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IT(情報技術)を活用した首都機能都市の在り方(最終提言)

2.首都機能移転の検討にあたって考慮すべき事項

近年における急速なIT化*注3の進展を踏まえ、今後の首都機能移転の検討に際しては、以下を考慮すべきである。

注3: ここでは「情報技術の高度化と社会への浸透」と定義する。

(1)IT化の進展が変える現実空間

IT化が進展することにより、今まで以上に複数の活動を同時並行的に、または極めて短時間で切り替えながら行うことが可能になるとともに、場所に拘束されずに情報を受発信したり他者と情報を共有することが可能になることから、仕事の場、遊びの場等の場所に対する区分意識の希薄化が進み、場所や時間に拘束されない活動が頻繁に行われるようになる。さらに、商業空間やコミュニティ活動のネット上への展開が進み、より多くの活動がネット上の情報交換に代替されることとなる。

このことによって、現実空間の重要性が低下し、あるいは現実空間の問題点(スペースの不足、道路事情の悪化等)が解消するかのように捉えられる傾向がある。そして首都機能についても同様に、それらが所在する場所や配置を論じることが無意味であるとの見方がある。
しかし、様々な社会活動を包括的に捉えると、人々の活動を介して情報空間と現実空間は相互に、そして密接に関連している。例えば、商品の売買に情報空間(インターネット等)が活用され、商品の選定、注文、支払いはネット上で行われても、商品の生産や物流は現実空間の活動として行われている。そして、情報空間におけるニーズの多様化や高度化が進めば、現実空間はそれに応えられるように再構築されることが求められる。また、情報空間における活動が活発化することにより、従来の現実空間の問題点(都市問題等)がより深刻化することも考えられる。
一方、IT化が進んでも現実空間における活動を重視するニーズが消えることはなく、むしろ、創造的な議論や高度な意思決定、より深い理解を求める場面や交渉の場面等においては、情報空間と現実空間が一致するface to faceの空間4の重要性が増すこととなる。
以上のことから、高度情報化時代にふさわしい首都機能の在り方について、情報空間と現実空間の双方の視点から論じる必要がある。

注4: 直接人と会って情報を確認し、意見交換等を行う場

(2)IT社会の中でのアイデンティティの確立

ITが深く浸透した社会においては、ITを活用した地域や国境を越えたグローバルな活動が活発化するが、その一方で、グローバルな社会において個人や地域・国が認められるためには、自らのアイデンティティを強く意識しながら情報を発信することが求められる。このため、IT化への対応と併せて、我が国固有の文化や価値観等を改めて問い直し、今日のグローバルな視点と、アイデンティティの確立(自立)の双方の視点から、我が国の姿、東京圏の姿、首都機能の在り方を考える必要がある。
なお、一方でIT化の過程においては、グローバル経済化への反発やIT化に適応できない人々が取り残されることにより、地域や国に依存する地域主義的な傾向を強める動きが活発化することも予想される。

(3)IT社会及び政治行政システムの長期的な変化への対応

IT化を進める過程においては、長期的な課題として、IT機器の普及だけではなく、国民がITリテラシー5を備え、ITを活用した豊かな生活を享受できる社会の実現を目指すべきである。併せて、IT化の進展とともに生じる新たな社会問題や国際問題(インターネットによるプライバシーの侵害、国際経済情勢の我が国への影響の増大6、ハッカーによる情報の改竄、サイバーテロ7等)から派生する危機に対して、適切に対処する必要がある。当面の緊急課題としてのIT化の取り組みに加え、このような社会に大きな影響を及ぼす問題について、長期的観点に立った議論が求められている。
また、国政全般の改革は、長期的な観点に立てば未だ途半ばであり、電子政府化を進めつつ改革を一層推進し、21世紀にふさわしいより効率的で開かれた政治行政システムに移行しなければならない。
我が国の将来を自らの手で切り拓くためには、これらの方向性の議論にとどまらず、目指すべき姿を実現するための具体的な戦略を提示する必要がある。首都機能移転は、IT化との相乗効果による広範な波及効果の可能性に鑑み、この具体的な戦略として検討されるべきである。

注5: IT活用のための基礎知識ならびに基本技能
注6: 情報、モノ、カネ、サービス等の国境を越えた自由な移動と各市場間の緊密な相互依存が、個々の国家では対応できない新たな危機を表面化させていることから、現在、これらに適切に対応することが求められている。(2000年3月国際経済・金融システム研究会最終報告より)
注7: 米国においては、2000年1月に頭脳空間(サイバースペース)の防衛態勢づくりを実現する「サイバースペース防衛計画」をとりまとめた。(総額20億ドル程度)

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