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5.討論
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【嶌委員】
先ほど総括政務次官の方からもお話があったが、この会、結構おもしろかったではないか、このまま終わらせるのはちょっともったいないということで続きが行われることになった。そして、以前と同じやり方では能がないし、今はインターネットの時代だから、インターネットなどをうまく利用しながら、インターネットとこれまでのようなリアルの会議と2つ組み合わせながらやっていこうということでスタートした。そして、一応インターネット上で、建設省の事務局がホームページを開設した。そこに問題提起という意味で何か文章を書いてほしいということだった。「居心地のいい社会」という大きなテーマだったから、僕はハッピーライフを送れるかどうかということで簡単なエッセイを書いて出した。
これからこの会を運営していくに当たって、一つはインターネットという新しい場を設けて、一般の人ももう少し会議に加わってもらおうということになったので、どうやって一般の人たちに加わってもらうようにするかということが課題となる。また委員の方々から最低限、年内ぐらいには簡単な問題提起を少し書いてもらったらいいのではないかと僕は個人的には思っている。そのようなことを含めて、今後の運営の仕方とか、あるいは使い勝手の改善の仕方とか、その辺について少しご意見を述べていただければと思う。
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【川勝委員】
私は住まいが標高 1,000メートルのところなものだから、今朝は氷点下だった。山から下りてくるとまだ暖かい。今日は寒いと言われるが、かなり暖かく感じる。平野部の都会での色々な仕事を、ITを使っている妻が理解してくれて、家でのコミュニケーションのハッピーライフにつながり、これまで以上にハッピアーになった。これからハッピエストにしていくことが今の私の課題である。
折角嶌さんがお書きになったにもかかわらず、まだ私自身はレスポンスをしていないので、ここにいるのを恥ずかしく思っている。ただ「居心地のよい国ニッポン」、これはこの会での成果を出したもので誇りに思っている。ここにはITの専門家の成毛さんとか、コンピュータを使って障害者の能力を開発している竹中ナミさんなどIT技術を通しての先覚者、リーダーがいらっしゃる。
今、日本は国が変わりつつある。政界はコップの中の嵐みたいで、どこに争点があるかわからない形で、ただ支持率が下がったことが争点と言えば争点。何かそれはまともな争点がないにもかかわらず、激烈な対立が続いているアメリカ大統領選挙を鏡で映したような感じもするが、日本自体が構造的に大きく転換しつつあるということは間違いない。
特に建設省、あるいはこれから出来上がる国土交通省の位置を見てみると、その感が強い。2年前に「21世紀の国土のグランドデザイン」が出た。これは地域の自立と、美しい国づくりを提言している。美しいなと思われる国をつくろうではないかというものだ。社会基盤の整備を、経済発展に加えて、人間の一人ひとりの暮らしを良くするためにつくっていこうとする提言だ。人間それぞれ違う価値観を持っている。感動を与えるもの、それは真善美の中では恐らく美とか崇高とかに関わってくる。カントで言えば最後の三批判の『判断力批判』のところに来たと思う。
翌年には「首都機能移転に関する国会等移転審議会」が早速、新しい日本の候補地は那須のような森に沈むようなところが候補だと言った。今年になると「地方分権一括法」、さらに「過疎地域自立促進法」も導入された。今まで過疎三法と言われていたものと異なり、今度の法律は、冒頭で過疎地域が日本の品格と美しい国づくりの形成に資する、つまりモデルになり得るのだという、位置づけの
180度転換である。一極集中から地方へと国の形が変わるということを「地方分権法」も「過疎地域自立促進法」も唱っている。さらに来年1月に、国土庁、建設省、運輸省、北海道開発庁が一緒になって国土交通省ができる。地方建設局が港湾局と一緒になって、ブロックごとに地方整備局ができる。一体になった地域行政、いわゆるブロック行政をやっていこうということである。ただし、それは中央の官庁の方がやるという限界がある。とはいえ、地方が大きな権限を持つということである。小さな政府をつくることと符合するということである。仮に首都が那須に移るとしても大きな霞ヶ関全体が移ることは不可能であろう。
今、大宮でつくられているように、関東地建は非常に大きな組織になる。それぞれの地域に権限が委譲されていくと、財源もそれに応じて移っていくだろう。仮に各ブロックの人たちがリーダーを政治家として選べば、名前のつけ方は道州になるかどうかは別として日本ブロック制になる。これまでの明治以来の国づくりと比べてみると、違う方向に歩み出していることが、この三、四年の動きを見ても明確だ。
行政組織や日本の国の形が変わりつつある中で、一人ひとりの我々の意思を反映させていくツールをここに我々は得たように思うので、これをぜひ生かしていきたい。
見事な画面で、やり方も割と簡単なようだし、そろそろ反応が出始めている。ただ、僕のようにやや半歩遅れの者は、少ししんどいところもある。それと同時にどういう方向に向かい得るのかということについても、実を言うと半歩先はちょっと見えないところがある。私は、後ろの方から何とか遅れないようについていきたい。
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【嶌委員】
それでは議論に入りたい。僕は問題提起みたいなものを書いてほしいと言われたので、「ハッピーライフ送れますか」というタイトルで多少書いた。実はこれは、書く10日か1週間ぐらい前に訪ねてきた、リタイヤしたアメリカ人の友達に生活ぶりを聞いて書いたもので、年収4〜500万円で、実にハッピーな生活をしている。ある意味で言うと、恐らく居心地のいい社会というのは、リタイヤしなくてもこういうことがすぐ手に入る社会というのがこれからの日本の社会の方向だろうと思ったので、これを問題提起にしたわけである。
