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建築基準法における都市計画制度の見直し等に関連した課題
への対応について |

平成12年2月8日
建築基準法における都市計画制
度の見直し等に関連した課題への対応について
建築審議会建築行政部会
市街地環境分科会
建築審議会では、建設大臣から平成7年11月8日付け建設省住指発第365号及び建設省営管発第612号をもって建築審議会に諮問のあった「二十一世紀
を展望し、経済社会の変化に対応した新たな建築行政の在り方について」調査審議を行い、平成9年3月24日に「二十一世紀を展望し、経済社会の変化に対応
した新たな建築行政の在り方に関する答申」を行った。
同答申に基づき、平成9年に共同住宅の廊下、階段に係る容積率不算入制度等を内容とする都市計画法及び建築基準法の一部改正が、平成10年に建築確認・
検査の民間開放、建築基準の性能規定化等のいわゆる単体規定の基準体系の見直し、いわゆる連担建築物設計制度の導入、中間検査の導入、確認検査等に関する
図書の閲覧等を内容とする建築基準法の一部改正が、平成11年に住宅の品質確保の促進等に関する法律の制定がなされたところである。
この答申に際して、建築基準法の集団規定については引き続き検討を進めることとされたことから、平成11年9月に、市街地環境分科会を再開し、集団規定
の各種形態制限等についての総点検を引き続き進めるため基準・制度小委員会を設置した。その中で、早急に対応すべき重要な課題として、都市計画中央審議会
における都市計画制度の見直しに関連した集団規定及び密集市街地等における建ぺい率制限の取扱いについて、重点的に調査審議を行ってきた。
本報告は、これをとりまとめたものであり、審議に参加した委員は次のとおりである。
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委
員 |
小
林重敬(市街地環境分科会長 基準・制度小委員会主査)、
秋本 敏文、有吉 孝一、石橋 しゅん一、上
山 良子、落合 良、
片山 正夫、川
上 幸郎、鬼
頭 梓、楠田 枝里子、隈
研吾、
桑原 茂人、西
谷 剛、八
田 達夫、藤本 昌也、松
本 恒雄、
森 稔 |
専
門委員 |
大
方 潤一郎、大橋 洋一、木
内 正二、黒川 洸、鈴木
崇英、
立成 良三、服
部岑生、
福井 秀夫、柳沢 厚 |
オ
ブザーバー |
上
村 克郎(建築行政部会長)、宮澤 美智雄(建築行政部会長代理) |
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なお、石橋 しゅん一、川上 幸郎、鬼頭 梓、桑原 茂人の各氏は分科会委員であったが、途中、任期満了に伴い退任した。
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建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備
及び用途に関する最低の基準を定めており、このうち集団規定は、敷地の接道等の道路関係規定、用途制限、容積率制限、建ぺい率制限、斜線制限、日影規制、
地区計画などから構成されている。
集団規定の各種形態制限等の総点検を行う上で、集団規定を巡る主要な課題としては、
@ 時代の変化に対応した実効性のある制度となっているか
A 個性豊かな市街地環境の形成へのニーズに柔軟に対応しているか
B 不適格建築物や防災上の問題などに的確に対応しているか
があげられる。
また、都市計画中央審議会においては、都市計画法制定後30年を経過して都市的生活と都市的活動をめぐる社会経済環境の様相が一変していることから、現
行の都市計画制度の全般にわたっての見直しが行われ、「経済社会の変化を踏まえた新たな都市計画制度のあり方について」の答申が行われたところである。そ
の中で、建築基準法集団規定に関連したものとしては、
@ 線引き制度及び開発許可制度の地域の実情に応じた柔軟性の確保
A 既成市街地再整備のための新たな制度の導入
B 自然的環境や景観など都市環境の保全のための制度の充実
C 都市計画区域外における開発行為及び建築行為に対する規制の創設
があげられる。
本分科会においては、各種形態制限等の総点検を進める中で、これらの都市計画制度の見直しにかかわる課題と、密集市街地等の更新を促す建ぺい率制限の合
理化について、早急に検討を進めるべき課題と位置づけ、都市計画中央審議会基本政策部会計画制度小委員会での審議とも連携を図りつつ、審議を行ってきた。
本報告は、これらについて、建築審議会建築行政部会市街地環境分科会としての基本的考え方をとりまとめたものである。
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(1)都市計画区域内の用途地域の指定のない区域 |
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現在の都市計画法では、都市計画区域を市
街化区域と市街化調整区域に区分(線引き)することが本則とされており、これにより計画的な市街
地整備を図ることとしている。その場合、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域においては、開発許可制度により無秩序な市街化を抑制するとともに、
原則として用途地域は定めないこととされている。しかしながら、市街化調整区域における開発の抑制が地域の活性化の阻害要因になっているという議論もある
ことから、都市計画中央審議会答申で、線引きすることを本則とする制度を改め、都市計画区域ごとに線引きをするか否かを都道府県の判断に委ねる方式とする
