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第6回 工法評価選定会議 別紙1 主要論点についての検討結果

1.空港として長期・安定的に機能すること

(1)空港として必要な機能を有すること
滑走路、誘導路
  • 航空機荷重のたわみについては、各工法とも国際ラフネス指数(IRI)により平坦性を評価しており、IRIの値が空港滑走路を対象に想定した範囲に収まっていることを確認しており、大きな問題はない。
  • 本体構造の動揺については、各工法とも大きな問題はない。
    ただし、浮体工法においては、滑走路の基準勾配を満足しているものの、動揺・たわみまで考慮すると、勾配は0.98%となり、基準(1.0%)に対する余裕が小さい(約0.02%)ことから、実施にあたっては、舗装工事等における施工精度に十分留意するとともに、必要に応じ、浮体高さを変え、滑走路勾配に余裕を持たせることで対応する。
構造体(滑走路及び誘導路)の接続部
  • 埋立・桟橋組合せ工法においては、桟橋部と埋立部の接続部構造の走行性・平坦性を適切に維持するための手法について、米国・ラガーディア空港及びポルトガル・マディラ空港において現地調査を行ったところ、特にラガーディア空港では埋立部に沈下が生じているが、空港当局及び就航エアラインに対してヒアリングを行った結果、両空港とも接続構造の存在による航空機の走行性、安全性に問題は生じていないことが分かった。従って、接続部については、基本的な問題はないものと考えられる。ただし、両空港とも地震の規模が我が国に比べ小さいという状況に留意しておく必要がある。よって、我が国においては今後、実施にあたっては、地震への対応策を十分取り込むとともに地震の速やかな復旧方法の検討を行うことが必要である。
  • 地震については、桟橋工法及び埋立・桟橋組合せ工法においては、部材耐力、地震後の対応の検討を行っている。両工法とも、耐震性能の照査は「空港土木施設の耐震設計指針(案)」に適合している。
  • 浮体工法においては、可動橋の勾配、4段継ぎ手の角折れ部の走行性、継ぎ手部の構造の検討を行っている。
     4段継ぎ手の角折れは、基準に示された緩和曲線を成す構造となっていないが、鉄道総研で試算したところ乗り心地の問題はないという報告が得られている。また、4段継ぎ手構造に関する技術的課題については、有識者に対するヒアリングを行ったところ、4段継ぎ手の設計は技術的に可能であるとの結果が得られた。ただし、実施にあたり、部分的な試作品による耐久性等の確認を行う必要があるとの見解が示された。
  • また、地震に関し、浮体工法においては、係留施設の安定について震度法による検討、係留施設と浮体との相互作用を考慮した動的解析、海震に関する2次元モデルによる解析についての検討を行い、浮体工法が地震に対して免震性を有するとしているが、可動橋部分の耐震検討については、実施にあたり、詳細に検証しておく必要がある。
航空保安施設(無線、航空灯火)の動揺、変位が許容範囲であるか
 各工法とも基本的に問題はないが、浮体工法について、実施にあたり、航空機の運航が可能な浮体の動揺、変位を踏まえた運航限界の基準を作成する必要がある。