それは何かというと、この間、いろいろなことを調べていると、1980年に大体物質的豊かさはそろったと思われる。それまでは、明治維新からと言ってもいいかもしれないし、あるいは戦後からと言ってもいいかもしれないが、やはりある程度物の豊かさを得ないと人間は何となく幸福になれないというイメージがあった。そのイメージというのは、結局欧米先進国のライフスタイル、つまり自動車が欲しい、テレビが欲しい、家電製品が欲しい、あるいは家が欲しい、マイホームが欲しい、というものである。そういうことはほぼ1980年に揃った感じがする。僕が調べてみると、1980年になくて今あるものは携帯電話とパソコンだけだ。携帯電話とパソコン以外は大体1980年までに揃ってしまった。1980年以降のライフスタイルというものは何だったのかと考えると、90年代前半まではそれまでのバージョンアップだったのではないかと思う。つまり、洋服はイタリア製かフランス製が欲しいとか、ハンドバッグはヴィトンにしたいとか、イタリア製の革靴を履きたいとか、車は1000ccから2000ccにしたいとか、外車にしたいとか、そういうバージョンアップをやっていたにすぎないではないか。
それが不況になってしまった途端に、やはり将来が不安だからバージョンアップをやめようとする。今までは5年に一回買い替えていた背広は7年着ようとか、あるいは新車は5〜6年に一回ずつ買い替えていたけれども、8年乗っても構わないとか、あるいはテレビも5年ごとに替えていたけれども、壊れるまで見てもいいのではないかとか、少し色が悪くなったけれども、まあいいやとか、あるいは靴も1年履いていたけれども1年2カ月履いてみようとか、そういう生活が定着する。多分この3〜4年間の日本人の基本的なライフスタイルがそのように変わってきたのだと思う。その結果、家や自動車やテレビや洋服や靴の内需が2割、3割落ちているのだろうと僕は思う。したがって、今、景気はいいと言っているけれども、企業業績は確かにリストラや合理化でいいのだが、個人消費は伸びていない。まだ将来に対する不安や何かがあるから、まだ節約している状況にあるとみている。
そういう大きな全体像を考えたときに、うちのワイフなどに聞いてみても、物はあまり要らないと言う。例えば何かもらってきたりすると、かえって邪魔だと言われたり、こんなセンスの悪いものをもらってくるなとか、こんなものをもらったって置くところがないと言われてしまう。男はどうも会社人生の中に生きているから、相変わらずシェアを上げよう、売上を上げようとか、そういうことが身についているから、何かもらってくると得したような気になってくるけれども、実は一般の家庭をあずかっている主婦や女性は、もう物はいい、むしろセンスのいいものとか個性的なものとか、そういうものが欲しいと言う。それはどういうことかというと、お金で物を買う楽しみという時代は、ある意味で言うとほぼ終焉してきた。むしろお金を出していかに居心地のいい生活だとか、つまり居心地のいいソフトだとか、そういうものを得たいという時代に入ってきているという感じがする。
かつての高度成長、所得倍増というスローガンを掲げたときには、日本人は抽象的なスローガンだけれども、そこには、テレビが欲しい、自動車が欲しい、何とかが欲しいというようなことが具体的にイメージできたから、所得倍増だとか高度成長という言葉が恐らく国民的にもフィーリングとしてフィットできたのだろうと思う。ところが、今政府の掲げているのは財政改革とか構造改革とか教育改革とか、6大改革を唱えているのだけれども、何かイメージとして具体的にリアリティを持ってこない。
そこのところに来て、今の政治が空回りしている。例えば加藤さんが出てきて風穴を開けてくれるのはいいのだけれども、一体、加藤さんは何をしてくれて、どういう風にしてくれるのか。そういうのがリアリティを持って感じられない。そのリアリティを示すことが大事なのではないかという感じがしている。ここにも少し書いたけれども、アメリカなどでは、かなりリアリティのあるハッピーライフを実は実現している。そういうことをこれから提言していくということが大事なのではないかと思う。このリアリティのあるハッピーライフ、つまり物ではなくてソフトとか居心地のよさとか清潔さとか安全さとか、安らぎを求めるとか、癒しが求められるとか、そういうことは、実は全部がソフトだけの問題じゃなくてハードとも絡んでいるわけである。そういうことをつなげていくことを提案することが大事なのではないか。
ただ、このエッセイだけでは、多分そういうことがイメージできないと思う。例えば経済企画庁がよく豊かさランキングで使っている、「育てる」とか「働く」だとか「学ぶ」とか「癒す」とか、「住む」とか「遊ぶ」とか「安全」とか「老後」とか、政府は一応こういうキーワードを挙げているわけだけれども、そのキーワードを裏づける具体的な資料としては、何かといえば我々の生活とはちょっとかけ離れた資料が使われている。それをむしろ、こういうことが自分たちの手にできれば非常に居心地のいい社会ができるのではないか、という具体的なリアリティのあるソフトイメージを、当面この8つぐらいのものについて出していただければいいのではないかということを問題提起したつもりである。
それだけでは少しわかりにくいと思ったので、介護などについては、例えば介護のカリキュラムをつくる、高校生などが介護のカリキュラムを実習するという提案を示した。そうすれば、高校生が1カ月に1日ぐらいは老人のお世話をする。それは老人と若者との交流にもなるし、それから、ヘルパーさんがいないということへの不安もなくなるだろう。そういうカネをかけないシステムの改革提案をいろいろ考えていただいたらどうかというのが僕の提案だったわけである。
そういう意味で、委員の方々に、せいぜい何百字でもいいのだが、 それなりにお一人お一人が、できれば年内には全員の委員の、まず提案が生まれるようなものを書いていただくことを最初にお願いしたい。あとは、まずこのサイトを見た感想とか、あるいは今後こういう風にしたら居心地の良い社会になるのではないかとか、そういう意見を少し皆さんに言っていただいて、そして、川勝委員が述べられたように、できれば国民がこれに参加して、そしてその意思が政策に反映されるということ、あるいは反映されるルートが結構このサイトとかを通じてできるんだ、ということを見せていけば、恐らく参加する人たちも何となく遊びではなくて、「そうか、案外こういうことが実現していくのだな」という実感が得られることになる。また、そういう意見を汲み上げてこういうことが実現したということも、逆に実現したことは提案したものであるということになると、このサイトもリアリティを持ってくると思う。そういうプロセスの体験と信頼が大事だと思う。
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【竹中委員】
私もまだ書き込みをしていなくて申しわけない。
