IV 継続的な競争を実現するための空港のスロットルールの在り方 IV 継続的な競争を実現するための空港のスロットルールの在り方

  1 基本的な考え方
(1)混雑空港におけるスロットルールの策定の必要性
 航空会社間でより一層の競争が行われるようにするためには、国内航空市場の大宗を占める大都市圏等における空港整備及び航空保安システムの整備による航空交通容量の制約の解消が必須であるが、需給調整規制の廃止後に、東京国際空港(羽田空港)のようなスロット(発着枠)に制約がある空港(以下「混雑空港」と言う。)において容量制約の解消が直ちに行われることは難しいと考えられる。
 しかしながら、需給調整規制を廃止する目的が、市場原理の下で競争を通じて利用者利便を向上させることにあることから、これらの混雑空港における競争環境を整備するため、客観性・透明性を有するスロットの調整・管理のためのルールの導入が重要な課題である。

(2)混雑空港における既存スロットの回収・再配分の必要性
 航空会社間の競争を一層促進し、利用者利便をより向上させるためには、新規航空会社の参入を促進することが必要である。また、これまではいったん配分されたスロットは実質的に配分を受けた航空会社の既得権益化しているが、スロットの既得権益化を防止して、利用者利便を増進し、かつ、効率的な会社がより多くのスロットを使用すべきであると考えられる。
 したがって、混雑空港においては、継続的な競争環境の維持の観点に立ち、一定の要件の下で既存スロットの回収・再配分を行うことが必要であり、回収の率、頻度等の具体的な方法について検討すべきである。

(3)スロットの配分ルールについての考え方
 混雑空港における恒常的なスロットの配分ルールは、利用者利便を増進し、かつ、効率的な会社にスロットが配分できるような客観性・透明性のあるものであることが適当である。
 なお、最近行われた羽田空港の新C滑走路の供用(平成9年3月)に伴って増加した発着枠の配分の際には、従来行われていた路線の配分と一体となった発着枠の配分を改め、原則として路線を定めずに発着枠を配分した。この配分の際の配分数の決定方法としてとられた航空会社間の経営基盤の格差是正については様々な意見があったが、これは競争環境整備の過渡的な措置であり、長期的には必要ないと考えられる。

  2 具体的なスロットの配分ルールの確立
(1)想定される方法
 想定される具体的なスロットの配分ルールについては、主に次に掲げる各方法について検討が行われた。
    ア. 評価方式(「効率性基準等の基準による評価」又は「総合評価」)
    イ. 競争入札制(オークション)
    ウ. 抽選制
    エ. 均等割
(2)想定される方法についてのメリット・デメリット
(i) 評価方式(「効率性基準等の基準による評価」又は「総合評価」)
 評価方式については、企業の効率性を確保し、かつ、利用者利便を向上させるような適切な項目を選定すれば、運賃上昇等の弊害を回避しつつ、効率的な企業を選定できるなどの観点から支持意見があった一方、客観性・透明性を確保していくために必要な評価項目の内容や手続き等について検討する必要があるとの指摘があった。

(ii) 競争入札制(オークション)
 競争入札制については、透明性や効率性の確保の観点から望ましい制度であるとの支持意見があった一方、公共的な財産であるスロットを企業にとっての価値のみで評価することの妥当性、入札料の転嫁による運賃上昇の可能性、企業の資本力の差による寡占的行動等の問題点があるとの指摘があった。

(iii) 抽選制・均等割
 これらについては、効率性とは無関係であること、航空会社の経営意欲が反映されないものであること等から、部分的な採用については考慮の余地はあるものの、主たる方法としては不適当であるとの指摘があった。

(3)想定される方法についての評価及び具体的な導入手続き
 想定される方法には、上記(2)で述べたとおり、それぞれメリットとデメリットがある。そのうち、評価方式については、評価項目の内容や手続き等の面で問題点はあるが、適切な評価項目の選択と手続きの透明性が確保されれば、相対的に競争入札制より望ましい方法ではないかとの指摘があった。また、競争入札制については、上述のような各種の問題点があることや、これまでに実施の例がないために客観的評価が難しいとの指摘があった。
 これらの指摘を総合的に勘案すると、現段階においては、恒常的なスロットの配分ルールについて、本答申後に、有識者により公開の場において、評価方式の具体化に向けた検討を中心に行われることが適当である。その際には、例えば、評価項目の内容(企業の効率性、利用者利便の達成度)、手続き(評価項目と配分算定式の決定手続きの公開等を通じた透明性の確保等)等の諸課題について検討することが必要である。併せて、競争入札制について、客観的な判断を行うための問題点の検証等その実行可能性について検討を行っていくことが必要である。

(4)交換制の取扱い
 スロットの配分ルールに基づき配分が行われた後のスロットの交換については、スロットの使用効率を高める観点から、透明性を確保しつつ実施することが適当である。
 ただし、売買による交換については、これまで無償で配分されてきた既存スロットが有償化することがあるために既存航空会社が新規航空会社に対して有利となること、売買により新たなコストが発生し、運賃が上昇する可能性があること、公共的な財産であるスロットを企業にとっての価値のみで評価することの妥当性等の問題点があり、現時点ではその導入は適当ではないと考えられる。

(5)新規航空会社の取扱い
 航空会社間による一層の競争状態を継続的に確保するためには、新規航空会社の参入により事業者数の増加を促すことが必要である。この場合、国内旅客輸送の大宗を占める混雑空港に係るスロットを新規航空会社に配分することにより、その参入がより容易化されることとなると考えられるため、混雑空港におけるスロットの回収及び配分に当たっては、一定の範囲で新規航空会社を優先的に取り扱うことが適当である。


戻る