環境

平成28年度全国多自然川づくり会議 開催記録

  • 日時:平成28年11月29日(火)・30日(水)
  • 会場:さいたま新都心合同庁舎2号館5階会議室
  • 参加者:約150名(主に国、都道府県、政令市の河川担当者)

1. プログラム

1日目:11月29日(火)

勉強会①(初級・中級編) 勉強会②(中級・上級編)
『多自然川づくりの基本』
国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課
課長補佐 田中 孝幸
『河川における実践的な環境管理について』
国土技術政策総合研究所 河川研究室
主任研究官 福島 雅紀
『魚の視点に立った魚道の設計』
土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム
主任研究員 村岡 敬子
『河道掘削における植物の保全アプローチ -水辺の国調をフル活用-』
(国開)土木研究所 自然共生研究センター センター長/
(国開)土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム
上席研究員 萱場 祐一
分科会発表(全国の各ブロックから選ばれた28事例)
第1分科会
計画・検討・予備設計に
関する事例
<7事例>
第2分科会
詳細設計・施工に
関する事例
<7事例>
第3分科会
管理・モニタリングに関する事例
<7事例>
第4分科会
懸案・課題、継続報告、
普及・標準化等の取組に関する事例
<7事例>

2日目:11月30日(水)

基調講演
『多自然川づくり:レベルアップのポイント』
株式会社吉村伸一流域計画室 代表取締役 吉村 伸一
全体発表
(1~4分科会で選ばれた代表事例(各1事例)の発表と課題討議)
【コーディネータ】
国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 河川環境保全調整官 堂薗 俊多
【コメンテータ】
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 教授 桑子 敏雄
株式会社吉村伸一流域計画室 代表取締役 吉村 伸一
NPO法人全国水環境交流会 代表理事 山道 省三
国立研究開発法人 土木研究所 自然共生研究センター センター長/
国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム 上席研究員 萱場 祐一

2. 選出された代表事例(タイトルをクリックすると事例概要が開きます)

第1分科会
効率的な維持管理を目指した中小河川の掘削断面について

大分県佐伯土木事務所 築地 祐一郎

選出理由

中小河川の掘削は全国で多数の工事が行われており、その掘削断面の検討に際しては、同じような悩みを抱える河川管理者が多いと考えられる。非常に素朴な題材であるが、資料の構成も大変わかりやすく、説明もわかりやすかったため、全員で議論しやすい内容である。この事例の中で紹介された技術を、もっと多くの方と共有したい。

    全体発表においてコメンテータより
  • データがない中で、工学的なアプローチをして断面設定をしているところが新しい。橋梁の上下流で植生の繁茂状況が異なることから、その断面の違いに気づいたという点が非常に素晴らしい。
  • 堆積や洗掘の様子を見て工夫した点が評価できる。橋脚に取上線をマーキングするなどの工夫はとても大事である。川を見たときに何を見てきたらよいかを示すことが大事である。
  • カーブすると外岸は掘れて内側が堆積するというのはどこの河川でも同じ悩みである。堆積側に強い流れを寄せてフラッシュさせ、洗掘側を対処することが有効と考えられる。バーブ工なども参考にするとよい。

第2分科会
地元と関係機関が連携した水みちの連続性確保の取り組み

岐阜県美濃土木事務所 井藤 宏紀

選出理由

川づくりの現場で、地元に密着して住民との連携を図り、流域全体を取り込んで生態系ネットワークの構築を実現しようとする良い事例である。今後に向けた広がりを感じる。

    全体発表においてコメンテータより
  • 社会的条件ということで河川だけでなく、水田を含めたところが先駆的である。また、モデル地区の選定にあたって、行政システムも考慮した上で取り組んでいる点が評価できる。
  • 同じ目標を掲げながら連携がないという縦割りの例が多くある中で、異なった部局の連携から始まったところはとても評価できる。岐阜は水に対する意識が行政内で高く、それを動かし始めたというところに価値がある。
  • 県民の方が川づくりや水環境に対してどのように感じているか、をつかみ取ることが重要。また、受益面積(流域面積)と魚類の種数をグラフで整理・検討し、実施個所の決定に持って行けたことが良い。設計論だけでなく計画論に踏み込んだことにより、実施効果が高い場所で魚道整備ができたという点が素晴らしい。行政の横方向だけでなく、縦方向にも水産研究所と組んで進めていくという仕組みづくりというところも良い。