実は、この「j−dreamへようこそ」のページを、プロップのチャレンジドのメンバーが仕事でつくらせていただいたことを報告したい。最初の川勝さんと嶌さんの似顔絵も、写真をもとに一生懸命苦労して似顔絵の得意な子が描いたのだが、これにアクセスしていただくと動くようになっている。本当に直接的に関わらせていただいたということで、大変私もうれしいし、スタッフたちも喜んでいる。これからここを通して、私だけでなくて、多分彼ら自身も感じていることを意見として言わせてもらいたいと思っている。
それで、ハッピーライフと言われたけれども、今、かなり移動体端末などが充実してきて、どこそこで会おうと言ったら誰とでも会えてしまう世の中になってきている。しかし、やはりまだまだ移動体端末自身の操作が難しい人がいたり、また、特に画像などがどんどん動くようになったとき、今改善されつつあるが、目の見えないメンバーが、DOSパソコンがウィンドウズのアイコン式になったときに困ったのと同じような問題が移動体端末にも出てくることが予想される。それを私たち自身がいろいろな提案をする形で、いろいろな企業とも、またこういう会でも一緒に話し合いをさせていただいて、本当の意味でのユニバーサルな情報ネットワークというものになっていけばいいと考えている。こういうホームページもそのきっかけになればうれしい。
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【嶌委員】
今後、もっとこういうことを改善したらとか、何かそういうものについて。
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【竹中委員】
このネットそのものについては十分中身を把握していない。でも既に 1,000人以上の方が11月に立ち上がってから見られたというのはすごいと思う。今、プロップのホームページからもすぐにリンクをしたりして、ご意見をどうぞみたいなことをぜひやっていこうと思ったりしていて、そういう意味で自由闊達な議論になればいいと思う。
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【嶌委員】
アメリカ人は、4〜500万円ぐらいの年収でリタイヤした人が、結構人生を楽しんでいる。忙しいぐらい人生楽しんでいる。それには多分安いインフラで生活を楽しめるようなものとか、そういうものがあるという感じがする。
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【竹中委員】
精神の豊かさをすごく求めるようになっているというのは、まさにその通りだと思う。その精神の豊かさをたくさんの人が共通に実感できるようなことが、こういう発信媒体を使ってやられていくのだろうという感じはしている。
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【石井委員】
この懇談会は非常に楽しい懇談会である。それがどうして楽しいのかということを考えていくと、とにかく談論風発というか、今まで役所がおつくりになる委員会と違うのをつくっていただいたからである。そういう懇談会の様子の中から、今のハッピーライフとか、いろいろなことが出てきている。そうでなければ、なかなか出ない話だったというように思う。それと、このサイバーネットをひっかける。そのときに、私たちの世代というのは、人生は持っているのだがIT技術は持っていない。そこのところが非常におもしろいところで、こういう断続感がないと新しいものは出てこないのではないか。今の、例えば二十から二十四、五ぐらいの人たちというのは、とにかく猛烈にこういう技術を持っている。ただ、人生何も知らないのではないかという感じもある。そこの部分で私たちもやはりそういう技術に親しむことが求められる。その際、技術の引っ張り出し方を少し違う形にして引っ張り出せるのは我々の方であって、レディ・メイドでパソコンが用意されているからやるのではないというところが出せると、すごくおもしろい懇談会になると思う。
例えば最近だと、パソコンにさまざまな機能がついていて、今、こうして話している状況を臨場感たっぷりに伝えることができる。例えばリサイクルについて知りたいと思うと、インターネットで検索すれば、リサイクル関係の画面がわっと出て、それがどんと日本中に伝わっていく。
今、個人の能力がものすごく拡張しているところだろうと思う。役所という一番効率よくいろいろなことが処理できるような組織が考え出されて、それで今日に至ったわけで、さらに最近では一人ひとりの能力というのがたくさん付与されるようになった。今では役所でも会社でも、その構成員の能力は前の
100倍、1,000倍に膨らんできている。
だから、ぜひこの「サイバーネット懇談会」を画期的なネット更新の新機軸というか、印象としては、できるだけ活字は少なくて、何か見ているうちに結構わくわくするような話に引っ張り込まれていくというようなものに仕上げていきたいものである。今、いろいろな道具がどんどん廉価でバンバン出てくる。我々だって、昔はスライドを映していた。スライドなど映す人というのは、もう全く化石的な人である。今ではアプリケーションソフトを使えば、例えば建物をいろいろな角度から見た絵をぱっぱっと順番に見せたり、更に音を入れたりも出来るのである。基本的には役所が情報を伝えようとしているというだけではなくて、その情報を伝えるということの楽しさというか、エンターテイメントというか、そういうものをこのサイバーネットによって伝え得る。例えば建設省と厚生省とどっちが楽しいかというようなことを選択できるのもよい。
お役所というといつでもレポートの形の印象だったけれども、そうではないことが可能になってきているように思うので、我々も下の世代の半分ぐらいでも出来るようになろうと思う。コンピュータのソフトも、最近は非常に親切に応答してくれる。向こうに何人いるのかわからないけれども、いろいろ何回も何回も電話しているうちにこっちの名前がわかってしまう。そうすると「毎日触っていますか」とか「この間も同じようなことを聞いていましたね」というようななんとなく変な関係ができあがる。
チャータースクールというのがある。アメリカに 2,000校あり、あと2年間で 4,000校にするという。公立の正式にスポンサーされた学校なのだが、公立学校のカリキュラムと別のプログラムを持つ。この委員会もまさにチャーター委員会なのではないかと思う。今までではあり得なかった委員会が、たまたまITの技術爆発の時期と重なったことで成立可能となったおもしろさ。僕も一生懸命何かこれに文章を入れなければということでやってみた。けれども、アクセスがなかなか難しい。
