(不動産証券の組成者)
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先に述べたとおり、我が国の不動産証券化の議論の特色は、原資産の提供者とその証券化商品の組成者とが区分されずに議論されることが多いことであり、そうでなくとも、証券の組成の過程において、原資産の提供者の意向や考え方が強く反映されていることであろう。逆にいえば、そういうこともあってか、我が国における不動産証券化の現状は、近年において急速に進展した、各種の金融技術ともいうべきものが十分には活用されていないのではないか、という疑問が生じる。
今後、投資家による要望の強まり、不動産証券化についての潜在的需要の高まりに伴い、金融資産組成者の役割が増大することが予想される。
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(環境整備の必要性)
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今後、不動産の証券化に対する潜在的な需要が顕在化するためには、原資産の提供者、証券の組成者の双方に関連して、様々な環境の整備が行われる必要がある。
原資産提供者がより多く証券化に貢献し得るようにするためには、まず、何よりも上記に述べた不動産の証券化のメリットが十分に理解されることが肝要である。
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また、不動産の証券化が単に不動産を動かすための新たな手段のために求められているわけではなく、広く、我が国経済において資源の最適配分を可能にする手段であるとすれば、不動産を化体した証券を組成する事業への参入の途が事実上広く開かれることが大切である。その観点からすれば、不動産の賃料や取引価格などの必要な情報が、より広く一般に公開されていること、不動産インデックスがより良く整備されていることが望ましいように思われる。
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さらに、不動産は定型化された金融商品と異なり、個々の不動産ごとに、自然的、経済的、社会的条件が異なることから、個々の不動産取引が適正に行われるよう、不動産鑑定士等の専門家による経済的・法的・物理的な物件精査業務(デュー・デリジェンス;Due Diligence)が取引の過程において徹底されることが必要であろう。
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加えて、不動産の証券化の決め手として、キャッシュフロー(*4)が前提となるので、いわゆるデュー・デリジェンスの一環として、例えば、プロジェクトファイナンス(*5)を前提とした場合に、各種の審査項目のチェックとそのキャッシュフローや内部留保(*6)の計算とについて精緻を究める必要がある。そのためにも、これら審査項目に関しての日常的で、継続的な情報開示が必要となろう。
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このような状況において、収益性を重視した不動産の鑑定が適切に行われるよう、不動産の鑑定評価手法の精緻化や不動産鑑定士の資質の向上が進められる必要があろう。
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