施設やサービスについて周知を図るため、施設案内パンフレットやホームページを英語等で作成するとともに、インフォメーションにおける英語案内を行い、外国人来館者が利用しやすい環境の充実を図っている。また、作品名等のキャプションの英語併記を行うなど、展示品等についての理解の促進に努めている。
3)国立科学博物館
国立科学博物館では、ITを効果的に活用した音声ガイドや展示情報端末等、多言語(英語、中国語、韓国語)による文字・音声情報による展示解説を行うなど、海外からの旅行者を始め、すべての人々が利用しやすい環境の充実に努めている。今後も計画や告示の趣旨の周知を通じ、博物館・美術館を、外国人を始め誰もが快適に利用することができるよう促していく予定である。
国立劇場(国立劇場、国立演芸場、国立能楽堂、国立文楽劇場、国立劇場おきなわ)では、劇場施設やサービスについて周知を図るため、英語等の劇場案内パンフレットを配布した。また、公演内容や展示資料の理解を促進するため、歌舞伎・文楽公演における英語版のイヤホンガイドの提供や、公演プログラムへの英文掲載、展示室の資料名の英語表記等に取り組むとともに、能楽公演においては各座席での英語字幕の提供を行っており、この取組は、今後も引き続き実施することとしている。
伝統芸能等のライブエンターテイメントについて、日本の伝統芸能を観劇するための情報を発信し、訪日外国人観光客数の増加を目的として、「歌舞伎」「文楽」「伝統音楽」「能楽」の英文パンフレットを外国人総合案内所、ホテル等に配布した。
「「歌舞伎」「文楽」「伝統音楽」「能楽」の英文パンフレット」
(12) 国立公園等における外国人観光旅行者に向けた情報提供 |
国立公園等における公園利用施設の整備に当たり、外国人に向けたインフォメーション機能の強化を図るため、国直轄ビジターセンターの展示や案内標識等の多言語表示を進めた。
また、国立公園を紹介する英語、中国語、韓国語のパンフレットを作成し、国内外で広く配布するとともに、G8北海道洞爺湖サミット前後に、洞爺湖周辺地域を訪れた国内外の来訪者に、美しい日本の自然や日本の国立公園等に関する情報を発信した。
(13) 宿泊等における外国人観光旅行者の情報ニーズの調査の実施 |
外国人旅行者が旅行前・旅行中にどのような情報を必要としているかを把握し、外国人旅行者が真に求めている情報を適切に入手できる環境整備を促進するために、地域における観光客の受入れの中核をなす宿泊施設に関して、外国人旅行者の情報収集や国内外における官民による情報提供の実態等を調査・分析した。
(14) 多言語自動音声翻訳システムの実現に向けた実証実験 |
長期戦略指針「イノベーション25」(平成19年閣議決定)に基づき、平成20年度から、自動音声翻訳システムの社会普及を目的とした「社会還元加速プロジェクト(言語の壁を乗り越える音声コミュニケーション技術の実現)」に取り組み、英語、中国語、韓国語等での直接会話による交流を可能とする自動音声翻訳システムの開発導入に関し、外国人向け観光・ショッピング、国際交流イベント等の分野のためのシステム開発・実証を企画・推進している。
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