政策評価

Q&A集

Q1 「政策評価」「行政評価」とは?
 
A1 「政策評価」という言葉が最初に使われたのは「行政改革会議最終報告」(平成9年12月)です。そこでは、従来の行政は、新しい予算を獲得したり法律を制定したりすることは一生懸命やるが、その後、社会経済情勢の変化等を踏まえて既存の予算や法律を見直すという機能は軽視されがちだったと書かれていました。このように、既存の予算や法律などの政策を見直したり改善をするために評価することを政策評価の中でも「事後評価」とよんでいます。また、逆に、新規に政策を企画立案する際に、必要性等をチェックする評価を「事前評価」とよんでいます。
 政策評価の本格的な導入は、中央省庁等改革の重要な柱の一つとなりました。平成13年1月以降、各府省で政策評価を担当する組織を設置するとともに、政策評価実施要領等を策定(そのための指針として「標準的ガイドライン」が策定されています)、すでに政策評価の取組みが始まっています。
 
 平成14年4月からは、新たに制定された行政評価法により、政策評価を行うこととなりました。
 
○「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(行政評価法)(※1)
  政策評価に関する基本的事項を定めたもの。この法律及び法律に基づき策定される「政策評価に関する基本方針」(閣議決定)により、国土交通省をはじめとする各府省において、政策評価に関する「基本計画」(3~5年間を対象)を定めている。また、公共事業等、政令で定められる事業については事前評価の実施が義務付けられるとともに、事後評価については各府省が毎年定める「実施計画」に従い実施している。
 
 なお、政策評価は、政策の企画立案や見直し・改善に反映させることが目的であり、定型的な執行業務は対象にしていません。執行業務については、根拠となる法規に従って適切になされているかどうか、能率的になされているかどうかという観点からの「行政監察」の対象となります。政策評価機能と行政監察機能を併せて、行政活動全般を対象とするものを「行政評価」とよびます。
 
(※1)上山信一監修「行政評価の世界標準モデル」(東京法令出版)
 
 
 
Q2 政策評価はどのような考え方に基づいているのですか?
 
A2 行政評価法は、政策評価の目的を、「効果的かつ効率的な行政の推進」、「国民に対する説明責任の徹底」であるとしています。そのために、各府省自らが、その所管する政策を評価し、課題を発見し、その結果を企画立案に反映させるというマネジメントサイクルを確立することで、政策の見直し・改善が行われることが期待されています。
 
○政策のマネジメントサイクル
 「企画立案(Plan)」→「実施(Do)」→「評価(See)」→「企画立案へのフィードバック」というサイクル。従来の行政が、「予算要求」→「執行」だけからなる一方通行であり、行政活動が成果をあげているかどうか必ずしも明らかではなかったのではないか、行政活動の評価が行われても散発的でシステムとして定着していないのではないか、との指摘がある。政策評価の導入により、行政全体にマネジメントサイクルを確立させ、常に政策の改善に向けた努力が継続されることを目指す必要がある。
 
 ところで、評価を通じた改善というのはどのような観点から行われるのでしょうか。まずこのことを企業における業績評価を例にとって考えてみましょう。
 かつての大量生産の時代は、各事業部門や各作業単位の生産活動に、明確な数値目標が与えられていました。そして例えば四半期ごとにその達成度がチェックされ、目標を達成していない現場は「生産的でない」と「評価」され、現場のマネージャーが生産性を向上させるための改善策を講じることになります。これが業績改善運動と言われるものです。行政評価の世界で、これにほぼ対応するのが、地方公共団体で広く行われている「事務事業評価」です。これは、各課の係単位で、実施しているすべての事務事業を自己点検するというものです。設定した目標が達成されていなければ、担当者として、それをどう改善したらよいかを考えることになります。執行面の改善を日常的に行うための手法としては有効であると考えられます。
 
