運輸経済月例報告 平成12年2月のトピックス



新たな交通サービスの提供による分担率の変化
  
◎新たな交通サービス
    ・・・機関別分担率の変化のみならず、一部では地域間流動拡大効果も
・ス力イマークの参入→東京圏〜福岡県間で航空トリップが増加
・「こまち」による新幹線直通運転化→東京圏〜秋田県間で鉄道トリップが増加
・明石海峡大橋開通による高速バス路線の開設
   →大阪府〜徳島県間では、旅客船・航空から高速バスに転移
 


 運輸省では、このほど「旅客地域流動調査」の10年度分を公表したが、本調査により地域間・都道府県間の旅客流動量を交通機関別に時系列で把握することができる。
 以下では、本調査を用いて、
  @国内旅客流動の距離帯別の交通機関輸送分担率の変化
  A新たな交通サービスが提供された場合の輸送分担率の変化と交通流動の変化
に焦点を当て、分析を行った。

1.距離帯別の交通機関輸送分担率の変化(表1参照

〜近・中距離帯における自家用車、高速バスの選好と長距離制における航空の選好が拡大〜

 「旅客地域流動調査」に基づき、国内旅客流動の距離帯別の交通機関分担率を算出すると、
  ・500km未満では自動車(自家用を含む)が、
  ・500km以上750km未満ではJRが、
  ・750km以上では航空が、
それぞれ特性を活かして最も大きい割合を占めている。
 最近では、特に、近距離帯以外で鉄道が分担率を落としている一方、中距離帯では、自家用乗用車、高速バスの利用増などにより自動車の分担率が上昇、長距離帯では、航空運賃の低廉化や輸送力増により航空の分担率が上昇している。
 全般的な傾向は以上のとおりだが、個別の2地点間をとってみると、新たな交通サービスの出現により大きく分担率に変化が生じる場合が出てきている。
 2.においては、これを検証するため、
  ・1,000km以上の距離帯…東京圏-福岡県
  ・500km〜750kmの距離帯・・・東京圏-秋田県
  ・300km程度の距離帯・・・大阪府一徳島県
を例にとり、公共交通機関の分担率、流動量の経年変化を分析する。

2.新たな交通サービスが地域間の交通流動に与える影響

(1)東京圏(注)-福岡県の流動(表2参照
 @全体の動向
 公共交通機関による旅客流動量(上り・下り合計、以下同じ。)は、景気低迷の影響を受けることなく、増加の傾向。
 10年度の実績では合計8,257千人、1日当たり23千人。
 分担率は航空が87.9%、JRが11.5%、乗合バスが0.4%、旅客船・フェリーが0.2%、航空が圧倒的なシェアを占める。
 A航空分野
 分担率が急激に拡大(H1:75.2%→H10:87.9%)。
 拡大の要因は、輸送力の充実、割引運賃の多様化、空港アクセスの充実(5年3月に福岡市営地下鉄の福岡空港乗入れ)等。
 特に10年9月のスカイマークエアラインズの羽田−福岡線就航を契機とした事業者間の競争激化等により、他モードとの間の競争力が向上、10年度は87.9%まで上昇。
 B鉄道分野
 分担率は減少(H1:24.3%→H10:11.5%)。
 平成4年3月の「のぞみ」、9年3月の500系や11年3月の700系といった新型車両の投入等により所要時間は短縮、快適性も向上したが、航空との競争で劣勢に立たされている状況。
   (最遠時での比較:5時間45分(H1)→4時間49分(H10))
 C高速バス分野
 2年10月より運航開始、低運賃、時間を有効に活用できる夜行便が評価され、分担率は0.6%前後で堅調に推移。
 航空の影響を受け、一時期低下傾向にあったが、最近は安定的に推移。