(2)構造物(地盤)が長期的に安定していること
防食対策の信頼性は十分か
 飛沫帯及び干満部の防食について、桟橋工法及び埋立・桟橋組合せ工法(桟橋部のみ)においては耐海水ステンレス鋼ライニングを、浮体工法においてはチタンクラッド鋼ライニングを用いることが提案されている。
 耐海水性ステンレスライニング部の維持管理については、年1回、全数の外観からの目視点検を行うとともに、5年に1回、1/8本の割合で、詳細調査(総本数桟橋工法4,462本、埋立・桟橋組合せ工法1,988本)を実施することとなっている。また、必要に応じ、リークテスト(気密試験)による杭外面とライニング間の気密性の検査を実施し、異常時には、ライニングを除去し、杭外面の直接点検が実施可能であることから、適切に管理できるとされている。
 一方、チタンクラッド鋼(鉛直方向に2.5mの範囲)でライニングされている構造部材のうち、最下部のライニング部の全周(32,000ヶ所)について、年1回、内部から1m間隔で斜角法によって板厚測定を実施する計画となっており、これにより、万一、ライニングと母材の間で腐食が発生しても、小規模のうちに発見、修復することができるとされている。
 いずれの防食法とも既に重要な海洋構造物に使われた例があるが、使用実績がまだ浅いため適切な点検と維持管理システムを確立しておく必要がある。これらについて、有識者からのヒアリングを行ったところ、いずれの工法も、適切な点検、維持管理を実施することで長期間(100年間)の使用は可能であるとの結果が得られた。ただし、これを実現させるための条件として、点検の頻度やその手法について詳細な検討が必要であり、かつ、劣化に対する適切な補修を実施することが不可欠であるとの見解が示された。
供用開始後の沈下、金属疲労が対策可能な範囲か
 埋立・桟橋組合せ工法における埋立部について、洪積粘土層も含めた残留沈下は、供用後10年間で約20cm、100年間で約30cmであり、適切な維持管理を行うことにより、基準を満足できると認められる。
 金属疲労については、各工法とも大きな問題点はないとの結果が得られている。
構造(浮体本体及び係留系)の検討方法は妥当か
 浮体各部材の設計は船舶や海洋構造物で従来から用いられている設計法により、係留施設は「港湾の施設の技術上の基準」により、また、浮体の上下方向の動揺解析はメガフロート技術組合で開発された弾性応答解析プログラムにより、それぞれ解析が行われた。
 また、今回、手法の確認のため模型縮尺1/200の水理模型実験が行われている。
 構造(浮体本体及び係留系)の検討方法の妥当性について有識者にヒアリングを行った。その結果、シミュレーション技術の発達により、実際の浮体の挙動は相当な精度で再現できること及び現段階の検討結果として妥当であることが確認された。また、実施にあたっては、滑走路島付近の地形・水深の影響等を考慮したシミュレーションの実施や部分模型による実験の実施等による詳細な検討が必要であるとの指摘があった。
(3)想定を超える自然条件への対応が可能なこと
想定を超える自然条件(地震、津波、洪水、波浪等)が発生したとしても、重大な事態に至らないか、また短期間で機能回復が可能か
 設計外外力(地震等)や地球温暖化に対する検討が行われている。
 埋立・桟橋組合せ工法においては、埋立部と桟橋部との接続部分については、実施にあたり地震により護岸構造に影響があった場合に重大な崩壊に至らないことを確認する必要がある。
 なお、地球温暖化による海面上昇については、各工法とも大きな問題はない。
(4)万一の事故・災害が発生した場合の対応が可能なこと
事故災害(火災、航空機事故、船舶の衝突、テロ(爆破)等)により重大な事態に至った場合の機能回復は可能か、また周辺(船舶航行、港湾機能等)へ重大な影響はないか
 航空機事故、船舶の衝突、係留系の破壊(浮体工法)等についての検討が行われている。航空機事故、船舶の衝突については、いずれも復旧は短期間で比較的安価で可能であり、かつ空港機能上も重大な影響は与えないと考えられるものであり、問題はない。
(5)適切な維持管理が可能なこと
適切な維持管理計画・体制となっているか
 防食については、1.(2)で記述したところであるが、桟橋工法及び埋立・桟橋組合せ工法においては、既存のマニュアルによる点検・補修計画を作成している。
 一方、浮体工法においては、鋼船構造規則に準じた維持管理計画となっている。
 いずれの工法も、桟橋部、浮体部については、我が国においては空港としての経験がなく、実施にあたっては、詳細な維持管理マニュアルを作成する必要がある。
 また、浮体工法の舗装について、鋼板上に施工することからグースアスファルトを用いることとしているが、アスファルトの補修が必要となった場合、5時間以内の夜間作業での施工が可能かどうか、実証実験等により確認する必要がある。


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