 これに対し、最近の企業経営では、こうした作業単位の生産性ではなく、顧客の視点から経営全体を評価するという点が重視されるようになってきました。大量生産時代と異なり、どういう商品やサービスを顧客が望んでいるかを把握しないと生き残れないからです。作業単位の目標より前に、企業として目指すべき目標を明確にすることが求められているのです。具体的には、経営者が、追求すべき企業価値を企業の使命(ミッション)として明らかにし、ミッションの実現と顧客満足度(CS)の向上を目指した部門横断的な戦略目標を明らかにします。その上で、各事業部門が、その目標実現のために何をなすべきかを考えることになります。大量生産時代のように、管理主義的な発想で細かい作業工程ごとの目標を示すのではなく、経営者は「大きな方針」を示し、具体策の企画立案と執行は現場の裁量を幅広く認めるというものです。これにより、同じ目標に向かった、組織一体となった業務運営が可能となります。これを「目標によるマネジメント(MBO=Management by Objectives)」といいます。従来のように、事業部ごとに昨年もこれを生産してきたから今年もこれを生産する、という判断がされていては、新しい時代に向けた変革は実現しません。そうした考えを排して、組織全体が新しく目指すべき目標を考えた、「全体最適」の経営をすることが求められているのです。しかし、現場に裁量を認めるだけでは「うまくいっているかどうか」を確認することができません。そのため、組織全体にわたり目標達成度を測定することが必要となります。そのことで、経営者は、企業の戦略が組織全体としてうまくまわっているかを俯瞰することが可能になります。
 
 こうした新たな経営手法の考え方を行政にもあてはめようとすることが、「ニュー・パブリックマネジメント(NPM)」とよばれ、欧米諸国の行政改革の基本理念となっています。
 
○ニュー・パブリックマネジメント(NPM)
 民間企業の経営の考え方を行政の現場へあてはめようとするもの。基本的な考え方は、
 (1)顧客重視
 (2)ミッション重視
 (3)現場への権限委譲
などに要約できる。小泉内閣の「改革工程表」(平成13年9月)にも、次のような措置が明記されている。「公共部門に企業経営的な手法を導入し、より効率的で質の高い行政サービスを提供するため、政策評価、公会計、予算・定員管理への対応などについて、計画的な実施に向けて具体的施策を明確にしていく。」
 
 NPMでは、顧客の立場に立って、目標が実現されているかどうか、ミッションが実現されているかどうかを常にチェックして改善を進めていくマネジメントサイクルを重視します。政策評価については、それを単なる「手続き」の一種と考え、「評価のための評価」を行うことがあってはなりません。政策評価とは、NPM的な考え方で行政の仕事の進め方、マネジメントを改革していく上での重要なツールの一つなのです。
 
 
 
Q3 政策評価は具体的にどのように行われるのですか?
 
A3 NPMの中心的な理念は顧客重視ですが、行政の場合「顧客」という発想に慣れていないこともあり、成果重視とよばれることもあります。これの反対の概念が「手続重視」です。行政が良い仕事をしているかどうかを、「言われたことをきちんとやったか」「作業効率は良かったか」で評価するのではなく、組織のミッション(使命)や政策の目的に照らした成果がもたらされているかどうかで評価しようというものです。つまりインプット(予算をどれだけ使ったか)、アウトプット(事業をどれだけしたか:例えば道路の整備延長、パトロール巡回件数等)だけではなく、アウトカム(成果:例えば、渋滞がどの程度緩和されたか、犯罪がどの程度減少したか等)を重視するものです。
 
 欧米諸国で実施されている政策評価の基本的な方式は、業績測定(Performance Measurement)とよばれるものです。これは、「目標によるマネジメント」の観点から評価をするもので、アウトカムに着目した目標を設定し、定期的にその達成度合いを測定するものです。
 
○目標設定
 行政の目標には様々なものがあるが、いずれも組織の不変のミッション(使命)を達成することが基本となる。通常はミッションでは広すぎるので、具体の政策分野ごとに、政策が目指す望ましい社会的状況や状態を記述する(=アウトカム目標)。目標自体は定性的で構わないが、「目標によるマネジメント」の基本から、各政策企画立案部局が、目標達成に効果的な施策等を企画立案できる程度に内容が明確である必要がある。例えば、「地域活性化」という抽象的な言葉だけでは十分明確な目標とはいえない。国土交通省では、13のアウトカム目標を設定、公表している。
 以下は、「成果重視の行政運営」を積極的に推進していることで知られるアメリカのアイオワ州政府が、職員向けに作成した「アウトカム目標”発見”フロ-チャート」である。
 
(施策名)の目的は、(施策の対象者)に対して(施策の内容)というサービスを提供し、彼らが(施策の目標とする状態)ことである。
 
【例】「就業促進施策」の目的は、福祉給付金対象者に対して、職業訓練の機会と職業斡旋というサービスを提供し、彼らが公的助成の対象から離れて経済的に自立することを支援することである。 (出典)"Budgeting for Results Handbook"(State of Iowa)
 
