
国土交通白書 2024
第3節 産業の活性化
国土交通省では、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(公共工事品確法)」、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)」、「建設業法」を改正する「新・担い手3法」が令和元年6月に成立したことを踏まえて、市町村をはじめとするすべての公共工事の発注者が具体的な取組みを進めるよう求めている。
(1)発注者責務を果たすための取組み
国土交通省では、「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(適正化指針)や「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)を踏まえた発注関係事務の適切な運用に向けて様々な取組みを行っている。また、各発注者においてこれらの指針を踏まえた発注関係事務が適切に実施されているかについて、毎年、「入札契約適正化法等に基づく実態調査」等を行うとともに、その結果を取りまとめ、公表するとともに、これらの結果を「見える化」した「適正化マップ」を公表している。
①適正な予定価格の設定
公共工事の品質確保と担い手の育成・確保に必要な適正な利潤の確保のため、国土交通省直轄工事では、予定価格の設定に当たっては、適切に作成された仕様書及び設計図書に基づき、賃金の上昇や資機材価格の高騰などを含む市場における労務・資材等の最新の実勢価格を適切に反映しており、地方公共団体に対しても適正な予定価格の設定について様々な機会を通じて働きかけを行っている。また、公共建築工事積算基準とその運用に係る各種取組みを取りまとめた「営繕積算方式活用マニュアル」を令和6年3月に改訂するなど、積算に係る最新の各種基準・マニュアル類の整備・周知にも努めている。
②ダンピング対策
ダンピング受注は建設業の健全な発達を阻害することから、地方公共団体に対して低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の適切な活用を徹底することによりダンピング受注を排除するよう、あらゆる機会を通じて求めてきた。この結果、令和元年11月時点で95団体あった未導入団体は、5年7月時点で72団体まで減少した。また、地方公共団体に対して調査基準価格及び最低制限価格の見直しなどダンピング対策の実効性の確保を要請するとともに、各市区町村における工事・業務に関するダンピング対策の取組状況を把握・公表する「見える化」等により、取組みの適切な見直しを求めている。
③適切な設計変更
国土交通省直轄工事では、設計図書に施工条件を適切に明示するとともに、必要があると認められたときは、適切に設計図書を変更している。また、令和4年5月に閣議決定にて一部変更した「適正化指針」において、「設計変更ガイドライン」の策定・公表及びこれに基づいた適正な手続の実施に努めることを明記するとともに、地方公共団体に対して適切な設計変更が実施されるよう、様々な機会を通じて働きかけを行っている。
④施工時期の平準化
繰越明許費や国庫債務負担行為の適切な活用により、翌年度にわたる工期設定等の取組みについて国土交通省の事業において実施するとともに、地方公共団体における平準化の進捗・取組状況を把握・公表する「見える化」を実施するなどして、平準化の促進を図っている。
⑤適正な工期設定
新・担い手3法では、適正な工期設定が発注者の責務とされるとともに、著しく短い工期での契約締結の禁止が規定されている。国土交通省では、直轄工事において適正な工期を設定するための具体的かつ定量的な工期設定指針を策定している。また、令和2年7月に中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」においては、週休2日の確保等、適正な工期設定にあたって考慮すべき事項が記載されている。令和6年度からの時間外労働規制適用も踏まえ、「工期に関する基準」の周知徹底等、工期の適正化に向けて発注者等に働きかけを行っている。
⑥多様な入札契約方式の活用
「公共工事品確法」では、多様な入札契約方式の選択・活用、段階的選抜方式、技術提案・交渉方式、地域における社会資本の維持管理に資する方式(複数年契約、包括発注、共同受注による方式)等が規定されている。国土交通省では、事業の特性等に応じた入札契約方式を各発注者が選定できるよう、「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」を策定している。
(2)発注者間の連携・支援
国土交通省では、公共工事の品質確保等に資する各種取組みについて、「地域発注者協議会」、「国土交通省公共工事等発注機関連絡会」、「地方公共工事契約業務連絡協議会」等を通じて、情報共有を実施し、発注者間の一層の連携に努めている。また、都道府県公共工事契約連絡協議会との更なる連携体制の強化を通じて、市町村等に対して直接入札制度の改善の働きかけを行っている。
(3)受発注者間の意思疎通の緊密化等
「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等による公共工事の円滑な施工確保を図るため、地域の受発注者間の連携・意思疎通を促している。

【関連リンク】
「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」改正の主なポイント
URL:https://www.mlit.go.jp/tec/content/200130unyoshsishipoit.pdf