(2)東京圏(注)−秋田県の流動(表3参照
 @全体の動向
 公共交通機関の旅客流動量は、年間2,227千人、1日当たり6千人(H10)。
  バブル崩壊後の景気低迷によりほぼ横ばいの傾向。
 「こまち」の運行開始は全体の旅客流動量の増加に一定の効果。大館能代空港の開港は、現時点ではまだその影響が出ていない状況。
 分担率は、JRが57.0%、航空が37.3%、乗合バスが5.7%。
 A鉄道分野
 鉄道は元年度において61.5%の分担率であったが、その後航空との競合により低下。
  しかし、9年3月の「こまち」の運行開始によりシームレス化が図られ、9年度において鉄道による旅客流動量は前年度比37.7%増。分担率も58.5%まで回復。
 10年度はやや減少したが、8年度比24.9%増の水準。にまち」の効果が定着したものと考えられる。
 B航空分野
 元年度34.2%であった分担率は、輸送力の増強(3年7月からダブルトラック化)、割引運賃の多様化等により増加傾向に。しかしながら、9年度は「こまち」の運行開始による影響で低下。
 10年7月に大館能代空港が開港したが、10年度も航空の分担率は37%台。
  まだ変化が生じているかどうかの判断を行うには難しい状況。北東北観光プロモーション活動等による今後の需要の拡大に期待。
 C高速バス・自家用車分野
 高速バスは、昭和63年2月より新宿〜秋田間、平成元年3月より池袋〜大館・能代間で運行開始され、分担率は5%前後で堅調に推移。
 9年7月に秋田自動車道が東北自動車道と北上西I.C.で直結し、同年11月には秋田自動車道が男鹿地域まで延伸。観光を中心に、自家用自動車による旅客流動量の増加が考えられる。

  (注)東京圏・・・ここでは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県をいう。

(3)大阪府−徳島県の流動(表4参照
 @全般の動向
 明石海峡大橋の開通により、徳島県の観光入込客数は増加したが、公共交通機関の流動量は減少。
 平成8年頃まで公共交通機関による流動量は増加。その中では、旅客船・フェリーが大部分を占めていたが、明石海峡大橋開通を契機に航路の廃止・縮小が行われ、高速バスへの需要転移が顕著に。
 10年度実績では年間1,168千人、1 日当たり3千人。分担率は、乗合バスが53.0%、旅客船・フェリーが28.4%、航空が14.6%、JRが4.0%。
 A旅客船・フェリー分野
 元年度において61.3%の分担率だったが、輸送力や航路の充実等により、8年度には75%前後に。明石海峡大橋開通後、分担率は28.4%まで低下。
 B高速バス分野
 10年4月から大阪〜徳島間に直行の高速バスが連行開始、10年度は53.0%の分担率に。運賃の割安感、便数の多さ、乗換えなしの利便性が評価。
 C航空・鉄道分野
 航空は、元年度において32.7%の分担率であったが、旅客船・フェリーとの競合に加え、10年度からは高速バス等との競合により減少傾向にあり、10年度は14.6%に。
 鉄道も、所要時間での優位性がなく、元年度において分担率は6.0%。その後も分担率は低下傾向。

[参考]

◯東京−福岡の主要公共交通機関の現状

 ・新幹線  東京−博多    のぞみ 4時間49分  23,560円
 (1,175q)             ひかり 5時間52分  21,720円
 ・高速バス 新宿−博多・天神 はかた 14時間20分  15,000円 1便
 ・航空   羽田−福岡           1時間45分 16,000円  37便
                                  〜31,000円
        羽田−北九州       1時間35分  31,000円 2便
 ・旅客船  東京−新門司       33時間50分  12,600円 1便
  /フェリー

◯東京−秋田の主要公共交通機関の現状

 ・新幹線  東京−秋田    こまち 3時間49分  16,810円
 (670q)
 ・高速バス 新宿−秋田   フローラ 9時間20分  9,450円 1便
        池袋−大館・  ジュピター 9時間     9,460円 1便
              能代
 ・航空   羽田−秋田        1時間5分  17,400円 5便
        羽田−大館能代     1時間5分  20,350円 2便

◯大阪−徳島の主要公共交通機関の現状

 ・JR  新大阪−岡山    ひかり     53分   9,760円
 (327q)  岡山−徳島   うずしお 1時間56分
 ・高速バス 大阪−徳島 サザンクロス 2時間30分   3,600円
                     など
 ・航空   伊丹−徳島           35分  10,000円 5便
 ・旅客船 天保山−徳島(12年3月1日 2時間6分   4,620円
  /フェリー        より航路廃止)


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