6.シルバービークル・電動スクーターによるタウンモビリティ実験−秋田県鷹巣町−
|
ポイント
■加齢等に伴う運動能力の衰えにより自動車の運転に不安を持ったり、断念する場合、また、数百メートルの距離を歩行するのが困難な場合でも、自由に移動できる手段として小型電気自動車と電動スクーターの走行実験を実施した。
■実験の結果、電気自動車については、専用レーンの設置、市街地への駐車場設置等面的整備に係る問題および混合交通における交通規制等の必要性が明らかとなった。
■また、電動スクーターについては、市街地の移動性が向上する一方で、電動スクーター走行に適した歩道の拡幅や店舗の改造等の課題が浮き彫りとなった。
|
|
|
(1)地域交通の状況と施策のねらい
(※地域概況については、3.参照のこと)
- 「福祉のまちづくり」を推進してきた鷹巣町では、高齢者や身障者あるいは病気・けが等に伴う移動困難者が、日常利用する身近な商店や金融機関等へ自由に移動できるようなシステム(タウンモビリティ)の導入実験を行った。同実験では、郊外から中心部へのアクセス手段としてノンステップバスを運行、中心市街地においては貸出場所を設置して、電動スクーター(*1)と小型電気自動車(シルバービークル(*2)、MITUOKA・MC1)を貸し出し、予め設定した走行ルートでの町民モニターによる実地走行を行った。
- 小型電気自動車や電動スクーターによって、周辺地域と市街地間や市街地内の移動性が向上し、それまで移動困難なために外出機会が限定されていた高齢者の社会参加を促し、市街地の活性化を図ることができると考えられている。
|
*1 |
歩行者扱いであり歩道の走行可能な最高時速6km/h以下のスクーター。市街地内の数百メートルの歩行による移動が困難な場合に使用する。
|
*2 |
乗車には普通免許が必要な最高時速30km/h以下の小型電気自動車。バッテリーカーで普通自動車のようにペダルはなく手元で全て操作できる。加齢による運動能力の衰えにより、普通自動車の運転を断念したり、不安を抱える人の普通自動車に変わる移動手段であり、数キロメートルの移動困難な場合に使用する。一度の充電で約30kmの走行が可能である。
|
|
|
(2)実施内容
- 実験は平成11年10月の3日間であり、事前に町民モニターを募集、小型電気自動車実験モニターとしては19名、電動スクーター実験モニターとしては45名が参加した。
【小型電気自動車(シルバービークル)実験】
- 小型電気自動車実験は、午前・午後の2回であり、実験時間は各々2時間、実走行時間は一人当たり1時間とした。実験で使用した小型電気自動車は、シルバービークルとMITUOKA・MC1で車両台数は4台である。シルバービークルは、運動能力の衰えを考慮し、操作をすべて手元に集中させる等の開発中の車両であるが、MITUOKA・MC1は、軽自動車以上に小型であること、電気自動車であること以外の操作等については一般車両と同様の市販車である。
- 実験では、市街地に小型電気自動車の貸出オフィスを設定し、ここから中心部までの実験ルートで走行実験を行った。
- また実験においては利用者に対するモニターアンケートの他、店舗経営者意向調査、一般ドライバー等道路利用者意向調査、交通量調査(ナンバープレート調査、主要断面交通量調査)を行っている。
|
【シルバービークルのタウンモビリティ実験】
|
|
【電動スクーター実験】
- 実験は、電動スクーターのレンタル地点を中心市街地に設定し、そこから中心市街地の設定されたルートを自由に移動するというものである。
|
|
(3)工夫した点・苦労した点
【小型電気自動車(シルバービークル)実験】
- シルバービークルは、高齢者の中に足の反応スピードが心配な人もいることを考慮し、ブレーキやアクセルなどの操作系を手元に集中させた。
- 小型電気自動車は、郊外からの移動手段としても利用可能な機能を持っているが、安全性や警察の許可等の問題から、市街地のみの利用に限定した。
|
|
【電動スクーター実験】
- 電動スクーター利用対象者として運転免許を持たないことが想定されたため、ノンステップバスを導入、モニターの自宅付近に仮設バス停を設置し、レンタル地点まで送迎することとした。
- タウンモビリティ実験として、郊外から中心部までの移動手段を併せて行った事例は全国的になく、公共交通が未発達な地域における郊外から中心部までの移動手段に対する課題を把握することができると考えられている。
|
|
(4)施策の実施効果
- モニターアンケート調査等の結果、(5)に示すような課題が抽出された。
|
|
(5)今後の展望と課題
- 小型電気自動車は、中心市街地に乗り入れて店舗脇に駐車可能であれば有効な移動手段であるが、現段階では、駐車場に停めなければならないため一般車両と変わらない。導入に際しては、道路駐車が可能な道路整備や駐車規制の弾力化等を併せて検討する必要がある。
- また、低速であるため一般車両と同一の道路を走行することにより、追突等の危険性が懸念されることから、専用レーンの設置、通過交通排除のためのバイパス整備、混合交通に対応した交通規制等の検討が必要となる。
- 電動スクーターは歩道を走行することから、段差の解消、歩道拡幅等面的整備が必要であり、また店舗内部においては、乗車したまま自由に移動・買い物ができるような店舗改造や商品棚の設置等の検討が必要である。
- このような課題はあるものの、電動スクーターは、高齢者が移動するために有効な手段と考えられることから、導入の実現に向け検討していくこととしている。
|