
国土交通白書 2024
第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
誰もがいつでもどこでも必要な地理空間情報注1を活用できる「G空間社会(地理空間情報高度活用社会)」の実現のため、令和4年3月に閣議決定された「地理空間情報活用推進基本計画」に基づき、地理空間情報のポテンシャルを最大限に活用した多様なサービス創出・提供に向けた取組みを産学官民が一層連携して推進している。
(1) 社会の基盤となる地理空間情報の整備・更新
電子地図上の位置の基準として共通に使用される基盤地図情報注2及びこれに国土管理等に必要な情報を付加した国の基本図である電子国土基本図注3について、関係行政機関等と連携して迅速な整備・更新、3次元化に向けた取組みを進めている。また、空中写真、地名に関する情報、標高データ、都市計画基礎調査により得られたデータや国土数値情報等の国土に関する様々な情報の整備、GIS化の推進等を行っている。国土数値情報については、有識者等で構成される検討会を設置し、民間ニーズの把握手法や効率的な整備のあり方等についての検討を進めている。
(2)地理空間情報の活用促進に向けた取組み
各主体が整備する様々な地理空間情報の集約・提供を行うG空間情報センターを中核とした地理空間情報の流通の推進、Web上での重ね合わせができる地理院地図注4の充実、先進データである人流データの社会実装に向けた実証事業の展開(三次元空間活用・EBPM等)等、社会全体での地理空間情報の共有と相互利用を更に促進するための取組みを推進している。さらに、激甚化しつつ多発する自然災害を受け、地形と自然災害には密接な関係があるため、地形分類データ、明治期の低湿地データ、自然災害伝承碑等の防災に役立つ地理空間情報を地理院地図から提供することは、地域における自然災害へのリスクを把握する上で極めて有用であることから、防災・減災の実現等につながるそれらの地理空間情報の活用力の向上を意図して、地理院地図の普及活動を行った。また、地理空間情報を活用した技術を社会実装するためのG空間プロジェクトの推進のほか、産学官民連携による「G空間EXPO」の開催等、更なる普及・人材育成の取組みを行った。
(3)建築・都市のDX
EBPMに基づくまちづくりやオープンイノベーションによる新サービス・産業創出を加速化するため、地理空間情報も活用し、建築BIM、PLATEAU及び不動産を一意に特定する分野横断的な情報連携のキー(不動産ID)に係る取組みを進め、これらが一体的に情報連携された高精細なデジタルツインの整備を促進することとしている。
今後、これらの取組みにより、まちづくり、防災、カーボンニュートラル等の多様な分野での情報連携の社会実装を加速化させる。
- 注1 空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む)及びこの情報に関連づけられた情報。G空間情報(Geospatial Information)とも呼ばれる。
- 注2 電子地図上における地理空間情報の位置を定める基準となる、測量の基準点、海岸線、公共施設の境界線、行政区画等の位置情報。項目や基準等は国土交通省令等で定義される。国土地理院において、平成23年度までに初期整備が行われ、現在は電子国土基本図と一体となって更新されている。
- 注3 電子的に整備される我が国の基本図であり、我が国の領土を適切に表示するとともに、全国土の状況を示す最も基本的な情報として、国土地理院が整備する地理空間情報。ベース・レジストリに指定されている。
- 注4 国土地理院の運用するウェブ地図(https://maps.gsi.go.jp/)。国土地理院が整備した地形図、写真、標高、地形分類、災害情報等の地理空間情報を一元的に配信。