例えばNHKの朝のニュースでも、あの忙しいときに「とれたてマイビデオ」とかいうものを流している。何かそこの犬がやけに老人に親切だったとか、そういうのを撮ってきて、朝の国営放送の時間に、「みんな見て、加藤さんがどうしているか」という次に、突然その撮影した犬か何かが出てくるというような時代なのである。情報のあり方というものを考えると、そういうものももっとチャーター的にやるとおもしろくなって、この会の雰囲気が出るのではないかと思う。
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【加藤委員】
私は、中途半端なことはやめておいた方がいいと思う。改革とかITとかベンチャーとか、もっと競争力だとか、そんなことがもう世の中にあふれている。でも、ほとんどの人はそんなことはどっちでもいいのである。私は、今の日本の一番よくないところは、ここ数日間の政治家がまさにその状態なのだろうけれども、「浮足立ち症候群」にあるのではないかと思う。改革だとか、ITだとか何とかと言って、そんなものを使う人は使えばいいし、使わない人は別にいいわけであって、中身がすぐに変わるわけではない。ところが、それに置いてきぼりを食うと大変だという雰囲気が、もう国中に蔓延しているのではないか。私は、こういう中でこのサイバーネットの使い道というのは2つあるのではないかと思う。
一つは、全く建設省の仕事と関係ないと言えるが、嶌さんのエッセイというのは、私は非常にいいサンプルになると思うのだが、「あなたが幸せだと思った瞬間というのはどういうときですか」というようなことを、とにかくいっぱいここに入れてもらう。「どうしたいですか」と言う質問だと変に考えてしまうから、あれが欲しいとか、これが欲しいとか、これは何か気に食わないとかいっぱい出てきて、あまり役に立たないというか、議論が発散してしまう。そんな中途半端な改革論は、その辺の本屋で山ほど積み上げてあるようなつまらない本の中身と一緒になっていくのではないかと思う。むしろ、嶌さんのエッセイのように、何がハッピーかというのはすごく単純な話で、ちょっとしたことで気分がよかったりする。それの積み重ねだと思う。
少し話がそれるが、幕末に日本を訪れた外国人の記録したものを見ると、日本人というのは物が一切ないのに、何と簡単に満足する人たちなのだとある。何もないけれども、えらくみんな顔が輝いているということを書いている。経済学者を筆頭にして、世の中の改革論者たちは、あたかも、簡単に満足する人は劣っているとでもいうような言い方をする。そんなに簡単に満足してはいけない、もっと競争力をつけてガンガン頑張らないといけない、そのためにいろいろな改革をしないといけないと言う。私にはどうもそういう風に見えてしまうのだが、それこそまさに余計なお世話ではないかと思う。
だから、徹底して従来の建設省らしくない、「あなたはいつ、どういう瞬間にハッピーだと思いましたか」に対する答えを、とにかくいっぱいここにアクセスして入れてもらうというようなことをしてみる。そして、こうあるべきというのではなくて、日本人の多くはこういうときに幸せだと思っているようだとか、このようなものが幸せな世の中の一つの絵みたいだとかいうようなことを見せていく。それでどんどん議論が高まっていけば、まさに「浮足立ち症候群」というものに対するいい薬になるのではないかというのが一つである。
もう一つは、徹底して現実的になって、身の周りのことでどうしてもここが不便だとか、障害になっているとか、こういうことをして欲しいとかということがあったら、これは建設省、あるいは国土交通省の仕事を中心にして、とにかく具体的なことを言ってきてくれと言う。例えば私の例で言えば、地下鉄の駅まで行く途中に、ちょっとした表通りに歩道がついているところと、それから細道と両方あるのだが、何年か前のことになるが表通りの歩道が全部きれいなカラーのタイルになった。それはそれで悪いことではないと思うのだが、別に今まで普通にあったアスファルトをはがしてまでタイルにかえる必要はなかったのではないかという気がする。その一方で、そこから入った細道の方は、細いけれども割合車が通って、ガードレール一つない。あれだけの歩道を全部ひっくり返すお金の、もう本当に何十分の1かで細い道に数十メートル、せいぜい
100メートルぐらいガードレールをつけるというのはすぐできるはずである。すごく身近なところで、何でこっちが先ではないのかと思うわけである。そんなことは山ほどある。だから、そういうことをとにかく脈絡がなくても、立派なことでなくていいから、具体的なことをいっぱいどんどん入れていくというのもいいのではないかと思う。
私は、この後者は、実は非常に大事なことであると考えている。例えば今、日本の歳出予算90兆円弱で、福祉予算というのは20兆円近くある。公共事業もそうだろうけれども、いろいろな人たちが歳出削減をすべきだ、むだな公共事業を切るべきだと言うのだが、そこから先はだれも具体的なことを言っていない。私は、福祉予算であれば、例えば30億円で立派な何とかセンターをつくって、年間予算数億円つけて、それを全国に何百カ所つくってというようなことを言っていれば、あっという間に兆円単位になるわけである。ところが、現場の保健婦さんたちは、おばあさんの幸せな顔を見ようと思ったら、そんなところにお金をかけるよりも、「口紅1本渡したら、すごくみんなハッピーになるんですよ」と言っている。だから、そういうことをずっと積み重ねていって、これが福祉予算だということをやれば、20数兆円が一遍に5兆円ぐらいになるかもしれない。
簡単ではないにしても、今、改革だとか政策だとか言われる割にそこから先に進まないのは、抽象論とマクロばかりあって、現場の知恵の積み上げがないからではないか。そういうことを丹念にやっていけば、意外とそうかと思われる結果が出る。このかわりにこっちでやれば、今までの3分の1の予算で大分良いことができるということが至るところにあるのではないか。建設省にとってはほとんど関係ない話と、すごく身近な話の両方から、しかし両方とも非常にリアルなものをここに入れていけば、まさにサイバーがリアルになるのではないかという感じがする。
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【松田委員】
本当に久しぶりでこういう懇談会に出てきて、このメンバーの個性の豊かさに改めて圧倒されている。
私は、春から大学の先生にもなった。子供たちと付き合ってみてわかることに、子供たちを社会の中にどう参加させていくかということがある。このサイバーネットをうちの学生たちの一つの教育プログラムに組み込んでみようかなと思う。自分たちの答えが出てくるだけでもおもしろいので、それをやりたいなと思っている。
