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第I部 観光の状況

第2章 国際観光振興の回顧、総括と今後の展開

第2節 世界の観光の動向

2 国・地域別の国際観光の動向(注)


 アジア各国・地域を訪れた外国人旅行者数とアジア各国・地域からの海外旅行者数は、SARSが猛威を振るった2003年と新型インフルエンザが流行した2009年に鈍化が見られるものの、一貫して増加傾向にある。
 2010年にアジア各国・地域を訪れた外国人旅行者数を、2003年比の伸び率で見ると、マレーシア132.4%増、韓国85.1%増、中国68.8%増、日本65.2%増、シンガポール60.6%増、タイ57.1%増、インドネシア56.8%増など、各国とも高い伸び率を示している。2011年の実数では中国が最も多く、5,758万人である。訪韓外国人旅行者数は、2009年に訪日外国人旅行者数を上回った(日本679万人、韓国782万人)(図I-2-2-4)。

図I-2-2-4 アジア各国・地域を訪れた外国人旅行者数の推移


 アジア各国・地域からの海外旅行者数を見ると、日本は2003年の1,330万人から2010年の1,663万人(2003年比25.1%増)に増加しているが、一方で、中国が2003年の2,022万人から2010年の5,739万人(2003年比183.8%増)と大きく増加しているのをはじめ、他のアジア各国・地域も、2003年比の伸び率で見ると、タイ153.5%増、韓国76.2%増、シンガポール73.9%増、台湾59.1%増、香港54.0%増と、日本を上回る伸び率を示している。2011年の実数では、中国が最も多く、7,025万人である(図I-2-2-5)。

図I-2-2-5 アジア各国・地域からの海外旅行者数の推移


 5大市場(韓国、中国、台湾、米国、香港)の海外旅行者数を旅行先別に見ると、韓国を除く各国・地域から日本への海外旅行者数の伸びは、各国・地域全体の海外旅行者数の伸びを上回っているが、一方で、いずれの国・地域についても、中国、韓国、台湾といった日本の競合先のいずれかが、日本を上回る伸びを示していることが分かる。
 また、東南アジア(注)から中国、韓国、台湾、香港、日本への海外旅行者数を見ると、いずれも増加傾向にあるが、2010年時点で、中国、香港が、日本と比べて格段に大きなシェアを占めている状況が分かる。
 韓国の海外旅行者数は、2003年の709万人から、2010年には1,249万人(2003年比76.2%増)に増加している(図I-2-2-5)。主な旅行先は、中国と日本である。
 日本への海外旅行者数は、2003年の146万人から、2010年には244万人(2003年比67.2%増)に増加しているが、その伸び率は、韓国全体の海外旅行者数の伸び率には及んでいない。一方、中国への海外旅行者数は、2003年の195万人から、2010年には408万人(2003年比109.6%増)に増加している。韓国人の海外旅行先として、1999年に中国への韓国人海外旅行者数が日本への韓国人海外旅行者数を追い越しているが、その後も、中国が日本を上回る伸び率で韓国人海外旅行者を取り込み、次第にその差が広がりつつある様子が伺える(図I-2-2-6)。

図I-2-2-6 旅行先別海外旅行者数の推移(韓国)


 中国の海外旅行者数は、2003年の2,022万人から、2010年には5,739万人(2003年比183.8%増)に増加している()。旅行先は、香港が圧倒的に多く(2010年1,360万人)、次いで欧州(2010年352万人)が多い。
 日本への海外旅行者数は、2003年の45万人から、2010年には141万人(2003年比214.8%増)に増加しており、その伸び率は、中国全体の海外旅行者数の伸び率を上回っている。一方、韓国への海外旅行者数は、2003年の51万人から、2010年には188万人(2003年比265.4%増)に増加している。日本、韓国それぞれへの中国人海外旅行者数は、2003年にはほぼ同規模であったが、韓国が日本を上回る伸び率で中国人海外旅行者を取り込み、次第に日本が韓国に水を空けられつつある様子が伺える(図I-2-2-7)。

図I-2-2-7 旅行先別海外旅行者数の推移(中国)


