V 政策手法の転換


1.管理・連携や課題解決型技術開発などを重視した施策の展開


 従来は、人口の増大と都市への集中や、経済の発展等に住宅・社会資本の整備が追いつかない状況にあったことから、量的な充足に重点を置いて、推進してきたところであるが、このような社会・経済状況が大きく変化したことや、財政、資源・環境等の制約がますます厳しくなっていることを踏まえ、単なる施設整備にとどまらず、管理や技術開発などソフト面を重視した施策についての取組みを強化するなど、建設行政の政策手法を、バランスのとれた総合的な施策へと転換する。


(1)「利用・管理」の観点からの施策の展開


@ 需要管理手法の導入
 道路、河川などの社会資本整備に当たっては、単に需要に追随して施設整備を行うだけでなく、公共交通機関の支援や交通需要の調整などを図る交通需要マネジメント(TDM)施策や既存の水利権の譲渡・転用の円滑化等水利使用許可の弾力化による水資源の有効活用など、需要そのものを、調整・抑制するようなソフト施策の導入を図る。
 また、防災に当たっても、防災施設の整備により想定される災害を完全に防ごうとするのではなく、ある程度の災害発生を前提とした上で、被害を軽減するための危機管理対策の充実を図る。

A ストックの有効活用
 都市の空洞化により遊休化している社会資本を有効に活用するため、都心居住の促進や中心市街地の活性化を行うとともに、住宅ストックの有効利用を図るため、市場整備により、公的住宅の建替え、住宅リフォームの促進、既存住宅流通市場の活性化等を推進する。
 また、有料道路における各種割引制度などの料金施策、ITS、駐車場案内システムなど利用者への適切な情報提供、ダム運用の改善による容量の有効活用、路上工事の縮減等により、社会資本ストックの利用の促進・誘導を図る。
 さらに、住宅・社会資本を適切に保全し、次世代に良好な状態で引き継ぐため、計画的な維持管理を実施する仕組みを構築する。

B 施策・事業の総合化のための連携施策の推進
 公共事業を効率的・効果的に推進するため、省庁の枠を超えた事業間の連携強化を行うとともに、類似の事業の調整を行い、限られた財源の有効活用を図る。
 また、適正な水循環の確保のための河川管理者と下水道管理者の共同事業の実施など、共通する課題に関連する部局が連携して、総合的な政策展開を図る。
 さらに、住民等による清掃、植栽等のボランティア活動の支援や、利用者等から危険個所の通報を受けるための仕組みの充実など、地域との連携による社会資本の管理の効率化を進める。


(2)建設分野における科学技術研究開発の強化


@ 環境創造やライフサイクルコストの低減など「政策課題解決型」への転換
 住宅・社会資本整備に関する技術開発について、環境の保全・創造、ITSの実用化、維持管理によるライフサイクルコストの低減など、政策課題が複雑・多様化しており、従来のハード中心の「個別対応型」の技術開発では対応が困難な問題が多くなっている。このため、これらの政策課題を多角的・総合的に解決する技術開発に重点を置いていく。

A 民間・大学等との連携・交流の充実
 技術研究開発の効果を最大のものとするため、民間・大学等との連携・交流の充実を図るとともに、国際標準化を念頭に置いた研究開発を進める。
 その際、国は、技術研究開発の方向・目標の提示、長期的な課題に対応した基礎的研究、技術基準や公共事業実施に関する技術研究開発に取り組むとともに、民間において開発された新技術を公共事業に円滑に活用するための体制を整備する。

B 国土情報インフラの整備
 国土に関する基礎的な空間情報は国土の適正な管理のために必要なだけでなく、国民共通の社会インフラであり、その高度化を行うとともに、情報提供サービスの向上を図る。また、防災等に資するため、測地・地理分野における基礎研究を充実する。

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