平成7年建設部門地域間産業連関表について(要旨)−地域経済に果たす役割−

平成12年12月27日
建設経済局調査情報課


はじめに

建設省では、建設投資の経済効果の分析等のため、経済構造の全体像を産業別の物やサービスを 生産・流通の面からとらえた各種の「産業連関表」を作成・公表している。
今回作成した「建設部門地域間産業連関表」は、特に建設部門を中心に地域間の産業取引関係に 焦点をあてたものである。
これは5年毎に作成されており、今回で4回目となる。
地域間産業連関表は、財・サービス等の商品の原材料が何なのか、どの地域から仕入れたのかが 分かり、一方、その商品をどの産業に、どの地域に販売したのかが分かる等、極めて豊かな情報を有している。
これは地域経済の活性化等、地域の振興に関与する人々をはじめ、地域経済の現況の把握、地域 の経済計画・見通し、及び産業開発やリゾート開発、各種イベント等のプロジェクト評価を行う人々にとっては必要不可欠な分析用具 となっている。

 1.平成7年建設部門地域間産業連関表からみた地域経済の構造

 2.建設業の伸びは低迷

 3.依然として高い政府建設投資*の生産誘発効果

 4.政府建設投資*による対全国生産誘発効果は、関東、中国等において高い

 5.政府建設投資*による就業誘発者数は地方圏で高く、大都市圏で低い

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1.平成7年建設部門地域間産業連関表からみた地域経済の構造

全産業でみると、平成7年の国内生産額は 928兆 2,688億円(地域産業連関表ベース)で、平成2年に比べ 7.3%の伸びとなり (年平均 1.4%の伸び)、大都市圏と比べ、比較的地方圏での伸びが高かった。
中間原材料比率(中間投入率)は、全地域とも平成2年より低下した。これは中間投入率の低いサービス業の生産ウェイトが拡大 したことなどが主な要因としてあげられる。
最終需要における項目ごとのウェイトをみると、最終支出はすべての地域で増加し、投資はすべての地域で減少した。この傾向は 特に関東、中部で顕著であった。
産業別生産額を比較すると、サービス産業はプラスの伸びを示したが、それ以外の産業はすべてマイナスの伸びとなり、建設業に おいても 1.2%減(年平均 0.2%減)となった。
地域間の相互依存度は全地域とも減少傾向にあり、自地域需要による生産が増え、他地域への生産誘発が減少している。

建設部門においては、自給率のもっとも高い地域は関東であり、殆どの工種について原材料の70〜80%を自地域で賄っている。また、 自給率が最も低かったのは中国と四国であった。
地域ごとにおける建設投資の生産誘発先は、関東に集中しており、非住宅非木造建築投資(木 造以外の事務所、ビル、倉庫、等)を各地域で行った場合は、他地域誘発全体の約40〜50%を占めていた。
平成7年は平成2年と比較して、生産額等の伸びは低く、誘発先も大都市圏(特に関東)に集 中する傾向が強まったといえる。

2.建設業の伸びは低迷

平成2年〜平成7年にかけての建設業の生産額の伸びは、近畿を除きおおむね不調であり、図−1のとおり、全産業平均の伸びが7.3%増 (年率 1.4%増)であったことに対し、建設業は1.2%減(年率 0.2%減)と低迷した。
これを地域別にみると、全産業を越える伸びを示したのは近畿16%増(同 3.0%増)、四国11.1%増(同 2.1%増)、東北10.1%増 (同 1.9%増)、九州8.3%増(同 1.6%増)であったが、関東が、13.6%減(同 2.9%減)と著しく低かったため、国全体として建設業 はマイナス成長となった。

3.依然として高い政府建設投資*の生産誘発効果

ある地域に投資・消費等の需要が生じた場合、全国に対して生産が誘発されるが、その中には自地域における生産誘発も含まれている。 (前者を対全国生産誘発係数、後者を自地域生産誘発係数という)
図−2、3は、最終需要項目別に両者の係数を示したものである。
  1. 図−2の対全国生産誘発係数をみると、総じて生産誘発の高い需要項目は総固定資本形成(民間)(=企業設備投資+民間住宅) および総固定資本形成(政府)(=公共投資)であり、各消費支出は低い。
    また、輸出以外は、地域別に効果のバラツキが小さい。
  2. 図−3の自地域生産誘発係数をみると、総じて生産誘発の高い需要項目は、総固定資本形成(政府)であり、中でも「政府建設投資」 が最も高い。
    政府建設投資による自地域生産誘発係数は、関東を除き、効果の地域的バラツキが少ない。
    総固定資本形成(民間)による自地域生産誘発係数は、効果のバラツキが大きく、関東を除く全て の地域で低い。

4.政府建設投資*による対全国生産誘発効果は、関東、中国等において高い

図−4は政府建設投資による対全国及び自地域生産誘発効果を地域別に示したものである。
政府建設投資1兆円による対全国生産誘発効果は、関東、中国で高く、東北及び四国等で低い。 つまり、同じ1兆円の政府建設投資を東北と関東で行うと、その生産誘発効果は、東北よりも関東で行った方が約400億円高いことになる。
また一方、そのうちの自地域内に留まる自地域生産誘発効果をみると、四国及び沖縄等が低く、対 全国生産誘発効果が最も高い関東が自地域においても高い効果を上げている。四国と関東のその差は約2,300億円である。

*ここでいう政府建設投資、民間建設投資とは、前項(=3.)と同様である。

5.政府建設投資*による就業誘発者数は地方圏で高く、大都市圏で低い

図−5は、政府建設投資1億円を地域別に行った場合の対全国及び自地域就業誘発 効果(就業誘発者数)を示したものである。
これによると、対全国就業誘発者数において、地方圏(九州、北海道等)は13人を越えるが、大 都市圏(関東及び近畿)は11人となっている。
九州と近畿の差は約3人、つまり1兆円の公共事業を行うと、九州の方が近畿よりも3万人分、就 業機会が多く創出されることになる。

*ここでいう「政府建設投資」とは、道路関係公共事業、河川・下水道・その他の公共事業、農林関係公共事業である。
参 考対象地域区分表
対象地域区分
対象地域範囲(都道府県)
1.北海道
北海道
2.東 北
青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
3.関 東
茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡
4.中 部
愛知、岐阜、三重、富山、石川
5.近 畿
福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
6.中 国
鳥取、島根、岡山、広島、山口
7.四 国
徳島、香川、愛媛、高知
8.九 州
福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島
9.沖 縄
沖縄
全   国
47都道府県

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*本調査のエクセルについては、Ver5.0/95を使用しています。


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