U これからの政策課題


 建設省としては、今後、「国土のマネジメント」を行うに当たって、


(1) 限りある国土の中で、ストックを有効に活用しつつ、都市・地域が国内的にも国際的にも連携・交流することにより、持てる潜在的な活力を十二分に引き出すことができる「連携交流型国土構造の実現」
(2) 限りある資源や環境を有効かつ的確に活用することにより、持続的な発展を可能とする「循環型社会の確立」

(3) 国民生活や経済・社会活動を脅かす災害等に対し、被害の最小化を基本とした「危機管理型防災対策の構築」


を戦略的な政策課題として位置づけ、「魅力ある国土」を構築することとる。


1.ストックを活かし、経済・社会の潜在的活力を最大限引き出す連携交流型国土構造の実現


 21世紀に向け、国民が幸せな生活を営んでいくためには、いきいきとした経済・社会活動を維持することが不可欠である。
 今後、高齢化の進展と人口の減少が確実視され、経済の低成長時代を迎える中で、経済・社会活動の活力を高めていくためには、ストックを有効に活用することにより効率的な住宅・社会資本整備を進めるとともに、国内外の地域との連携交流の強化により、個々の経済・社会活動を担う国民や企業の能力が一層発揮できる環境を整備しなければならない。
 このため、個々の都市や地域において、基本的な経済・社会活動が展開できるような基盤を構築するとともに、@各都市・地域の豊かな個性のふれあいを広げて、新たな産業・文化等の創出を促進し、活力と創造力に富んだ国土を創造する、A厳しい財政事情を踏まえ、相互に機能を補完し合い各種サービスを提供する、B国際的な交流が活発化する中で、アジア各国をはじめとする諸外国との連携を視野に入れて、我が国の経済・社会の持つ力を十二分に引き出すことを目指した「連携交流型国土構造」を実現する。


(1)経済・社会活動を支える都市と地域の再構築


 大都市、地方を問わず、国民の大半が都市に暮らす時代を迎え、都市は生活・就業・娯楽等の諸活動が行われる経済・社会活動の「核」であるにもかかわらず、生活様式や産業構造などの変化に対応しきれていない現状にある。このままでは都市が国民や企業から見放され、地域経済、ひいては我が国経済そのもが活力を失うことが危惧される。また、人口のピークが間近に迫り、「都市化社会」から「都市型社会」へ移行しつつあることから、改めて都市の内部に目を向けることが求められていると同時に、それを可能とする状況となったと考えられる。
 一方,都市を取り巻く周辺地域においては、地域の雇用・経済を支えた基幹産業等の衰退、若年層の流出と高齢化の進展、中山間地域の活力の低下など深刻な状況にあり、さらに厳しい財政事情を勘案すれば、フルセット主義など各市町村のみで問題を解決することは極めて困難になっている。
 したがって、今後は、従来の急激な都市化の進展に対応した需要追随型の整備ではなく、各都市が責任を持って自ら時代に対応した都市を作り上げていくとともに、都市を取り巻く周辺地域を含めて、圏域内の連携交流の活発化により、広域的な視点で、地域の自立的な発展のための地域の再生を目指す「都市と地域の再構築」へと政策転換を図ることとし、各種制度の改編等を含めて、ハード・ソフトの両面から施策の充実・強化を図る。


@ 都市機能の整備・再配置
 経済・社会活動の国際化や産業構造、生活様式の変化等に対応して、都市の骨格的な道路など公共施設の効果的、効率的整備を行うとともに、土地の集約化、有効利用・高度利用により、都心居住の推進など商業、業務、居住等の都市機能や公益施設等の計画的な再配置・集積を図る。
 一方、「住宅単体の質の向上」から「住生活の質の向上」へ住宅政策の視野を広げ、既成市街地の再整備に重点を置いた良好な居住環境の形成を図る。
 これらの都市の再構築を進めるに当たり、各々の都市が自らの将来方針を決定できるよう、都市計画等の権限を市町村へ委譲する。

A 中心市街地の活性化と広域的、自立的発展を目指す地域の再生
 商業・生活関連施設の郊外移転等により活力が低下している地方都市を始めとした市街地について、地方公共団体の自主性、総合性を活かしつつ、都市基盤・居住環境の整備、交通環境の改善とあわせ、土地の有効・高度利用の促進、各種都市機能の充実、再生等を図る。
 また、生活面・経済面で自立した広域的な市町村からなる生活圏を形成するため、市町村合併等の動きに対応し、公共公益施設等の配置の見直しも含めて、効率的な住宅・社会資本整備を推進する。
 特に、農業・林業等の第一次産業が雇用や経済・社会を支えてきた地域については、今後とも経済・社会活動の活力を維持していくため、都市との連携を図りながら、生活関連基盤の整備や防災対策を効率的に進めるとともに、豊かな自然環境等の固有の地域資源を活かした交流施設整備を支援する。

