Vol.3...ダムインタビュー(1)
「時代を映すダム」 竹村公太郎さん(p.2)



― なるほど、環境への配慮のように、その時の状況に対応していくことや、さらにその先を考え、新しいことでも、必要だと思ったことを実践されてきたのですね。では、これから先、20年後はどうなっていくと思いますか?

管理の仕方を変えていく
竹村:ダムは、造る時代から管理する時代になってきました。ダムが一番有効な働きをするためにはどうしていくべきか? それを考えることが重要だと思っています。例えば、私たちが造ってきたダムの操作規則の基本的は、昭和40年代のものです。それは、豪雨で道路が寸断、停電してラジオさえも聞こえない、ダムの管理所が完全に孤立して、何も情報が入らないという前提での操作規則になっています。
 しかし今は、情報がたくさんあって、テレビ、インターネット、GPSデータもある。道路は崩れるかもしれないけど、いろいろなルートがあって、歩けばどこでも行ける。今のネットワーク社会、情報社会からみたら、もっと有効なダムの運用ができると考えています。
 具体的には、台風の進路に入ったことが1週間前に分かる時代になったのだから、それまではダムに今より水を貯めておいて、利水や発電、川の流量維持などに使えばいいのです。
 台風の進路に入ったことがわかったら、ダムの水位を下げて洪水調節(F)のための容量をとればいい、時代が進めば下流の河川改修が進んで、大雨の時にダムからの放流量をそれまでより増やすことが出来るかもしれない。そういう柔軟な運用をすべきだと思いますね。

ニーズの変化に対応していく
竹村:もっと言うと、地域によってダムのニーズはものすごく違うのです。地域それぞれに一番あった使い方をすべきだと思います。治水が大事な地域、利水で苦しくなっている地域、水力発電が期待される地域などいろいろとあります。治水対策はダム以外の代替案が意外と多くあります。下流に遊水地をつくったり、河道を浚渫したり、狭窄部(きょうさくぶ)を開削したり、堤防を拡幅したりと。
 ところが、エネルギーとか、利水はそれほど代替案があるわけではないのです。これから、利水の需要は膨張していく時代ではありませんが、エネルギー問題は深刻になって行きます。10年後、20年後ではなく、100年後のことを考えたら、間違いなく石油はないし、石炭はあるけれども非常に高くなっているだろ、原子力もどうなっているか分からない。
 その時、国有資源としての「水力」がものすごく重要になる。100年後、このダムは発電を最優先にしようという変更がありうるのです。
 現在、50年前に先輩たちが作った操作規則があります。しかし、私が河川局長の時「弾力運用」を指示しました。弾力運用とは操作規則に少し弾力をつけて運用することです。職員の知恵を使って、安全で、有効なダム運用をすることです。今ではダム弾力運用は全国各地でその地方にあった工夫で行われています。
 ダムの運用や管理の手法も、情報の蓄積と情報システムの整備でだんだん進歩していて、そういう方向性が後輩たちに伝わっているなと思いますね。


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