 業績測定は、目標(アウトカム)の達成状況をみるものであって、「目標によるマネジメント」を組織全体として確立することを目指すものです。事務事業評価と異なり、一つ一つの事務事業ごとに細かく見る必要はないのですが、全体としてうまくいっているかどうかをチェックするためのものなので、主要な業務分野をカバーする必要があります。また対外的には、当該組織の主要な業務分野に関し、目標の全体像とその達成状況を一覧性をもって国民にわかりやすく示すという説明責任の向上という役割も担っています。
 なお、ミッションと、こうしたアウトカム目標を組織内外に向けて広く周知させるために策定されるものが「戦略計画」と言われるものです。戦略計画に従い、大きなミッション(使命)からアウトカム目標、さらには具体の施策、事業と企画立案していく、演繹的な思考方法、仕事の進め方こそ「目標によるマネジメント」とよべるものです。これに対し、事務事業評価は、既存の事務や事業といった目に見えるものをチェックするもので、帰納的な発想です。帰納的なやり方だけでは、今までにない仕事のやり方やユニークな施策というものは生まれにくいと言われています。
 民間企業や欧米諸国の中央省庁の「戦略計画」は、一般的に、ミッション、アウトカム目標、マネジメント改革の考え方 の3つから成り立っています。国土交通省として、統合後まもなく公表した「国土交通省の使命、目標、仕事の進め方」は、それを目指して作ったもので、今後、政策評価の結果等も踏まえて、さらに本格的な「戦略計画」作りを行っていく必要があります。
 
 さて、設定した目標は定性的な記述が多いので、それを定期的に測定可能な指標におきかえて、その指標単位で業績の測定を行っていくことになります。これを業績指標といいます。
 
○業績指標
 業績測定をする上で、政策目標ごとに、業績の達成度を継続的に測定できる指標。「道路の整備延長」などはアウトプット指標、渋滞緩和というアウトカムを測るための「都市部のラッシュ時における平均走行速度」などはアウトカム指標とよばれる。欧米では、次のSMART基準を満たすことが「良い指標」の基本とされている。
 Specific (具体的)
 Measurable (測定可能)
 Ambitious (意欲的)
 Realistic/Relevant (現実的/目標との関連性)
 Timed (時宜を得た)
国土交通省では、200以上の業績指標を設定、公表している。
 
 その上で、各業績指標に対する具体的な目標値を設定します。目標値の設定に当たっては、それが恣意的に設定されたのではなく、国民のニーズを正しく反映したものであるかどうか、その「正当性」を確保することも重要なポイントですなのです。
 業績測定自体は、実績値を測定して、目標値と対比させることだけで、それに対していいか、悪いかの「判定」までするものではありません。ただ、目標を達成しなかった項目については、なぜそうなったのか、考えられる外部要因等も含めて、説明する必要はあります。
 
 業績測定は一種、「人間ドック」に近いものだと言えるでしょう。別にどこが悪いという自覚症状がなくても、定期的に全身を検査することに意味があるものです。人間ドックの場合は、検査で「引っかかる」と精密検査を行うことになります。精密検査に相当するものは、評価の世界では「プログラム評価」と言われています。
 「プログラム評価」の「プログラム」とは、あるアウトカム目標を実現するための施策、事業の集合体をいいます。個々の施策、事業を個別に評価するよりも、同じアウトカム目標を共有する施策、事業を一緒にまとめて評価するほうが、それぞれの施策等の効果の因果関係・相関関係や、全体の中の寄与度などを明らかにすることができ、評価結果を踏まえた改善方策の検討をする上で、有益な情報が得られるからです。プログラム評価は、あるテーマに即したプログラムを対象として、掘り下げた分析をするところにポイントがあるので、評価に関する技術・手法を駆使し、時間やコストがかかるのが一般的です。したがって、あらゆるテーマについて毎年できるという性格のものではなく、業績測定で「引っかかった」もののほかは、あらかじめテーマを決めて重点的、計画的に実施することが望ましいと言われています。
 NPM型の政策評価を法律上位置づけたものが1993年に制定されたアメリカのGPRA(政府業績評価法)です。この法律により、連邦政府の各省庁は、「戦略計画」の策定、そこで示された政策目標に照らした「業績測定」の実施、「プログラム評価」の計画策定 が求められています。アメリカは、法の制定以来、その本格的な実施までに7年間の準備期間等をおいています。評価を実施する前に「戦略計画」を策定すること、それを踏まえた業績指標を開発することに十分な時間をかけたものです。なお、業績測定の場合は、結果を測定することよりも、戦略計画、政策目標という形で、国民とコミュニケーションしながら、目標を設定するプロセスにも大きな意味があると考えられています。
 
