vol.3.....夏の天気と川の関係

実は! スマホでゲリラ豪雨の様子が分かる


インタビュー:津久井俊彦さん
水災害予報センター長さんに聞いてみました

洪水を監視し、水害が起こりそうな場合に予報を出すお仕事をしている津久井さんに、水害に対してどんな取り組みが行われているのか、また、特に私たちができることは何かを伺ってみました。

Q. 水害に対して、どんな取り組みをしているのですか?
このコーナーで紹介されているように、堤防を作ったり、その幅を広げたり、降った雨をダムにためて一気に流れないようにすることや、地下にトンネルをつくって水を逃がすことなどの他にも、住宅地には調整池(ちょうせいち)を作ったり、学校のグラウンドを低く掘り下げてそこでも水がためられるようにしたり、テニスコートや運動場でも一時的に洪水をためてもらえるよう、協力を呼びかけています。

そういった施設の整備に加えて、計画や観測・監視が重要です。川をどう整備していくかといった計画時点での浸水シミュレーションや、レーダーを活用しての雨量観測、ライブカメラや水位計の監視(かんし)など、多くのことに取り組んでいます。

豪雨の時には、災害対策室(さいがいたいさくしつ)に集まり、大きな画面に雨量情報やライブカメラの情報を同時に映し出して、基準となる地点の水位を監視しながら、対策を考え、予報も出しています。予報を参考にして、市町村が住民に避難勧告や避難指示を出しますが、そういった関係者との普段からの情報交換(じょうほうこうかん)も大切ですね。

津久井俊彦さん
国土交通省関東地方整備局水災害予報センター長。河川管理者として洪水の監視や、水害に備える活動を日々行っています。国土交通省関東地方整備局 >

Q. 豪雨のとき、川はどうなりますか?
普段からは想像がつかないようなところまで、水位があがってきます。2007年9月、私は多摩川の管理に関わっていましたが、台風9号による大雨で水位がものすごくあがり、とても緊張しました。たとえば、二子玉川というところでは、一部に高い堤防がないところがあり、川の水がそこを越えそうになったので、関係機関が共同して川辺の道路沿いに土のうを120mにわたって積みました。ピーク時には、土のうの1段目まで水がきたのです(写真)。



その後、ここには堤防が作られ、現在では安全に暮らすことができます。もし、たくさん雨が降って川の水が増え、堤防を越えるような洪水になると大変なことになります。

どれだけ大変かというと、例えば人口が密集している首都圏(しゅとけん)で、利根川の堤防が埼玉県のとあるところで切れてしまった場合、どんどん下流に洪水が押し寄せて、約530km四方にわたって、約230万人の人が被災し、避難する人がいなければ、約2600人が死亡する大災害になるという想定があります。
※出典:大規模水害対策に関する専門調査会報告(中央防災会議)

台風の大型化やゲリラ豪雨がたくさん発生する傾向もありますが、一方で、緑におおわれていたところに道路や建物ができることで、水が地中にしみこまなくなって、降った雨が川にたくさん流れ込んでくるようにもなっています。鶴見川(つるみがわ)という川では、流域の都市開発(としかいはつ)が進んで、1990年の川の最大流量(ピーク流量)は、1958年と比べると2倍以上にもなっています。雨がふってから川があふれるまでの時間もとても短くなってきているので、注意が必要ですね。

Q. 私たちはどんなことに気を付けたらいいのですか?
まず、あなたが「どんなところに住んでいるのか?」を知ることが大切です。私たちが管理しているのは関東地方の川ですが、関東地方は陸のずっと奥の方まで「海」の時代がありました。6000年くらい前にも海が広がっていたのですが、その時代に平らになったところや低いところに急な山から流れ落ちてきた水がたまる地形になっています。さらに、天井川といって、川の水面が周辺の土地よりも高くなっているところも多くあります。

意外と、治水の対策(たいさく)も万全(ばんぜん)ではありません。日本では、オランダやイギリス、アメリカ、フランスなどの諸外国に比べて、実は遅れているのです。つまり、私たちの多くが、洪水が起こりやすいところに住んでいるんだという自覚(じかく)を持つことが重要です。

その上で、ライブカメラや川の水位情報、XバンドMPレーダーなど、観測情報をうまく活用するように心がけてください。テレビでも NHKによるデータ放送があります。ハザードマップの活用も重要ですね(vol.4参照)。