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第6回 工法評価選定会議 別紙2 第1~5回会議において検討に用いた資料(抜粋)

(3)浮体構造及び係留施設の検討方法の妥当性について(浮体工法)
【有識者ヒアリング結果】

1.ヒアリング先
鳥取大学工学部教授 上田 茂  氏
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 影本 浩  氏
東海大学海洋学部教授 関田 欣治氏
京都大学防災研究所教授 高山 知司氏
京都大学大学院工学研究科教授 渡邊 英一氏


2.ヒアリング項目
(全般)
●メガフロート実証実験結果の本浮体への適用の際の留意点
 ・波浪条件の相違等
●羽田再拡張における浮体設計の前提条件
 ・外力条件(高潮、風、波高、水位、水深、多摩川の影響等)の考え方
 ・前提条件として考慮すべき波の特性(不規則波、多方向不規則波、長周期波等)
●実施済みの水理模型実験結果の評価について
 ・海上技術安全研究所において実施された水理模型実験について
●羽田再拡張における水理模型実験の必要性について
 ・模型実験における相似則の考え方について
 ・浮体に働く抗力係数(風、波)の考え方について(風洞実験等の必要性等)

(各論・構造系)
●浮体に働くスラミングの評価について

(各論・係留系)
●係留系の安全性について
 ・どの波向きが係留系にとって最も危険(検討として安全側)か確認した上で行うべきか否か。
 ・多摩川河口部における水中係留方式について
●係留設計等における適切な外力の与え方と検討方法について
 ・波浪、風、潮流、洪水流等の重ね合わせの考え方について
 ・高潮、津波等の静的外力としての取扱の妥当性について
●係留設計における変動波漂流力の考え方について
 ・変動波漂流力低減手法の妥当性について

3-1.ヒアリング結果(全般)

メガフロート実証実験結果の本浮体への適用の際の留意点
波浪条件の相違等

条件や形状の違いによらず既存の理論計算手法は任意の浮体に適用できる。実証実験は、規模が大きいことで予期せぬ現象が発生するかどうかを確認するために行ったものであり、実証実験の結果そういったことは起こらず、従来の浮体工学の知識が充分適用できることが確認された。(影本)
実証実験と何が異なるのかといわれれば、形状、防波堤の有無、そしてサイズが異なる。今回は未知の部分も含まれているので、その点を最終的に解明することが望まれる。(渡邊)
メガフロート実証実験との相違は、浮体の長さに比べ岸に近く、後背地の地形的状況や水深の変化に影響を受けることであり、この点を認識して設計する必要がある。(関田)
実証実験で検証しようとする事項について、実証実験において適切にモデル化されているかが重要である。箱型についてはおおむね確認ができたといえるが、櫛型との複合型については詳細設計時には検討が必要である。(上田)

羽田再拡張における浮体設計の前提条件
外力条件(高潮、風、波高、水位、水深、多摩川の影響等)の考え方
前提条件として考慮すべき波の特性(不規則波、多方向不規則波、長周期波等)

線形理論(微小振幅波理論)でほとんどの現象の推定は可能と考える。(影本)
4.1m、7秒の条件は、若干の非線形性があるが、砕波するほどではなく波形が若干変わるだけで微小振幅波理論を適用しても問題ない。(渡邊)
地形の影響として、海底勾配の影響について波高が増大する影響を考慮する必要があるのであれば、波高を大きくとればよい。また、多摩川の影響については流れによる抗力を考慮すればよい。(影本)
浮体の挙動は、現段階では線形理論で解析するのが一般的であり、非線形性現象を考慮した解析は難しい。現実の波は線形では無く非線形性現象であるが、今回の羽田の波高と水深では、非線形性は、波の山と谷の形が違う程度と考えられる。ただし、流れと波の共存(多摩川の流れと波の共存)については、研究の段階であるが、波が川を遡上すると波は小さくなる傾向にある。(渡邊)
線形理論はおおむね成立するといえるが、波高の影響は別途確認する必要がある。(上田)

全体は微小振幅波理論で検討せざるを得ないので、波高の影響を実験で確かめてみることが必要。(関田)
水深から見て波の有限振幅性が現れる可能性のある領域なので、詳細設計段階では、シミュレーションで実際の水深、地形条件を入れて計算し、その結果により、地形影響を考慮した模型実験を行うかどうか判断すべきである。(関田)
津波は、浮体の一部が多摩川河口部に位置することから、複雑な地形の影響で津波の形状が滑走路軸方向に変化したり、流向きが変わり浮体にヨーイングモーメントをもたらすなど、津波力の浮体への作用の仕方に影響を与える可能性があることが懸念される。この現象はシミュレーションにより検討する必要がある。(関田)
新滑走路が建設されることにより、地形及び海底地形も変わることとなり、波の変形状況も変わらないか気になる。(高山)
河口部において波向きと流れの方向が相対する場合には、波高が増大するとの既存研究成果があるので、設計条件としてそれらの研究成果も含めて評価すべきである。(上田)

流れの抗力係数については、詳細設計時には明確な根拠を示して設定する必要がある。その際、水深喫水比、干渉効果、流況なども考慮すべきである。(上田)
風の抗力係数については、詳細設計時には、風洞実験により、風向別に詳細に検証すべきである。(上田)
抗力係数等についても過去に十分実験等が行われており、櫛型を含め、風洞実験等を改めて行う必要はない。(影本)

