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第6回 工法評価選定会議 羽田空港再拡張事業工法評価選定会議 報告書(案

はじめに

 羽田空港は、昭和6年、逓信省の「東京飛行場」として設置されて以降、昭和30年代、40年代の規模拡充、そして、昭和59年以降の沖合展開事業の推進と着実に整備が進められ、我が国最大の規模を有する空港となった。その結果、現在、羽田空港は国内47空港と路線を結び、国内航空旅客の約60%が利用する国内航空輸送ネットワークの要としてその機能を果たしているが、国内航空需要の増加から、既にその能力の限界に達している状況にある。
 このため、今後とも増大が見込まれる航空需要に的確に対応し、利用者利便に適確に応えるためには、沖合展開事業に続く大プロジェクトとして、新たに4本目の滑走路を整備し、空港処理容量を大幅に増加させる再拡張事業のできる限りの早期着工、早期完成が望まれている。
 また、政府においても、昨年8月、再拡張事業を都市再生プロジェクト(第二次決定)に選定し、「国際化を視野に入れつつ東京国際空港(羽田空港)の再拡張に早急に着手し4本目の滑走路を整備する。」とするとともに、本年6月の閣議決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」では、「財源について関係府省で見通しをつけた上で、国土交通省は、羽田空港を再拡張し、2000年代後半までに国際定期便の就航を図る」とするなど、再拡張事業を早期に実施する方針を決定している。

 他方、羽田空港再拡張事業に求められる建設工法は、従来の空港整備の場合とは異なり、以下のような様々な要請を満たすものでなくてはならない。
 まず、昨年12月、国土交通省は、省庁統合により関係機関が一体となって検討をした成果として「羽田空港の再拡張に関する基本的考え方」を決定し、新滑走路の位置を現羽田空港沖合の海上部に確定しているが、この位置は、多摩川への影響や東京港第一航路への影響を考慮すべき海域であることから、位置的特性から生じる要請に応えなければならない。
 さらに、空港として長期安定的に機能することはもとより、できる限り工期・工費を抑えつつ、安全確実な施工を行い、周辺環境への影響も最小限にする等様々な技術的・経済的・社会的要請に応えることのできる建設工法でなくてはならない。
 このため、国土交通省は、以上の要請を満たす工法は何であるかを見極めるべく、外部有識者で構成する本会議を設置し、客観的、中立的、かつ透明性をもって工法の評価選定作業を行うことを本会議に要請したところである。

 本会議においては、新滑走路の地理的位置や空港整備におけるこれまでの施工実績、さらには新たな技術開発動向等を踏まえ、桟橋工法、埋立・桟橋組合せ工法、浮体工法を基本的な検討対象として評価作業を進めてきたが、桟橋工法、埋立・桟橋組合せ工法は、港湾施設において実例があるものの我が国の空港としては例がなく、また、浮体工法は、世界的にも空港としては新しい構造形式である。このため、各工法の評価作業においては、我が国の技術力の粋を結集した検討が求められることとなった。
 このような状況の下、本会議においては、多方面にわたり高度かつ詳細な技術的検討を行うため、本会議の委員の知見はもとより、外部有識者へのヒアリングや海外調査を含め、あらゆる角度から詳細にわたり技術的検討を進めてきたところである。

 さらに、再拡張事業は、多額の資金を要する国家プロジェクトであり、コスト削減や工期の短縮、そして環境への配慮など公共事業に求められる今日的諸課題に応えることも極めて重要である。このため、再拡張事業が他の公共事業のリーディングケースとなるような提案を行うことも本会議の重要な使命であると受け止め、この点にも十分に重点を置いて検討を進めてきたところである。

 本報告書は、以上のような重要かつ困難な諸課題について、本会議の7ヶ月にわたる検討の結果を記すものである。国土交通省においては、本会議の検討の結果を尊重し、再拡張事業を早期かつ確実に実施することにより、羽田空港が将来にわたり、我が国の空港の中心としてその社会的役割を担い続けることを期待するものである。



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