ことが提示された。この場合、線引きをしない(非線引き)都市計画区域内の用途地域の指定のない区域では、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域が
定められず、開発許可のいわゆる立地基準が適用されないため、土地利用の混乱が生じる懸念がある。
特に、用途地域の指定のない区域では、一般的には市街化の圧力が低いことから比較的高い容積率制限(原則400%)、建ぺい率制限(原則70%)が適用
されているが、そのままでは高容積の建築物が建築されることによる日照等の相隣関係上の問題、交通の局所的混乱などを招くおそれが多くなること、また、用
途地域が指定された区域では50%の容積率制限が適用可能(低層住居専用地域の場合)であるが、用途地域の指定のない区域では現在100%の容積率制限ま
でしか適用できないなど選択肢が限られていることから、将来的に用途地域を指定する際に建築規制上の不均衡が生じるおそれがある。
さらに、用途地域の指定のない区域では、用途制限が適用されないことから、店舗、ホテル、レジャー施設、工場、倉庫等の建築物が建築される可能性があ
り、周辺の生活環境への悪影響や交通混雑等の問題が生じるおそれがある。
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(2)既成市街地 |
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都市の健全な発展と秩序ある整備を図って
いくためには、特に既成市街地において土地の有効高度利用を進めていくことが重要である。このう
ち、都心部等の商業地域では、居住環境の確保の観点よりも商業・業務施設の集積を図る観点から、基盤施設に対する負荷を勘案しつつ、高度利用が実現される
よう高い容積率が指定されており、日影規制も適用されない。しかしながら、高度利用の条件が整っている既成市街地においても、個別の敷地単位で見れば、歴
史的建築物や劇場などの建築物の特性、学校に隣接する敷地などの地区の状況等により、指定された容積率の限度まで利用することが困難又は不適切なものがあ
り、地域全体として土地の有効高度利用が十分に図られていない場合がある。
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(3)都市計画区域外 |
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都市計画区域は、一体の都市として総合的
に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域に指定することとされている。このため、一定の条
件を満たした市町村の区域について都市計画区域を指定し、都市施設の整備や市街地開発事業を行うとともに、一定の開発行為及び建築行為を規制している。
しかしながら、都市計画区域以外の区域においても、既存集落周辺や幹線道路の沿道、高速道路のインターチェンジ周辺等を中心に、スポット的に大規模な開
発行為や建築行為が集積し、周辺での交通渋滞の発生、用途の無秩序な混在等の問題が生じている。こうした問題に対処するため、都市計画中央審議会答申にお
いては、土地利用規制のみを行う仕組みとして市町村が準都市計画区域(仮称)を指定する制度の創設を提示している。
なお、建築基準法においては、都市計画区域外における大規模なリゾートマンション等の建設に伴う問題への対応を図るため、平成4年の改正により、条例で
都市計画区域外でも建築物の形態制限を行うことができることとされたが、建築物の用途については制限していない。
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(4)密集市街地等 |
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大都市を中心に広く存在している防災上危険な密集市街地においては、災害に強
いまちづくりを早急に推進していくことが求められている。これらの市街地は、一般的に住居系用途地域や準工業地域が指定され、建ぺい率が60%に制限され
ており、特に狭小な敷地では、建て替えたとしても建築計画が著しく制約されることから老朽建築物の更新が進んでいない。このため、道路等の公共施設の整備
や市街地再開発事業等による面的な整備を引き続き進めるとともに、個々の建築物についても一定の耐火性能を有するものへの協調的な更新を促すことにより、
地域全体の防火性や安全性の向上を図る必要がある。
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(1)都市計画
区域内の用途地域の指定のない区域
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@ 形態制限の見直し
都市計画区域内の用途地域の指定のない区域においては、現在、容積率制限400%、建ぺい率制限70%を原則としつつ、特定行政庁が指定した区域内で
は、それぞれ100%、50%まで制限を強化することができる。この仕組みを改め、土地利用の実態に即した規制が適用されるよう、特定行政庁が自ら規制値
を選択する仕組みとするとともに、第一種低層住居専用地域並みの容積率制限50%、建ぺい率制限30%まで適用可能となるよう規制値を追加することが必要
である。また、容積率制限、建ぺい率制限とあいまって効果的な制限となるよう斜線制限や日影制限についても整合を図りつつ見直しを行うことが必要である。
A 特定の用途の建築物の建築の制限
