(1)経営状況

〜当初予想を上回るものの会社間で格差


 
(ア)概況

 分割・民営化直前の昭和61年度の国鉄の経常損失(純損失)は、1兆3,160億円であったが、分割・民営化後のJR7社合計の経常損益は、黒字を維持しており、一番黒字幅が大きかった平成2年度では3,826億円、7年度では2,099億円となっている。また、発足後5年間のJR7社の経常黒字額の合計は、国鉄事業等の承継計画の策定時に政府が試算した予想(昭和62年2月作成)を上回った〔1−3−6図〕。なお、この予想においては毎年各社とも3〜6%の運賃改定を行うことを前提としていたが、実際は、消費税導入によるものを除き、運賃改定は行われていないことを考慮すると、JR7社の経営は予想と実績の差以上に好調に推移したと言える。

 

(イ)JR各社の収支状況

(a)JR東日本、JR東海及びJR西日本

 JR東日本、JR西日本及びJR東海の3社は、三大都市圏及び新幹線を有していることから、比較的良好な経営環境にあり、会社発足後、好調な国内景気による輸送需要の増大に支えられるとともに、輸送サービスの向上や経営の合理化に努めたことにより、3社とも概ね順調な経営を続け、営業損益、経常損益は黒字を続けている。
 JR東海及びJR西日本については、平成6年度は、7年1月の阪神・淡路大震災の直接の影響を受けて、営業利益が減少したものの、7年度にはほぼ回復している〔1−3−7表〕
 また、3社は分割・民営化に際して長期債務を4.6兆円承継しており、さらに、3年10月に保有機構から新幹線施設の買い取りを行ったことにより新たに9.2兆円の新幹線譲渡代金債務を負ったが、その推移は〔1−3−8表〕のとおりである。なお、これらの利息支払いのため、営業利益に比べ経常利益が大幅に少なくなっている。

(b)JR北海道、JR四国及びJR九州

 会社発足時から厳しい経営状況が見込まれていたJR北海道、JR四国及びJR九州の3社については、会社発足後、好調な国内景気による輸送需要の増大に支えられたことや輸送サービスの向上、積極的な経営の合理化に努めたことにより、営業損益の改善が見られた。
 経常損益では、経営安定基金の運用益もあり、昭和62年度(JR北海道については平成元年度)以降平成5年度までは黒字を維持してきた。しかしながら、営業損益の改善を図ったものの、金利の低下に伴う経営安定基金の運用益の減少により、3社とも経営状況が悪化し、6年度においてJR四国、JR九州が初めて5億円の経常損失を計上し、7年度においては3社とも経常損失が見込まれ、更に8年度においても、損失が一層拡大する見通しとなったので、8年1月に元年4月の消費税導入時の運賃改定を除けば9年余ぶりの運賃改定が行われた〔1−3−7表〕

(c)JR貨物

 JR貨物は、発足後、好調な国内景気による輸送需要の増大に支えられたことに加え、輸送サービスの向上や経営の合理化に努めたことにより、順調に営業収益を伸ばし、4年度までは経常黒字を確保してきた。
 しかしながら、近年の景気後退及びその後の低成長や7年1月の阪神・淡路大震災等の自然災害の影響を受け、営業利益は2年度をピークに減少し、6年度から2年連続して営業赤字を計上した。経常損益でも、5年度から3年間連続して赤字を計上している〔1−3−7表〕。