 業績測定とプログラム評価は既存の政策の効果を把握することを基礎にする「事後評価」の代表的な方式です。このほか、政策の意思決定前に実施する「事前評価」は、事前に政策効果を予測することが一般に困難で、事後評価に比べて精緻な評価は難しいとされていますが、政策を企画立案する以上、評価をすることは本来必要なことです。
 個別公共事業については、事前評価として、費用対効果分析等を活用した「新規事業採択時評価」が実施されています。(個別公共事業については、再評価、完了後の事後評価も実施しています。公共事業の場合、これらを総称して「事業評価」とよびます。)
 
 
 
Q4 政策評価は具体的にどのように行われるのですか?
 
A4 国土交通省は統合後間もない平成13年1月に、「国土交通省政策評価実施要領」(省議決定)を策定、さらに5月に「平成13年度政策評価運営方針」(省議決定)を策定しました。平成14年4月からは、行政評価法に基づき「基本計画」「事後評価実施計画」を定めました。その概要を以下に紹介します。
 なお、評価方式の名称について、次のように、「政策アセスメント」等、国土交通省独自の呼称も用いることとしています。これは、日本語の「評価」という言葉は、あたかも「権威者」が絶対的な価値判断を下すような印象を与えることから、組織一丸となってマネジメント改革を推進していく上で、評価をネガティブにではなく、改善へ向けた前向きな努力として位置づけたいとの思いからです。
 
1)21世紀の新たな課題へ向けた政策アセスメント(事業評価方式)
 新規施策について、必要性、有効性、効率性を厳しくチェック、21世紀型の真に必要な施策の企画立案を目指すものです。具体的には、欧米のODA等の事前評価に用いられている次のような論理的分析方法(ロジカル・フレームワーク)を活用して、企画立案過程をわかりやすく明らかにします
 アウトカム目標、関連する指標等
 目標と現状のギャップ、その原因、現状の改善に向けた課題は何か
 課題を解決するために当該施策の導入が必要であること
 当該施策の効果が大きいと見込まれること、他の代替手段に比べ効率的であること等
 当該施策が目標実現にどのように寄与するか

 国土交通省では、平成13年8月、次年度予算概算要求、税制改正要望等を行うにあたり、38の新規施策について、以上の要領で事前評価を実施し、評価書をすべて公表しました。要求の時点で、施策ごとの個票をすべて公表したのははじめてのことです。その後も毎年新規施策について事前評価を実施し、評価書を公表しています。
 
2)目標と成果を示す政策チェックアップ(実績評価方式)
 国土交通省として、主要な行政分野に係る現状と将来の展望をまず明らかにし、施策等の企画立案に当たっては、これらの目標実現を目指すものとします。その上で、その達成度を測定し、国民に対して、目標の達成状況についての情報を提供することで、説明責任を果たすとともに、成果重視・目標による行政運営の確立を目指します。なお、「チェックアップ」とは、定期健康診断のような意味です。
 国土交通省では、パブリックコメントに付した上で、平成13年8月に、27の政策目標(アウトカム目標)及び112の業績指標を設定、公表しました。また、それぞれの指標ごとに、5年以内の目標値を明らかにしました。その後、平成15年10月の重点計画策定を踏まえ、27の政策目標、116の業績指標に改定し、公表しました。27の政策目標は、国土交通省の主要な政策分野をカバーし、一覧性を持たせることに留意したほか、アウトカムに着目し、できるだけ部局横断的に設定しました。業績指標と目標値の設定の考え方と事例は次のとおりです。
【指標の例】
〇アウトカムに着目したもの
 ・東京圏における都市鉄道の混雑率
 ・朝夕の三大都市圏人口集中地区の自動車走行速度
〇顧客満足度に着目したもの
 ・住宅に関する満足度評価
〇現場での業績改善に向けた動機づけとなり得るもの
 ・台風中心位置予報の精度
【目標の例】
〇ニーズを踏まえたもの
 ・地方中小鉄道におけるATS設置率
  【H12】92.6% →【H18】100%
〇内外の優れた事例(ベストプラクティス)を参考にしたもの
 ・ハザードマップ認知率(洪水)
  【H12】4% →【H18】70%
〇意欲的な目標として宣言したもの
 ・直轄工事におけるリサイクル率
  【H7】47%~ →【H17】100%
 