あとは、やはり人々というのはおしゃれで華やかなものに惹かれるので、その華やかさみたいなものを盛り込む仕掛けもやはり大事ではないかと思う。日本の暮らしの質の高さみたいなものをここから感じられるような雰囲気づくりをしたい。
それから、川勝さんにしても石井さんにしても、日本のトップリーダーであられる。その方たちがいつ幸せに思っているかということを知ることは、私にとってはすごく幸せなことだし、顔写真つきの建設省の方々が何を幸せに思うかということを知るのは、国民にとってすばらしく楽しいことだと思う。だから、差し支えない範囲で、家族だとか幸せとかいうのを伝えてあげ、自分たちと同じ考え方を持っているとわかれば、自分に照らし合わせて幸せという自信を持つのではないか。日本の国民は今自信を持たなくなっているのだが、自信を持つことによって頑張ろうという気持ちになるだろうと思う。私の学校は小さな小さな学校だが、教員掲示板を開設している。結構アイデアが出てくるし、はまってしまう。私でもはまってしまうぐらいだから、はまり出したらみんな見ると思う。政策のアンケートをとっていくときに若い人の意見を聞くためにはいいツールになるだろうと思う。懇談会では有識者の立派な先生方の話を聞いて、若い方たちにはこれでアンケート調査を投票みたいな形でしていく。
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【嶌委員】
いろいろ良いアイデアを出していただいて、ぜひ学校の人たちに参加してもらうと、若い人たちが出てくる。それはただ文章だけじゃなくて、写真でも何でもいいし、いろいろなIT技術の多様性を使って、いろいろ出してもらえるとありがたいと思う。
それから、今、松田さんが言われたように、なるべく全員に、1行か2行でいいから、私が幸せと思った瞬間というのを書いていただくといいのではないかと思う。
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【澤登委員】
私も何か書かなくてはいけないと思ってはいる。最初アクセスしたときにはうまくできたのだが、その後何かトラブって、なかなかできなかった。そんなことで全然アクセスしていないが、投票だけはして「はい」と答えた。なぜならば、上を見れば切りがないし、下を見れば切りがないし、ほどほど楽しいと思って「はい」をつけた。それと同時に、問題提起されている「ハッピーライフ」ということを絶えず頭の中に入れて見ていることが多い。
しかし、周りを見渡すと、肩たたきにあった男性の問題が大き過ぎるということを、今感じている。本当に居場所がない。家の中でも居場所がない。いわゆる住宅の問題が大きい。いつの間にかみんなが家を持つようになって、ローンに追われて、小さな小さなマンションや一戸建てを買って、これが住み替えできない。結局男性がゴロゴロ家にいて、肉体の存在感だけでなくて、女性たちにとっては精神的に圧迫感がある。住み替えの仕組みができないものか。子育てのときには子育ての住まいがあっていいし、子育てが終われば夫婦だけの生活を考えた住まいもあるというように、住まいはもっと気軽な存在であってよい。
男性と女性の関係が気になってきた。今、ベストセラーになっている『話を聞かない男、地図の読めない女』の読書感を女性の中で笑いながら語っているのだが、動物としての男女の違いを見てみた方が楽しいのではないか。確かに私なども地図が読めない。女性たちと会議をすると、本当に話があっちこっちにどんどん行ってしまって、同時にみんなが話し出す。それを見て男性は混乱するらしい。男女の、その特性を活かした方が気が楽だろうと思っている。お互いに埋め合うことができればいいのである。
セカンドライフでの、新しい男女の出会いもあったりしてもいいと思ったりしている。そういう素朴なところでハッピーライフというのは生まれてくるのではないか。そんなおしゃべりがオンライン上でできたらいいのだが、どうもオンライン上で書こうとなると気が張ってしまう。何か姿勢を正さなくてはいけないみたいな気分になる。
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【嶌委員】
今の問題提起は、男性の問題。これはすごくおもしろい。実際65歳以上の男性というのは、今、どういうふうに生きていいかというのがわからなくなっているという部分が非常に大きい。
多分今日現在で紅葉狩りをしている人の8割は女性である。男性の20代から50代前半までで紅葉狩りで旅行している人はまずいない。いるとすると、多分リストラされている人か、3カ月、4カ月前から、どうしてもあそこへ行きたいと言って上司とかけ合って休みをとっている人、どっちかである。2割の男性は65歳以上。これはどうしても行きたいかというとそうではなくて、奥さんが3日間いなくなってしまうとどうしていいかわからない。したがって、わしも連れていってくれと。こういうのを「わしも族」というそうだが、そういうのが多分実情だと思う。
この間、ギリシャでバスジャック事件があった。僕は新聞記者だから興味を持って、どういう人がいたかというのを男女別と年齢別に全部組み分けてみた。そうしたら32人のバスジャックに遭った人のうち23人が女性。つまり75%が女性なのである。大体7割か8割というのが実情に合っている。男性は9人。9人で55歳の人が1人。あとは全部65歳以上。はっきり言うと、たぶん「わしも族」だったのだろうと思う。
夏休みとかそういうことを除けば、一番安い時期に行けるのは女性と「わしも族」というのが今の実態なのである。だから、そういう女性や「わしも族」の人たちはどういうところへ行くかというと、決して熱海とか別府とか有馬温泉には行かない。のんびりできるところ、安らぎがあるところ、何となくゆったりできるところとして、湯布院とか奥飛騨とか、そういうところへ行くようになる。今の20代、30代は、多分間違いなくそういう人生を送る術を心得始めているのだろうと思うけれど、僕らの世代というのはまだそこをわかっていない。会社があるうちはいいのだが、会社がなくなった途端に行くところがなくなる。そういう意味で言うと、今の男性の問題というのは非常に大きいので、そういう話を少し書いていただきたい。
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【石井委員】
