高潮から沿岸を防護するため、海岸堤防等の施設が整備されています。設計にあたっては、潮位の上限として設計高潮位を定めています。
しかし、設計高潮位以上の高潮や高波が来襲したり、施設が老朽化したりすることによって、これらの施設が破壊されてしまうこともあります。従って、保全施設が整備されていたとしても、油断しないようにしてください。
高潮がきそうなときはいつでも逃げる体制を整えておく必要があります。
海岸堤防
護岸
●堤防の高さの決め方
安全のためには、どんな高潮も防げるような堤防を作ればよいのですが、お金がかかること、景観が悪くなること、海への行き来ができなくなることから、堤防の高さはおよそ以下の考え方で決められています。
「設計潮位(朔望平均満潮位+吸い上げ+吹き寄せ)+うちあげ高+余裕高」
高潮の被害から身を守るには、情報を正しく認識しておくことが重要です。また、これらの情報は、万が一避難勧告等によって避難する場合でも当然必要なことですから、自らの生命を守るために常日頃から注意することが重要です。
●自宅・勤務地などの高潮危険度の把握
予め、過去の災害を知り、高潮ハザードマップなどにより、自宅や勤務地周辺の危険性を把握しておきましょう。また、万が一高潮による浸水被害が発生した場合に、どのような状況が予想されるかについても把握しておきましょう。
●避難場所・避難経路の確認
いざというときのために、家族で話し合って、避難場所や避難経路を決めておきましょう。もしもの時に備え、避難場所までの避難経路も、実際に歩いてしっかり確認しておきましょう。
●非常持出品の用意
大きな災害が発生した場合、救援活動が行われますが、救援物資が各自に届くまでには2~3日かかるといわれています。そのため、非常時にそなえて3日分の食料・水を確保しておきたいものです。
ただし、避難持に大きな荷物になりすぎないように、最小限のものを用意しておきましょう。
●自主防災組織と災害弱者
大災害が発生した場合、道路が通れなかったり、同時に多数の被害が出たりして、防災機関の活動が困難になります。そこで、このような状況になったときに、自分たちの地域を守るために、自主防災組織が必要になります。
自主防災組織とは、地域住民が「自分たちの地域は自分たちで守ろう」という連帯感に基づき、自主的に結成する組織のことです。また、地域には、高齢者、乳幼児、障害者、傷病者など、災害時に弱い立場にたたざるをえない人々(災害弱者)が多数存在します。あなた自身も、災害時に足などにケガをして、災害弱者になるかもしれません。災害弱者への支援や協力には、地域住民による組織的な体制が必要不可欠です。日ごろから、周りの人たちと協力して、災害に備えましょう。
行政機関でも、高潮に対抗するための施設を作ったり、万が一の場合には避難勧告・指示を出して皆さんの安全を確保しようと努力しています。
しかしながら、これら施設も万能ではなく、計画値以上の高潮が発生したり、老朽化によって本来もっていた機能がすでに発揮できなくなっている場合もあります。また、避難勧告等は、総合的な安全性を判断して発令されますが、予想し得なかった突発事項や、ごく局所的な状況に依存して全体を判断するわけにはいきません。
したがって、高潮に限らず各種の災害から身を守るためには、公的機関からの指示を待つだけでなく、自らの判断によってより早めに避難する方が安全性を高めることになります。
●公的機関からの避難情報
公的機関からの避難情報として、市町村長の判断で避難勧告・避難指示が出されます。これらの情報は、防災無線、消防車、サイレン、広報車などを通じて皆さんに連絡します。
避難勧告がでるということは、もう相当危険な状態になっているということです。無視していたのでは、命にかかわる被害を招きかねません。避難勧告等には十分注意し、発令された場合は速やかに従いましょう。
●早め早めの対応を
<まずは、正しい情報の入手を>
台風などの状況は刻々と変化します。テレビ、ラジオなどで気象情報に注意し、最新の災害情報の入手に努めましょう。各種の注意報や警報など正しい情報に基づく早めの行動が被害を最小限にくいとめます。
<事前の準備>
●断水・停電に備え、水、食料、懐中電灯、ラジオなどを準備する。
●避難に備え、非常持出品を点検する。
●ベランダの鉢植えなど、小物を取り込む。
●家の周りの物を取り込む、または固定する。
●アンテナの補強、瓦やトタンのはずれなどを点検する。
●窓や戸など、応急的に必要なところは補強する。
●側溝に泥やごみが詰まっていないか確認する。
●床上浸水に備え、家財等を移動する。
●むやみに外出しない。
●自主的避難の判断
高潮は地震と違って、気象情報や前ぶれの現象などにより、ある程度の予測は可能です。しかし、湾奥など地形特性によって局地的に高くなる高潮までは予測できません。また、このような局地的な現象はあまり時間を与えてくれませんので、自分自身ですばやく判断して行動する必要を迫られる場合もあります。
●避難時の注意点
普段から、避難する場合の注意事項を覚えておきましょう。
<心構え>
●あわてず、単独行動は避ける。
●基本的には、防災関係の指示で避難する。
しかし、危険を感じたときは、隣近所と声を掛け合い、複数で避難を。
●逃げ遅れたら!
明け方など普通の人が寝ているようなときに、高潮が来襲すると被害が大きくなります。ふっと目がさめた時に周りが水びたしで、パニックを起こしてむやみに逃げ惑ったり、追いつめられるようなところに逃げ込んでしまったりして、亡くなってしまったケースも多いのではないかと思われます。もし、起きていた場合でも、外の風雨の状況から逃げられないと判断したときは、少しでも安全なところに移動するようにして、冷静に救助を待つことが良いでしょう。
【少しでも安全なところで、救助を待ちましょう】
1階よりは2階、2階よりは3階、場合によっては屋根の上、と高いところの方が安全です。
木造家屋は家ごと流されてしまうケースもあるので、鉄筋の建物の方が安全です。
海岸に近いほど高潮の影響が強いので、海岸より遠い方が安全です。
地盤が高い方が安全です。
海岸より離れたところで、波浪が直接影響しないところでは、地盤の高さが2~3m違うだけでかなり安全になります。
歩いて避難できない状態でも、船で逃げられる場合もあります。
【できるだけ早く救助してもらうために】
自分の体力的な問題で逃げられないときは、電話で救助を頼みましょう。早い段階ならまだ大丈夫です。
電話など、外への連絡手段が残っている場合には、早めに連絡をとりましょう。
早めに見つけてもらうために、発煙筒などで自分の居所をわかりやすくするように工夫しましょう。
夜間であれば、懐中電灯などで居所を知らせることも有効です。
高潮は去ったけれども、自分では動けないようなときには、動ける人に助けてもらいましょう。逆に、自分は大丈夫な場合には,近所に助けを求めている人がいないか確認しましょう。
●助けが必要なときは
被害が深刻で自分ではどうしようもない場合には、まず市町村役場に被害の報告をしましょう。被害がないことが最も良いのですが、被害を受けてしまった場合には、対応の迅速化のためにも被害状況の集約が必要です。また、被害がなかった場合でも、少し間をおいて役場に届けるようにしましょう。遠方の親戚などにも、安否の確認がしやすくなるはずです。
また、けが人や重病人がでた場合には、応急手当をして救急車を呼びましょう。それほど深刻でないと思われる場合でも、素人判断は禁物です。できるだけ早めに専門の病院等にいって、正確な診断を受けましょう。火事が発生してしまった場合には、消防署などに連絡して救助を求めましょう。
●災害弱者のために
万が一のとき、少しでも余裕のある人は災害弱者への手助けをしてください。