第3分科会
那珂川左岸地震・津波対策事業におけるミチゲーションの実施について

国交省四国地方整備局那珂川河川事務所 長野 沙紀

選出理由

津波対策の中で、どのようにミチゲーションに取り組むのか、また、感潮域でのミチゲーションがどうあるべきか、という点において、なかなか難しい仕事であり、まさに今、現場に求められる工夫が必要な事例である。今後の課題として、高潮堤防工事の場所とミチゲーションの場所をどう決めていくか、また、どのように洪水流との関係を見ていくのかという点が挙げられ、全体発表の場で議論できると、非常に有意義と考える。

    全体発表においてコメンテータより
  • 多様性を考えるときに、河口の保全は特に重要性が高く、河口域の環境が失われると多様性が低下することは科学的に示されている。水国の調査地区に設定されていなくても、生物のホットスポットがあることは多くの人に理解していただきたい点だが、この事例ではさらにホットスポットを押さえているところが良い。また、PDCAを回しながら場所の保全につなげているところも評価できる。河川管理者は河口域を見ることが少ないと思うので、河口域をどのようにみるか目を養ってほしい。
  • 堤防をかさ上げする計画が出たときに、計画の見直しを実施して、良好な環境の消失率を小さくしたという点が良かった。
  • かつて船舶の避難所であったという島と河岸との間の湿地を、歴史を遡ることによって改修計画につなげたという点も素晴らしい。

第4分科会
「水辺の小わざ」から10年 ~魚道改善の効果検証と今後の展開~』

山口県土木建築部河川課 吉村 崇

選出理由

魚道の事例が多かったが、魚道周辺の流れをしっかり見て、事業者が判断しているというレベルになっている。10年前から見ると、技術の進歩に隔世の感がある。ただし評価が難しい。流域全体でどんな種が減っているのかなどバックグラウンドの情報をどう整理して魚道の評価をしていくのか、そういった次の段階が必要。そうした点において、本事例は非常にわかりやすく、他の河川でも大変参考になると考えられる。

    全体発表においてコメンテータより
  • 「これこそ多自然川づくりのお手本である」と言っても良いと思う。
  • 従来型魚道と小わざ魚道では、写真では見た目が変わらないにもかかわらず12倍も魚に利用されていることが面白い。課題解決にあたり工夫することが大切、やったことの評価を行うことが重要。また、現地に行ってみて、課題に気が付くというところが大事。今回の効果判定のしかたは分かりやすくて良い。
  • 「小わざ」という表現の中には、安い・簡単であるだけでなく、誰でもできる、経験をつめば汎用できる、地域の人でも参加できるというニュアンスも含んでいるように感じる。
  • 現地を見て皆で考えていくという取り組みがよい。魚道はボトルネック箇所を解消するとその上流に効果が及ぶため、コストパフォーマンスが高い。小わざ魚道はプールタイプであり、従来と小わざでは魚道タイプが異なる。流速を下げることができるのも素晴らしい。最近うろこ状の魚道が流行っているが、景観的にも良い。また、遡上したアユを体長別評価しているのが面白い。アユの場合は体長の10~15倍の流速で登れるという知見があり、科学的知見とも合致している。

3. 発表28事例(タイトルをクリックすると事例概要が開きます)

第4分科会 テーマ:懸案・課題、継続報告、普及・標準化等の取組

平成28年度全国多自然川づくり会議 集合写真

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