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第I部 観光の状況

第2章 国際観光振興の回顧、総括と今後の展開

第2節 世界の観光の動向

1 世界における国際観光の動向


 1960年代から70年代にかけて、ジャンボジェット機の就航による大量輸送時代の到来や所得水準の向上による海外旅行可能者人口の増加等を背景として、世界の国際観光客数も増加した。国際連合が1967年を「国際観光年」と定めたことに象徴されるように、観光が世界的にクローズアップされてきた時代である。観光分野における国際機関としてWTO(世界観光機関)が発足したのもこの時代(1975年発足。2003年に国連専門機関となり、名称をUNWTOへ変更。)である。当時の国際観光客の目的地の大半は北米と西ヨーロッパであり、両地域で世界の国際観光客到着数の9割以上を占めていた。アジア太平洋地域を訪れる国際観光客は、増加率においては2大市場を上回っていたものの、そのシェアは極めて小さいものであった。
 1980年代には、アジアの新興国が経済成長を遂げたことを背景に、国際観光客数が増加しただけでなく、アジア太平洋地域を訪れる国際観光客も増加し、国際観光の規模は更に拡大した。80年代に世界の国際観光客到着数の1割を超えたアジア太平洋地域は、現在は世界の国際観光客到着数の約2割を占めるに至っている。
 アジア太平洋地域では、1980年代に、台湾の観光旅行の自由化や韓国の渡航制限の緩和などにより地域内の国際観光が活性化したこともあり、国際観光客到着数が増加した。更に、1980年代前半から中国において渡航制限の緩和が段階的に進められてきたことなどもあり、2002年にはアジア太平洋地域の国際観光客到着数が初めて米州を上回った。アジア太平洋地域を訪れた国際観光客は、欧州と比べて実数は少ないものの、その伸び率は、世界全体の伸び率を大きく上回っており、同地域が今後大きな成長が期待できる地域であることが分かる。
 これまでも、世界規模の危機事象の発生した時期、例えば、湾岸戦争の勃発した1991年、米国同時多発テロ事件の発生した2001年、イラク戦争が勃発しSARSが猛威をふるった2003年、世界同時金融危機による世界的大不況の最中に新型インフルエンザが流行した2009年のように、国際観光客数の伸びが一時的に鈍化した時期もあったが、50年という長い期間で見ると、世界の国際観光客数は、一貫して増加傾向にあったと言える。
 先に述べたとおり、UNWTOによると、2012年の国際観光客数は過去最高となる10億人に達し、2020年には13.6億人に達する見込みである。また、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)によると、2012年の観光GDPは、世界のGDP全体の約9.3%にあたる6.6兆ドルであるが、2023年の観光GDPは、世界のGDP全体の約10.0%にあたる10.5兆ドルになると予測されている。
 これらの動向や予測を踏まえると、観光は世界にとって経済成長のための一層重要な産業となっていくものと期待される。

図I-2-2-1 国際観光客到着数の推移



図I-2-2-2 地域別国際観光客到着数の割合



図I-2-2-3 国際観光客到着数の推移(1950年の国際観光客到着数=1として指数化)


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