2.持続可能な発展のための循環型社会の確立


 我が国の住宅・社会資本整備は、経済面での欧米へのキャッチアップを優先するあまり、質の確保より量的充足に重点が置かれてきたため、ともすれば住環境や自然環境等への配慮の不足、地域の歴史・文化の軽視といった点が見られたことは否めない。
 21世紀に求められる持続可能な発展を目指した「魅力ある国土」を構築するためには、これからの住宅・社会資本整備において、単に経済・社会活動の発展のみならず良好な居住環境や自然と調和した環境の保全・回復・創造を推進する必要がある。
 すなわち、生物としてのヒトの活動は、水や大気など自然の循環と調和して行われてきたものであり、今後とも持続的に発展していくためには、日常生活で生み出される様々なゴミ、廃棄物なども、循環のシステムの中で処理していかなければならない。
 このため、環境への負荷低減や資源の有効活用による「持続可能な発展のための循環型社会の確立」を、建設行政の大きな政策テーマとし、施策の再編・拡充を図る。


(1)水循環など資源循環の確立に向けた施策の推進


 21世紀に向けて、我が国が持続可能な発展を続けるためには、従来のような資源大量消費・大量廃棄型の社会システムを見直す必要がある。元来、自然においては、水循環システムや食物連鎖などの例に見られるように、資源を循環して利用するメカニズムが組み込まれているところであり、今後、建設行政を推進するに当たっては、自然のすばらしいシステムである「循環」を再認識し、ハード・ソフトの両面から、環境への負荷低減や限りある資源の徹底的な有効活用を推進していく。

@ 質・量ともに安全で快適な水の流れの構築を目的とした総合的水行政への転換
 源流から海に至るまで、流域の水循環が、質・量ともに安全かつ快適となり、河川が本来有している大自然の恵みを享受できる安全で潤いのある住み良い社会を構築するため、森林行政、土地利用行政、環境行政、各種利水行政等と整合した河川行政、下水道行政を実施することを基本理念とした総合的な水行政を展開する。
 また、土砂についても、流域全体を視野に入れ、異常堆砂、海岸侵食などを防止すべく、総合的な対策を推進する。

A 建設発生土、廃棄物等の建設副産物対策の充実と未利用エネルギー等の有効活用
 限りある資源を有効利用し、産業廃棄物問題の解決を図るため、産業廃棄物全体の最終処分量の40%を超える量を処分している建設産業において、各種の建設副産物の現場内での発生抑制・再利用、工事間での有効利用等により、最終処分量を極力削減するとともに、再利用のできない建設副産物の適正処理の徹底を図る。
 また、再資源化施設等の整備・技術開発に関する積極的な支援、最終処分場等の適正な立地を促進する。
 さらに、省資源・省エネルギーを一層推進するため、下水処理場から発生する水、熱、メタンガスなど、従来未利用であった資源、エネルギーや、ソーラーエネルギーなどの新エネルギーの有効利用を進めるとともに、そのシステムを面的に展開する。


(2)良好な環境や歴史・文化等の次世代への継承


 都市は、経済・社会活動の中心である反面、エネルギーや資源を大量に消費し周辺の環境へ負荷をかけ続けており、国土環境に関わる問題は、大部分が都市から起因しているといっても過言ではない。
 このため、今後の都市・地域整備にあたっては、資源・エネルギー多消費型の都市・地域構造を見直し、環境負荷の小さな都市・地域づくりを推進することが必要である。
 一方、地域のアイデンティティとしての固有の歴史・文化等についても、地域にとって貴重なソフト資源として捉え、その活用による個性ある地域整備が重要である。
 今後、住宅・社会資本整備においても、需要追随型から高質志向型へ可能な限り転換を図り、国土レベルからまちづくり、住まいづくりに至るあらゆる局面において、環境への負荷低減、自然環境の保全・回復・創造、歴史・文化等の活用など、貴重な国民的資源を次世代へ継承することを基軸において推進することとする。

@ 国土全体にわたる環境への負荷低減施策の推進
 国土全体にわたり、環境への負荷を低減し、ゆとりとうるおいのある美しい環境を創造するため、建設行政に係る環境施策を総合的に実施するとともに、建設産業等民間における環境への取組みを促進する。
 特に、地球温暖化の防止のため、二酸化炭素排出量の抑制策を、産業部門での取組みとあわせ、運輸部門や民生部門において積極的に推進する。
 また、事業の実施の判断に当たっては、環境面の要素を取り込んで検討するとともに、事業の計画、設計段階においても、貴重な自然環境はできるだけ回避し、回避できない場合は、影響の最小化や代償措置を講じることを基本とすることなどにより、環境の保全・向上を図る。

A 社会資本整備を通じた自然環境の保全・回復・創造
 河川や公園などの社会資本は、多様な生物が生息・生育する場であるとともに、住民の憩いの場となる貴重な空間であり、今後の建設行政の実施にあたっては、豊かな環境の保全・回復・創造を目指した「自然を活かした川づくり」などを本格的に推進するとともに、都市公園を始め多様な緑と自然環境からなる総合的な公園緑地体系の枠組みの充実を図る。
 また、下水道整備等による水質保全、海岸環境の適切な保全・整備、道路の緑化など、社会資本整備による自然環境の保全・回復・創造を積極的に実施する。

B 環境負荷の小さな都市づくり・住宅づくり
 豊かな環境と都市における高次の経済・社会活動がバランスする都市づくりを推進するとともに、耐久性が高く環境負荷の小さな良質な住宅・建築物のストックを長期間にわたって活用する循環型社会にふさわしい居住様式を確立する。
 このため、環境への貢献といったプラス面やライフサイクル全体の環境影響を含めた総合的な環境影響を評価するシステムを導入するほか、沿道環境の改善や都市交通の効率化によるエネルギー消費軽減のための取り組みを推進するとともに、環境共生住宅等の環境負荷の小さな住宅等の普及方策の充実を図る。

C 地域固有の歴史・文化等を創造・継承する個性あるまちづくり・地域づくり
 先人が築いた文化ストック、大切にしてきた自然や景観、歴史に培われた地域の個性を守り、活かし、調和するまちづくり・地域づくりを実現し、文化性豊かな生活環境を享受できるよう、歴史・文化等との調和を図る計画・事業システムの充実や広範な連携の推進、人材育成など幅広い取り組みを推進する。

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