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第I部 観光の状況

第3章 観光産業の強化

第2節 観光産業の強化のための方策

3 宿泊業におけるマネジメント・生産性等の改善・向上



  (1) 科学的な経営の普及

 我が国の宿泊産業においては、マネジメントや生産性に関する意識が十分でないまま旅館等を経営している例がまま見られる。このため、前近代的な経営から脱却し、的確な財務・労務の管理等による科学的な企業経営を普及させていくことが喫緊の課題となっている(図I-3-2-6)。

図I-3-2-6 旅館に対するアンケート結果~旅館経営において誰にアドバイスを受けているか


 具体的には、産学官が連携して旅館の財務指標のモデル化等に取り組むとともに、中小旅館でも導入可能な簡便な管理会計システムを構築することが求められている。また、現場におけるムダの排除、従業員のマルチタスク化による効率化、的確な労務管理の実施のための啓発等についても取り組んでいくことが必要となっている。

  (2) 金融機関との連携

 旅館や旅館街の再生案件において金融機関が担う役割は大きいが、金融機関のみでは周囲の協力が得にくい場合などには、行政が金融機関と連携して環境整備を行うことが必要である。また、宿泊業に対するシンクタンク的機能の提供、他産業との連携支援、地域観光のリーダーとなる経営者の育成等について、金融機関のより主体的な参画や宿泊業との一層の連携が期待されている。

株式会社第四銀行による「だいし観光学校」の様子


 第四銀行(本店:新潟市)は、従来より新潟県内経済の活性化のため、観光PRイベントや県内各地域の観光活性化支援事業を展開してきたが、平成23年からは、「だいし観光学校」を開設し、専門家による実践的な研修により、経営改善や地域活性化に意欲を有する宿泊業者の支援に取り組んでいる。

  (3) MICEへの取組強化、宿泊業の海外展開

 MICEについて、旅行業やコンベンションビューロー等MICE誘致関係者や他の宿泊業者との連携を強化し、宿泊業として誘致活動に積極的かつ主体的に取り組んでいくことが求められている。
 また、人口減少時代の到来等により国内需要の大幅な増加が見込めない中、事業拡大の意欲のある宿泊業者には、新たな収益源として、また、特に旅館にあっては、日本文化の発信やインバウンド誘客の拠点として、海外への積極的な展開を目指すことが期待されている。

  (4) 所有と経営の分離、新たな経営スタイルの導入・促進

 我が国の宿泊業については、旅館をはじめ伝統的に所有と経営を一体で行うことが通例とされてきたが、経営の効率化を図るためには、所有と経営の分離を図り、経営のノウハウを有する者に経営を委託することや複数の施設の協業化・グループ化によるコスト削減等、新たな経営スタイルの導入・促進を図っていくことが必要となっている。
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