
国土交通白書 2024
第1節 国土交通分野の現状と方向性
コラム 子育て世帯の視点に立ったまちづくり(山形県東根市)
東根市は、人口約4万8千人、山形県の中部に位置し、さくらんぼの最高級品種「佐藤錦」発祥の地で、さくらんぼの生産量は日本一として知られる。また、県内の交通網の要衝であり、「子育てするなら東根市」を掲げて充実した子育て支援策を推進している。
同市は、定住人口が増加していたが、子育て支援施設が少なく、母子センター、休日診療所、市立東根保育所といった福祉施設の老朽化や機能不足が課題になっていた。市民が生涯にわたり安心して健やかに生活できるように、それまで同市にはなかった保健福祉の拠点施設を求める住民の声があったため、1999年から市民会議での検討等を重ね、2005年に総合保健福祉施設である「さくらんぼタントクルセンター」を建設した。この施設は、保育所(定員150名規模)等のほか、屋内大型遊戯施設「けやきホール」が整備された複合型の施設で、施設には市の子育て支援センター等も併設されており、子育て中の住民をワンストップでサポートしている。
「さくらんぼタントクルセンター」が子育て支援の拠点として機能する中、外遊びができる場所も住民から求められるようになり、屋外版子どもの遊び場として、2013年5月に「ひがしねあそびあランド」が整備された。
これらの施設は「遊びから学ぶ」という基本理念のもと、自然とのふれあいや様々な人たちとの関わりの中で自由に遊び、子どもたちの自主性、創造性、社会性を育み、たくましい人材の育成を目指していて、誰でも無料で利用することができる。
これら屋内外施設は、基本構想策定段階から「さくらんぼタントクルセンター」等の整備に携わっている一部の市民検討委員が創設したNPO法人が、施設管理・運営(指定管理者制度等を活用)に当たっており、住民目線を大切にした遊び場つくりをサポートしている。
さらに、子育ての先にある教育にも力を入れており、県内初となる併設型公立中高一貫校を誘致したほか、近隣に誰でも利用できる市立図書館を整備し、都市計画と一体となったコンパクトシティの形成を推進している。
子育て支援施設の整備をはじめとした同市の取組みの効果として、子育て世代を中心に社会増(転入超過)が続いており、合計特殊出生率は全国平均、山形平均よりも高い数値となっている。また、同市は、山形県内で最も低い高齢化率を維持している(2023年4月1日時点)。
今後も引き続き、充実した子育て支援策を推進していくとともに、「長生きするのも東根市」を掲げて、高齢者福祉事業等にも力を入れ、すべての住民が元気で生き生きと活躍し生活できるまちづくりを推進していくこととしている。



資料)東根市、特定非営利活動法人クリエイトひがしね