3)効果の検証と改善に向けた政策レビュー(総合評価方式)
 既存の施策について、国民の関心の高いテーマ等を選定し、総合的で掘り下げた分析・評価を実施するものです。ある政策目標について、その目標達成の手段として機能する施策、事業をセット(プログラム)にして、関連性や因果関係等を含めて評価するものです。プログラムを構成する各施策や事業を個別に評価しても、プログラム全体として、所期の目標達成のために効果的、効率的に機能するかを見ることができません。この評価で得られた知見を活用すれば、部局横断的な施策、事業の連携・融合が推進されることが期待できます。

 これらの方式は、独立して存在するのではなく、政策のマネジメントサイクルの各段階に対応したものとして、相互に有機的に関連した一つのシステム(国土交通省の新政策評価システム)として、全省的に取組むこととしています。
 例えば、政策チェックアップで前提とする政策目標は、評価を行うために設定したものではなく、省として目指すべき目標として意思決定したものですから、「目標によるマネジメント」の考え方から、新規施策の企画立案に係る政策アセスメントでも、それらの政策目標のうち、どの目標に関係し、どういう効果が期待できるのかを明らかにする必要があります。(事務事業評価のように、評価対象ごとに、目標を「考える」ということとは異なります。)また、政策レビューのテーマが、政策チェックアップの結果踏まえても決められることは前に述べたとおりです。一方、政策レビューの結果、政策目標について見直すべきだということになることもあります。こうした政策のマネジメントサイクルを確立することで、常に目標を意識した仕事をすることにつながります。
 中央省庁等改革により、各府省に政策評価を担当する課以上の組織を設けることとされていましたが、国土交通省では、政策統括官(局長級)を長とする組織を設置しています。
 また、政策評価を実施する上で、第三者の知見を活用することが必要なことから、学識経験者等から構成される「国土交通省政策評価会」を定期的に開催し、ご意見を頂戴しています。
 
 
Q5 国土交通省の政策評価の特徴は何ですか?
 
A5 国土交通省は、公共事業のうち多くを所管し、また、交通政策や国土政策など、国民生活に密着した幅広い行政分野について、様々な政策展開をしていることから、政策評価に関する国民のニーズは特に大きいものがあると認識しています。また、旧4省庁が統合したことから、施策の連携・融合の必要性も大きいと考えています。
 求められているのは、国民の立場に立って、アウトカム(成果)に焦点をあてた行政運営に向けて、仕事の進めかた、マネジメントを変革していくことです。そのため、国土交通省は、政策評価の基本的考え方を次のように位置づけています。
 
 新規施策について、必要性、有効性、効率性を厳しくチェック、21世紀型の真に必要な施策の企画立案を目指すものです。具体的には、欧米のODA等の事前評価に用いられている次のような論理的分析方法(ロジカル・フレームワーク)を活用して、企画立案過程をわかりやすく明らかにします。
1.政策評価は、21世紀型国土交通行政への改革を目指す重要な手段の一つ。政策のマネジメントサイクルを確立し、真に必要な施策等の企画立案に反映
2.公共事業も含めた政策全般について、総合的な評価を実施。統合のメリットを活かした施策の連携・融合をはじめ、省全体の戦略的な政策展開へ活かす。

 
 NPM(ニューパブリックマネジメント)の考え方を踏まえ、省全体のマネジメント改革を視野に入れ、そのための重要なツールの一つとして政策評価を明確に位置づけているところが、国土交通省の政策評価の考え方の中で、もっとも特徴的なものであるといえます。
 規格品を大量生産する時代の管理主義的な評価は、企業にとってもっとも生産性の高いやり方というものをあらかじめ規定し、その通りにやらせるために評価するというものでした。しかし、NPMの考え方は異なります。現場から、独創的で、意欲的なアイデアが出てくることを期待しているので、ある施策、事業について「いいか、悪いか」という二律背反的な評価を行うことがすべてだと考えていません。「正しい評価」というものが一つであるとは考えず、何を目指すべきなのか、そのために何をするのがいいのか、という点について国民と対話をしながら、常に前向きに政策を「進化」させようとするダイナミックな仕組みであると考えています。
 
○ コミュニケーション型行政
かつてのように行政が案を提示して国民の意見を聞くということではなく、国民と対話を重ねながら、国民とともに考えていくということを重視しようとするもので国土交通行政展開の基本理念としている。基本理念は次の3点。
 国民の満足度の把握、向上
 情報公開、行政の説明責任の向上
 行政に携わる者の意識改革


 


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