3.被害の最小化を基本とした危機管理型防災対策の構築


 我が国は、水害、土砂災害、震災等の大規模な災害に対して、国際的に見ても極めて脆弱な国土条件を有しており、安全と安心を備えた国土整備を推進することが、国民生活の安定や経済の持続的発展には不可欠である。  
 このため、従来から「安全で安心できる国土づくり」を建設行政の主要なテーマの一つとして、治水・土砂対策や都市における防災性の向上、個々の公共施設や住宅・建築物の耐震強化等自然の猛威を克服するための努力を重ねてきたところであるが、その結果自然を遠ざけ、災害に対する国民意識が希薄化することとなったという面も見られる。
 今後とも、災害が生じないよう防災施設等の整備を進める必要があるが、すべての災害を防ぐことは不可能であることから、災害の発生を想定した上で、被害を最小限に軽減するための施策を予め準備しておくことが重要である。このため、ハード面の対策とともに、災害に関する情報の提供や関係行政機関との連携の強化等のソフト面での対策の充実など、危機管理型防災対策の充実を図る。

@ 地域主体の危機管理対策の確立
 災害による被害を最小限にするため、防災施設等の整備と併せ、関係機関、民間企業、住民などの役割分担を明確にして、ハザード・マップの周知徹底等により平常時から災害を想定したリスクマネジメント施策を講じるとともに、災害発生後において被害を軽減するための災害情報の伝達やボランティアを含む各種救援活動などのクライシスマネジメント施策を推進する。

A 「減災」を目的とした施設整備への転換
 例えば、堤防について、洪水を完全に防ぐことを目的とすることよりも、破堤による壊滅的な被害を回避することを優先するなど、防災施設等の整備についての基本的な考え方を、災害の発生を前提にしつつ、被害を最小限にするという方向に転換する。
 また、人的被害の絶えないがけ崩れ、土石流対策については、従来のハード施策に併せ、緩衝樹林帯の整備や危険地域に対する規制の強化などソフト面の施策を強化する。

B 都市における総合的な防災対策の充実
 都市内に多くの人口、資産が集積し、我が国の経済・社会活動の主要な部分が営まれている現状を踏まえ、大災害発生時における安全性の向上を図るとともに、経済・社会機能麻痺を防ぐため、住宅・社会資本の防災性の向上や密集市街地の整備などハード・ソフト両面から総合的な大規模災害対策を推進する。  また、被災後の国民生活や経済・社会活動の早急かつ円滑な回復が図られるよう、災害の発生に対して広域的な幹線道路の代替路等の確保、広域防災拠点、緊急輸送路等の整備を進めるとともに、ライフラインの防災性の向上に資する共同溝・電線共同溝の整備を推進する。

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