第一部 これからの建設行政の課題と政策転換の方向


T 基本的考え方
〜「国土建設」から「国土マネジメント」への転換〜


 現在、我が国は、人口の高齢化と少子化、高度情報化の進展、経済・社会の国際化などに伴い、これまで我が国を支えてきた経済・社会システムの今後の有効性について、内外からの「審判」が下される歴史的な転換期にある。
 このような歴史的転換期において、21世紀に向けた新しい行財政システムを構築するため、政府全体で行財政改革等の諸改革に取り組んでいるところであるが、国民生活や経済・社会活動を支える「器」づくりを担う建設行政についても、大きな変革が求められている。
 すなわち、経済・社会活動のグローバル化が進み、都市や地域のみならず、国も企業に選ばれる時代を迎える中、内外の人々から我が国が「活動の場」として選択される「魅力ある国土」の構築に向け、それぞれの地域の個性を活かしながら、いわば「本格建築」ともいうべき国土づくりを行うことが、今後の建設行政に課せられた重要な課題となっている。
 一方で、厳しい財政状況や、人口の高齢化・少子化、自然環境・地球環境に係る価値の増大等を前提とすれば、限られた予算や、住宅・社会資本ストックを含む国土資源をいかに上手に活用するかが、従来にも増して大きな課題となっている。
 このような建設行政の新たな政策課題を克服するためには、戦略性を持って予算や資源の効率的・効果的な活用を図るとともに、単なる施設整備にとどまらず、ソフト的な施策も含め、利用・更新段階をも視野に入れた総合的な政策が必要となってくる。
 したがって、「災害が多く狭隘な国土に、極めて稠密に経済・社会活動が営まれている我が国において、限られた国土を適正に管理し、国民生活や経済・社会活動を支える。」という建設行政の基本的使命に立ち帰り、従来の需要に合わせて足らざる住宅・社会資本を整備するという「国土建設」から、住宅・社会資本ストックの有効活用や自然環境の保全等を含めた、総合的な「国土マネジメント(整備・利用・保全)」へと政策全般のあり方を転換する。

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