「チェックブック」ができました

大雨により甚大な被害が生じることもある水害。日ごろからの備えが、いざという時に役にたちます。しかし、日常のほとんどが平常である中で、なかなか水害が自分の事と捉えることは難しいかもしれません。さらには、自分が水害対策に取り組んでいても、家族など大切な人や、自分が関わっている人々みんなに備えを促していくにも、無理なくはじめられるキッカケが必要と思います。

そこで、カワナビvol.17では、水害対策、いわば「水の防災」について、すぐにはじめられること、押さえておきたいことを「チェックブック」に簡単にまとめてみました。それから、今すぐ、無理なくはじめられる水害対策として、スマホの防災アプリの活用を呼びかけています。また、最近進化している「VRコンテンツ」も含めて、各種情報源へのリンク集を作りましたので、ぜひご活用ください。ところどころで、「チェックブック」に登場する物知りな「カワナビゲーター」がコメントしています。

「チェックブック」ができました」

大雨になる前から場面をわけて紹介

大まかな話になりますが、水害への備えは、普段の生活で行っておくこと、大雨が近づいてきたときにすること、そして、大雨になったときに行動することと、天気の変化に応じてできることがあります。カワナビでは、それぞれの局面に応じてできることを簡単に紹介する「水の防災チェックブック」を作りました(→60秒の紹介動画)。

仮想のまちを自分に投影することで親しみやすく

雨が近づいてきて、外で遊ぶのをあきらめた子犬のそばで、台風の進路をチェックしている...「チェックブック」は、このように仮想のまちに暮らすキャラクターが、ところどころで何かしていて、絵ときになっています。それぞれの絵の横には、水害対策のアクションが示してあり、できたものにチェックを入られるようになっています。

防災教育に活用を

「チェックブック」は、なるべく情報を端的にまとめるように心がけ、学校や、地域で防災を話し合う場などで、自分達ができていることを確認してみるブックと位置付けています(そこからみんなで話し合えるようにすることを意図しています)。そのため、一つ一つの水害対策のアクションについては詳しい解説は付していませんが、チェックボックスにはその内容に関する情報源にリンクを設定していますので、クリックしてみてください。

スマホでできる水害対策「防災アプリ」

アプリのリンク集をつくりました

「今週は大きな台風がやってくるらしい」... そんなとき、みなさんはどのように情報を集めているでしょうか。台風の進路予想ではどの地域を通るのか、どのくらいの影響があるのか、公共交通機関は動くのかなど、避難するとしたらどこへ向かったら良いかなど、知りたい情報は様々です。発災時に学校や職場にいるかもしれませんし、旅行先など不慣れな土地で豪雨に遭遇するかもしれません。いざという時にどう動くべきか?

そこで役にたつのが「防災アプリ」です。最近のアプリは、大雨になる前(平時の備え)、大雨が近づいてきた時、大雨になって緊急性が高い時など、様々な局面で使えるものが増えています。大きく分類すると、全国情報がわかる「広域版」と、地域自治体の情報がわかる「地域特化版」に分かれ、機能的には、ざっとですがこのようなものがあります。

まとめて情報収集できるようになった!

最近の防災アプリは、便利で使いやすくなったポイントがいくつかみられます。特にこれまでは、天気予報、雨雲レーダー、警報の類、自治体からのリスク情報など、様々な情報を集めてくる必要がありましたが、現在では、それらの情報を一つのアプリで確認できるものが登場しています。こういった複合型のアプリを使うと、自分が今いる地域の情報をワンストップで包括的に集めることができ、次にどうするか? を時系列に沿って考えやすくなります。

避難行動をまとめてサポートするアプリも

また、行動するために必要な情報である避難所開設状況、河川水位、交通情報などを、まとめて確認できるアプリもあります。その中には、事前に災害に備えるための、ハザードマップや防災タイムライン(防災行動計画)の作成機能が付いているものもあり、普段から活用できます。アプリによっては、多様なユーザーに対応し、多言語化されているものもあります。カワナビでは、個別のアプリを紹介していませんが、便利なものが登場していますので、ネットを検索してみてください。

ウェブサイトからの情報配信も拡充中

大幅にアップデートされた 「川の防災情報」

国土交通省が提供している「川の防災情報」は、川の水位や様子など、リアルタイム情報を確認できます。カワナビvol.8でも特集しましたが、その時から、川に多くのライブカメラが設置されたり、機能が高度になったりと大幅にアップデートされました。大雨の時に避難行動の判断に役立てることはもちろんですが、普段も、川周辺の安全を確認してアウトドアの計画を立てることなど、充実した情報をお役立てください。

地域版にも注目

都道府県や市町村が作成・運営している、地域に特化した防災アプリやウェブサイトも増えています。カワナビゲーターの調べによると、防災アプリを提供している都道府県が10、ウェブサイトを提供している都道府県は28、アプリもサイトも提供している都道府県が9ほどありました(2024年12月時点)。自治体の防災無線情報を音声と文字で確認できたり、避難所の受付ができたりするアプリも登場しており、リンク集を作りましたのでお住まいの地域をチェックしてみてください。

迫力のVR/ARでリスクを自分ごと化

自宅や学校などにいながら、迫力の水害擬似体験ができるアプリや動画も登場しています。VRゴーグルをつけたり、スマホをかざしたりして遊び感覚で使うことができるものもあり、楽しみながら水害リスクを自分のことと思うようになるのもいいかもしれません。

参考:千葉県災害VR(豪雨編・子ども視点)

例えば、千葉県が出している、子ども視点で豪雨の疑似体験ができる動画では(VRゴーグルが必要)、自宅のソファで、テレビを見てくつろいでいる場面から始まりますが、豪雨による危機感が高まり、突然、流木などが窓ガラスを割って家の中に入りこみ、あっという間に浸水する状況を体験できます。

参考:千葉県災害VR(豪雨編・子ども視点)

動画の後半では、「自分は大丈夫だという思い込みが、身の危険を左右する」と解説があり、ドキッとしますが、「水害は地震などとは違い、事前の情報収集で危険性を予測できる」ことがポイントであるとも説明があり、2階以上などへ移動する「垂直避難」の呼びかけもあります。リスクをより現実的に感じることと、それに対するアクションを同時に知れると良いですね。

今いる場所にスマホやタブレットをかざすと、その画面上に雨や浸水のCG映像が映し出されるアプリもあり、雨の強さを視覚的に感じることができます。こういったAR(拡張現実)に触れることでも、リスクをもっと現実的に感じることができるかもしれません。

自分ごと化の輪を広げよう

水害から身を守るには、何より情報が大切です。その情報は、今回紹介したアプリやウェブサイトから得ることもできますし、テレビやラジオなどいろいろな媒体から得ることができます。そういった複数の情報を自分なりに活用して、普段から水害に備え、大雨が近づいてきた時に自ら行動できると安全度が高まります。

そして、自分が獲得した知見を他者と共有し、その輪を広げていくことは、地域を安全で安心にしていくことに繋がっていきます。「流域治水」は、そのような考え方で地域を、社会を安全にしていく取り組みですが、関連して、令和6年には、地域で発生した災害の状況をわかりやすく伝える施設や、災害の教訓を伝承する活動を「NIPPON防災資産」として認定する制度もスタートしました。水害のことや他の災害のことを「自分ごと」と思うきっかけを増やしていくことも、みんなで進めていきましょう。

NIPPON防災資産