実施済みの水理模型実験結果の評価について
海上技術安全研究所において実施された水理模型実験について

模型実験を実施する際は、相似則が問題になる。今回は、フルード数を合わせており、全体模型の実験としては、1/200で十分であると考える。(渡邊)
模型実験の縮尺(1/200)は規則波ということを考慮すると、必要最小限であろう。(関田)
水理模型実験で明らかにしようとする事項について、水理模型実験で適切にモデル化されているかが重要である。例えば動揺量を推定する場合の理論の検証を行う目的で行う場合には、理論式を構成する要因(波力等)が大縮尺の要素モデルで検証された上でこれより小縮尺の全体モデルで検証する手順が必要である。櫛型モデルについては詳細設計時に要素モデル等による検討が必要である。(上田)

羽田再拡張における水理模型実験の必要性について
模型実験における相似則の考え方について
浮体に働く抗力係数(風、波)の考え方について(風洞実験等の必要性等)

実証実験の形状や条件が変わったことによる実験の必要はない。抗力係数等を設定するための縮尺模型実験も必要ない。(影本)
波圧、摩擦抵抗、海底勾配の変化などの項目については、実施に向けて、部分モデルを用いたベンチマーク的な実験を行い、理論の正確性、経済的な設計、安全性などについて、確認を行ったらどうか。(渡邊)
地形の影響、水深変化の影響はあまり大きくないと思うが、複雑な条件の計算も可能なので、確認してはどうか。(渡邊)
櫛型部にかかる波圧については、過大な設計になっている気がする。部材強度としては、部分模型による実験をやってみたらどうか。(高山)
周辺地形の影響がどれくらいか、ベンチマークテストで検討すべきである。(上田)

3-2.ヒアリング結果(構造系)

浮体に働くスラミングの評価について

スラミングの発生についてはシミュレーション結果を見て、浮体の変位と水位の差をチェックすると良い。仮に発生したとしても浮体と水面との相対速度が小さいために大きな荷重は発生せずにローカルな影響に留まる。(影本、渡邊)
浮体の部分的強度の問題に留まる可能性が高いと考える。(影本、渡邊、上田)
スラミングは起こらないのではないかと思う。(上田)

3-3.ヒアリング結果(係留系)

係留系の安全性について
どの波向きが係留系にとって最も危険(検討として安全側)か確認した上で行うべきか否か。
多摩川河口部における水中係留方式について

詳細設計時には、縦係留系の波浪条件の見直し、風向別の風荷重(抗力及びモーメント)を詳細に検討すべきである。(上田)
滑走路軸方向の北及び南からの荷重設定を除けば、係留系は厳しい条件の組合せでチェックしており、考え方はほぼ妥当。(関田)

多摩川河口部における水中係留方式については、委員より特に課題の指摘はなかった。

係留設計等における適切な外力の与え方と検討方法について
波浪、風、潮流、洪水流等の重ね合わせの考え方について
高潮、津波等の静的外力としての取扱の妥当性について

最大のものが同時刻に起こるとして検討しているので、十分ではないか。(影本、関田)
長周期波の影響については、周期をT=2分、1分、30秒というように変えて、湾口から湾内への回折シミュレーションを行い、それにより平石のスペクトルを設定し、感度分析を行ってはどうか。(関田)
津波に対する動的解析について、工法の成立性の判断としては現段階までの検討でよいと思うが、算定における精度については、実施に至るまでに検討しておく必要がある。(高山)
長周期波がどの程度入ってくるか現地観測を行い、どの程度の波高、周期の長周期波が入ってくるか、押さえておく必要がある。(高山)
長周期波の影響が大きいような場合には、観測が必要であるが、今回は長周期波の影響は小さく観測は必要ない。(影本)
東京湾をモデル化して計算すればよいので、現段階ではうねりや長周期成分の観測は要らない。(関田)
波、風の方向分力の全体像を見てみないと、現在の検討が本当にクリティカルな条件となっているか、一概に判断できない。(上田)

係留設計における変動波漂流力の考え方について
変動波漂流力低減手法の妥当性について

今回提案されている変動波漂流力の算定方法は、これまでに多くの実験結果との比較によりその有効性が確認されている理論式を展開したものである。箱型浮体については、1,000m浮体の実証実験で確認している。(影本)
ある程度の縮尺で多方向波による実験を実施して、計算法が妥当か検証する等、厳密に検証した方が良い。(高山)
変動漂流力について、実証実験で検証しようとする事項について、実証実験において適切にモデル化されているかが重要である。(上田)

4.ヒアリング結果(まとめ)

現段階の検討結果として、妥当であり、クリティカルな問題はない。(影本、渡邊)
工法の成立性の判断としては現段階までの検討でよいと思うが、変動波浪漂流力などの算定における精度については、実施に至るまでに検討しておく必要がある。(高山)
シミュレーション技術の発達により、実際の浮体の挙動については、相当な精度で再現できる。(影本、渡邊)
詳細な検討段階では、経済性や安全性の観点等から、部分モデルを用いた実験等を行い、確認を行ったらどうか。(高山、渡邊)
部分モデルを用いた実験や地形・水深等の影響を考慮したシミュレーションを行い、確認を行う必要がある。(上田、関田)


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