津波に対して、人命・財産両面を保護するためには、構造物による施設整備を着実に行っていくことが不可欠です。
津波抑止施設イメージ図
津波に対する防災施設には、以下のようなものがあります。
①海岸堤防
海岸背後にある人命、資産を津波、高潮、波浪から防護することを目的として設置されるもので、津波の背後地への浸入を防ぎます。
伊勢湾西南海岸 海岸堤防(三重県伊勢市)
②津波防波堤
津波の防御には海岸堤防や防潮堤が有効です。しかし、湾部にある港湾など、水際線に高い構造物を設けることに支障がある場合があります。そのときは、湾口部に防波堤を設けることで、津波の高さを低め、進入する津波の波力を弱めることができます。
③水門・陸閘
津波は、河口を経て河川流域まで進入することがあります。進入した津波は水面を上昇させ、その河川堤防を破壊することがあります。水門は、そのような津波の河川への進入を防ぐものです。
また、陸閘は道路が堤防と交差するとき、交差部に門を設け、津波の恐れがある場合には速やかに閉鎖することができるようにしたものです。
普代水門(岩手県普代村)
④津波・高潮防災ステーション
津波や高潮の発生を気象庁からの警報や注意報、沖合の観測施設の観測データ等を収集し、収集した情報を海岸の利用者や関係機関等にいち早く伝達するとともに水門や陸閘などの海岸保全施設を遠隔操作することにより迅速に津波や高潮に備えます。
これまでの地震対策は、我が国の過去数百年に経験してきた最大級の地震のうち、切迫性の高いと考えられる地震を想定してきました。
東日本大震災では、これまでの想定をはるかに超えた巨大な地震・津波により甚大な被害を受けました。
東日本大震災による海岸堤防被災状況(宮城県仙台湾南部海岸)
最大クラス(L2)の津波に対してはハード整備とソフト対策を組み合わせた多重防御により被害を最小化させるとした減災の考え方が新たに示されました。 比較的発生頻度の高い津波(L1)に対しては、住民財産の保護、地域の経済活動の安定化等の観点から、引き続き、海岸堤防の整備を進めていくこととされました。
また、津波が堤防を越えた場合に堤防が壊れるまでの時間を遅らせることで、避難時間を稼ぐとともに、浸水面積や浸水深を減らすなどの減災効果を有する粘り強い構造の海岸堤防を整備しています。
平成23年12月、「津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)」が成立しました。これにより、ハード・ソフトの施策を柔軟に組み合わせて総動員させる「多重防御」による「津波防災地域づくり」を進める事としています。
具体的には、都道府県知事が津波防災地域づくりを実施するための基礎となる津波浸水想定を設定。その上で、ハード・ソフト施策を組み合わせた市町村の推進計画の作成、推進計画に定められた事業・事務の実施、推進計画区域における特別の措置の活用、津波防護施設の管理等を実施。また、都道府県知事による警戒避難体制の整備を行う津波災害警戒区域や一定の建築物の建築及びそのための開発行為の制限を行う津波災害特別警戒区域の指定等を地域の実情に応じ、適切かつ総合的に組み合わせることにより、最大クラスの津波への対策を効率的かつ効果的に講ずるよう努めるものです。
多重防御のイメージ図(出典:仙台市HP 仙台市震災復興計画)