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第I部 観光の状況

第2章 国際観光振興の回顧、総括と今後の展開

第3節 過去10年の国際観光振興政策の総括と課題

1 総括


 平成15年のVJの開始前後で訪日外国人旅行者数の推移を比較すると、近年は外的要因の影響を受けて増減の振幅が大きいものの、VJ開始後は、開始前と比べて目に見えて大幅な増加傾向を示している(図I-2-3-1)。これは、10年にわたりVJを中心としてインバウンドの拡大に国を挙げて本格的に取り組んできた成果と言える。国内の各地で外国人旅行者の姿を目にすることが多くなったと実感されることも増えたのではないだろうか。

図I-2-3-1 訪日外国人旅行者数の推移


 このような目に見える成果だけではなく、この10年の間に、国内の観光関係者の間のみならず、各地域でインバウンドへの取組の必要性についての意識が広まり、インバウンドが今後の日本の成長産業の一つであるという認識が国内で相当程度広がっていることも大きな成果と言える。
 また、後述するように、観光庁をはじめとする関係省庁が、さらには官民が連携してインバウンドに取り組む体制が強化されてきている。
 しかし、これまでの取組によりそのような成果が生まれているとは言え、我が国は、“観光後進国”からようやく“観光新興国”になったに過ぎないのが現状である。 
 外国人旅行者受入数について見ると、過去最高である861万人を記録した平成22年においても、日本は世界で30位、アジアで8位に過ぎない。また、同じく平成22年の国際観光収入を比較しても、日本は世界で19位、アジアで8位と低位に甘んじている。
 国及び政府観光局の観光予算についても、日本が約112億円(平成25年度)であるのに対し、韓国は約704億円(2011年度(平成23年度))である等、アジアの競合国に及ばない状況である。韓国と比較しても、平成20年までは、訪日外国人旅行者数が訪韓外国人旅行者数を上回っていたにも関わらず、今や逆転されている。平成24年の訪日外国人旅行者数は837万人(暫定値)である一方、同年の訪韓外国人旅行者数は1,100万人を超えており、2013年(平成25年)は1,250万人を目指すとしている。現状では韓国に後塵を拝していると言わざるを得ない(図I-2-3-2)。

図I-2-3-2 訪日外国人旅行者数と訪韓外国人旅行者数の推移


 我が国は人口減少期を迎えている。今後、さらなる人口減少と少子高齢化が進展する中、国内市場は縮小していくことが見込まれる。そのような状況にあって日本経済を活性化させるためには、海外需要、特に、今後大きな成長が予想されているアジアをはじめとする新興国の需要を取り込むことが重要である。また、今後ますますグローバル化が進展すると見込まれる中、世界中の人々の国境を越えた行き来はより活発化するだろう。そのような人々の往来を取り込んでいくことは、国際相互理解を進めるとともに、日本のソフトパワーを強化して国際的なプレゼンスを高めるためにも重要なことである。インバウンドへの取組は、まさにこれらの役割を果たす有効な政策の一つである。
 このように重要な意味を持つインバウンドの拡大に、引き続き国を挙げて取り組み、“観光先進国”としての観光立国の実現に向けて、オールジャパンで更なる努力をしていくことが求められる。
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