(ア)利便性の向上
東海道・山陽新幹線における「のぞみ」の導入、在来線高速化工事等により全国的に列車の高速化〔1−3−14図〕、〔1−3−17図〕、〔1−3−18図〕を行うとともに、新幹線と在来線の直通運転化(いわゆる山形ミニ新幹線の開業)、新幹線と在来線特急との接続の改善、新東京国際空港、関西国際空港及び新千歳空港への乗り入れによる空港アクセスの向上等により、利便性の向上を図った。
また、大都市圏では、通勤・通学時の混雑緩和のため、京葉線の開業、埼京線の延伸のほか、湘南ライナーの運行、列車運転本数の増加等の輸送力の増強を行ったが、東京圏を中心に混雑率の抜本的改善には至らず、一層の努力が求められている〔1−3−15図〕。
(イ)地域に密着した鉄道運営
国鉄時代は、全国一元的組織の下で事業が行われたため、運営が画一的となり、その結果列車ダイヤの設定において、地域の交通事情に沿った運営が行われていなかった。これに対して、分割・民営化後は、地域のニーズに応じたダイヤ設定をする努力を行っている。例えば、札幌、仙台、福岡等の都市圏では、通勤人口の増大に伴い普通列車を増発している〔1−3−16図〕。一方、長野、大分、秋田、松山等の地方都市では、都市間輸送の利便性の向上のため、特急列車の増発や高速化を行ったり〔1−3−17図〕、周辺地域との移動時間の短縮のため、普通列車の速度向上を図った〔1−3−18図〕。
(ウ)設備の改善
JRでは、車両や駅舎等の設備についても改善を図っている。
車両については、2階建て車両や、液晶テレビ、オーディオ等の装備、シャワー室を備えた豪華客室、展望室等を備えた様々な特急車両が登場し、通勤列車についても、客室側窓の拡大、客室空間の拡大等により明るく快適な車両が増加する等客車の快適性をより向上させるための努力を行っている〔1−3−19図〕。
また、公民館、図書館を併設した地元住民にとって利用しやすい駅舎及び街の顔としてふさわしい個性的な駅舎が増加している〔1−3−20図〕。
(エ)バリアフリー化への対応
近年の高齢化社会の進展、障害者の社会参加の機会の増大等に伴い、高齢者、障害者等への配慮、いわゆるバリアフリー化がより一層必要となっている。
このため、JR各社においても鉄道駅におけるエレベーター・エスカレーター、車椅子用通路、誘導・警告ブロックの設置、身体障害者用のトイレの設置等を積極的に行っている。また、車両については、車椅子用トイレの設置、優先席(シルバーシート)の導入の促進等が進められている。この結果、これらの施設の整備率は向上しているが、大手民鉄及び地下鉄の水準よりは低くなっているものが多い〔1−3−21表〕。