女性は女性同士の2人、3人連れで行くから今のような比率になると思う。男が男だけ2人連れで旅しているというのはまるで変で、何か社会的に許されないことのように見える(笑)。そこがやはりバリアである。
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【嶌委員】
だから、例えばヴィーナスフォートとか、ああいう有名な観光地に行くと、男の人で背広を着て来ている人がいる。それは絶対、県庁から、いろいろなところから町起こしの実例に見に来ている。いかにも違和感がある。例えば今すごく有名になってきている長浜などに行くと、必ず3人ぐらいカバンを持ってネクタイをしている人がいる。それは視察に来ているのである。ヴィーナスフォートもそうだ。
ところが女性は、さっき言ったように、月曜から金曜までみんなスケジュールを持っている。今日はボランティアとか、今日はお茶の会とか、今日はカルチャーセンターへ行くとか。そういう女性に聞くと、年に3回から4回は大体旅行していると言う。3泊4日とか2泊3日とか、紅葉狩りに行くとか。どういうお金かというと、例えば1週間に1回ぐらいアルバイトをしている人がいて、例えばボランティアアルバイトでも、時給500〜600円だとすぐ月1〜2万円ぐらいになる。だから、年に4〜5回ぐらい行くお金は自分で稼げる。あるいはお父さんの年金で生活をして私の年金はお小遣いに使うとか、そういう意味で言うと、女性たちは行く相手もたくさん持っているし、それから小遣いも持っている。多分、2年に1回ぐらい海外旅行に行くというのがもうほとんどだろう。そういうライフスタイルなのである。しかし、男はまだわかっていない。65歳以上になったときに突然それを知る。
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【澤登委員】
もう一つおもしろいのは、男性はそうなってくると、すごくボランティア、ボランティアと言い出す。逆に、夫が働いていた時期にボランティアをしていた女性たちは、そのころになると、もう少し自立して暮らしたいとコミュニティビジネスやビジネスに関心を持っている。今までと違って、お役に立ちながら多少の収入も得ていかないと、自分の老後も問題だし、子供にも面倒を見させたくないしということなのだ。男女間では、ボランティアやビジネスに関心を持つ時期にずれがある。だからこそ、バッシングし合うのではなくて、お互いにフランクに優しく語り合っていくような場が必要な気がする。そうしないと男性たちが社会のお荷物になっていくような感じがする。
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【嶌委員】
確かに、家にずっといられると何か圧迫される。男がバリアみたいになってしまうといわれると、それも困る。
住宅の話が出たが、住宅の中古市場というのが整備されていないのが気になる。住宅の中古市場というのがもう少しうまく整備されて、住み替えがもっと簡単にできるようになると、随分違うのではないか。僕の友達も、母親を引き取って新しいところに住もうと思うのだが、古い住宅が売れないので困っている。そういう人たちがものすごく多い。
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【隈部委員】
「サイバーネット懇談会」の試みというのは大変おもしろいと思う。これは、最初はリアルで皆さんがディスカッションしたのをネットで流して、今度はネットに発言したものを持ち寄ってこうやってリアルでネットの懇談会がどうだったかということを討議しようという試みである。もしIT革命というのが非常に爆発的なエネルギーを持っているのであれば、後者の方が議論が活性化するということだと思う。まだスタートしたばかりなので、今のところ結果が出ていないが、その辺がどうなるか非常に興味深く思っている。
前回、こういうサイバーネット懇談会を行うと言ったときに、委員の大半の方たちは、ほとんどの人が書き込みをしないのではないかというようなことを言っていた。今のところそういう結果になっているけれども、松田さんも言っていたようにディスカッションしていると非常に爆発的なエネルギーが出る。それで、自分は知的でなくても、知的水準の高い方々の意見を聞いていると、瞬間的に自分が知的になったような、そういう錯覚を起こすというときがあって、走馬灯のように自分がネットで情報をいろいろ見たときのサイトが思い浮かんだりする。
例えば今、嶌さんと川勝さんの話を伺っているときに思い浮かんだのは、今朝インターネットで見た国際競争力を図る会社のサイトのことである。それによると1位はアメリカで2位がフィンランドで、最もランクが上がったのがアイルランドで、ドイツは8位で、そして日本のところを見たら17位でがっかりした。そういうこともインターネットで知ることができる。それから、もう一つ、スイスの会社による「企業が学生にどれだけ期待をしているか」というランキングがある。これは47カ国を調査していて、4年前まで日本は6位だった。企業が学生に対して非常に期待していた。世界で6番目に期待をしていた。それが現在は46位なのである。最下位が韓国なのだが、それを見て、学生に今日話したのだが、そういう風にがっかりするデータが出たりしている。
この懇談会で、そういう断片的な情報がばっとあがってくるようになると、皆さんのディスカッションは非常におもしろくなると思う。また、自分のオフィスで一人でネットに打ち込みながら意見を書いたものが集まって、それがそれ以上のエネルギーを持つのなら、やはりそれもおもしろいのではないかと思う。
それから、「ハッピーライフを送れますか」ということだが、幸せに思った瞬間を書くというのは、とても具体的で導入部としてやりやすくていいと思う。最近、脳の研究が大変よくされていて、人間というのは高い目標を持って、目的に向かっているときには非常に幸せも感じるし、体の具合もよくなるそうである。ところが、あるとき目的を失ったり目的が達成されたりすると、突然そのときに脳が反応しなくなって、人間が病気になったり、絶望したりするようなことがあちこちで言われている。そういう情報と、このハッピーライフとの組み合わせで考えると、例えば嶌さんが言われた、年収400〜500万円で幸せというのは、将来的にずっと年収が400〜500万円で推移すると考えただけでも絶望するような感じが私にはある。小さなことに幸せを感じなさいという、そういう情報が今多いと思うのだが、脳は小さなことに幸せを感じろ、感じろというとどんどん絶望して、病気の人が増えていくような感じがある。私は、日本が21世紀には世界で一番になるという風にずっと教育されてきたので、自分は一番でなくても周りが一番であるということに非常に期待を持っていた。ところが周りが突然一番ではなくなったというと、自分も当然一番ではないわけだから、非常に絶望感を感じる。そこへ持ってきて「ハッピーライフ送れますか」というサイトに何か書き込みをしなければいけないというときに非常に困って、これからそういうギャップが出てくるのではないかと思う。
