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第6回 工法評価選定会議 別紙2 第1~5回会議において検討に用いた資料(抜粋)

(6)工費・工期の変動リスクの負担について

1.検討の趣旨

     羽田空港再拡張事業は、極めて大きな意義を有する一方、多額の資金を要する国家的プロジェクトであり、その契約・発注にあたっては、公正さを確保しつつ、工費(引渡し後一定期間の維持管理費を含む)及び工期の確実性を担保するために最も適した契約方式を選択する必要がある

2.リスク分担の現状

     従来、空港整備事業においては、設計は発注者=国が自ら行うか、あるいは技術力のある設計者に委託して行われており、施工は、施工段階での競争性を確保する必要性等から、設計と分離して発注することを基本としてきた。設計と施工を分離して発注する場合は、施工者が設計に関与しないことから、施工段階で発生するリスクは、設計を確定した発注者が担うことになる。具体的には、施工段階で当初設計と異なる事態が発生した場合は、設計変更で処理することが一般的であり、その結果、工費の増大、工期の遅延を招くことにつながる(別添6-1)。

3.設計・施工一括発注方式でのリスク分担

     工費の増大、工期の遅延といったリスクを回避しつつ、企業のもつ技術力を活用して、最良の調達を目指すため、近年、工事の特性、発注者が期待する事項に応じて、様々な契約方式が試行されている。こうした中で、最近、放水路トンネル工事等において、設計・施工一括発注方式が採用されている(別添6-2)。設計・施工一括方式においては、受注者が設計及び施工を一括して行うことから、施工段階で当初設計と異なる事態が発生した場合のリスク(設計変更による工費増大等)は、発注者が負担するのではなく、設計を行った設計者=施工者が負担することとなる。この方式の採用により、激甚災害、法令改正等の予期できないリスクを除き、リスクは全て受注者が負担することになり、発注者のリスクを大幅に軽減することが模索されている。

4.羽田空港再拡張事業への設計・施工一括発注方式の適用

     現在検討されている三工法には、港湾施設において事例はあるものの我が国の空港としての例がない桟橋工法及び埋立・桟橋組合せ工法、世界的にも空港としては新しい構造形式である浮体工法が含まれている。三工法については、技術上の安全性が確認されたとしても、類例が殆どない工事であることから自然条件、技術条件、社会条件等の諸条件の変化により工費・工期が変動する可能性がある(別添6-3)。したがって、想定しうるリスクを洗い出し、適切なリスク分担を行う中で可能な限り発注者が負う工費・工期の変動リスクを回避することが、企業のもつ技術力を活用しつつ、低廉な価格で、最良の空港整備事業を遂行するために必要である。この場合、羽田空港再拡張事業は、いずれの工法によることとしても、施工方法によって設計内容が大きく変わることなど施工技術に特に精通した者の技術力を得て設計することが必要な工事であること、したがって施工方法は設計と密接不可分の関係にあることから、設計・施工一括方式が適している工事であるということができる。この方式による場合、3.で述べたように受注者が設計と施工を一括して行うことから、予期できないリスク以外は受注者の負担とすることになるが、その旨を入札説明書等の上で明らかにし、適切なリスク分担を行うことが考えられる。
     また、いずれの工法も大量の金属が長期間にわたり海水中に存置されることになること等から、維持管理費も含めたライフサイクルコストを考慮することが必要である。このため、引渡し後一定期間の維持管理費を工費の一部に含め、受注者を決定するとともに、工事完成後の維持管理費の変動リスクについても、一定期間受注者に保証させる方式の導入の検討を行っていく必要がある。
     これらにより、羽田空港再拡張事業においては、工費(引渡し後一定期間内の維持管理費を含む)及び工期の変動リスクの適切な分担が可能となるものと考えられる。



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