 台湾の海外旅行者数は、2003年の592万人から、2010年には942万人(2003年比59.0%増)に増加している(図I-2-2-5)。旅行先は、中国が圧倒的に多く、日本がそれに続いている。
 日本への海外旅行者数は、2003年の79万人から、2010年には127万人(2003年比61.5%増)と増加しており、その伸び率は、台湾全体の海外旅行者数の伸び率を若干上回っている。韓国への海外旅行者数は、2003年の19万人から、2010年には41万人(2003年比108.2%増)に増加している。2010年の韓国への海外旅行者数は、日本への海外旅行者数の3分の1程度の規模であるものの、2003年比の伸び率は、日本を上回っている。一方、中国への海外旅行者数は、2003年の273万人から、2010年には514万人(2003年比88.2%増)に増加しており、中国が日本を上回る伸び率で台湾の海外旅行者を取り込んでいるのが分かる(図I-2-2-8)。

図I-2-2-8 旅行先別海外旅行者数の推移(台湾)


 米国の海外旅行者数は、2003年の5,617万人から、2010年には6,027万人(2003年比7.3%増)に増加している。
 アジアにおける主な旅行先は、中国と香港であり、日本がそれに続いている。日本への海外旅行者数は、2003年の66万人から、2010年には73万人(2003年比10.9%増)と増加しており、その伸び率は、米国全体の海外旅行者数の伸び率を若干上回っている。しかしながら、2005年以降は、日本への米国人海外旅行者数は減少傾向にある。一方、中国への海外旅行者数は、2003年の82万人から、2010年には201万人(2003年比144.3%増)に大きく増加しており、中国が日本を上回る伸び率で米国人海外旅行者を取り込んでいることが分かる。また、韓国への海外旅行者数は、2003年の42万人から、2010年には65万人(2003年比54.8%増)に増加しており、一貫して増加傾向にある。2011年には、東日本大震災の影響があったとは言え、韓国が日本を追い越している(図I-2-2-9)。

図I-2-2-9 旅行先別海外旅行者数の推移(米国)


 香港の海外旅行者数は、2003年の443万人から、2010年には682万人(2003年比54.1%増)に増加している(図I-2-2-5)。旅行先は、中国が圧倒的に多く、次いで台湾と日本が多い。
 日本への海外旅行者数は、2003年の26万人から、2010年には51万人(2003年比95.5%増)に増加しており、その伸び率は、香港全体の海外旅行者数の伸び率を上回っている。韓国への海外旅行者数は、2003年の16万人から、2010年には23万人(2003年比46.2%増)に増加しているが、その伸び率は日本に及んでいない。一方、台湾への海外旅行者数は、2003年の29万人から、2010年には77万人(2003年比167.4%増)に増加している。日本、台湾それぞれへの香港の海外旅行者数は、2003年には、日本とほぼ同規模であったが、台湾が日本を上回る伸び率で香港の海外旅行者を取り込み、近年では、その差が拡大している(図I-2-2-10)。

図I-2-2-10 旅行先別海外旅行者数の推移(香港)


 東南アジアから日本への海外旅行者数は、2003年の42万人から、2010年には67万人(2003年比57.4%増)に増加している。中国への海外旅行者数は、2003年の177万人から、2010年には429万人(2003年比141.7%増)に大きく増加しており、中国が日本を上回る伸び率で東南アジアの海外旅行者を取り込んでいるのが分かる。その結果、2010年の東南アジアから中国への海外旅行者数は、日本への海外旅行者数の6倍以上に至っている。韓国への海外旅行者数は、2003年の52万人から、2010年には88万人(2003年比67.7%増)に増加しており、日本の伸び率を上回っている。また、同期間に実数でも韓国は常に日本を上回っており、その差は拡大傾向にある。2011年には、東日本大震災の影響もあって、東南アジアから韓国への海外旅行者数は、日本への海外旅行者数の2倍以上に至っている。香港への海外旅行者数は、2003年の78万人から、2010年には214万人(2003年比173.1%増)に大きく増加しており、2010年の東南アジアから香港への海外旅行者は、日本への海外旅行者数の3倍以上と、その差は大きい。台湾への海外旅行者数は、2003年の21万人から、2010年には66万人(2003年比220.9%増)に大きく増加している。台湾への海外旅行者数は、2003年には日本への海外旅行者数の2分の1程度の規模であったが、2010年にはほぼ同規模にまで増加している。2011年には、東日本大震災の影響があって、東南アジアから台湾への海外旅行者数は、日本への海外旅行者数を追い越している。

図I-2-2-11 旅行先別海外旅行者数の推移(東南アジア)



(注) 
「国・地域別の国際観光の動向」については、主にVJ(ビジット・ジャパン・キャンペーン)の開始された2003年と、東日本大震災前の2010年とを比較して記述している(2011年は震災の影響により、訪日外国人旅行者数が大きく減少しているため)。
(注) 
ここでは、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン及びシンガポールを指す。

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