つまり、建前では名言をやって幸せになるという講演会を行っているので、一応幸せでなくてはいけないのだが、最近余り幸せでもない。ちょっとプライベートで幸せでない(笑)。
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【嶌委員】
今の話、すごくおもしろい。日本は一番だという、確かにそこに夢をかけてきたという側面はある。
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【隈部委員】
国際的に見ても日本のスタンダードは非常に高かったので、業績がほとんどないに等しい人が国際会議に行っても、非常にいい感じだった。この二、三年国際会議に行っても、余りそういう感じを受けない。
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【嶌委員】
むしろそういうこともまた書いてもらったらおもしろいと思う。つまり、小さなことに幸せを感じるという風に言うけれども、そのことは実は絶望を感じることにもなるという、そういう問題提起はすごくおもしろいと思う。
建設省の方も何か言いたいことがあると思うから、もし言いたいことがあったらぜひ言ってください。聞いているだけだとストレスを感じると思う。
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【大石道路局長】
こういう状態が一番幸せである(笑)。
この懇談会の最初に嶌さんが、我々が使っている、1人当たりの居住の平米数だとか、畳の数だとか、それから持ち家比率だとか、そんなものを幾ら持ち出したって、リアリティがないと言われた。それで日本海側の幾つかの県が一番いい状態で、また、東京の北の県が最低だという話から、本当にそういう数字の羅列で幸せを感じられるのだろうか、あるいはそれが本当に政府の目標になり得るのだろうかというようなことを言われた。今日の話にも少し近いところがあったのだが、そのことがいまだにひっかかり続けている。道路で言うと、歩道の設置率だとか、あるいは幅の広い歩道のキロメートルだとか言うわけだが、それでは何も語れていないのではないかと思っている。では、何で語れば道の未来というか、道のあり方というようなことを理解していただき、かつ応援していただけるのかということの答えを見出したくて、ずっと幸せにここに座っているという状態なのである。
一回一回の懇談会のまとめで、キーワードが全く逆の話が出ているのにもかかわらず、例えば成毛さんが言われた「こもる」だとか、それから、どこかの段階で「男女の関係が変わる」という話もあったが、大変面白い。それぞれが何かに結びついているわけではないのだけれども、大変面白く聞かせていただいているというのが先ほどの幸せだということである。
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【小野事務次官】
ハッピーライフというか、ハッピーリタイヤメントというか、日本の社会は、やはり今までとにかく高度成長を目指して頑張ってきたということはまぎれもない事実なのだが、事ここに及んで、本当にこれでいいのかという風にみんなが考え出しているということがあるのではないか。そういう点では、こういう会でいろいろな方々の意見を言っていただいて、閉塞感を打ち破るものを出していただきたい。
我々、やりたいと思うことはごまんとある。ただ、社会的、経済的、時間的に、いろいろな意味でできないことを、将来どういう風にしたらできるのかということを、うちの役所の人間もみんな恐らく思っていると思う。そういうことの中から、将来の本当の日本の方向みたいなものが結局は出てくるのではないかという気がする。
やはり輸出ばかりして経済成長していくということには限界があるし、住宅の話が出たが、モビリティみたいなものが本当に日本の経済政策の中心になっていかなければ本当の自立的な経済にはならないという気もする。そういう点ではこういうサイトの中でみんなが意見を戦わせていくということは、大変大きな意味があるのではないかと思う。
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【山本都市局長】
男は何をやって、将来何を目標にしていけばいいのかというのが非常に心配になってきた。幸せに思った瞬間ということで言えば、私ども、仕事を終えたときとか、仕事に充実感があるときというのは一般的には幸せに思う瞬間だと思う。しかし私は、「昔はよかったなと思った瞬間」というのが一番幸せかなという気がする。今、将来について幸せだとか、将来に対する幸せな展望が持てないのかなという感じもある。
先ほどの話ではないが、女房、子どもはそれなりの人生、生活を持っている。自分は退職後に何もないなというのが非常に心配でもある。何か将来するようなことを、今後こういうところやサイトでいろいろ聞かせてもらって、自分ももっと広く人生を持つのかなというのが私の今考えているところである。
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【川勝委員】
竹中さんや松田さんや、それから隈部さん、澤登さんなどが良いお手本だが、やはり本音で語らざるを得ない雰囲気ができあがってくる。事務次官もそうだが、都市局長は、自分の人生と仕事とすれすれのところで発言された。建前は建前としてあるが、一方で自分の人生をこのテーマの中で考えていくという、恐らく一人ひとりはそういう思いでいると思う。我々にとってのっぴきならない重要なことがここから出てきそうな予感がある。この会のよさだ。
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【竹村河川局長】
非常に興味があるのは、目的性がないということである。僕たちはずっと目的意識でやってきて、ある達成感を常に自分自身に与えてきた。しかし、女性は目的意識や達成感とはかけ離れた人生を送っている。そして今、社会全部が女性化している。役人は目的がないと生きていけない人間なので、そこをどうやって綱渡りしていくか。世の中全体が無目的になっているのに、僕たちは目的意識が非常に明確化している。その間をどうやっていくのかということが、今考えているところである。
