現在、世界全体で年間数百万トンを超えるプラスチックごみが海洋に流出していると推計されています。海洋プラスチックごみの大半は陸上由来であるものの、船舶からの海洋プラスチックごみも一部存在するものと推定されています。
海洋に流出したプラスチックごみ(海洋プラスチックごみ)による環境汚染は、G7、G20や国連をはじめとする様々な国際会議において重要かつ喫緊の課題として議論が行われています。一例として、2019年6月に開催されたG20では、議長国である我が国は、海洋プラスチックごみに関する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提唱し、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」の策定を主導しました。また、2023年5月に開催されたG7広島サミットでは、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心に合意し、より積極的に取り組むことをG7の国々と確認しました。こうした進展の一方、世界では国際的なルール作りを求める声が高まっており、2022年3月の第5回国連環境総会の決定の下で、プラスチック汚染対策に関する条約交渉が2024年末の作業完了を目指して行われています。
また、国内においても関係各省の連携のもと、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」(2019年5月、海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係閣僚会議)の策定をはじめとする海洋プラスチックごみの削減に向けた様々な取り組みが進められています。
船舶からのプラスチックごみの海洋投棄は、海洋汚染防止条約附属書V第3 規則及び同規則を担保する海洋汚染等防止法第10 条により禁止されています。他のごみについては例外的に排出が認められる場合がありますが、プラスチックを含むごみの海洋への排出は一切認められていません。
また、国際海事機関(IMO)では、船主・船舶運航者・船員・荷主及び機器製造者が海洋汚染防止条約附属書V及び関連する国内法の規定を適切かつ効果的に遵守するためのガイドラインを策定しています。
船舶からの海洋プラスチックごみの削減には、船主・船舶運行者・船員・港湾管理者等の関係者が協力して対応することが不可欠です。上記の規制やガイドラインを踏まえ、船上のプラスチックごみの適切な取り扱いを実施していただきますようご協力をお願いいたします。
船舶からの海洋プラスチックごみの海洋投棄は海洋汚染防止条約等で禁止されていますが、同規制の実効性を一層強化するため、IMO第73回海洋環境保護委員会(MEPC 73)(2018年10月)において、「船舶からの海洋プラスチックごみ削減に向けた行動計画(本文、仮訳)」が策定されました。(MEPC73の結果概要はこちら)
当計画では、既存の政策および規制の枠組みに基づき、これらの実効性を強化し支援するための対策案を挙げており、それぞれの対策案に関する実施方策や実施スケジュールについて、持続可能な開発目標の目標14(海の豊かさを守ろう)のターゲットに沿って2025年までに完了することを目指し検討していくこととされています。
国土交通省では、実現可能かつ合理的・効果的な対策がとられるよう、関係者のご意見等を踏まえつつIMOでの議論に参画していくこととしています。
2021年5月にスリランカ沖で発生したコンテナ船X-press pearl号の事故により、貨物として輸送されていたプラスチック製品の原料となる小さな粒状のプラスチック素材(プラスチックペレット)が船舶から流出し、海岸に大量に漂着するなどの環境被害が発生したことを受け、IMOでは、同製品の海上輸送に伴う環境へのリスクを軽減するための対策を議論してきました。令和6年4月、IMOは「貨物コンテナによるプラスチックペレットの海上輸送に関する勧告(本文、仮訳)」回章を発出し、プラスチックペレットの製造や海上輸送に関わる事業者に対し、コンテナで輸送する際の梱包・情報通知・積付けについてそれぞれ以下の取り組みを奨励しました。
梱包 | プラスチックペレットは、輸送中に通常遭遇する衝撃や荷重に耐える十分な強度を持つ良質の梱包材で梱包されるべきである。梱包は、通常の輸送条件下で、振動や加速力によって引き起こされる可能性のある内容物の流出を防止するように構築され、密閉されるべきである。 |
情報通知 | 輸送情報は、海上人命安全(SOLAS)条約第VI章第2規則で要求される貨物資料*への追記として、貨物コンテナがプラスチックペレットを含むことを明確にすべきである。さらに、荷送人は、貨物資料に、特別な積付けの要請(詳細は以下の積付けの項目を参照)を補足するべきである。 |
積付け | プラスチックペレットを含む貨物コンテナは、船舶および乗船者の安全を損なうことなく、海洋環境に対する危険を最小化するよう、適切に収納・固定されるべきである。具体的には、プラスチックペレットを含む貨物コンテナは、以下のいずれかの場所に積付けるべきである。
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