社会資本整備

1. どうやって社会資本整備は進むのか?

 

社会資本、インフラストラクチャーの語源は、古代ローマ人が使用したラテン語の「下部」を意味する「インフラ」と、「構造」を意味する「ストゥルクトゥーラ」から合成されたものと言われています。この言葉通り、先人たちによって蓄積されてきたインフラが効果を発揮し、日々の生活や社会経済活動の基盤となっています。歴史を見ても、武田信玄による信玄堤、徳川家康による利根川東遷などに代表されるように、社会資本整備は、防衛、治安維持とならんで、当時の為政者の最重要業務でした。

 

社会資本の定義には様々な見解がありますが、主に、間接的に生産資本の生産力を高める機能を有する社会的間接資本としてとらえる考え方、市場機構によっては十分な供給を期待し得ないような財としてとらえる考え方、事業主体に着目し、公共主体によって整備される財としてとらえる考え方があります。

 

国土交通省では、道路、鉄道、空港、港湾、公園、水道、下水道、河川、砂防などの事業を社会資本整備事業と定め(社会資本整備重点計画法第2条第2項各号)、これらの事業を重点的、効果的かつ効率的に推進するため、社会資本整備重点計画を策定し、取組を推進しています。

 

重点的施策:社会資本整備重点計画について - 国土交通省 (mlit.go.jp)

社会資本の語源・歴史.pdf

 

 

道路、治水施設、港湾等の社会資本は、計画の段階から合意形成を行いながら具体化され、その後、設計・工事等を経て供用されます。

 

また、これらの過程において、個別事業(※)ごとに、計画段階、採択(事業費の予算化)段階、実施段階、完了後の各段階において、評価を行うことで、事業の効率性及びその実施過程における透明性の一層の向上を図りながら進めています。

(※)維持・管理及び災害復旧に係る事業等を除く。

 

<社会資本整備(公共事業)の流れと関連する事業評価の流れ>
社会資本整備(公共事業)の流れと関連する事業評価の流れ
 

 

 

 <予算について>

 

社会資本の整備を進めるための予算は、公共事業関係費といいます。政府が定める「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)等に沿って、国土交通省等が8月末までに、社会資本整備の推進に必要な経費について概算要求を行い、財務省が年末に政府予算案として取りまとめた上で、例年1月から始まる通常国会での審議を経て、成立します(※1)

 

また、当初予算作成後の事情の変更(災害の発生や経済社会情勢の変化等)によって、「経済対策」の策定が行われるなど、予算を支出する緊要性が認められた場合等には、補正予算が編成されることとなります(※2)

 

実際の事業を実施する際には、予算の成立後に、限りある予算の中で、地域の実情や要望、事業の必要性や緊急性に基づき、優先度の高いものから配分を行い、事業実施箇所の決定を行った上で、個々の事業を進めていくこととなります。

 

<社会資本整備に係る予算編成スケジュールの例(令和3年度)>
社会資本整備に係る予算編成スケジュールの例(令和3年度)
 

(※1)例えば、国土交通省の令和5年度当初予算案においては、「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2022)等に沿って、新型コロナウイルス感染症や激甚化・頻発化する自然災害、資源価格の高騰等の内外の難局から国民の命と暮らしを守り抜くとともに、「新しい資本主義」を加速させることに重点を置き、中長期的な見通しの下、必要かつ十分な公共事業予算の安定的・持続的な確保を図っています(参考リンク:令和5年度予算決定概要)。

 

(※2)例えば、令和4年度第2次補正予算は、世界経済の減速リスクや足元の物価高騰など、日本経済を取り巻く厳しい環境に切れ目なく対応するものとして策定された「経済対策」(物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策)の裏付けとなるもの等として編成されています(参考リンク:令和4年度国土交通省関係第2次補正予算の概要)。

 

 <契約について>

 

公共工事の発注者は、入札手続きにより、最新の単価や基準に基づいて経費を見積もって作成した予定価格の範囲内で受注者を特定し、契約を締結します(一般的には入札公告から契約締結まで1~数か月)。このように、一般的に、予算成立、契約締結を経て、工事の着工に至るまでには、一定の期間を要することになります。

 

また、公共工事は、着工のタイミングで、受注者の求めに応じて、発注者から受注者に対し、資材、人材等の確保のための着工資金として、原則として契約額の4割に当たる前払金が支払われますが、残額は、工事完了後、発注者の完了検査をもって受注者に支払われるのが一般的です(完成前に部分払いや中間前払金の支払いが行われる場合もあります)。このため、「契約」と予算の「支出」のタイミングにはずれが生じます。

 

<社会資本整備に関する工事の入札~供用開始までの流れ(イメージ)~>
社会資本整備に関する工事の入札~供用開始までの流れ
 

 

 

一般会計(当初予算)に占める公共事業関係費の割合は、2000年頃までは10%台で推移していました。その後、公共事業関係費は減少し、2022年度の公共事業関係費の割合は、約5.6%となっています。

 

他方、社会保障関係費は少子高齢化の進展等に伴い増加を続けており、国の予算の約半分が社会保障費と国債費(国債の償還と利払いのための経費)に充てられています。こうした厳しい財政状況にあっても、国民の安全・安心、経済成長、地域社会を支えるような、真に必要性の高い公共投資は的確に進めていく必要があり、国土交通省としては、中長期的かつ明確な見通しの下で必要な事業量が確保できるよう努めているところです。

 

<一般会計(当初予算)における公共事業関係費の割合の推移>
一般会計(当初予算)における公共事業関係費の割合の推移
 

 

 

国の公共事業の財源は、政府が発行する建設国債で賄われています。これは、社会資本が整備されると将来にわたり広く国民が利用できるという観点により認められているものです。地方公共団体においては、地方債の発行が、交通、上下水道などの公営企業の経費のほか、建設事業費の財源の調達を行う場合等に認められています。民間企業でも、商品を生産したり新商品を開発したりするのに必要な機械、設備などの固定資産の取得、整備を借入金で賄っていることと同様に、社会資本のために発行した公債額は、世代を超えて共有する資産としての裏付けを持っているものです。

 

<国債発行額に占める建設国債発行額の割合>
年度毎の国債発行額の推移
 
普通国債残高の内訳
 

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