もう一つ気になっているのは、私も55歳だから、まあまあ無目的でもいいやという気分もある。問題は、これから生まれてくる子どもたちの将来である。子どもたちが、こういう無目的な社会の中にたたき込まれて、どうやって達成感を与えるのかということが、それも一つの大きなテーマかなと思うのである。これから欲望ぎんぎらぎんの若い10代の、またはシングルの子どもたちが、どうやって彼らはこういう社会と折り合いをつけていくのかなということが興味のあるテーマである。
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【三沢住宅局長】
住宅の話が幾つか出たが、先ほどの嶌さんの話でも、大体所有するものはみんな持っちゃったということがある。そこの部分が本当にそうだなということをいつも考えていて、特に住宅で言うと、よく所有から利用へという話があるのだが、我々がというか、少し前の世代が所有してきたというのは本当の所有になっていなかったのではないかという気持ちがいつもある。日本人は住宅を所有する楽しみというのを本当に味わったことがあるのだろうかと。大都市部と地方部は違って、地方ではあるいはあるかもしれないという気がしている。恐らく、こと住宅に関して言うと、所有と利用、所有する楽しみがあって利用する楽しみがあるのではないかという気が常にしている。
住宅でも何でも、単に利用だけではなくて、持っている上でそれを使いこなしていくところに楽しみがあって、その楽しみがきちんと完結しないので、さっき言われた中古市場というものが成り立たないのではないかと思う。
今後は、いいものをつくるということと、いいものを使いこなして価値がきちんと残って、それがまたよその人も評価して客観的な評価ができていくという、そういう状況をつくらないといけないのかなというようなことを、さっきから少し自問自答しているところである。
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【風岡建設経済局長】
サイバーネットを立ち上げて、アクセス件数が 4,700件だということで、実数は 1,000件ぐらい。私も実際午後やってみたのだが、どういう人がアクセスをしているのかというのが非常に関心がある。
もう一つ、一般の人の「投稿」というのが全然ない。多分誰かがやればみんな書くのだろうが。考えてみると、案外今の人というのはそれなりにハッピーな面があるのかと思う。我々サラリーマンも含めて、あるいはフリーターと称する人も含めて意外にハッピーな面がある。ただ、そういうすべての人が、それでは明日からどうなのか、将来どうなのかというと、そこは多分ものすごい差があるという気がしている。今後どういう意見が出てくるのか非常に注目したいと思う。
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【嶌委員】
最終的に、これは無目的なように見えて、ある程度目的もあるわけである。ここのサイトでいろいろな議論をして、その中で何か具体的な行政の方針とか、具体化するというような、そういう参考にしていただけると、僕は一番意味があるという感じがする。
そのためには、やはり一般の人も含めていろいろな人たちが意見をいっぱい出してきて、それを出しっぱなしにしていると意味がないから、こういうリアルな懇談会を設けて、その意見を何かうまく方針とか、そういうことにしていって、具体的に政策に反映するという道筋をつくるのがこれからおもしろいのではないかと思う。
また、サイトをおもしろくし、何かするためには、先ほど言ったように、意見だけではなくて、見せ方とかサイトそのものが話題になるような、そういうものをつくりあげていただけるのがいいと思う。
今までのお話を聞いていて、やはりもう少しいろいろな人たちに参加してもらうために、できれば、まず委員の人たちは、2行でも3行でもいいからまず何か書いていただく。幸せな瞬間でも何でもいいのだが、そういうことをできたら建設省の方にも書いていただくということにしていきたい。それと、周りにぜひ「アクセスしてくれよ」ということを呼びかけていただきたい。
それから、「インターネット博覧会」というのが来年始まる。この「インターネット博覧会」というのは、インターネット上で万博をやるわけである。それで、今、
450社ぐらいの会社と自治体組織が参加することになっている。政府のサイトが1つあって、それは20世紀の
2,000の事件と20世紀の 2,000人の日本人というのを選ぶのがメインテーマである。実は僕はその20世紀の
2,000の事件を選ぶプロデューサーになっている。毎日新聞などと組んでやるのだが、そこでも、どうやって人々に参加してもらうかということを一生懸命考えていて、その中に幾つかのヒントがある。先ほど松田さんが言われたけれども、例えば各県の学校とか、中学校、高校、小学校ぐらいにモデルをつくって、その生徒たちに20世紀の
2,000の事件を選んでもらおうというようなことをやると学生たちも入ってくるだろうとか、幾つかアイデアが出ている。できれば自分の周りの組織とか団体に呼びかけてもらいたい。隈部さんのところも学生さんに呼びかけてなるべく参加してもらうとか、あるいは建設省に関係したような団体もたくさんあるだろうと思うが、ぜひ呼びかけてもらって、組織として何か建前で言うのではなくて、その家族にも何か言ってもらうようにすると広がりも出てくるのではないかと思う。そして、多くの集まった意見が言いっぱなしにならないために、このリアルの会議でうまくまとめて、次に反映させるように努力していくと、活性化していくのではないかと思う。そういう風にしないと、今度はやっている方のエネルギーも落ちていってしまうので、なるべくならそういう形でやっていったらいいのかなと思う。場合によってはアンケートをとる。細かなことを言ってはだめだと思うのだが、幸せな瞬間や一番不便だと思っていることでアンケートをとってみるとか、そういうようなことをやってもいいと思う。
それこそ「インターネット博覧会」にこのサイトから入ってもいいわけである。だから、そういうことも含めて、何かうまく立ち上げていったらおもしろいことになってくるのではないか。また事務局の方で今日の意見をどういう風にしたらいいかということを少しまとめていただいて、次のアイデアを委員にぶつけるところはぶつける、あるいはいろいろな団体にも呼びかけるとかを少し考えていただければと思う。
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