B 地域資源としての公共空間の有効活用
 都市機能の整備・再配置、中心市街地の活性化等を図るため、道路・河川等について公共空間という観点から機能の再評価を行い、まちづくりと一体となった活用を図る。   
 また、官庁施設についても、地域の活性化のための資源として再認識し、交流拠点機能を活かし、周辺地域と連携した整備を図る。

C 都市内交通環境等の改善のための総合的な対策の推進
 都市活動の大きな阻害要因となっている交通渋滞を解消するため、バイパス、環状道路等の整備と併せ、公共交通機関の支援、交通需要マネジメント(TDM)施策、高度道路交通システム(ITS)などの情報通信基盤整備など、ハード・ソフト両面からの総合的な対策を推進する。  
 また、都市内物流の効率化等の観点から、河川舟運等を推進する。

D 高齢社会への対応や質の高いまちづくり・地域づくりの推進
 高齢化に対応して、都市において急増する高齢借家世帯に対する新たな賃貸住宅政策体系の確立など、賃貸・持家政策の再編・強化を図るとともに、高齢者や障害者等を含むすべての人々が安全・円滑に日常生活を送れるよう、バリアフリーのまちづくり、地域づくりを推進する。
 また、交通事故を削減するため、総合的な交通安全施策を推進する。特に、都市内の住居系地区等において、歩行者の安全を確保するとともに、地域コミュニティの回復に資するよう、幹線道路等の整備状況を勘案しつつ、暮らしに密接に関わる道路への通過交通等の進入を抑制するなど、歩行者中心の道づくりを進める。


(2)連携交流を支えるネットワークの重点的整備


 連携交流型国土構造の実現に当たっては、人、モノ、情報の流れを支えるネットワークインフラの整備とともに、各都市・地域のふれあいによる新たな産業文化の創造や相互に補完し合う地域を築くという意識の醸成が重要であり、関連するソフト施策についても推進する。
 なお、ネットワークインフラの整備に当たっては、厳しい財政状況を踏まえ、一律的なネットワークの充足ではなく、ネットワークのあり方について、国際化、高度情報化、地域活性化など新しい時代の要請と財政制約にも応えるものとなるよう見直していく必要がある。

@ 骨格となるネットワーク整備の重点化・効率化
 幹線道路の整備に当たっては、移動の広域化・高速化に対応しつつ、厳しい財政状況の下で効率的にネットワーク強化を進めるため、従来の「供給量」を重視する考え方を転換し、投資効果のより一層の把握及び明確化により、真に整備効果の高いものへの重点化を推進するとともに、地域特性等に応じた経済的な道路構造の採用による効率化を推進する。
 また、国際的な「大競争時代」の中で我が国の国際競争力を確保するため、海外との交流の拠点となる主要な空港、港湾へのアクセス整備を重点的に進め、複数交通機関の間での連携強化による複合一貫輸送を推進するとともに、物流の国際化、車両の大型化に対応した道路ネットワーク形成を進めて物流の効率化を図る。

A 新たな連携の構築や地域間の情報格差の是正のための情報通信インフラの整備
 道路、河川、下水道などの管理用光ファイバー等の整備を進めるとともに、これら公共施設の収容空間を活用して、民間事業者による光ファイバー網の整備を支援する。併せて、住宅・建築物における情報化に対応した設備の標準化等を推進する。

B 地域交流圏の形成等の地域社会単位の見直しに対応したネットワーク整備
 近隣市町村との連携交流を活発化し、個々の市町村の足らざる点を補完できる、生活面・経済面で自立した広域的な市町村からなる交流圏の形成に資するため、圏域内の道路ネットワーク形成に対して、重点的に支援を行う。

C 自然・文化などの再評価による地域社会連携の構築
 自然、文化などへの関心の高まりを踏まえ、地域住民の主体的に行われている都市と農山村の交流、河川流域や水源地との交流の取組みを支援する。
 河川の流域の連携に当たっては、都市と水源地のそれぞれの立地特性を活かした役割分担を明確化するとともに、河川空間を利用した緊急時における地域間の連携体制の支援を行うなど、地域間の相互補完を推進する。

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