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第I部 観光の状況

第2章 国際観光振興の回顧、総括と今後の展開

第4節 国際観光振興政策の今後の展開

7 結び


 訪日旅行の促進は、人口減少社会に突入した我が国の経済活性化の鍵である。また、日本と外国の相互理解と交流を促し、我が国のソフトパワーを強化するための重要な手段である。
 世界各国が、国際観光振興の意義を重視し、自国に外国人旅行者を呼び込むべくしのぎを削っている。そのような厳しい国際競争の中にあって、我が国はようやく観光新興国になったに過ぎない。目指すは観光先進国である。VJ10周年を機に、決意を新たに取り組んでいかなければならない。決して平坦な道ではないかもしれないが、オールジャパンで目的を共有し、その達成に向けて邁進していく。
 その際、目先の訪日外国人旅行者の数のみに拘泥し、中長期的な視点を見失わないようにしたい。時には派手なパフォーマンスも必要かもしれない。しかし、見せかけだけの派手さに本質的な価値はない。本質を突いた“本物”の魅力こそが最後まで輝きを放ち、世界中の人々を惹きつける。
 訪日旅行を促進することとは、日本の魅力を売り込んでいくことに他ならない。さらに突き詰めていけば、訪日旅行の促進は、我々自身が「日本」という国を見つめ直すことから出発するのかもしれない。世界に向けて、「日本」を発信していくためには、日本を知り、そして表現できなければならない。我が国は十分に世界に通用する魅力に満ちている。自信と誇りを持ちたい。
 観光は一面ではビジネスであるので、その文脈で言えば、観光産業を中心とした民間主体が中心的な役割を果たすことが基本である。
 しかし、国際競争を勝ち抜くため、諸外国では政府自らが先頭に立っている。我が国もオールジャパン体制を強固なものとし、観光立国を実現するためには、やはり国がリーダーシップを発揮しなければいけない。そのため、平成25年3月には、安倍総理大臣をトップとして全閣僚から構成される観光立国推進閣僚会議を立ち上げたところである。
 一方、国民各層の理解と協力、更には主体的な取組も不可欠である。そのためにも、観光立国の実現に向けた本格的な取組が開始されてから10年となることを踏まえ、地方レベルを含め、その達成に向けた国民的な高まりが必要であろう。
 より多くの外国人の訪日を促すためには、1)外国人に「日本」をよく知ってもらい「行きたい」きっかけをつくること、2)「行きたい」と思った外国人旅行者に実際に日本に来てもらうこと、そして、3)訪日外国人旅行者に、リピーターとして日本をまた訪れたい、周りの人に訪日を勧めたいと強く思わせること、さらには、4)国際会議等の誘致や投資の促進を図ることにより多くの人や優れた知見を日本に呼び込むこと、が重要である。この、「知ってもらう」、「来てもらう」、「満足してもらう」、「人と知恵、投資を惹きつける」の各段階において、それぞれの隘路を打破し、現場や関係者の声によく耳を傾けながらオールジャパン体制で取り組んでいく必要がある。
 未知の土地を訪れる、まだ見ぬ人々と触れあう、日常を離れた特別な体験をする。観光とは、本来そのようなワクワクする体験である。ややもすると沈滞ムードに陥りがちな昨今ではあるが、観光は、「坂の上の雲」を目指して、夢と希望を持って臨みたい分野である。その先に明るい未来が待っていると信じて、オールジャパンで観光先進国を目指していく。

(写真提供:公益社団法人静岡県観光協会)



(写真提供:公益財団法人みやざき観光コンベンション協会)



(写真提供:信州・長野県観光協会)



(写真提供:十勝観光連盟)



(写真提供:公益財団法人みやざき観光コンベンション協会)


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