非線引き都市計画区域のうち用途地域の指定のない区域については、開発許可制度のいわゆる立地基準が適用されず、土地利用の混乱が懸念されるため、土地
利用規制手法の充実が必要である。具体的には、地方公共団体が、制限すべき建築物の用途の概要を定める特定用途制限地域(仮称)を都市計画で定め、当該地
域の良好な環境の形成又は保持を図るために、建築基準法に基づく条例で建築物を制限し、建築確認で担保できるようにすべきである。
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(2)既成市街
地
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地区全体の高度利用のための条件が整って
いるにもかかわらず、高度利用が十分に実現されていない場合に、これを促す仕組みを充実する必要がある。このため、大都市の都心部等の商業地域のうち、道
路、鉄道、下水道等の基盤施設が十分に整備された区域で、かつ、共通の基盤施設に支えられている地区について、地区全体の土地の高度利用を図るべき区域を
都市計画で定め、当該区域内においては、特定行政庁が、地域の実情にあった合理的かつ適正な土地利用を図るため必要と判断するとともに、交通上、安全上、
防火上及び衛生上支障がないと認定することにより、2以上の敷地の建築物について敷地面積及び延べ面積をそれぞれ合算して容積率制限を適用し、未利用容積
率を活用できるようすべきである。
この際、歴史的建築物の保全や空地の創出等の市街地環境の維持向上を図ることができるようにするとともに、あらかじめ特定行政庁が判断・認定基準を定
め、公表すべきである。
また、この制度の実施に当たっては、一団地の総合的設計制度及び連担建築物設計制度と同様に、一定の事項を公告、縦覧する等認定に係る土地についての取
引の安全性を確保することが必要である。
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(3)都市計画
区域外
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都市計画中央審議会答申で提示された準都
市計画区域(仮称)は、都市計画区域外の区域のうち、建築物の建築又はその敷地の造成が既に行われ、又は行われると見込まれ、建築物の用途の整序や景観の
維持等を図る必要性が高いと認められる区域について、市町村が指定するものである。また、この区域に決定できる都市計画は、用途地域、特定用途制限地域
(仮称)、風致地区等建築物の用途制限や景観の維持等に係る地域地区及び地区計画とされており、開発許可制度で3,000u以上の開発行為を対象に技術基
準を適用することとしている。
このような準都市計画区域(仮称)が創設された場合には、都市計画により定められた用途、容積率、建ぺい率等の制限の実効性を確保するため、都市計画区
域と同様に、接道等の建築基準法集団規定を適用することが適当である。
なお、建築基準法第68条の9に基づく条例については、都市計画区域及び準都市計画区域(仮称)以外の区域において、建築物の敷地又は構造に関する必要
な規制を行う制度として、引き続き存続させるべきである。
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(4)密集市街
地等
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老朽建築物の建替えが進んでいない密集市
街地等のうち、道路や公園の整備が進められていることなどにより消防活動に支障がない地区等においては、住民の意向を踏まえ連続した空地を確保するなど地
区全体の居住環境の向上を図る建築ルールが定められた場合に、建ぺい率制限の緩和により個々の老朽建築物の協調的な建替えを促進する仕組みを設けることが
必要である。
具体的には、隣地側に建築基準法第46条に基づく壁面線の指定や地区計画による壁面の位置の制限がなされ、背割り線に沿って連続的な空地が確保されるこ
とにより、道路側の空地と併せて、二面からの採光や通風が確保できる場合には、準耐火建築物等とすることによる耐火性能の確保や、隣地側の開口部等を制限
することによる延焼防止効果を個々に評価することにより、個別に建ぺい率制限を緩和できるような仕組みを設けるべきである。
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今後、建築基準法集団規定について、建築
基準法が建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めるものであることとの関係も含めて、総点検を進めていく必要がある。
その場合、建築基準法集団規定が、時代の変化に対応した実効性のある制度となっているか、個性豊かな市街地環境の形成へのニーズに柔軟に対応している
か、不適格建築物や防災上の問題などに的確に対応しているかといった観点から論点を整理し、例えば、既に適用されている規制について許可・認定手法も含め
て合理化できるものは合理化し、現行制度で対応できないものについては必要な規制を行いうるよう制度を充実することや、地域の実情に応じて地方公共団体が
規制を選択して適用できるよう制度を充実すること、さらに住民参加に向けて制度のアカウンタビリティを高めることなどについて検討すべきである。
また、規制目的や規制内容の明確化、市街地の課題の解決に向けた規制のあり方、地方分権の流れの中での規制のあり方といった視点から審議を進めていくこ
とが必要である。
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